FC2ブログ

plumeria

plumeria

「判った!判ったから兎に角俺を離してっ!」
「うわああああぁーん!!」

「牧野、話を聞くから泣くな!それ以上泣くと顔が腫れるよ!」
「・・・・・・くすん」


泣いてる女性に掛けるとは思えない言葉・・・目が腫れるって言おうかと思ったら顔になってしまった。でも、牧野はそんな事に気が付きもせず、言われた通りに手を外したから見ないようにしていたベッドに座らせた。
俺はその前の床に座り込んで牧野を見上げる感じ・・・こうしないと俯いてばかりで表情が判らないから。

大泣きしたせいで目も鼻も真っ赤になってる牧野は、俺に向かって無言で右側を指さした。そこにあったのはティッシュペーパーの箱・・・あぁ、俺に取れって言う事ね?と、何故か使用人に指図されてその箱を取った。

それを手渡したら「チーン!」と鼻をかんで「はぁ・・・」ってため息。
そしてやっと恥ずかしそうに俺の目を見た。


「落ち着いた?」
「・・・うん」

「何があった?えっと・・・先ずは電話の事から教えてくれる?」
「・・・明奈さんが花沢類にわざとぶつかって、その時の写真をネットにあげて、恋人だって噂をもう1回流すって・・・」

「・・・は?なにそれ?」
「よく判らないけどそう言ったの。わざとぶつかるんだけど、抱き合うみたいにするから写真を撮れって友達に命令してたの。それを偶然聞いちゃったから午前中の最後の講義が終わったあと、校舎を出る時には注意してって言おうと思って。でもそんな長い文章、メッセージで打てなかったから・・・」


彼女、あきらにぶつかってたみたいだけど?
それで何か様子がおかしかったんだ・・・・・・回避して良かった。

それにしても仙道明奈・・・あれだけ言ったのに懲りてなかったんだ。
総二郎の睨み方じゃ足りなかったって?いや、結構恐ろしかったけど彼女の方が上手だったって事か・・・。

でもやろうとしたことは大間違い。肝心の俺の事はよく判ってない。
あきらだったら蹌踉けたフリして飛び込んで来た女性でも、両手で抱き留めて優しい言葉の1つも掛けるだろうけど、俺だったら瞬間避けて触れないようにする・・・と思う。

そういう時だけ身体がすごく良く反応する・・・自分が気になったものじゃないとこの手、動かないから。


「でもどうして途中で切ったの?誰かが近くに居た?」
「・・・・・・私が花沢類に電話してるのを明奈さんに見付かったの」

「そんなに大声で話したの?」
「よく判んない。夢中だったから・・・」

「まさか、その時に取り上げられた?」
「・・・うん。花沢類の『今日ならいつもと同じ時間に帰るけど』ってのは明奈さんが聞いたの・・・」

「えっ?!」
「うわあああぁーんっ!」


その時の状況を思い出して再び牧野は泣き出したけど「兎に角説明してから泣いて!」と、また優しくない言葉を掛けてしまった。最初から薄い化粧なんてとっくになくなってるから、まるで子供が泣いてるみたい・・・涙なのか鼻水なのか判んなくなってるから、ここでもティッシュペーパーを手渡して話の続きを聞いた。


俺のそのひと言で仙道明奈が怒りだし、牧野を誰も居ない個室に連れて行って問い質した。
でもここで働いてる事を言えない牧野はひたすらだんまりを決め込んだ・・・でも運悪くまた俺がメッセージを打ち込んで、それを明奈が見たと・・・。

『今日ならいつもと同じ時間に帰るけど』『・・・さっきの電話なに?今日は遅刻してないけど?』・・・そりゃ誤解するよな。甘い会話とは思えないけど、恋人の行動チェックと捉えようと思えば捉えられる。
俺達は恋人じゃなくて主従関係・・・・・・悔しいけど正確言えばそっちが正しい。


悔しい?・・・あれ?俺今、悔しいって思った?



「牧野、スマホは今何処にある?」

「ぐすっ・・・明奈さんがその教室の窓から投げ捨てたの。落ちたところは校庭近くの植え込みだと思うんだけど、投げられた時には床に座り込んでたから見てなくて、どの辺りに落ちたのか・・・」

「それで植え込みの中に入って探してそんなに手を傷をつけたってこと?」

「うん・・・結構広いし植木の数も多いし雑草もあるし・・・斜面だから自分も滑っちゃってね・・・でも見付けられなくて。初めて買ったスマホなのに・・・気に入ってて可愛くて、まだ・・・まだ1ヶ月しか・・・うぅ~~~っ!!」


「・・・・・・それで帰れなかったの?」
「だって・・・だって花沢類の電話が登録してあるから・・・絶対に探さないといけないと思って。あれがないと花沢類と電話も出来ないしメッセージも・・・っ」


また両手で顔を覆って大泣き・・・。
近くで見たらホントに小さな傷が沢山手に付いていた。
少し視線を落として牧野の膝小僧を見るとジーンズにまだ泥汚れが付いてる。その下の足首にも少し血が滲んでるような傷があった。

特待生には講義の無断欠席は命取り。
それも教授に理由を言えず、叱られてレポート提出を言われたらしい。


「レポートは頑張れるからいいんだけど、明奈さんの方が怖くて・・・。今度同じ事したら許さないって、今度はスマホじゃなくて私に攻撃するって・・・」
「そんな事も言われたんだ」

「うん。でもそれもやられたらやり返すから気にしないの・・・でも、あのスマホは宝物だから・・・」
「・・・やり返すんだ。うん、あんたらしいね。じゃ、行こうか」

「・・・は?何処に?」




**************************




夜の9時、花沢類の車で英徳大学に来ていた。

この時間でもあちこちの講義室に電気が点いてる。
花沢類に聞いたら理系の学生達が研究棟で実験していたり、泊まり込みの学生も居るって。誰かに見られたらヤバいのに、彼は気にもせず私の横を並んで歩いていた。
「勉強家しかこの時間には居ないから、外なんて見やしないよ」・・・確かにそうかもしれないけど。


向かったのは昼間私がスマホを探していた通路の植え込み付近・・・ここで投げ捨てられた教室を聞かれた。

「あの3階の窓からなの。でも落ちた場所、見てないから・・・」
「どの窓?」

「あの出っ張りのある横の窓。だからこの辺りじゃないかと思ったんだけど」
「女性の、しかも筋力のない人間なら遠くに飛ばせないからね。もう少し手前かも。それかこの木に当たって跳ねたかもね」


一応ここでも彼のスマホで電話を掛けてもらったけど私のスマホは鳴らなかった。
それはどういう事なのか・・・1番考えたくないことだけど、花沢類もあえて言葉にはしなかった。


彼はひょいっとフェンスを乗り越えて植え込みの中に入り、フラッシュライトって物でその間を掻き分けて探してくれた。スマホカバーをまだ付けてなかった私のスマホなら光って分かり易いんだろうか。
私もフェンスをよじ登って中に入ろうとしたら「来なくていい!」って止められた。

「でも・・・でも私のスマホだから・・・」
「それ以上傷を付けたらダメだろ?一応女の子なんだから」


一応?・・・いや、何処からどう見ても女の子ですが?って思ったけど言葉はグッと飲み込んだ。

私が何時間掛けても見付けられなかったんだもの。
そんなに簡単には見付からないと思うんだけど・・・ってしゃがみ込んで彼が照らす灯りを見ていたら「あった!」って声が!


「はっ?!見付かったの?!」
「・・・ん、これだろ?」

「あーっ!私のスマホ!昼間あれだけ私が探した時には無かったのに、どうして花沢類だと出てくるの?」
「さぁ?どうしてかは知らないけどさ」

彼は手に傷1つ付けずに探し出してくれて、ピンクのスマホは私の手元に戻って来た。


戻って来たけど・・・


「・・・仕方ないよ。3階から落とされたんだし、そいつが転がっていた所には敷石があったからそこに当たったんだと思う。その敷石の間に挟まってた」
「・・・・・・・・・」

「だから何度掛けても繋がらなかったんだ。牧野、明日携帯ショップに行こう。スマホの保障、入ってるだろ?」
「・・・・・・・・・うん」

「そうしたら同じような物が手元に来るから。そしたらもう1回登録したらいいじゃん」
「・・・・・・・・・でも初めて買った物だから。私の宝物だったから・・・ふぇっ・・・」


戻って来たスマホの画面は滅茶苦茶に割れてて真っ黒だった。
電源も入らない・・・花沢類が沢山設定してくれたのに、全部がダメになってしまった。

大事にしようと思ったのに・・・一目惚れして買ったのに。
長いこと夢だったのに、それがやっと自分のお金で買えたのに・・・!
それがあんな事で、誰かの手によって壊されるなんて思いもしなかった。

その割れたスマホを胸に抱えて、ポロポロ流れる涙を何度も手の甲で拭き、花沢類は黙ってそれを見ていた。


でも急に私の目の前が暗くなって、凄く優しい香りに包まれた。

見上げることも出来ないけど、これは花沢類の胸・・・?
そして彼の両腕が私の身体をフワッと包んでくれていた。


「泣くな」・・・そんな小さな声が聞こえた。





fruit-3304977__340.jpg
関連記事
Posted by

Comments 10

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/08/10 (Sat) 08:25 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/08/10 (Sat) 09:05 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/08/10 (Sat) 10:45 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/08/10 (Sat) 14:27 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

少しずつ、少しずつ想いが溢れてくるようになりましたが・・・すぐに恋に発展するかどうかはねぇ(笑)
この2人ですから、何回かこんな事件でも起きないと言葉にしないかもしれませんよ?

え?そんなに待てない?(笑)

暑いですねぇ~って言うか、まだ工事中です(笑)
でも塗装は終わって窓が開けられるようになりました!

完全に終わるのは月曜らしいのですが(祭日なのに)足場がなくなると今度は庭掃除が・・・💦
しかも終わった早々台風?(笑)

子供が帰って来る日が丁度台風接近日で心配です~!
やっぱり夏はキライだわ~💦

2019/08/10 (Sat) 18:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: ドキドキ

happy様、こんばんは!

コメントありがとうございます。
あら~♡楽しみにしていただけて嬉しいです~!

可愛いと言われれば「バンザーイ!」って感じです♡こちらこそ感謝です!
そう言っていただけると「頑張ろう!」ってなります。

とは言え、本当はLOVE度をあげて欲しいところですよね?(笑)
もう少しだけ遊んじゃいますけど、そのうち・・・・・・

むふふ・・・ってなると思います(多分・・・)


長編でもないので8月には終わりそうですが、最後までどうぞ宜しくお願い致します♡

2019/08/10 (Sat) 18:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様、こんばんは。

あはは!ホントですか?
そうなんだ・・・そりゃヤバいですね💦

私は自分が兄と仲良くないので、この状況はめっちゃ恋人なんですけどね💦

そうかぁ・・・実は他の方にも言われたのですよ(笑)


でも、そのうち本気出してLOVEに持って行くので、今はこのままでお許しください(笑)


類君も汗はかきますよ(笑)
トイレにだって行くと思います(笑)
匂いは・・・そうですね、考えないことにします💦あっはは!

2019/08/10 (Sat) 19:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは!

ホントにまりぽん様、優しいですよね(笑)
コメントに和みます、私(笑)

ふふふ、まだまだ恋とまでは行きませんが、気になる存在であることは間違いなし♡
鈍感すぎでのんびりしておりますが、いつかちゃんと言葉にして欲しいですね~!

今は小学生でもスマホの時代。
しかも新機種が出たら買い換えて当たり前みたいな人もいます。
そんな中、つくしみたいに旧型品でも初めて買った宝物を大事に思う気持ち・・・。

物が溢れる時代なので簡単に捨てる人もいますけど、我が娘もこうであって欲しいと言う母の希望でもあります(笑)


Comedyなので「泣くな」って抱き締めても何故か笑ってしまうでしょ?(笑)
さて、新しいスマホはどうなるのか?

2019/08/10 (Sat) 19:51 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/08/10 (Sat) 23:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

つくしちゃんの物ならたとえスマホでも匂ったのかな・・・ドーベルマン類!
でも探し物って夢中で探してるときには出てこないで、止めた途端見付けられません?(笑)

私だけかな・・・そういう事、良くある。

山のようにある衣装から1着だけ見付ける時に1日掛けたのに見付からなくて、次の日探したら5分で発見とか。
(片付けろよ)


あっはは!急にLOVE度がグィ~ンと上がったでしょ?(笑)
すぐに下がるけど💦

まぁ、こんな感じで引っ張ります(笑)

もうすぐ変わった人(?)が登場するよ!待っててね!

2019/08/11 (Sun) 14:22 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply