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「・・・・・・・・・・・・すごい」
「・・・・・・・・・・・・おっきいね・・・」

「ここが俺の家、西門流の本邸だ。行くぞ、2人とも」
「「・・・・・・・・・お化けでそう・・・」」

「・・・ぷっ!」
「くくっ、確かにお化けみたいなのは住んでるけどな!」


総に連れられて数年ぶりにこの門の前に立った。
相変わらず厳つい門構え・・・そこに掲げられた「西門流」の文字も懐かしい・・・。

昔はこの門を潜ると「西門さん」に会えると思ってウキウキしていたことを思い出していた。
今は全然重みが違う・・・将来この家を継ぐかもしれない紫音の手を、総によく似た花音の手を引いて私は真っ直ぐ門の奥を見つめていた。

入り口にある存在感たっぷりの赤松に犬柘植いぬつげの玉散らし仕立て。
同じく庭師さんが綺麗に刈り込んでいる犬槙いぬまき。その奥には伊呂波楓いろはかえで・・・今は咲いてないけど昔よく見た紅梅白梅が今でも葉を茂らせていた。

もっと奥に見えるのは木斛もっこくの巨木・・・あの向こうに私は行ったことのない茶室がある。
本格的な茶事をする時の庵だ・・・いずれ紫音が入るのだろうかと思い巡らせながら玄関に続く道を歩いた。

低いところには山茶花に八手・・・まるであの日から時間が止まってるかのような西門邸の庭だった。


「あっ、ここにも赤い石がある~!」
「花音、今日はダメよ?ご挨拶が先でしょ?」

「あーっ!石にお水がたまってる~」
「紫音、そこに手を突っ込んじゃダメ!浴衣が濡れちゃうわ」

「うわぁ!あんなところに木のコップがある~」
「それは柄杓って言うの、花音、触っちゃダメだって!」
「ねぇ、向こうでカコーン!って音がしたよ?」
「あぁ、鹿威しね?後で見せてあげるから」

「「あああーっ!あんなところに七夕の笹があるぅ~!!」」
「わかったから!後で行くから静かにして!」

「つくし、お前の声もデカいわ・・・」


総に言われてハッとして口元を押さえ、キョロキョロと回りを見たけど幸いにも誰もいなかった・・・。



敷石が続く道を進んで行くとこの家の大きな玄関扉が見えてきた。
それを見るとゴクッと喉が鳴る・・・あの中に家元と家元夫人が居ると思ったら、会長のお屋敷で会ったばかりだけどやっぱり足が竦んだ。

「そんなに泣きそうな顔をするな。判ってることは俺達が離れないこと・・・だから心配するな」、そう言って総が玄関を開けた。


すぐに聞こえてきたのは多分使用人頭の志乃さんの足音だろう。
それが近づいてきたら覚悟を決めて双子を私の前に出した。「ちゃんとご挨拶するのよ」と言う私の言葉に、無邪気に微笑んで頷く2人・・・この子達の肩に置いた私の手が震えてちゃいけない。


「お帰りなさいませ、総二・・・・・えっ?」

「ただいま、志乃さん。驚かせてごめんな。ま、そういう事だから」
「・・・お久しぶりです。牧野・・・です」

「牧野さん・・・まぁ、牧野さん?!あなた、今まで何処に・・・そ、そのお子様は・・・それにその浴衣・・・」


驚きすぎて固まっている志乃さんに挨拶するように言ったけど、子供達は志乃さんの表情に驚いてこっちも固まった。3人が同じように吃驚した目で見つめ合って、志乃さんはポカンと口を開けたまま。
それでも総の顔と見比べているから似てるって事はすぐに判ったんだと思う。

双子の大きさで大体の年齢も判るはず・・・そして頭の中では色んな想像が出来るだろう。それをすぐに理解してもらえるなんて到底思えなかった。


「志乃さん、親父達は?」
「えっ?・・・あぁ、桔梗の間にいらっしゃいますわ。総二郎様がお客様を連れて来るからそこに案内するように言われて・・・まさか牧野さんだとは思わなかったのですけれど、それにお子様まで・・・総二郎様、これは家元はご存じなのですか?」

「いや、知らせてない。親父は腰抜かすだろうな!さぁ、2人ともご挨拶しなさい。このお屋敷を取り纏めている志乃さんだ」


その言葉でやっと笑顔に戻った双子は私の前に並んでいつものように姿勢を正した。
そして大きな声で志乃さんに向かって自分の名前を・・・予め教えていたように「西門」で挨拶をした。

「にしかどしおんです!今日で4歳になりました!」
「にしかどかのんです!えっと・・・こんにちは!」

「・・・・・・・・・まぁ、お利口ですこと。まぁ・・・まぁ、そうでしたの?いやだわ、総二郎様・・・」


志乃さんは総が子供の時からここにいる人だと聞いた。
だからなのか子供達を見て、まるで自分の孫に会ったかのように嬉しそうにしていた。
着物の袂で目元を拭い、普段ならしないだろうに総の肩を軽く叩いて「こんな大事なことを黙ってるなんて!」って笑いながら怒ってる。

彼も「悪かった・・・」って、少しだけ頬を赤くして謝ってた。


「詳しい事はまた説明する。今日はこの子達の誕生日なんだ。今からで悪いけどその支度をしてもらっていい?」
「畏まりました。すぐに厨房に申しつけますわ。あらやだ、忙しくなったわ!」

「す、すみません!」
「ほほほ、いいのですよ。最近何かと湿っぽかったから・・・楽しい七夕になりましたわ」


桔梗の間には自分達で行くからと志乃さんとは玄関で別れ、私たちは総の後をくっついて歩いた。
何処が桔梗の間なのかさっぱりだけど、双子は見慣れない日本家屋に興味津々で大騒ぎ。シーンとしている中で紫音と花音の声だけが響いて私は心臓が飛び出るかと思った。


「きゃははは!すべる~!しおんもやってみて?すべるよ?」
「花音!廊下で遊ばないのよ?紫音も真似しないで!」

「ながーーい!どこまでつづいてるの?」
「紫音、声が大きいわ。静かに・・・静かにしなさい!」

「あっ!池があるーーっ!おさかなさんいる?」
「かのん、あとで見に行こうよ!」
「ええっ!勝手にお庭に入っちゃダメ!鯉に餌あげてもダメよ?」

「・・・だから何回も言うけどつくしも声がデカいって」
「・・・・・・はっ!」


何人かすれ違ったお手伝いさんやお弟子さんがみんなキョトンとしてる。
でも双子がニコッとすると「可愛い~!」の小声が聞こえてくる。紫音と花音も早々と馴染んで「こんにちは~」なんて言うから、暫くしたら後ろの方から「きゃーっ!」って悲鳴が聞こえる・・・。

これがどんな風に皆に伝わって行くのかと思うとすごく不安だった。




************************




桔梗の間に来ると流石に双子には「静かにな」と、声を掛け廊下に座った。
つくしも俺の後ろに同じように座り、少し可哀想だったが紫音と花音もそこに座らせた。既に花音は数秒で苦痛の表情・・・それに噴き出しそうになるのを我慢して呼吸を整えた。

親父・・・どんな表情になるんだろうな、と少し意地悪く想像した。


「総二郎です。ただいま戻りました」

「入りなさい」

中から親父の低い声が聞こえて、俺は障子を静かに開けた。
そして深く一礼すると、先に俺1人が中に入った。


「家元、本日は会っていただきたい者がおりますので連れて来ました。呼んでも宜しいでしょうか?」
「何を改まって・・・先日会っただろう。いいから入ってもらいなさい」

「はい、それでは・・・・・・入りなさい」


俺のひと言でつくしが静かに自分の前の障子を開けて、そこで一礼・・・その横で紫音と花音もつくしを真似て頭を下げた。

そして向き直った時、小さな双子を見た親父の顔。
お袋は知っていたもんだから驚きはなかった・・・ただ着ていた浴衣が嬉しかったのか、すぐに目を赤くしていた。


「・・・・・・・・・な、なに?」
「・・・・・・・・・」


「2人とも、お爺様とお婆様だ。ご挨拶しなさい」

「おじいちゃま、おばあちゃま、こんばんは。にしかどしおんです!4歳になりました!」
「にしかどかのんです!かのんもきょうで4歳です!」

「お寛ぎの時間にお邪魔いたします。子供達の事、先日はお話し出来なくて申し訳ございません」


つくしもそんな言葉を出したが親父の視線は双子に釘付けで、いつもは鋭い表情なんて何処かに消えたようだ。眉をひん曲げて目を見開き、志乃さん同様ポカンと口を開けている。
驚きすぎて湯呑みを持ってた手が緩んだのか、熱い茶が入ってるのに自分の膝の上に湯呑みを落として「うわあぁぁ!!」と、俺が聞いたこともない叫び声を上げた。

それに驚いてお袋も飛び上がり、ハンカチで親父の着物を拭いたりして。


「大丈夫ですか?家元、お着物を着替えないと」
「・・・・・・」

「家元?まぁ、嫌だわ、そんなお顔で子供達を見たら怯えますわよ?」
「・・・・・・・・・」

「家元・・・ちょっと、あなた?しっかりなさって下さいな!」
「・・・・・・・・・・・・」


思い掛けず現れた小さな子供に戸惑って次の言葉さえ出ない。


西門流家元も子供相手だとこうなるのか・・・と、俺は可笑しくて堪らなかった。





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2019/08/19 (Mon) 14:14 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/19 (Mon) 16:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。


うん、食べ物ではありません(笑)
植木です・・・植木。美味しくないと思います(え?判ってるって?)

可愛かったですか?紫音と花音♥
よーく考えたら美作家でマナーは教えんかったんか?って思いますよね💦

しかもお母さんは仁美さんだったのに(笑)
そこはやはり「血」でしょうかね?

そうそう!お家元の気絶💦
気絶したのかどうかは判らないけど、このぐらいは驚いて欲しいよねって感じで書きました。

類君のそれは・・・(笑)
どんなテンションで話すの?!(爆)想像出来ないんですけど!!

取り敢えず上手くいきそうな予感♥
お馬さんになれるかどうかはわかりませんが、多分そうなったらつくしちゃんが気絶するので止めておきたいと思います。

2019/08/19 (Mon) 23:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

ふふふ、毎日明るめなお話しになってきましたね♥
これも紫音と花音のおかげです。

じいじの解凍(笑)はい!ちゃんとしますよ~♥

美作家では穏やかに育ったはずなのに、つくしちゃんと暮らし始めてから好奇心旺盛な双子ちゃん♥
見るもの総てが面白いのでしょうね。

それも二人だからかな?
総ちゃん似の二人がお年頃になったら、すっごい美男美女の兄妹で大変でしょうね(笑)
そんなお話しも書けたらいいなぁって密かに考え中♥

この西門邸のお話しは明日、明後日と続きます。ホッコリして下さいね~。

2019/08/19 (Mon) 23:27 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/20 (Tue) 15:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

まぁ♡嬉しいお言葉ですねぇ~♡調子に乗っちゃうじゃないですか(笑)
でも、そう言っていただけると嬉しいです。

いつからそうなったのか・・・頭で描いたイメージを文字にするようになったので、そこで見えているものを書いてるんですよ。

で、子供なら何をするか・・・たとえばですが、普通に日本庭園を真っ直ぐ歩かないと思うんです。3歳とか4歳って。
どうしても珍しいものに近づくでしょう?それが玉砂利だったりつくばいだったりです。
私はバレエ教室で沢山のちびっ子を見るので、その時に思いがけない行動を見るんですよ(笑)

イベントに参加し初めてからですかね?
他の作家様の丁寧な描写に感動したって言うのもあります。


珈琲を飲むシーンとかも「珈琲を飲んだ」で終わらせないようにします。

「目だけは遠くを見ながらゆっくりとカップを口に運んだ」・・・切ない系
「熱いって判ってるくせに急いで飲んだら噴き出しそうになった!」・・・コメディ
「たちのぼる湯気の中に彼の姿を想い描きなからカップを抱き締めた」・・・愛しい系等々。

少しでもその人の気持ちが伝わればな・・・って思っています。


温かいコメント、本当にありがとうございます♡

2019/08/21 (Wed) 00:00 | EDIT | REPLY |   

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