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親父との話合いが終わってからつくしにはメッセージを送った。
「後で行くから小夜は先に帰らせて子供達と待っていろ」・・・了解の返事はすぐに来た。

それを確認したら紫が居るはずの部屋に向かった。


「俺だ、入るぞ」

そう声を掛けて扉を開けると、部屋の中では紫が窓の外をジッと見たまま俺には視線を向けなかった。その傍には不安そうな薫が立っていて、俺を見ると一礼して出ていった。

紫が西門に来た時から使っていた部屋・・・4年経って初めて俺はこの部屋に入った。
女性らしいというよりは片付き過ぎていて何もない部屋。派手なものは何もなく、整然とした・・・どちらかと言うと殺風景な部屋だった。それは紫の心とよく似ている・・・そんな色合いだった。

俺は扉の傍から動かずに、紫に声を掛けた。


「親父が離婚を承認した。あんたには悪いがそれに従ってもらいたい。宝生の両親には俺から話すから」

「・・・・・・それならお気にならさずに。先ほど両親には説明しましたわ・・・昔の事がバレてしまったって。そうしたら何も言いませんでした」

「親父の承認の前にもう話したのか?」

「えぇ。だって結論なんて見えていましたもの。ふふ、西門を潰すなんて言葉に出さなきゃ良かったわ・・・」


紫は薄く笑いながら窓の外を見たままだった。
だがもう張り詰めた感じはなく、むしろ肩の荷が降りたような・・・緊張から解放されたような表情に見えた。心の内ではいつ俺にバレるのか、いつ自分の欲望が溢れるのかを毎日考えていたのかもしれない。

そして髪飾りが見付かれば幼い時の気持ちが蘇ると信じていたのか・・・それはもう聞くことも出来なかった。


聞いた所で俺には何もしてやれない。愛して欲しいと言われてもそれを受け止めることは出来ない。
何かしてやれることはないか・・・そう思いもしたが、逆に紫を過去に引き止めることになりそうだから言えなかった。


「これからどうする・・・宝生で暮らすのか?」

「・・・あら、気になりますか?」

「気になると言えばなる。何も出来ねぇけど、どう暮らしていくのかだけでも知っておきたいと思うがダメか?」

「ふふっ、最後まで酷い人ですね。何も出来ないけど、なんて・・・」


最後まで酷い人・・・でも初めに事実を歪めたのは俺じゃなくて先代だけど、なんて言いたかったがこれも言葉を飲み込んだ。

この時紫の手が動いて左手薬指を撫でた。
11月に俺がはめた結婚指輪・・・紫はずっとつけたままだったから。そしてやっと俺の方に向き直って目を合わせた。


「・・・悪いとは思うが本心だ」

「宝生には戻りません。あの家は私にとっては辛すぎる場所、それは本当だからです。そしてもう恋もしたくありません・・・1人でのんびり暮らしたいですわ」

「薫が居るだろう」

「薫も宝生から出そうと思います。あの子には素敵な人を見付けて楽しい人生を送って欲しいんです。私の傍にいつまでも置いておくのは間違いだと気付きました。なにか思い出したら可哀想だと思って守ってきましたけれど、私から離れれば何も思い出さずにすみますものね」


紫の両親は、逆に娘の過去を隠したまま嫁がせたことを西門に責められるのではないかと怯えたそうだ。それを聞いた紫は「やはりいつまで経っても穢された娘なのですよ」と笑っていた。
もう紫が宝生を継がないと決まった時から後継者には遠縁の息子が用意されているらしく、暮らしていくのに困らない程度の財産を譲り受けて海外に行く、そう言った。


「海外・・・何処にする気だ?」

「宝生がスイスに小さな家を持っておりますの。一晩考えてそこに行くことに決めましたわ。細かい事はこれから・・・でも、私には時間が沢山ありますからご心配なく」

「何でもいいから自分に出来ることを探したらどうだ?初めは誰でも出来ないことだらけだ。時間があるなら探してみろよ」


「最後にはそんな優しい声で話してくださるのね・・・総二郎様」

「そういうあんたこそ最後にすげぇ笑顔じゃん。その方がいいぜ?」


俺は付けていなかった結婚指輪・・・紫は静かに自分の指から外し、テーブルの上に置いた。



**



紫と話した後、自分の車で病院に向かった。
急いで特別室に向かうと丁度看護師が医者と一緒に出てきて最後の診察が終わったところだと言われた。結果は退院OKで、本人はもう支度も済ませていますよ、と。

もう1度「今夜のこと」については注意を受けたが、それには軽く頭を下げて交わした。

病室に入るとベッド脇で洋服に着替えたつくしが小夜が持って来た僅かな荷物を片付けていて、その横では双子が少しだけ機嫌悪い顔して座っていた。


「あっ!そうちゃんパパ、おそーい!」
「かのん、まちくたびれちゃった・・・」

「悪い!・・・そう怒るなよ~!今日の晩飯は一緒に食えるからさ」
「総、ホントに?あの・・・」


勿論双子は何も判らないがつくしには昨日のことを話していたから泣きそうな目で俺を見た。だから抱き寄せて耳元でひと言呟いたら「うそ・・・」と小さく言った後、今度は本当に泣き出した。
それを見て子供達はすげぇ怖い顔で俺を睨み、つくしから引き離そうとコートの背中を思いっきり引っ張られた!

「そうちゃんパパ!なんでママを泣かすの!」
「だめでしょ!ママはケガしてるんだよ?!もうっ!」

「いや、俺は別に泣かした訳じゃ・・・で、つくしは喜んでるんだぜ?」

「ママ、ホント?!よろこんでるの?」
「そうちゃんパパ、なにお話ししたの!ママ、泣いちゃだめだよ?!」

「・・・・・・・・・ママになったんだ?」
「「そうだよ!ママだよ!!」」


・・・俺が居ない間に『つくしママ』から『ママ』になったんだ?
いきなりこっちでも変化があって俺はすげぇ笑った。双子を抱き上げて大笑いしたら「そうちゃんパパ!やめて~!」って、俺にはまだ『そうちゃん』が付いてた。

「なんでだよ?」って聞いたら「まだいっしょに住んでないから」・・・それなら急がなきゃいけねぇな、ともう1回此奴らを抱き締めた。


病院を出る時、つくしの両手は双子に取られた。
そして俺は荷物持ち・・・俺の相手は紙袋だったけど、3人の後ろを歩きながらすげぇ幸せだった。


「うわぁ!これがそうちゃんパパのくるま?真っ赤だぁ!」
「すごーい!こんなくるま、かのんはじめてーー!」

「総・・・小さな子連れじゃこの車は・・・」
「ははっ!俺もあきらみたいな車、買わなきゃな!」


スポーツタイプの真っ赤な外車に子供達を乗せて向かったのは夕飯の鍋材料を買うためのスーパー。人目が気になるとつくしは抵抗があったみたいだが、今日だけはどうしても一緒に居たくて俺が無理を言った。

そこでも俺がカートを押して、つくしは子供達を連れて店の中を走りまくった。
双子はこんな店が初めてだから興奮して、特に花音は菓子売り場から離れない。紫音は何故か鮮魚コーナーでパックの魚をじーっと見ていた。
つくしは双子の姿を確認しながら久しぶりの買い物にアタフタして、ブツブツ独り言を言いながら「あっ、あれもだ!これも要るし・・・」と、何処かに消えていく。
俺は自分に似合いもしないカートを押しながら、子供達と同様初めての光景に驚きっぱなしだった。

そしてパンパンの袋が2つ・・・やっぱりそれを持つのは俺で、双子はスキップ踏みながらつくしの手を持っていた。



美作の屋敷に着いたら離れに直行してつくしはすぐに鍋の準備に入った。
手伝いだか邪魔だか判らない紫音と花音がキッチンとダイニングを何度も往復してテーブルに材料を並べ、俺はその間にあきらに連絡を入れると言って別の部屋に向かった。


『総二郎、牧野は?』
「・・・いきなりそれかよ。退院してもう離れで飯の準備してる。サンキュ、あきら。色々世話掛けたけど親父が結論を出した」

『結論?まさか・・・』
「あぁ、紫との離婚が決まった。披露宴は当然中止だ」

『・・・・・・・・・』
「・・・あきら?」


『・・・そうか。良かったな・・・って言っていいのか判らないけど、でも良かったな、総二郎』
「ははっ!お前が泣くな!飯食ったら今日はここに泊まらせてもらう。子供達が寝たら夢子おばさんにも自分の口で話しに行くって伝えといてくれ」

『・・・あぁ、判った・・・って無茶するなよ?!』
「お前は医者か!!」






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2019/07/30 (Tue) 14:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは🎵

meimei様、こんばんは。

お久しぶりです🎵
いつもありがとうございます。

はい、もう少しですが、纏めるのも結構時間がかかりますよ(笑)
目標は7月でしたが、8月になりましたね~💦
西門紫音と西門花音になるまでもう少し待っててくださいませ♥️

2019/07/30 (Tue) 19:32 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/31 (Wed) 09:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

そう、子供って時々すっごい事言うんですよね(笑)
うちの子が保育園に行ってた時に、黒いストッキングでお迎えに行ったら、年長さんだったと思うけど

「脚痩せ効果?」って言われたの!!(爆)

「冬は黒なんだけど・・・」って私も大人気ない返事をしたのをよく覚えている(笑)

え?本編とは関係ない?うん、まぁね・・・子供のひと言に傷ついたって話です・・・。


総ちゃんにスーパーの買い物袋は何回も持たせている私(笑)
実は意外に好きです♥そういうシーンが・・・。
(自分の旦那はさっさと車に戻るので)


あきらのお医者さんごっこ・・・💦似合いすぎる💦

2019/07/31 (Wed) 10:44 | EDIT | REPLY |   

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