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西門が総の離婚を発表してから数日が過ぎた。

記者会見なんかは行われなかったけど連日総の顔はテレビに出てる。
偶然見てしまった時はすぐに消すようにしていたけど、とある日、洗濯物を取り込んでいたら双子の嬉しそうな声を聞いた。

「うわぁ!そうちゃんパパ、カッコいい~!!テレビにでてる!」
「あれもそうちゃんパパ?子供のとき?」

「となりの女の人はだあれ?」
「しらな~い!」


その声に驚いてリビングに飛び込んだら、やっぱり総の離婚報道!しかも画面の上には・・・

『西門総二郎氏、長すぎる婚約時代とスピード離婚の真相』

子供達には読めないから良かったけど、画面上には総の学生時代や紫さんとのツーショットが!!
慌ててチャンネルを変えたらすごく怒っていたけど、紫さんのことは「親戚のお姉さん」にして誤魔化し、総はテレビに出ることがキライだから言わないように!って説明した。
3歳だから「ふぅ~ん」で終わってくれるけど、私はこれ以来テレビが怖くなった。


スマホを開くと1日に何度か「西門流」の文字を見ることもあり、大騒ぎになってるんだろうと予想は出来た。
誰もが総の女性関係を疑っただろうに理由は奥さんの「茶道嫌い」みたいに言われてる・・・その報道の裏に隠された事実が沢山あって、複雑な想いも辛い過去もあるのにな・・・と胸が痛んだ。


離婚報道がされてからというもの、彼は毎日ドタバタしてここに来る事も出来ず、時間を見付けては電話を掛けてくれるだけで精一杯。本当は子供達とも会話して欲しかったけど、その電話も深夜ばかりで紫音も花音も夢の中・・・パパを忘れやしないかと心配だった。

最近は仁美さんの名前が出ることも少なくなって、美作家の人と1度も会わずに過ごしても平気なくらい双子も落ち着いていた。
たまに顔を見せる小夜さんや美作さん、夢子おば様にも「いらっしゃーい!」なんて言葉を出して、逆におば様が淋しそう・・・それでも時々ご自分で焼いたケーキを差し入れてくれて、その時はみんなで美味しくいただいた。

英会話の先生はあれからも来てくれて、お屋敷のリビングで教えてもらっている。
花音のピアノも続けていて、それはお屋敷のピアノを使っている。それでも終わったら離れに「ただいまぁ!」と帰ってくるようになっていた。



そして明日の日曜日・・・本当なら総の披露宴を行うはずだった日。
だからそれが中止になれば他には何も予定が組まれていなくて、時間が出来たと連絡が入った。


『つくし、ひと部屋空けとけって言ったの、準備出来てるか?』
「うん、出来てるよ。1番小さいけど庭が見える部屋。美作さんに話したらそこを畳にしてくれたの」

『お!流石だな。じゃあ明日茶道具を持って行くわ。で、少しずつ稽古を始めるから』
「・・・・・・はーい」

『どうして返事が遅いんだよ。まさか、思い出してねぇのか?』
「あはは!双子がいたらなかなかねぇ!判るでしょ?」


なんて言ってみたけど、やっぱり1人だとやる気が起きない・・・そんな事は絶対に言えないけど、総が居ないと緊張感が出ない。何度か教本を読み返したけど、頭で考えるのと実際に点てるのは違うから・・・つまりは延び延びになっていた。
それを感じ取ったのか「やっぱり俺がいないと!」って嬉しそうに怒っていた。



**



朝になって双子を起こし「今日はそうちゃんパパが来るわよ」って言うと大喜びしてる。
それを見たら忘れてなかったと一安心、でも「お茶の道具を運んでくるのよ」って言うと、花音の動きはピタッと止まった。


「お茶のどうぐ?ここでお茶、するの?」
「ん?私が教えてもらうの。昔はそうちゃんパパと一緒にやっていたんだけど暫く点ててなかったからね。ママももう1回ちゃんとお稽古しなさいって言われたのよ」

「・・・かのんも?」
「ふふっ、花音はまだしなくていいよ。でも、いつかそうちゃんパパのお茶を飲んであげてね」

「ぼくは見ててもいいの?」
「あら、紫音は見たいの?うん、見るのはいいと思うけど、お茶室には作法があるの。それを守れるならそうちゃんパパは許してくれるわよ」


ここでも紫音は茶道に反応する・・・日光に行ったのはもう1ヶ月前なのに、あの時の事を覚えてるんだろうか。
急に真面目な顔で私の顔を見上げた紫音に戸惑ったけど、もしも興味を持ったなら・・・それは良い事だと受け止めることにした。

この子の中の「西門の血」がそうさせるのだと。



そして午前中の早い時間に1台の車がこの離れの前までやってきた。
中から降りてきたのは総だけで、それを見た美作さんもお屋敷から出てきてくれた。2人のパパが久しぶりに並んだから双子は大喜びで、読んでいた絵本を放り投げ、ドタバタと部屋の中から飛び出していった。


「どれだ?この後ろの荷物全部か?!」
「あぁ、これでも最小限だ。そのデカい箱、釜が入ってるから気を付けろよ?」

「そうちゃんパパだぁ!おはよう~!」
「あきらパパもきたぁ!うわぁ~い!」

「よっ!元気にしてたか?お前ら、ママを困らせてないか?」
「2人とも危ないから離れてろよ?触るんじゃないぞ、重たいから!」

「うわっ、すごい荷物!どれ運んだらいいの?」
「つくしは助手席の着物を中に入れろ」


着物・・・?

総に言われて助手席を見たらそこには畳紙たとうしに入れられた着物が何枚かあった。その畳紙にある西門の紋・・・それを見るとドキッとした。
もしかしたら紫さんの着物だろうか・・・彼女が居なくなったから私に?それには少し戸惑いがあった。
だから手を出せずにジッと見つめていると「お袋のお下がりだ」って耳元で総が呟いた。


「い、家元夫人の?黙って持ち出したの?」
「そんな訳ねぇだろ!ちゃんとお袋に頼んで出してもらったんだ。あいつのものだと思ったのかもしれねぇけど、そんなのこの俺がすると思うか?」

「家元夫人、嫌な顔しなかった?」
「別に?逆に悩みながら探してたぞ?どんなものがいいのかしら~なんてブツブツ言いながらな」

「・・・そうなの?」


私にはあの日の厳しい顔しか思い出せない。
病院に来てくれていたって聞いてるけど私は意識が戻ってなかったし。

あれだけ私に頭を下げて東京から出て行ってくれと嘘をついた人・・・正直、まだ心の何処かで許せないと思う気持ちと、仲良く出来たらいいなって思う気持ちとがごちゃ混ぜだった。


「ママァ!重たいんならぼくが持つよ?」
「かのんも持てるよ?どれどれ?」

「え?あぁ、大丈夫だけど・・・じゃあ、この袋をリビングに持って行ってもらおうかな?」
「「はーい!」」

「ありがとう!」、そう言って双子に着物の小物が入っている軽めの袋を手渡した。それを両手で抱えて笑いながら総の後をついて行く・・・私の小さな敵意はこの子達の笑顔で打ち消されるのかもしれない。
紫音と花音が家元達と私を繋いでくれるだろう・・・そんな希望の方が大きくなっていった。



1番小さな部屋に茶道具を入れる棚が置かれ、そこにいくつかの茶碗が並べられた。
あの日、日光で使われた雪兎と鶯の茶碗もある。
それに茶筅や茶杓や建水・・・本当にここでお稽古するんだなって眺めていたら、美作さんに「今日の昼は久しぶりに全員で食おうぜ!」なんて声が掛かった。

それにはまた双子が大喜びで、美作さんと手を繋いでテラスの方に向かって行った。
私はその姿を離れのドアを閉めながら見ていて、総は「あきらが嬉しそうじゃん!」って拗ねていた。


「・・・少しは落ち着いた?やっぱり大変?」

「まぁ、仕方ねぇよな。時間が無かったし急だったから・・・でも、もう親父も何も言わなくなったし宝生家からも文句は出なかったし、一段落ついたと思う。暫く春の茶会が続くからまた五月蠅く言う後援会の連中も居るだろうが、それも落ち着いたらつくしの出番だな」

「・・・うん、それまでにお稽古、宜しくお願いします」

「午後は久しぶりにお前に点ててもらおうか。それでレベル判断だな!」
「・・・うそっ!!」


そんな意地悪な言葉を言いながら差し出された手・・・久しぶりに総の温かさを感じながら私たちもお屋敷に向かった。





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2019/08/04 (Sun) 12:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!

あっはは!『長すぎる婚約&スピード離婚』我ながら気に入ってます♥
離婚報道の父を見て「カッコいい~!」、これは3歳ゆえですね(笑)

何気に茶道具見て固まる花音も好き♥
ここでの稽古には茶菓子出ないと思うのよね・・・残念!


ほんと、美作家の人達を結構書いたわ~(笑)途中であきつくかと思ったし。
夢子さんの日、作ってあげようかしらね!


あっ!そうそう、司君と類君は明明後日ぐらいでした(笑)
それまでお待ち下さいませ♥

2019/08/04 (Sun) 20:33 | EDIT | REPLY |   

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