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6月の中半、西門に行く前につくしと子供達を連れて鷹司会長の所に出向いた。

親父につくしと子供を会わせるための相談だと言い、堅苦しく無いからと言ったもののやっぱりカチコチに固まって、車の中でも握り拳がガタガタ震えていた。
何度「俺の味方だから」って言っても西門流の後援会長だから怖じ気づくのも無理はない。

ある意味、親父と同じぐらい発言力の有る人だから。



鷹司会長の屋敷も古い日本家屋で白壁で囲われた、紫音たちからすれば別世界の場所だろう。普段は芝の庭と薔薇に囲まれた洋館に居るから、何かのアトラクションにでも入るかのように変な顔して門を潜った。
そして松や竹、椿などと言った美作には植えられていない木の庭を通り、漆喰の壁と上品な濃い色の格子戸の中にある土間で、ここの現当主の出迎えを受けた。


「これはこれは西門の若宗匠、よくお越し下さいました。父は奥の間で待っておりますよ」
「ありがとうございます。お邪魔いたします」

「あぁ、こちらが?少しだけ話は聞いておりますが本当にそっくりだ!お可愛らしいですねぇ。あぁ、私は西門家には出入りしませんからご心配なく」
「はは、もう知られてしまっても構わないと思っての事ですから気になどしません。紫音、花音、ご挨拶しなさい」

「・・・えっと、おなまえ・・・」
「どっちで?」

「・・・どっち?」


子供達の純粋な疑問に会長の息子は大いに笑ってくれたが、確かにここで「美作」と言われるのも・・・そう思って初めて「西門」を名乗らせた。

「にしかどしおん・・・です!」
「にしかどかのんです。もうすぐ4さいになるの!」

「お利口さんだねぇ。お父上によく似てらっしゃる・・・先が楽しみですね」

「お初にお目に掛かります、牧野つくしと申します。会長様がいつも総二郎さんを助けて下さると聞きました。本当にありがとうございます」

つくしも緊張が解れてきたのか、美しい所作でにこやかに挨拶をしていた。
和やかな挨拶が終わってから、この現当主の案内で会長が待っていると言う部屋に4人揃って向かった。




************************




総をずっと助けてくれたと言う後援会会長さんのお屋敷・・・西門に比べると小さいんだけど、それよりも引き離されて以来初めて西門に関係する人に会うって事で緊張しっぱなしだった。
何よりこの純和風な庭・・・灯籠や敷石を見てもドキドキする。

西門家にお稽古に言っていた時を思い出させる空気が漂ってて足が震えた。


「しおん、みて?この石、きれい~♡まぁるいよ?」
「ほんとだ!あかいのしろいの・・・みどり色のもある~!」

「あっ!カエルさん!」
「かのん、おいかけちゃダメだよ?」

その声にハッと振り向いたら双子は玄関までの通路に敷かれた玉砂利で遊んでる。しかも花音はカエルを見付けたと言ってお庭の奥に潜り込もうとしてるし!
これからご挨拶なのに!と、慌てて手を引っ張って総の後を追い掛けた。

そして出迎えてくれた人の穏やかな表情と明るい声は思っていたよりも庶民的だったからホッとした。



「おぉ!若宗匠、お待ちしておりましたよ」
「鷹司会長、お約束通り連れてまいりました」

案内された部屋に入ったら小柄なお爺ちゃんがソファーに座っていた。
そこはこのお屋敷の見た目に反して洋間のリビングで、レースのカーテンに応接セットがあった。調度品も時計や壁の絵も洋風で子供達には安心だったのかもしれない。早速ローボードの上に置いてある金魚鉢に走り寄っていった。

「あっ!紫音、花音、ご挨拶がまだよ?こっちにいらっしゃい!」
「「はーい!!」」

私も挨拶がまだなのにそんな大声出して、慌てて口を押さえた。


「ははは・・・いやいや、子供はこのぐらい好奇心がないと困ります。何でも吸収する時期ですからね」
「もしかしてこの子達が居るから今日はここで?」

「まぁ、子供に正座はキツかろうと思いましてね。そのうち嫌でもするかもしれない・・・だから今日ぐらいはいいでしょう?」


優しそうな声に気遣いの人・・・私も嬉しくなって深くお辞儀をした。
そして総に「こちらに・・・」と言われて横に並び、彼は私と子供達を紹介してくれた。

「鷹司会長、以前からお話している牧野つくしさんと、長男の紫音、長女の花音・・・もうすぐ4歳になります」

「こんにちは。にしかどしおんです」
「こんにちは~、にしかどかのんです!はじめてまして!」

「初めてまして」に会長さんも総も噴き出したけど花音は何のことだか判ってない。
むしろ嬉しそうに笑って総の足にしがみついていた。


「初めまして、牧野つくしと申します。色々とお力添えいただいているとのこと、本当に有り難く思っております。これまでご挨拶出来なくて申し訳ございませんでした」

「・・・・・・・・・」

「会長?」


私の挨拶に無言で返事が出来なかった会長さんに総が声を掛けた。
でも会長さんはそれにも答えない・・・何か失礼があったのかと不安になって総を見ると、もう1度「どうされましたか?」と問いかけた。


「あぁ、申し訳ない。お話しだけは随分前から聞いておりますから初めての気がしませんでな。
つくしさんは思っていた通りの人で、お子様達は本当によく似ておられる。こうして並んでおられる姿を見ることが出来るなんて・・・正直あまり期待はしておりませんでしたよ。ははは、あれだけ偉そうに言うたクセに申し訳ないがねぇ」

「えっ!期待してなかったんですか?」
「くすっ、あははは!」


まるで自分の孫に会ったかのように目頭を押さえている会長さん・・・この方にも随分心配掛けたんだと思うと申し訳なくて自分の目の奥も熱くなった。
そうしたら紫音が花音のポシェットからティッシュペーパーを出して、会長の横に行くと無言で差し出していた。
「ありがとう」なんて言って紫音からティッシュを受け取ると目元に当てて「優しい子だ・・・」って。


「あのね、ぼくのまわりには泣き虫さんが多いの。だからこれがぼくのしごとなの」
「かのん、泣かないよ?泣くのはママだよ?」

「かのんは転けて泣くんじゃん!毎日だよ?」
「きょうはまだ転けてないよ?」

「いいから2人とも止めなさい!ママだってそんなに泣かないわよ」
「えー?そうちゃんパパが今日も来ないって泣いた時あったよ?」

「あっ、そんなのここで言わないでよ!はっ・・・失礼しました!」
「「ホントなのに~」」


「会長、こんな感じの家族です。ははっ!面白いでしょう?」

総の言葉に何度も頷く会長さんは本当に嬉しそうだった。



**



紫音と花音が金魚鉢を覗き込んで遊んでいる時、総が今後の話を相談していた。
それは私を家元に会わせる時期・・・総は双子の誕生日の七夕を西門で過ごさせようと思うと切り出した。

七夕まではあと3週間もない。
その前に私と家元を会わせ、西門に入ることを認めさせたいと・・・。


「離婚から半年ですか。そうですね・・・早いと言えば早いかもしれませんねぇ・・・」

「彼女の事を受け入れてもらえれば入籍などは年明けでも構わないのです。ただ次の春にはこの子達を幼稚舎に通わせるとなると、やはりそれまでに西門に迎えたいと思っています。
ですがいきなり本邸に彼女や子供を連れて行くことは出来ない・・・ですからこちらのお屋敷で家元と彼女を引き合わせたいのですが、如何でしょう・・・ご協力願えませんか?」

「ほぅ、拙宅で?」

「彼女に稽古をつけております。ここで家元とご一緒に会長にも彼女の点前を味わって頂けたらと思うのですが」


そんなに簡単に言わないでよ~、と言うのが正直な気持ち・・・だけどいずれは体当たりしなきゃいけない「壁」だから、弱気になってる場合じゃなかった。
私も総に合わせて「宜しくお願いします!」と言うしかなくて、震える手を隠しながら会長さんに頭を下げた。


「判りました。宜しいでしょう、我が家をお使いなさい。それにしても何故急に七夕をご一緒に過ごそうと思われたのですかな?」

「・・・会長の言われた時効、それを七夕にしようと思っただけです。私も遠い昔を少しだけ思い出したものですから」


「そうですか。それならば良いでしょう」



私には何の事か判らなかったけど、紫音の浴衣・・・それに想いがあるように感じた。
それを話す時の彼はとても優しい笑顔だったから。





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2019/08/16 (Fri) 14:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

うふふ♡
西門紫音に西門花音・・・やっと自分達で言いましたね♡
判ったような、判らないような中での事でしょうけど。

それでも総ちゃんとつくしちゃんからしたら感動だっただろうなぁ~♡
花沢紫音と花沢花音って名乗らなくて良かったわ♡


悪い爺さんばっかり書いてきたので、この鷹司のお爺ちゃんがすっごく良い人に思えるでしょ(笑)

だんだんラストが見えてきたなぁ・・・って、すごく淋しい気分になってきました。
今月中には終わりますのでどうぞ宜しくお願い致します。

2019/08/16 (Fri) 21:40 | EDIT | REPLY |   

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