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「きゃああぁーっ!止まってーーーーっ!!」
「牧野!身体を起こせーっ!」


黒曜星が急に走り出したから牧野は恐怖からもっと身体を丸めて馬の首にしがみつく感じで踞ってた。でもそんな体勢だと馬にブレーキは掛からない!
かと言って手綱を急に引かれたらハミが口に食い込んで逆に反抗し、もっと突っ走る可能性があるから危険・・・牧野がそれをしないかと凄く焦った!

でも走っている馬に飛び乗って停止させるなんて映画じゃあるまいし無理、ここはどうしても牧野自身に黒曜星をコントロールしてもらわないといけなかった。
だけどここからじゃ声が届かない・・・急いで近くに居た牧場の馬に飛び乗って黒曜星を追った。

俺が乗った馬は裸馬、つまり鞍も鐙も手綱も付けていないヤツだった。
でも馬を選んでる場合でもなければ馬装を用意する余裕なんて無い。兎に角近くまで行って牧野に指示を出さないと、そう思ってこの馬の腹を蹴り走らせた!

ここにいるのはサラブレッドで、背中が細いから安定しない。下手をすれば俺が振り落とされる危険性が高かったけど、それを考えている暇はない!
鬣を大きな束で掴み、方向指示は重心移動、それで黒曜星のすぐ傍まで近づくことが出来た!


「牧野ーー!!両方のふくらはぎで馬の体を強く挟め!それと身体、身体を起こせ!」
「いやああーっ!怖いーっ!助けてぇ!」

「自分でしないと無理だ!黒曜星、鎮まれ!!」


黒曜星がいくら利口な馬でも興奮したらそんな言葉は通じない。
でも見ている限り興奮MAXじゃない。上手くいけば落ち着くはず、そう思わせるぐらいの走り方だった。それでも牧野が暴れてもっと興奮させたら不味いから、何度も「身体を起こせ!」と叫んだ!

「きゃああぁーっ!もういやぁーっ!!」
「叫ぶ前に身体を起こして!」


何度目かの叫び声で牧野が怖々でも身体を起こすことに挑戦し始めた。
でも不安定な馬の背中でしかも初めて乗ってる訳だから、慣れない上下移動に怖がってすぐに黒曜星にしがみついてしまう。それも無理はないけどそろそろ体力的に限界だろうから、これ以上時間が掛かると振り落とされるかもしれない。
ヘルメットもしてるけど万が一脚で蹴られたら・・・最悪のことを考えて掌に汗が滲んだ。


そのうち黒曜星の方もパニックが治まってきたようだ。
これなら止めることが出来る、そう確信して俺が乗ってる馬の速度も落とさせて牧野に近づき、もう1度「身体を起こせ!」と声を掛けた。その時やっと俺と目が合って、軽く頷いて身体を起こした。

「そのまま少しだけ身体を後ろに傾けろ!」

その声が届いたのか、今度は泣きそうな顔で身体を後ろに倒した。

そうすると馬の体が起き上がった状態になって止まりやすい。
「もう1回ふくらはぎで身体を押さえ込んで!」と言うと、その通りにやったのか黒曜星のスピードがかなり落ちてきた。

その状態になったら先に俺が馬から降りて黒曜星が走って来る斜め前方に立った。あいつは俺の姿を見付けたらしく歩く程度まで速度を落としたから、まずは黒曜星を完全に停止させ、脚が止まったら牧野に手を伸ばした。


でもここで牧野は当然だけど放心状態。
手綱を握ってる手は震え、鐙を踏んでるはずの脚はそれから外れ、目は見開いたままで汗ダラダラ・・・ハァハァと荒い息遣いのまま何処を見てるのか判らないぐらい真っ青だった。

歯もガチガチ鳴ってて唇は震えてる。
そんな牧野がやっと俺を見た瞬間、大粒の涙が溢れ落ちた。


「ふぇ・・・うっ・・・んぐっ・・・」
「・・・馬鹿だね。あれだけ姿勢崩すなって言っただろ?落ちなくて良かった・・・おいで、牧野」

「・・・・・・は、花沢類・・・無理」
「何が?そこに居たら怖いでしょ?ほら、降りておいで」

「こ、腰が・・・腰が動かない・・・」
「・・・もうっ!世話が焼ける子だね!いいからこっちに手だけ回して」

俺が伸ばした手に震えながら自分の手を出してきて、それを掴んだら身体を引っ張って黒曜星の背中から降ろした。
慌てたスタッフが掛けよって来て黒曜の手綱を引き、「大丈夫ですか?!」ってこっちも真っ青。


「いや、こっちが黒曜星を驚かせたんだ。この子に問題はないから心配しないで。彼女も吃驚しただろうけど落ちなかったしね」
「類様の声が聞こえたので驚きました。怪我がなくて本当に良かったです。それでは黒曜星の馬装を外すんで連れて行きますね」

「ん、宜しく。黒曜星、驚かせてごめんな」


この会話の最中も泣きながら俺にしがみついて、全然顔を見せなかった。
余程怖かったんだろう、俺の首を絞めるみたいに回してる腕と、服を掴んでる指先の震えが止まらない。小さな子供みたいに泣きじゃくる牧野を抱きかかえたまま、今日泊まるコテージまで歩いて向かった。




************************




「・・・・・・・・・」
「大丈夫?もう落ち着いた?」

花沢類に抱えられて入ったコテージの部屋、ベッドの端っこに座ってまだ五月蠅く鳴り続ける心臓を押さえていた。
私の前には彼が胡座かいて座ってて、無表情のまま見上げてる・・・私はぐちゃぐちゃになった顔を何度も手で拭いながら、震える手を固く握り締めたままだった。


怖かった。
本当に怖かった・・・あのまま投げ出されるのかと思って、そうなったら死んじゃうのかと思ってパニックだった。


花沢類が何かを叫んでるのは判っていたけど、それを聞く余裕もなくて必死に身体を丸めてしがみついて・・・黒ちゃんが私のせいで怖がってるかと思うと、それも可哀想になったけどどうにも出来なくて。
ほんの少しスピードを緩めてくれたから顔をあげることが出来たけど、その時にチラッと見えた彼の顔。

すごく慌てて必死に叫んでる花沢類・・・それを見た瞬間涙が溢れた。
もしかしたら2度と話せなくなるのかも、そんな気がして。


「・・・ごめんな。もう少しちゃんと説明したら良かったんだ。黒曜星も訓練された馬だし穏やかだから大丈夫だと俺が勝手に判断してあんたを乗せてしまったから」

「・・・・・・そんな事ない・・・私が背中で暴れたから黒ちゃんが・・・」

「でもそれも素人なら考えられたことだから。付き添ってた俺の油断・・・でも落ちなくてホントに良かった」

「・・・・・・うん、怖かっ・・・」
「目の前で黒曜星が人を蹴るところなんて見たくなかったし」

「・・・・・・・・・」


それって黒ちゃんの心配?

黒ちゃんが蹴るところを見たくなかった・・・そうじゃなくて、私が怪我するところを見たくなかったって表現じゃないんだ?
まだ心臓が恐怖でバクバクだったのに、彼のこの一言で何故か静かになった。心臓が静かになったら指の震えも治まった。


「・・・・・・花沢類、お腹空いた」
「そお?じゃレストハウスに行こうか?立てる?」

「うん、もう平気。涙も止まったし」


あれ?なんでこんなに腹が立つんだろう?
花沢類が差し出してくれた手を無視して立ち上がり、「は?」って顔した彼を残して先に部屋を出た。

なんなの?もしかして人間じゃくて馬が好きなの?
悪いけどさっきの事件も弱者は私じゃない?黒ちゃんには勝てないのは当たり前、それなのに・・・💢


花沢類の馬鹿ーっ!!




**************************




「お代わり~!」
「えっ!もう?牧野、大丈夫?」

「なにが?全然平気だけど」
「・・・・・・・・・」


なんで怒ってんの?
さっきから全然俺の顔も見ずにチーズの中に具材突っ込んで、フランスパンのお代わりも何回目?

今日も夕食はチーズフォンデュ・・・それはいいんだけど、牧野の前に並んだ具の量に驚きなんだけど。
エビにホタテにジャガイモ、ブロッコリーにアスパラにラディッシュ、カボチャにオニオンにプチトマト・・・もう相当な数の具材が牧野の腹には入ったと思うんだけど?

俺はシャトー・オー・ブリオン・ブランのグラスを片手に豪快な牧野の食べっぷりを見ていた。
それだけで何故かお腹いっぱい・・・ひたすら牧野が食べるエビの殻を剥いていた。


こうやって向かい合って食べるなんて普段はしないから新鮮なはずなのに、なんでこんなに喧嘩腰で食べてるんだろ?
そして俺は牧野を助けたはずなのに、どうして怯えながらこいつの具材を準備してるんだ?


「花沢類、芽キャベツとお餅」
「・・・はいはい(自分で出来るはずなのに)」





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Comments 6

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2019/08/18 (Sun) 00:36 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/18 (Sun) 07:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、おはようございます。

本当は裸馬って相当危ないらしいですよ?
だから悩んだんですが、この展開だと読者様は絶対に類君の乗馬を待っている・・・そう思ったら乗せちゃった💦

頭の中では黒ちゃんに飛び乗って欲しかったですが、流石に調べたらそれは無理だそうで(笑)
妄想だから書けばいいのに、急に現実的になってしまうんですよね(笑)

そしてお約束のように類君の気の利かない発言(笑)
つくしちゃん、完全にお怒りモードですが、それはなぜ?って感じでしょ♡


さて次は・・・北海道の夜ですね♡むふふ・・・(いやいや、そんな雰囲気じゃないって💦)

2019/08/18 (Sun) 09:57 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

あっはは!本当ですよね~💦
ここは総ちゃんかあきら君にお説教してほしいものです。

言葉を選べよ~~!!💢ですよね!

チーズフォンデュって、誰かにやってもらうような事じゃないと思うんですが(笑)
類君、言われたとおりにお手伝いしてるんですね♡

私は色々調べてて、チーズフォンデュの具材に「いちご」ってのがあって、それに???ってなりました。
どんな味がするんだろう?いちごはいちごとして食べた方がいいような気がするんですけどね(笑)

2019/08/18 (Sun) 10:03 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/18 (Sun) 16:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは!

あはは!出た!あのアニメ、好きなのね💦
そう言えば落馬でしたっけ?不幸な事件って・・・あれは白い馬でしたよね?

階段降りながらのバックハグ・・・そう言えばまだ書いてないかも(笑)どこで使おうかなぁ💦


類君、やってもーたのですよ。
口下手な男はダメですよ・・・これは類君だから許されることであって、万が一旦那だったらお別れです。
(実はインコと比べられて負けた過去あり)


さて・・・ご飯も終わったしこれから始まるのは・・・夜です♡むふふふふ・・・

2019/08/18 (Sun) 22:28 | EDIT | REPLY |   

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