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plumeria

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「・・・・・・ねぇ、花沢類、もう少しで大分だよ?起きてよ~、ねぇったら!」
「・・・・・・・・・・・・くぅ」


牧野が福引きで温泉旅行の招待券を引き当てたのは良いけど、その行き先がまさかの九州大分別府温泉。

そして加代に頼まれて引いただけなのに俺と牧野が行く羽目になり、早速次の週の土日に叩き起こされた。
しかも牧野は初めての九州だからって早朝の飛行機で行こうとしたから何とかこの時間にさせたけど、それでも羽田を朝8時の飛行機・・・大分に着くのは9時30分だ。

その為に起こされたのはいつもと同じ午前6時で、屋敷を出たのは7時・・・そんな時間から旅行のテンションになれるはずもない。
牧野は北海道に行った時に買えなかったって言うラ・テールの『焼きチーズケーキラスク』と、金曜日から日曜日の週末3日間限定販売の『飛行機プリン』をいつの間にか買ってて、それを2人分と言いながら全部食べてご機嫌だった。

そしてもうすぐ着くからって再び叩き起こされた。



空港から出たら田村が手配したレンタカーが届けられていて、何故か俺が運転手・・・どうして運転手付きにしなかったのかって聞いたら「2人旅ですので」。

いや、そうだけどさ・・・。
本当は俺だってそれがいいんだけどさ・・・慣れない土地に加えて、牧野の隣で運転なんてある意味地獄だよね?
そう思っていたら、出てきた言葉が「地獄巡りに行こう!」だった。


確かにね・・・別府と言えば地獄巡りかもしれないけどさ。



**



「それではお気を付けて~」

レンタカー会社の人間に手を振られて空港を出たら、牧野の手には既に観光マップが広げられていて車のナビは地獄巡り用にセットされていた。
その通りに車を走らせること約1時間・・・午前11時に別府の鉄輪に到着、既に俺はクタクタだった。

でもここからが7月炎天下の「地獄巡り」。
嘘みたいな気温と日差しの中、牧野は俺を置いて海地獄に向かって走っていた。


「花沢類!ここからスタートしたらいいんだって!ほら、早く!」
「・・・暑い・・・」

「当たり前でしょ?地獄なんだから!」
「・・・夏だからだよ」

小学生かと思うような足取りで元気よく受付に行ったけど、料金所では必ず俺を待つ。
そうだろうね、と俺が2人分のチケットを購入。一部しか行かないのかと思ったら「全部行く!」と言われて、どんよりしながら全部に使える共通券を買った。


海地獄はコバルトブルーの池や日本庭園が見所。
約1300年前、鶴見岳の爆発により出来た池が海の色に見えるから「海地獄」。天然とは思えない鮮やかで美しいコバルトブルーの青色は温泉中の成分である硫酸鉄が溶解しているため。
一見熱そうに見えない色だけど、実は摂氏98度とゆで卵が作れるほどの熱さだ。


「・・・綺麗な色だね、牧野・・・・・・あれ、牧野?」

吸い込まれそうなブルーを見ていたら少しだけロマンチックな気分になったから、彼女が居ると思って声を掛けたけど隣には誰もいなかった。
驚いて振り向いたら牧野は売店コーナーに向かってて、追い掛けて行ったらそこで「地獄蒸しプリン」を食べてた・・・。


「あんた、さっき飛行機プリン食べなかった?」
「うん!美味しかった!花沢類も食べなよ~!」

「・・・俺はいい」
「あっ!じゃあこっち食べる?極楽饅頭~!」

「・・・・・・・・・」


このあとも鬼石坊主地獄で、灰色の熱泥がぽこぽこと沸騰する様子が庭師の爺さんに似ていると大笑い。
山地獄ではカバを見て学長に似てると言い、カピバラは田村に似てると言った。

かまど地獄では俺まで無理矢理足湯に入らせ、ここ限定の「地獄蒸し醤油プリン」を食べてた・・・プリン、何個目なの?
鬼山地獄では丁度ワニに餌をやる時間に行ってしまったから、鶏一羽に丸々食らいつく場面を見て大泣き。白池地獄ではピラニアと睨めっこしていた。


「ねぇねぇ、ここから血の池地獄までは歩けないんだね。車で行くんだって!」
「・・・・・・ホントに行くの?」

「うん!だってもう来ないかもしれないし!」
「・・・・・・・・・はぁ」


血の池地獄は鉄輪地区から少し離れた場所にある日本で最も古い「天然の地獄」らしい。温度は摂氏78度で、酸化鉄や酸化マグネシウムを含んだ赤い熱泥が噴き出しているから赤い色をしてる。
真っ赤って訳じゃなくて赤茶色だけど、牧野はその光景に「すごーい!」を繰り返して俺は何枚写真を撮らされたことか。

「あっ!花沢類、ちょっと待ってて?」
「また食べるの?」

「あっはは!違うよ~!いいもの見付けたの~!」
「・・・・・・・・・」


まさかここでも動物拾ったとか言わないよね?

時計を見たら午後2時・・・既に限界まで来た俺の眠気。
立ったまま寝られるんじゃないの?って外の看板に凭れ掛かっていたら買い物袋を抱えた牧野が戻って来た。中身は秘密・・・でもその顔はかなり嬉しそうで、俺は逆にゾッとした。

最後は間欠泉の龍巻地獄。
一定の時間をおいて周期的に熱湯が噴出する温泉のことで、地中で約150度だった温泉が噴き出す時には約100度の熱水となり、さえぎる屋根や石垣がなければ50メートルほども飛び出す力があるらしい。ここでは危険防止の為、屋根でその勢いは止められてしまう。それでも約5分間の噴出に何故か牧野はバンザイして喜んでいた。

いや、だから他の人が見てるから・・・思わず他人のフリしてその場から逃げた。


「もう気が済んだ?俺、もうこれ以上は無理!」
「あ、そうだよね~・・・じゃあ何処かでご飯食べる?」

「・・・・・・今から?」

「お腹空いたよね~」


暑さと眠気で歩けないだけで、あんたを見てたらお腹いっぱい。
それなのに今度はスマホでレストランを調べ始めたから、俺はそれが終わるまで運転席で目を閉じていた。




「・・・・・・・・・あれ?寝てた・・・」

どのくらい経ったんだろう。
気が付いたらエンジン掛けたまま居眠りしてて、窓からの光りで目を覚ました。
ふと横を見たら牧野まで爆睡・・・そりゃそうかと身体を起こしたけど、牧野はスゥスゥ寝息をたてて眠っていた。


・・・薄ら汗かいちゃって。

日焼け止めしてるの?鼻の頭・・・もう赤くなってない?
暑いんだろうな、唇が乾いてない?

その時に牧野の額から流れた汗が耳の横を伝って・・・それが凄く色っぽく見えてドキッとした。


本当に寝てるのかな・・・まさか寝たフリとか?
いや、でもこの様子だと寝てるよね?気が付かないよ・・・ね?


俺の目には牧野がさっきよりも大きく見えてる、ってか俺が近づいてる。
もう少しで牧野の顔に触れそうな所まで・・・・・・そう思った瞬間に「うーーーーん!」って牧野が背伸びした!!


ゴツンッ!!


「ふわぁ~!暑かったぁ!寝ちゃったよ・・・って、あれ?花沢類、どうしたの?窓で頭打ったの?」
「・・・・・・てぇ・・・」

「は?何があったの?車の中で暴れたの?」
「・・・暴れてない、どっちかって言うとそーっと・・・」

「そーっと?何したの?」
「そーろそろ行こうか」

「・・・?うん、行こう!」


・・・・・・・・・疲れる。





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Comments 8

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2019/09/01 (Sun) 01:25 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/01 (Sun) 01:45 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/01 (Sun) 08:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花梨様、おはようございます。

懐かしかったですか?(笑)

そうそう!坊主地獄ね!私もあの丸い泥が坊主に似てるからだと思っていました。

つい最近娘と2人で遊びに行ったんですよ~。

全部は回りませんでした。時間もなかったので海地獄と山地獄と血の池地獄に行きました。
娘は小さい頃に行ったのに忘れてて、再び血の池地獄に感動しておりましたが。
遠い昔、私達の修学旅行は長崎グラバー邸→熊本城→阿蘇山→別府がお決まりでしたね~。

私の知ってるところに2人を連れて来たかったのでここにしましたが、もう一つ、つくしちゃんに買い物させたかったので(笑)
何か判りますか?大分と言えば○○○○ですよ(笑)

つくしちゃん、大好きですからね~!

2019/09/01 (Sun) 09:33 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、おはようございます!

そうなんです・・・よく考えたら夏のお話しだった💦
それなのに温泉に行かせる私は鬼ですよね💦

私も最近行ったのですが、死にそうでした(笑)
ここまでは車で行ける場所に住んでるので運転したのですが疲れましたね~。

若いときは何とも思わなかったのになぁ・・・関門橋に辿り着くまで、それこそ地獄でした(笑)

で、この2人、進展するのかしら?ははは!どうかなぁ?

2019/09/01 (Sun) 09:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます!

むふふ、類君ったら何気に・・・ねぇ♡
そりゃもう、頭の中ではその気だったんじゃないですか?

ただ相手がつくしちゃんですから手強いですよね💦

類君の台詞じゃないですが「そーろそろ行こうか」・・・行って欲しいですよね~(笑)
足踏みしてるのは類君だと思いますが?!

今晩のお宿はどうなって入るのでしょう?ドキドキMAXな2人です♡

2019/09/01 (Sun) 09:43 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/01 (Sun) 15:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: ありがとうございます

ゆませ様、こんばんは。

初めまして、でしょうか?ご訪問&コメントありがとうございます。

おおっ!そうなんですね?
ふふふ、類君が鉄輪を歩いたのですよ(笑)
似合うのか?って言われたら判りませんが、私も何度も行った場所なので想像しちゃいます。

類君の入った足湯に入りたい・・・(笑)
昔は温泉玉子の他に「蒸かし芋」って売ってなかったですか?今もあるのかなぁ・・・。

2019/09/01 (Sun) 20:59 | EDIT | REPLY |   

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