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plumeria

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帰りの車の中・・・実に気不味い。
牧野が何も喋らない。そして俺も喋らない・・・ってか喋れない。


どうして急にあんな事をしたんだろう。
自分でやっておきながらその途中の感情がよく思い出せない・・・気が付いたら抱き締めてたし。それに牧野も急に真っ赤な顔して大人しくなって、俺の服を掴んで震えたりして。

よく判らないけど、涙を見たくなかった・・・こっちまで苦しくなって堪らなく切なかった。
壊れたスマホは俺にしてみれば新しくしたらいいだけの事で、そんなものに愛着なんて持ったことが無い。でも牧野はそうじゃなくて、あのピンクのスマホじゃ無いとダメだったんだ。

そんな風に何かを大事に思った事なんてあったっけ。
大事なもの・・・無くしたくないもの・・・傍に置いておきたいもの・・・・・・あれ?なんで牧野の顔が浮かんだ?



屋敷に戻ったら裏口から入ると言った牧野を「もう暗いから」なんて変な理由で正面から入れると、そこに立っていたのは加代だった。
いつもより少しだけ怖い顔して、牧野はそれを見たらビクッとしていた。


「お帰りなさいませ、類様。こんな時間に牧野さんを連れてどちらまで?少し軽率な行動では御座いませんか?」

「・・・別にいいだろう」
「加代さん、類様は私が無くしたスマホを探して下さったんです!申し訳ありません、落とした私が悪いんです!」

「・・・牧野さん。あなたは類様の生活改善のお役目もあるのに、お勉強の時間を自分の事に使わせてどうするのです?あなただって勉強しなくてはいけないのでしょう?それに今日は具合が悪くて仕事だって休んだんですよ?
それなのにこんな時間に類様と出歩くなんて・・・そんな事では類様付きの使用人失格ですよ?」

「えっ・・・そんな・・・」
「加代、連れ出したのは俺だって言ってるだろ。それ以上言うな!それに両親にも報告無用!・・・牧野、部屋に戻れ」


牧野は俺のひと言で、加代に頭を下げると階段を駆け上がって行った。
加代はそれを目で追って、姿が見えなくなると「はぁ・・・」と小さく息を吐いた。


「類様、あまり牧野さんに近づきすぎると噂が広まりますわ。そうなると危険なのは牧野さんの方です。少しお考えになりませんと・・・その為に奥様だって大学内では花沢家の使用人であることを秘密にするように仰ったのですよ?」

「別に噂になっても構わないけど・・・」
「え?何ですって?」

「いや、何でもない。もうやすむから俺の部屋には来るな」


仙道明奈に対するイライラもあって加代に珍しく感情をぶつけた。
使用人失格・・・その言葉に凄く焦った。




***********************




「・・・ホントにもう駄目なの?ねぇ・・・もう目を開けない・・・じゃなかった電源入らないの?」

真っ暗な画面に向かって話し掛けたけど全然反応が無い。
当たり前か、と思うけど諦めきれなくて振ってみたりコンコンって叩いてみたけどやっぱり電源は入らなかった。

せっかく戻って来たのに、もうあの元気な姿を見ることが出来ない・・・それが悲しくて割れた画面を何度も摩っては涙が溢れた。


でも頭の中ではさっきの花沢類の腕の感触が蘇る・・・それを思い出したら急に顔が火照った。

泣くなって・・・そう言った時の花沢類が凄く優しかった。
今まで機嫌悪い顔しか見せなかったのに・・・1週間に1回ぐらい笑った顔が見れたらラッキー!ってぐらいで、どっちかって言うといつも怒られていたのに。

どうしてあの時は抱き締めてくれたんだろう・・・?



「・・・・・・・・・それより新しい携帯・・・どうしたらいいんだろ?」

ちょっとだけ甘い記憶に浸っていたけど急に戻った現実感。
さっきまで涙を流したスマホだったけど、今度は腕組みして真剣に悩んでいた。


持ってなかった時には気にならなかったのに、1度持てば離れられなくなる・・・まるで彼氏のようだと思いながら割れた画面を見ていたら、私の部屋をノックする音が聞こえた。
また加代さんかな・・・と、怖かったけど少しだけドアを開けたら立っていたのは・・・花沢類?


「・・・どうしたの?怒られるよ?」
「怒られないって。それより見付けたから」

「は?何を見付けたの?」
「前のヤツ。多分使えると思うから」

「・・・・・・は?」
「この際なんでもいいよね?部屋に来な」


出たわ・・・説明能力に著しく欠けた花沢類。
何のことだかさっぱり・・・仕方なく壊れたスマホを手に持ったまま彼の部屋に向かった。花沢類は入り口でドアを開けて待っていて、私を入れると廊下を確認してからドアを閉めた。

ドキドキドキ・・・その仕草、なんか気になるじゃないの・・・。


「おいで、牧野」
「・・・・・・え?あの、花沢類?」

「いいから持っておいで、スマホ」
「・・・あぁ!スマホか!」

「何だと思ったのさ」
「ははっ!ななな、何でもないっ!」


ただの「おいで」だったら私だと思うじゃないの💢!スマホなら最初から「持って」って付けてよ!

手に持っていたスマホを彼に渡したら、傍のローボードの引き出しから白いスマホを取り出した。
そしてよく判らないけどサイドにある小さな部分からチップみたいなのを出して確認・・・「うん、同じだ」って言うと私のスマホから取り出したチップをその白いスマホに移した。
そして充電器を差し込んで電源を入れたら画面が光った!


「え?それ・・・って?」
「あんた、旧型品買ったでしょ?これは俺が前に使ってたヤツ。まだ処分せずに持ってたから電源が入るかさっき試したんだ。で、SIMカードが同じなら使えるだろうと思って初期化してた」

「・・・ごめん、何のことだかさっぱり・・・」
「あっはは!だろうね!」


えっ!笑った・・・花沢類が声出して笑った?!
「くすっ」じゃなくて「あっはは!」って笑えるんだ?!それに驚いてスマホじゃなくて花沢類の顔を見てしまった。
そうしたら急に素に戻って「なんだよ」・・・って。

「もともとスマホの情報はこのSIMカードに入ってるからこれで使えると思う。色んな設定はまた初めからしないといけないけど、取り敢えず俺の電話は入れとくから」

「うん!この前みたいにお願い!」

「・・・全部?」
「うん!全部!」


私のファーストスマホは凄く短い命だったけど、その代わりセカンドスマホは花沢類のお下がり。
でも綺麗に使ってたみたいだから大きな傷なんて無くて綺麗だった。少しだけ違う使い方も彼が教えてくれて、SNSのアプリも入れてくれた。
あの気に入ってた『あんた、もうすぐ5時だけど』は消えちゃったけど、これからまた新しい会話が始まる・・・そう思ったら嬉しかった。


「でも本当に貰っていいの?大事だから持ってたんじゃないの?」
「いや、自分で選んだわけじゃないから。新商品が出来たらすぐに替えられるんだ」

「え?壊れてもいないのに?」
「・・・うん、だから思い入れはない。あんたが大事にしてくれるならそれでいいから」


花沢類が今度は少し悲しそうに笑った。
何でも手に入る虚しさって言うのもあるのかもしれない・・・だから自分で選ぶ事をしなくなったのかもしれない。それは困らないことなのかもしれないけど、楽しくはないかも。


「ありがとう、花沢類。大事にする・・・もう絶対に手放さないから」

「ん・・・じゃ、おやすみ」
「おやすみなさい」


2つのスマホを胸に抱えて、深夜0時に彼の部屋を出た。
そして今度は私が廊下を確認しながら自分の部屋に戻った。




**********************


<side加代>

あの類様がこんな時間に誰かの為に出掛けるなんて初めての事。
これは一大事ですわ、すぐに奥様にお知らせしないと!確かもうすぐ帰国されるはずですが、その時まで待っていられません!

もうアメリカは朝ですわね?
急いでお電話を・・・ふふふ、奥様も驚かれますね~、きっと!


『GoodMorning、加代?どうしたの、こんな時間に』
「奥様、おはようございます。実は類様に劇的な変化が御座いましたの。凄いですわ、あの類様が・・・」

この後、最近の類様の様子をご報告しました。
3回の遅刻はあっても毎日大学に行っていること、牧野さんに語学を教えていること、今日は無くしたスマホを一緒に探したこと。奥様はそれはもう驚かれて「ええっ!」の繰り返し・・・えぇ、そうですわよね。
お返事だって「あぁ」「ん」「判った」の3つしか無かったのに、最近は文章で会話が出来るのですもの!


『・・・もしかしてそう言う仲になってるの?』
「いえ、そうには見えませんわ。正直類様もかなり恋愛音痴ですが、牧野さんも同じようです。これは手強いですわ・・・」

『もうっ!せっかくいい感じに類を引っ張ってくれる子が見付かったと思ったのに!』
「でもベッドが恋人の類様が人間を相手にしているのですもの、凄い進歩ですわ!」

『でもパーティー前にはあの子達、大接近してたわよ?キスぐらいしてるのかと思ったわ』
「あぁ、あの事でしたらどうやら類様のピアスホールの消毒らしいです」

『そんな事だったの?!・・・加代さん、頼むわ!上手くスパイスになって刺激を与えてちょうだい!』
「畏まりました。引き離してみたりくっついてみたり・・・恋愛は磁石のようなものですわね!」


ほほほほ、こんな会話、類様にも牧野さんにも聞かせられませんわね!





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2019/08/11 (Sun) 07:45 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/11 (Sun) 10:15 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/11 (Sun) 15:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは!

あら、嬉しいお言葉(笑)

ふふふ、「おいで」と「持っておいで」はえらい違いがありますよね(笑)
類君、そこはちゃんと言おうよ!って感じでしょ?

って事で、類君の○○○なんてお渡ししません!!ダメでしょ、そんなの。
因みに・・・形はどんなのかしら。
私は○○○ーはキライなの。密着してるってよりは隙間が欲しい(笑)

シャツのお下がりなら欲しいなぁ~♡
洗う前のバスローブとか。


あぁ、お話しね(笑)

そうそう、実はこのお母様・・・こういう人なんです♡以上

2019/08/11 (Sun) 21:54 | EDIT | REPLY |   

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