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plumeria

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不思議な夕食が終わってレストハウスを出たら、もう空には星が輝いていた。
流石、東京に比べたら星がよく見える・・・って夜空を見上げていたら「・・・ックシュ!」って牧野がくしゃみをした。

美瑛の5月は大体最高気温は20度、最低気温は5度ぐらいで、漸く春を迎えたって感じだ。
山にはまだ雪があるし、場所によってはウィンタースポーツも出来るぐらい。だから上着は持っていたけど東京から来た俺達には肌寒く感じた。

牧野は俺の少し後ろを歩いていたから振り向いて見ると、自分の腕をさすりながら肩を竦めてる。さっきまであれだけ温かいものを食べていたから身体はホカホカだと思うのに、急に環境が変わったせいなのか軽く咳き込んで寒そうにしていた。

こんな時、総二郎達ならどうするか・・・。
ちょっとそれも考えたけど、彼奴らみたいにいきなり肩を抱き寄せるなんて出来ない。俺の上着を掛けてやろうか、そう思って脱ぎかけた時、さっさと目の前を通り過ぎられた。


「牧野、寒いなら上着貸そうか?」
「・・・要らない。すぐそこじゃん・・・ックシュ!」

「風邪引いたのかな・・・喉痛いなら薬もらいに行こうか?」
「・・・心配なんてしてないクセに」

「・・・え?何か言った?」
「何にも言ってないよ。黒ちゃんが風邪引かなかったらいいねってこと」

「あぁ、あいつはこのぐらいじゃ風邪なんて・・・ってなんで黒曜星の心配?専門のスタッフがいるから大丈夫だよ」
「そんなに可愛かったらお屋敷の庭で飼えばいいじゃん。そのぐらい広いでしょ?」


・・・またそんな言い方して。
さっきからやたら黒曜星をライバルみたいに言ってるけどどうしたんだろ?
まさか、黒曜星が自分の言う事を聞かなかったから拗ねてるの?いや、それは信頼関係の差・・・もあるけど、馬を知らない牧野なんだから無理ないことなのに。

人間だって馬だって同じ、いきなり初対面で仲良くなれないし。


「広さで言うなら問題はないけど馬は暑さに弱いんだよ。だから都会のど真ん中で飼うにはストレスだろ?それに馬にとって1番嬉しいのは自由に走りまわれること。あの屋敷で誰がずっと付いててあげられる?それよりもこんな大自然の中で伸び伸びさせた方がいいと思うけど」

「そ、そんなの言われなくても判ってるもん!」
「何をさっきから拗ねてるの?黒曜星がどうかしたの?」

「・・・別に。先に行くね!」

「・・・・・・・・・」


先に行くのはいいけど、コテージの鍵は俺が持ってるんだけど?
案の定、俺を置いて走って行ったものの、入れなくてドアの前でしょんぼり立ってる牧野を見て笑った。




***********************




子供染みた自分の態度が照れ臭かったから急いで走ったのに鍵が無い・・・。
そんな私を「馬鹿じゃないの?」みたいに呆れた顔して歩いて来る花沢類を見ていたら、余計に恥ずかしくなってその場にしゃがみ込んでしまった。

そして私の横まで来たら頭のてっぺんをちょん!と突いて「ほら、入るよ」って。
見上げたら今度はニッコリ笑って手を差し出してる・・・出掛ける時は取らなかったその手を、今度はちゃんと掴んで立ち上がった。

そうしたら私を先に入れてガチャッと鍵を締め・・・その時に2人きりなんだって今更ドキッとした。


確かに毎日同じ屋根の下に住んでるけど、廊下挟んで反対側の部屋だし、私は使用人でこの人は雇い主だし・・・大学も同じところに通ってるけど、私はバスでこの人は車だし、校舎は東と西で見事に真反対だし。

何度か勉強もみてもらって、夜中に大学に侵入もした。何度かこの人の車にも乗ったけど、ここはお屋敷から随分離れた北海道の大自然の山の中・・・。
奥様も加代さんも田村さんも居ない、ホントに私と花沢類だけの世界で一晩一緒に・・・


「バスルーム、そろそろ湯の準備・・・」
「バスルーム?!!」

「・・・なに?」
「ううん!ななな、何でもないっ!私が見てくる!」


ドキッとした瞬間に彼から「バスルーム」なんて言葉が出てきて何故かすごく焦った!多分顔が赤くなってる・・・だから急いでバスルームに向かってお風呂の準備をした。
そこの鏡に映ってる自分・・・やっぱり耳まで赤かった。

そしてチラッと見たら・・・大きなバスタブ。もしかしたら2人で入れるぐらいの広さが・・・


「牧野・・・あのさ」
「うわあああああーっ!!」

「・・・なに?どうしたのさ。そんな裏返った声出して」
「・・・・・・!!き、急に声掛けるから、うわぁっ!」


湯気をたててるバスタブの中の自分を想像した途端に聞こえてきた花沢類の声に驚いて変な声になっちゃった!
それに慌てて身体の向きを変えたもんだから、足元にあったランドリーボックスに躓いて転けそうに・・・「危ない!」って花沢類が抱き留めてくれたから倒れなかったけど、気が付いたら彼の腕の中にいた!


「・・・・・・ご、ごめん!」
「いや、いいけど。持って来た荷物、何処に置いたかと思って」

「は?あぁ、えっとね・・・右側のベッドルームかな?」
「判った。ありがと」


なんて事ない質問と返事・・・その後私の身体をポイッと離して彼はその部屋に向かった。
私は1人で変な妄想を覗かれた気がして動揺し、暫くバスルーム前の洗面所から動くことも出来なかった。


「あーっ!ダメだ、もう掃除しよう!」




**********************




ベッドルームをどうしようかと相談したかったのに、1人で真っ赤になってバスルームを覗いてる牧野を見たら何も言えなかった。だから判ってるくせに荷物の置き場所なんて聞いて部屋に戻った。

うん、その右側の部屋は俺が泊まる予定の部屋だから・・・そんな事は初めっから知ってる。


ただ、この部屋にはベッドが2つ並んでいた。
ホントにこの部屋で牧野と2人?やっぱり俺はリビングのソファー?

1番奥にもうひとつあるはずのベッドルーム、なんで鍵が掛かってるんだろう?そしてあったはずの内線が外されてる・・・何処に聞けばいいんだ?
事務所か研究施設には誰かが居るって判ってるけど、今から行くか・・・と言われればそんな気にもならない。

そして加代と田村に電話しても何故か出ない・・・所長の携帯番号を聞こうと思ったのにそれも出来ない。今日はここに泊まる事も伝えていたはずなのにどうして不備ばっかり?
それに前に泊まった時、こんなに照明が暗かったっけ・・・意味深な間接照明だけってコテージらしくないんだけど。


ポスッとベッドに座って深呼吸・・・そうしたらカランカランとバスルームを掃除するような音が聞こえてきた。
ここは屋敷じゃないからそんな事しなくてもいいのに。

もう1回牧野を呼びに行こうとしたけど、焦って呼び戻してると思われるのも嫌だから止めておいた。


カランカラン、シャワーーー・・・ザーザーザー、ゴシゴシゴシ!キュ!
ガタガタガタ、コンコンコン、シャワー・・・・・・

・・・どんだけやってんの?


牧野はいつまで経ってもバスルームから帰って来ないし、今晩の事を想像して・・・心臓が五月蠅い。






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2019/08/19 (Mon) 00:37 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/19 (Mon) 07:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

えっ!!だってまだ告白してないのに?
それはちょっと(笑)総ちゃんやあきら君じゃないんですから💦

取り敢えず先に告白タイムがないとダメじゃない?

それにさっきまでエビの殻剥いてた人だからね~💦
そんな雰囲気になるかしら(笑)


いやいや、おかんも加代さんも類君がこれで発情すると思ってんのかい?って感じじゃないですか?
この状況をチャンスと思わずに困ってるとしか思えないんだけど(笑)

まぁ、どうなるか、今夜をお待ち下さい♡

2019/08/19 (Mon) 18:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

あっはは!意味深でしょう?(笑)
花沢家も必死なんですよ、きっと。
このぐらいしないと類君に彼女が出来ないので・・・(笑)

良く判っていらっしゃる(笑)
そうですよね~、意識はしてますけどね💦これがストレートに恋になるかどうかは疑問な2人です。

でも、いつまでもこんな感じだと終わらないので(笑)
少しずつ進ませて行きますね!


2019/08/19 (Mon) 19:14 | EDIT | REPLY |   

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