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ゴールデンウィーク中、初めての家族旅行をした。
とは言ってもまだ日本じゃウロウロ出来ないからハワイにある美作の別荘・・・そこを借りて3日間だけの小旅行だ。

久しぶりに海で遊んでバーベキューをして、寝る時は同じ部屋で4人が並んで寝た。飯は現地の人間に頼んでつくしにも家事の休みをやった。
それだけで嬉しいなんて言いながら、飯の時間になると落ち着かなくてやっぱり手伝ってるのには呆れた。


「そうちゃんパパ、あのね・・・おねがいがあるの」
「・・・あのね、どうしてもたのみたいの」

「なんだ?そんな言い方したら断れねぇじゃん。言ってみな?」

紫音と花音が俺に近づいて「耳を貸して」って仕草をするから3人で小さな輪になった。
つくしに聞かれたくねぇのかな・・・って思ったら、仁美さんにお土産を買いたいって話だった。それをつくしが聞いたら嫌がると子供ながらに気を遣ったのか・・・?

それでも双子の優しさを無視する訳にはいかないから、つくしには「買い物に行って来る」と伝えて3人で出掛けた。


「しおん、これは?ひとみママの好きな色だよ?」
「かのん、これもかわいいよ?」

「いや、これが・・・」「でもさ、あれも・・・」「これもいいよね?」「あっ!あれは?」・・・って全然決められねぇ。まるで女の買い物か!ってぐらいチビ2人が棚を覗き込んで悩みに悩んだ。

「何でもいいから気に入ったの、持って来い!」
「「もうちょっとまって!」」


最終的に選んだものがパイナップルの形をした黄色いスポンジとカピスシェルの小物入れ。
スポンジ?って思ったがそこは3歳児の選ぶものだからきっと仁美さんは笑ってくれるんだろう。それにアロハシャツを着たクマの縫いぐるみ2つだった。
水色のシャツが紫音でピンク色のシャツが花音・・・そう言って嬉しそうに包んでもらっていた。

あきらにはペア2組のイルカの縫いぐるみ。
デカいのがあきらと仁美さん、小さいのが自分達・・・あきらが切なくなるんじゃねぇかって苦笑いした。

美作家には大量な菓子、おばさんと叔父さんにはお揃いのアロハシャツ、絵夢たちには色違いのハワイアンドレス、小夜にはハワイアンキルトのポーチ。
それだけ買い込んで2人とも満足したのか超ご機嫌。全部自分達が持つと言い張るが抱えきれるはずもなく、何回も落とすのを俺が拾いながらコテージまで戻った。


つくしには俺からハワイアンジュエリーのピアス。
ここでの最終日、ささやかな旅の記念にプレゼントした。


「ありがとう・・・家事まで休ませてもらったのにお土産まで」
「こんなもんだけど記念ぐらいにはなるだろ?それより紫音たちがさ・・・」

子供達が買った土産の話をしたらつくしもクスクス笑っていた。
「仁美さん、きっと喜ぶね」、そう言って目を細めていた。


日本に戻ったら早速美作家に土産を渡しに行ったが、土産話の方が多くてなかなか離れには戻って来ない。仕方なく迎えに行ったら、喋り疲れてリビングで寝ていたのには笑った。




そんな休みも終わり、つくしの稽古も本格的になってきた。
随分勘は戻ったようで、所作も美しく、手順も間違わなくなった。

後は何度も繰り返してその場の空気を感じること・・・その日、その時の自然を感じて茶に心を込めること。


「よし、今日はここまで。もう少し肩の力を抜かないとな。見てる方に緊張が伝わる仕草が時々あるから」
「はい、気を付けます。ありがとうございました」

「・・・ありがとうございました!」


小さな弟子が参加するようになったのも最近の事。
茶も点てないし見学だけだが、初めの挨拶と終わりの挨拶は作法に従ったものをさせた。

それでもつくしの所作を見る目は真剣・・・俺はすげぇ嬉しかった。



西門も春の騒動が落ち着いてきて茶会や茶事も例年通り行われるようになった。

あの後少しだけ体調を崩した親父も最近になって元に戻り、精神的ショックからも立ち直ったようだった。尖っていた部分がなくなり少し老け込んだような気もする・・・それはお袋も同じだった。
特にお袋は子供達の事を知っているから、時々親父の居ない時に俺に尋ねてくる。

「あの子達は元気なの?」・・・それには「心配するな」としか答えなかった。


つい最近、鷹司会長と話した時、この自分の感情を打ち明けた。
家元夫人には全部を話したが許せない部分があって蟠りが残っていると・・・そうしたら会長は俺に説教してくれた。


『若宗匠のお気持ちは判ります。でも考えてみましょう。
過去に執着する事に何の得があるでしょう?恨みは自分を苦しめます。それは紫様を見ていたら判ったでしょう?
許せないと思う気持ちに時効を作ってみませんか?』

『気持ちに・・・時効ですか?』

『そうです。許せないと想い続けるのは相手を警戒し、見張っているのと同じです。意識し続けて精神が疲れてしまいます。
そして自分が辛いだけです。それはきっと茶にも現れるのですよ・・・表情がキツくなり不自然になりますからね。
時効を付けて忘れてご覧なさい。きっと心が軽くなりますよ』


まだそれが上手く出来ない俺は半人前って事なのかもな・・・。
ただ、会長の言葉は胸の片隅に置いた。




また日が経ち、色々な意味で忌々しい梅雨がやってきた。

岩代の野点も紫の事件も梅雨の紫陽花の時期。
今年は総てが終わって庭の紫陽花の青さがやけに綺麗に見えた・・・が、やはり色んな事を思い出すから気分は悪かった。

小雨の降る中、それを廊下から眺めているとお袋が近づいてきた。


「総二郎さん・・・少しいいかしら?」
「それはどちらでしょう?仕事・・・それとも?」

「お仕事の事ではないわ。だから改まる必要はないのだけど・・・ちょっとこちらに」

周りを気にしながらそんな言い方をするから気になって、お袋の後をついて行った。
向かったのは着物類を保管してある二間続きの部屋だったが、その奥の方に入ると静かに襖を閉められた。


「こんな所に連れて来てなんだ?別に夏の着物なんて要らねぇけど?」
「総二郎さんにじゃありません。これを・・・あの子達にどうかと思って。夏だから浴衣なの。あなたの子供の時のものなのよ?だから女の子用のものだけ準備したの」

「俺の浴衣?」
「・・・えぇ、あの時見た感じだとこれが着られるんじゃないかと思ったんだけどね」


何となく見覚えが有るような無いような子供用の浴衣。
注染本染めの江戸模様で渋いブルーの小さな浴衣をお袋は懐かしそうに手で撫でていた。その横には新調された女の子用の浴衣があって、それは白地に朝顔の可愛らしいものだ。

誰かが来てはいけないと思ったのか、それを俺に見せたらすぐに畳紙に入れて見えなくしたが、2つ揃えて俺の前に差し出して辛そうな笑顔を見せた。


「本当は着たところを見たいのだけど牧野さんのお気持ちを考えたらねぇ・・・。それでもあなたに子供が出来たら受け継いでもらおうと思って大事にとっておいたものなの。着物だと気を遣わせるから浴衣ならと思うんだけど・・・ダメかしら」

「・・・まだ親父に双子の事は話してないのか?」

「話してないわ。総二郎さんの準備が出来たら自分で・・・そう思うから私からお話ししないって決めたのよ」

「・・・判った、つくしに渡しておく。着る時があるかどうかなんて判んねぇけどな」


お袋は黙って頷くと先に部屋を出ていった。
俺はもう1度畳紙の紐を解いて紫音にと言われた浴衣を眺めた。



思い出した・・・この浴衣は祥一郎と孝三郎と色違いで作ってもらったヤツだ。
初めて夏祭りってやつに行っていいって許可が出た時、誰がお袋に着せてもらうかって3人でジャンケンして・・・俺がお袋に着せてもらったっけ。祥一郎が志乃さん、孝三郎が別の使用人だったな。


『はい。総ちゃん、綺麗に出来たわよ』・・・そう言って背中を撫でられた記憶がある。


・・・数少ないお袋との思い出、その時の浴衣だ。



**



「うわぁ、浴衣にしては綺麗ねぇ!それに流石だわ・・・手触りが違う!子供用なのに凄いなぁ・・・」
「・・・・・・・・・」

「どうしたの?何考えてるの?」


この浴衣をつくしの所に持って来て、リビングで両方広げて見せてやった。
つくしはあれだけ酷い目に遭わされたのに嫌がりもせず、この浴衣を手に持って喜んでる・・・それを見ていると意地を張るのは止めなきゃいけねぇな、と素直に感じた。


時効・・・悔しいけどそうすればお互いに穏やかになるのかもしれない。


「紫音、花音!見てごらん?綺麗な浴衣だよ~!」
「ゆかたぁ?」
「いつ着るの?おちゃのとき?」

「ううん、これはお茶の時じゃないわ。夏祭りとか花火大会とかで着るの。夏になったら着ようね~」
「「うん!」」


つくしが紫音に俺の浴衣を掛けてやった・・・その姿が遠い日の自分と重なった。


「つくし、もう少ししたら西門に行くぞ。しっかり稽古しておけよ」
「・・・は?」





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Comments 4

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2019/08/14 (Wed) 12:42 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/14 (Wed) 20:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

紫音と花音、ここでも可愛いでしょ♡
パイナップルのスポンジって本当にお土産ランキング上位だったのよ(笑)

仁美さんもだけど、あきらも泣くよね~💦
私、本当にあきらには申し訳ない事ばっかり書いてるわ・・・マジ反省する。

好きなのになぁ、あきら♡


で、私もなかなか許せないかも(笑)
1人ほどどーしても、どーしても好きになれない人が居て、その人の事を考えて鬱になったことがあるんですよ。
何をしてても頭に浮かんでくるの。
その時にお坊さんの書いた本を買って読んだりしてね(笑)

それに書いてあったんですよ。だからって好きにはなれないけど、考えなくなりました。


最近はね、その人もどうしてるのかなって思ったりするから、会っても大丈夫なのかも。

総ちゃんも両親と仲良くはならなくても、許し合えるかなって思います。
ま、そういう時にも活躍するのはきっと双子なのよ(笑)

再会までもう少しあるんで待ってて下さいね!

2019/08/14 (Wed) 22:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

はい!可愛いでしょうね~!

読者さんの反感買いまくった家元と家元夫人ですけどね(笑)
まぁ、孫は可愛いでしょうから抱かせてあげたいと・・・思いますが如何でしょう?(笑)

その前に色々あるので暫くお待ち下さいね!

再会までの間も紫音と花音は頑張ってくれます♡


あっはは!!
私はその前に人混みが苦手です💦人に酔っちゃうのであんまり大きなお祭りには行きません。
神社の小さな祭りとか好きです♡

絶対に買うのはイカ焼きと焼きトウモロコシ~!!

2019/08/14 (Wed) 22:16 | EDIT | REPLY |   

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