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明奈さんに投げ捨てられたスマホを探すのも勿論だけど、花沢類が捕まってるんじゃないかと思って急いで経済学部の校舎に向かった。
ただ西棟だって沢山の講義室があるから何処の入り口の事を言ってるのかは判らない。

色んな入り口を見て回ってたら、明奈さんだと思われる派手な服を見掛けて慌てて傍の植木に抱きついた!


「居た!・・・あれ?でも一緒に居る男の人って・・・」

明奈さんの向こう側に居る見目麗しい王子様・・・何故か美作さんが明奈さんに捕まっていた。
肩で息をしながらその光景を見てたけど、どう見てもこれは間違って美作さんに抱きついたとしか思えない。少し後ろで寄り添ってビビってる取り巻き1号と2号も居るし。

そして辺りを見回したけど花沢類の姿は何処にもない。それならいいか、って事で再びさっきの場所に戻った。


お昼ご飯も食べず、痛む足を引き摺ってフェンスを乗り越え、植え込みに入ってスマホを探した。
でもピンク色は何処にも見えず私の腕は傷だらけ・・・それでも午後の講義が始まる寸前まで探して、講義が全部終わってからもその場所を探した。

でも何処にもない・・・私の宝物が何処にもない。

流れる汗を何度も拭きながら、色んな人にヒソヒソ言われながら、それでも必死に探したのにスマホはとうとう出てこなかった。


時間は多分5時を回ってる。
私は初めてバイトをサボったんだ・・・それを考えたら情けなくなって、植え込みの中に座り込んでしまった。


烏がカァカァ鳴く中で、私は声を出さずに泣いていた。




***************************




おかしい・・・5時を過ぎたのに牧野が来ない。
こんな事、3月にあいつがこの屋敷で働くようになってから初めて・・・それに今日の昼の事もある。
何故か胸騒ぎがして、ノックが鳴らないドアを見つめていた。


コンコンコン!

その時にノック音がしたから時計を見たら5時40分。
牧野にしてはすごい遅刻じゃん、って怒鳴ろうかと思ったら入って来たのは加代で、彼女も不思議そうな顔をしていた。


「加代・・・どうかした?」
「牧野さんと連絡が取れないのですが、類様何かご存じありませんか?」

「牧野?いや・・・」
「そうですか。こんな事は初めてなので心配なのですが、電話しても電源が入ってないと言うので・・・」

「えっ、今でも?」
「あら、類様もお掛けになったのですか?」

「・・・・・・昼にね、気になることがあったから」


どうしたんだろう・・・やっぱり午前中、あの電話を掛けた時に何か起きてたんだろうか?
それにサークルにも入ってないならこの時間には絶対に帰ってくるはず。牧野の性格だと黙ってサボるなんて考えにくいし、事情があるならちゃんと連絡してくるはずなのに・・・それが無いってどういう事だ?

いや、連絡しないんじゃなくて出来ないとか・・・誰かに捕まってる?監禁状態で電話したくても出来ない・・・とか?


窓から外を見たけど、よく考えたらあいつは裏口からしか入らない。
それなら裏口に行ってみようとドアを開けたら、牧野が足音もさせずに階段を上がってくるのが見えた!

でも顔色が真っ青で服が凄く汚れてる。
いつも下なんか見ない目が足元だけ見つめてて、横の壁にぶつかりながら上がって来る・・・その姿に驚いた。


「牧野・・・?あんた、どうしたの?!」
「まぁ!牧野さん?!何があったの!」

「・・・ごめんなさい・・・あの、今日のバイト・・・出来そうにないのでお休みさせて下さい・・・申し訳ありません」

「具合が悪いの?それなら電話をして欲しかったわ。兎に角休みなさい」
「・・・はい。ホントにごめんなさい・・・類様、失礼します・・・」

「・・・・・・・・・」


失礼します、って言葉を出す時も俺の顔なんて見やしない。
そのまま加代に支えられて自分の部屋に入り、暫くしたら加代だけが出てきた。
今度は心配そうな顔で俺を部屋に押し入れ、ドアを閉めると牧野の部屋を気にして廊下側に目をやった。そして今の間に少しだけ聞いた話を教えてくれた。


「どうやらスマホを無くしたらしいのです。それを探していて遅くなったと言うんですけど・・・」
「スマホを無くした?何処で・・・大学で?」

「えぇ、でもはっきり言わないのですが腕に内出血もありますし手なんか傷だらけですの。何かあったんじゃないでしょうか?」
「内出血に傷?」

「随分ショックを受けてるようですから暫くゆっくりさせましょう。類様、別の者にベッドメイキングさせますので・・・」
「いや、それなら誰も寄越さなくていい」

「・・・そうですか。ではまた夜にでも様子を見に来ますわ」


加代が出て行ってから暫くして、名前も知らない使用人が夕食の準備が出来たと知らせに来た。
いつもなら牧野がギャアギャア言いながらついてくるのに今日はそれも無くて1人でダイニングに向かう・・・何だか後ろが寒い気がしてならなかった。

それに夕食が並んでるけど真横から線審のように睨む視線がない。
それだけで食欲が失せて殆ど食べられなかった。ナイフとフォークをテーブルに戻しても、「残してどうするんですか!」って言う声が聞こえないから何かが物足りない。

無言で席を立ち、加代の前を素通りして自分の部屋に戻った。



部屋に戻っても、いつもなら最後の掃除をしに来るはずの牧野が居ない。
出来上がったクリーニングを持って来たのはまた別の使用人で、俺が何も言わなかったらオロオロしながらクローゼットの中にそいつを入れて出ていった。
「何かお困りの事は御座いませんか」なんて言ってきた使用人も無視したら黙って出ていった。


お困りの事・・・?

いつもの声が聞けないこと・・・聞いたら腹も立つんだけど、それでも困ってるのはその声を今日は聞けていない事。


「・・・ダメだ、イライラする!」

あれだけ鬱陶しいから来なくていいって思っていたのに、
掃除しながら破壊するから使用人には向いてないって思うのに、
俺の嫌いな色ばっかり持ち込んで人の部屋を変えてしまうから嫌なのに・・・!

それでも何故か顔を見ないとイライラするから牧野の部屋に向かった。



コンコンコン・・・コンコンコン・・・・・コンコンコン!!


「牧野、開けな!」

鍵は掛かってないだろうけど仮にも女性の部屋、黙って入る訳にはいかないと思った。
だから開けるようにと叫んだら、ガチャ・・と弱々しくドアが開いた。

そこから出してきた顔は目も鼻も真っ赤で、目元を拭った指先は加代の言った通り傷だらけだった。そして開けてはくれたけど言葉は無し・・・唇は固く結ばれて、視線は俺の腹辺り。ここでも顔をあげなかった。


「何があった?午前中の電話、あれは何だったの?」
「・・・・・・・・・あれは・・・」

「その後のメッセージも既読無視でしょ?どう言う事?その時にはスマホ持ってたんだろ?」
「・・・・・・えっと」

「部屋に入っていい?それとも俺の所に来る?」
「・・・どうぞ、入っていいよ」


生まれて初めて入る女性の部屋が使用人の牧野の部屋。
こんな状況なのに凄くドキドキしながら部屋に入り、ドアを閉めた。

ここは以前も俺付きの使用人が使っていた部屋・・・。
俺の部屋に比べると随分狭いけど、机や小さなソファーもあってタンスも北欧調のアンティークもの。色合いもベージュとピンク系で纏められた可愛い部屋だった。
そして窓際にはやっぱり子宝弁慶草があって、俺にくれたものと同じプリザーブドフラワーの箱詰めが飾ってあった。


ドキッとさせるのはピンク色の布団が置かれた小さなベッド。
これに牧野が毎日寝てるんだと思ったら、思わず視界から外した。見ちゃいけないもの・・・そんな気がしたから。



「じゃあ続きね。牧野、今日何があったの?」
「・・・・・・・・・うっ」

「・・・えっ?」
「・・・・・・・・・うぐっ・・・ふぇ・・・」

「ど、どうした?落ち着け、牧野!一体何が・・・」
「うわあああああぁーーん!!」


部屋に入って2人きりになったら急に俺にしがみついて泣き出した!
しかも俺の腕ごと抱え込んで抱きついてるから身動きが取れない・・・っ!!


こんな時は男の方が抱き締めてあげなきゃいけないと思うのに、俺が抱き締められて・・・大泣きされた。





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2019/08/09 (Fri) 07:05 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/09 (Fri) 09:59 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/09 (Fri) 12:00 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

見付からなかったんです・・・急いでるときとか慌ててるときには見付からないって事、ありますよね💦
スマホって、縦になってたら意外と判らないんですよ(笑)

ペタッと寝てたら分かり易いですけどね~。


あっはは!お馬鹿さんなんです~💦
その場の感情が抑えられないって言うか、後先考えないって言うか。

ま、この事件が終わった後はね・・・類君が片付けてくれるでしょう(きっと)

2019/08/09 (Fri) 12:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様、こんにちは。

そうですね、ここは類君に助けて頂きましょう。
その前に腕を離してあげて・・・(笑)

どんだけ激しく抱きついているんでしょうか(笑)
それだけショックが酷いという事ですね。

バイトも出来ないほどだから・・・と、いいながらもComedyなので深刻にはなりません。
ちゃっちゃと片付けて頂きましょう~!

まだまだこんな感じです♡焦らないで下さいね。

2019/08/09 (Fri) 13:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

宝物だったのよ~、きっと。

1番初めのものって大事に取っておきたい人って居ますよね。
うちの子もファーストトウシューズ、ダメになってからも大事に持ってたけど、あまりにも臭くなったから私が捨てたわ(笑)

めっちゃ怒られたなぁ・・・。
今となっちゃ取っておけないから時々纏めて処分するけど、なかなか勇気が要るみたいです。

私はね・・・割と呆気なく捨てちゃう方だからその気持ちは判らない(笑)
でも1番初めの携帯電話は10年ぐらい大事に飾ってました。

今じゃ簡単に下取りに出すけどね💦

2019/08/09 (Fri) 13:46 | EDIT | REPLY |   

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