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「うわぁ~・・・おいしそう~!カニさんが真っ赤っかだぁ!」
「あつそぉ~!そうちゃんパパ、とってぇ!」

「何がいいんだ?花音は。紫音はいいのか?」
「かのん、これ!」「ぼくはこれ!!」

「私はこれが好き~!」
「は?つくしのも俺が取るのか?」


離れのダイニングで子供達と鍋を囲んだ。
夢の屋でもこうやって4人で食ったけど、あれは旅館の夕食・・・こんなにアットホームじゃなかった。しかもあの時、俺達の呼び方は「つくしちゃん」と「そうちゃん」だった。
名前の後ろにパパなんてついてない時だったから全然感覚が違う。

つくしも「退院直後」を理由に全部俺に鍋の具を取らせ、子供達も俺に皿を出してくる。
俺は自分が食う時間もなくて、ひたすら此奴らにあつあつの具を取ってやった。まぁ・・・楽しいけど。

鍋が終わったら全員でキッチンに皿を持って行き、花音は椅子の上に立ってテーブルを拭いていた。紫音は花音が立ってる椅子を真面目な顔して支えてて、それを見た俺達は大笑いした。
つくしの目には今にも溢れそうな涙が浮かぶ。だからそっと後ろから抱き締めたら俺の袖で目元を拭っていた。


「紫音、花音、今日は俺と風呂に入ろうか?」
「「えっ!!」」

「なんだよ・・・いけねぇのかよ」

「だって・・・」「あきらパパと入ったことないもん」
「マジで?!」


もしかしたら俺が唯一あきらに勝てることかもしれない!
それを聞いたら絶対に此奴らと入りたくて、急いで風呂の支度をした。そして入れるようになったらギャアギャア喚く双子を引っ抱えてバスルームに向かった。

でもある意味間違いだった・・・まさかこんなに疲れるとは。


バスルームには風呂で遊ぶ道具が入れられている袋があって、裸になって入った途端にそいつからおもちゃを取り出した。何をするのかと思ったら、先ずはシャワーで身体を濡らした直後からボディソープで泡塗れになって遊びだした。

初めのうちは笑って見ていたが、当然のように巻き込まれる。
今日一日を思い出して湯の中で目を閉じていたら急に頭に湯を掛けられ、見上げたら花音がジョーロを手に持ってた。
「なにすんだよ!」って叫んだら今度は紫音が正面からイルカの水鉄砲で顔面を直撃、驚いて身体が傾いたところで木製の魚たちが目の前に浮かんできて花音が釣りを始めた・・・。

呆然としていたら紫音が壁に貼ってある平仮名やアルファベットの文字盤で遊びはじめ、花音はデカい人形を持って来てそいつの髪を洗い始めた。

此奴らが逆上せないようにしないとって考えていたのに逆に俺が逆上せて気分が悪くなり、子供達はろくに身体も拭かずにバスルームを飛び出てつくしに叱られていた。


毎日がこうなのか・・・?
俺はバスローブを羽織ったまま暫くソファーに沈み込んで動くことも出来なかった。


「あはは!今ね、水鉄砲にハマってるの。それに2人が別々の遊びを始めるから一緒にお風呂に入ったら体力使って逆に疲れるのよ」
「・・・・・・マジ窒息するかと思った」

「でも楽しかったでしょ?」
「・・・やっぱりお前がいいわ。入り直そうかな・・・どうだ?」

「・・・ば、ばか!」


誰の気遣いか判らないがこの離れには俺の着替えも準備してあって、それに着替えて子供達が寝るのを待った。
時間はもう8時半・・・子供達が寝てしまったらあきらと夢子おばさんに話さないといけない。その時間が来るのを双子の笑顔を見ながら待っていた。


「そうちゃんパパ、おやすみなさ~い!」
「おやすみ、そうちゃんパパ。今日は帰るの?」

「あぁ、おやすみ。今日はここで寝る。だから朝飯一緒に食おうな!」
「「うわーーい!」」


つくしが手を引いて子供部屋に向かったら、あきらに電話して小夜を離れに寄越すように頼んだ。すぐに小夜は来てくれて、それと同時につくしも子供部屋から戻って来た。
そして俺達が話し合っている間の子供達を彼女に頼んで、2人で屋敷のリビングに向かった。



**



リビングではあきらとおばさんが待っていてくれて、俺とつくしは2人の向かい側に座った。
そしてつくしの検査結果の報告と、病院手配の礼を言った。それには美作の屋敷内で起きた事故だから申し訳ないとおばさんの方からも頭を下げられたが、それをつくしが慌てて止めていた。

何よりこの事で子供達との距離が縮まったのだからと、逆につくしは「ママ」と呼んでもらったことが嬉しかったと笑顔で話していた。


「あきらには電話で話したんだけど紫との離婚を親父が認めてくれんだ。それを先ずはおばさんに説明したいんだ。少し時間が掛かるかもしれないけど聞いてくれる?」

「えぇ、あきら君から簡単には聞いてるわ。先ずはおめでとう・・・と言っていいのかしら。奥様・・・いえ、紫さんは大丈夫なの?」

「あぁ、さっき西門で話して来た。紫も縛られていたものから解放されたのかもしれない・・・最後には笑っていたから」

「そう・・・それならいいけど」


夢子おばさんは以前から紫に悪意だけを感じるのではなく、救ってやって欲しいと俺に話していた。
同じような家に生まれた者同士として、少しは気持ちが判る・・・そんな風に言ってたから紫の今後が気になるみたいだった。


この後、あきらと調べた18年前の事件の事を説明した。
3人の爺さんの隠蔽工作とその後紫が起こした行動、西門の先代が悪気なく騙した俺と紫の約束事・・・紫の憎悪の念はその約束を裏切られたことから始まったと言えば、その執念には身震いしていた。
そして初めのうち小さかった憎しみは、俺がつくしに本気だと知ってから爆発、最終的には西門を潰すつもりで結婚を強行したと・・・。

この説明には西門の先代が犯した罪もあるから口外しないで欲しいと頼めば、おばさんは「もうこの世の方ではないわ」と眉を顰めた。


「1度聞いただけでは何の事やらさっぱりだわ。でも紫さんは今でも総二郎君の事が好きなのね?」

「・・・そうらしい。でもそれには応えられないとはっきり言った」

「それで・・・西門を出てどうするの?ご実家は受け入れて下さるの?」

「本人はスイスの別荘に行くと言ってる。1人になって色々考えたいってさ・・・時間だけはあるからって笑ってた。妹のように可愛がっていた薫は宝生から解放してやるそうだけど」

「そうなの。何だか切ないわね・・・」
「お袋、総二郎を責めるような言い方はよせ。こいつが彼女を騙したのなら責任はあるがこれまで何も知らなかったんだ。こうなった後のサポートは出来るかもしれないけど、だからって愛情も持てとは言えないだろう?」

「うん・・・そうね。人を好きになるって命懸けだわね・・・紫さんも、あなた達も・・・」


おばさんの言葉の後は何も言えなくなった。
暫く俺もあきらも、それにつくしはひと言も喋らなかった。4人共が暫くの間、この4年間に起きた事をそれぞれが思い出してる・・・そんな感じだった。

その空気を破ったのはやっぱりおばさんで、急に雰囲気を変えようと俺達に拷問のような菓子を持って来た!


「はぁ?今から?もう夜中だぜ?お袋!」
「いいじゃないの!脳が疲れちゃったんだもん。1日ぐらいこの時間に甘いもの食べたって平気よ!」

「・・・これ何だ?」
「アップルパイじゃないの?」

「何か文句でもあるの?私が夕方焼いたのよ?すっごく美味しいんだから!ね、つくしちゃん♡」
「はい!私は食べます!」

「あきら、お前にやるよ」
「総二郎、疲れただろうから食えよ・・・」

「2人とも食べるのよ!私の命令に逆らうの?」
「「・・・・・・・・・」」



別れが来た時、誰も傷つかずに済むのならどれだけ幸せか。


それでも幸せを掴めたのなら全力で守り抜く・・・俺にはそうすることしか出来ない。
まだ最後の闘いが残っているけれど、必ず自分の家族をあの家に・・・西門に連れて行き2人で子供達を育てる。

泣き笑いのような顔をしてるおばさんとつくしを見ながらそれを誓った。




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2019/07/31 (Wed) 13:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

これまでの事が嘘みたいに穏やかになりましたねぇ・・・(笑)

総ちゃん、いいように遊ばれております。
想像したら可愛いでしょう?お風呂の中で魚釣りする兄ちゃん・・・じゃなかった総ちゃん。

(あぁ、聞いたらね、”浜栄丸”でした。バイクは”隼”)


これからはね、離婚発表して再婚まで(笑)意外と話は長いです。
急に終われるほど簡単じゃなかったので、もうすこしお付き合い下さいませ。

2019/07/31 (Wed) 18:00 | EDIT | REPLY |   

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