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「あっ!かのん、あのおさかな金色~!」
「うわぁ、ここにカメさんの石があるよ?」

「かわいいねぇ~!あきらパパのおうちにはおさかな、いないもんね!」
「しおん、笹を見に行こう?」

「うん!」


双子が挨拶した後、家元のお許しをもらってお庭に出ていた。
そこに付き添ってくれているのは志乃さんで、顔を綻ばせて子供達の傍に居てくれる・・・だから私たちは安心して彼女に子供達を任せた。

家元はあれから着物を着替えに行き、再びお部屋に来た時には落ち着きを取り戻していたけど眉間の縦皺は入ったまま。何がどうなってるのかさっぱりって顔で私たちの前に座っていた。
桔梗の間には大人だけ・・・子供達が見えるようにと障子を開け放ったまま総が話を始めた。


「ここからは親子として話したい。親父、お袋、見ての通り俺の子供達だ。今日が4回目の誕生日になる。
この子達を西門に迎えるつもりでここに連れて来たんだ。詳しい事はちゃんと説明するが、せっかくの誕生日だから一緒に祝ってやってもらえないか?」

「今日で4歳・・・では、あの子達は・・・」

「親父達が牧野を東京から追い出した時に判ったらしい。牧野に再会したのは去年の12月、双子の存在を知ったのは1月・・・離婚成立の少し前だ」

「・・・なんだと?」

「実は今、戸籍上はあきらの子供になってる。少し長くなるが説明するから聞いて欲しい」


総は4年半前のあの日から今日までの、あの子達に関する部分を説明していた。
その為には私が佐賀に居たことと、美作さんにそこで出会ったことも話さなくちゃいけなかったけど、女将さんや吉本さんの事なんかは省いていた。
美作家に助けられた経緯と鎌倉に住んでいたこと、どうして美作の養子になっているのかを説明した時には厳しい顔をして俯いてしまった。

そして私が西門を恐れていたこと・・・見付かったら子供達と引き離されるかもしれないから、病気が治っても引き取らなかったと言えば深いため息が漏れた。
そして家元夫人には先日打ち明けていたことを伝えたら、驚いて夫人の顔を横目で見ていた。


「お袋が知ったのは離婚前だが、その時に騒ぎ立てるのは不味いと考えてくれただけで親父に隠したかった訳じゃない。落ち着いたら俺が話すだろうと思って待っててくれたんだ」

「・・・・・・本当に4年間ずっと会ってた訳ではないのだな?紫を騙すような事ではなかったのだな?」

「それは本当に違う。疑うのなら美作に確認すればいい。あきらの両親も協力してくれていたんだから。それに俺はずっと西門が牧野を隠して監視してると思ってた・・・そう言ってただろ?」


その言葉には家元もバツが悪そうに総から目を逸らせた。
行き先など知らないのに如何にも知ってるかのように振る舞ったと聞いたけど、私はその時のやり取りを知らない。でも総はここで自分の両親の言動を責めたりするような言葉は出さなかった。


「半年経ったから・・・そういう事か?」

「それもあるが戸籍上の手続きを考えたら年内には迎え入れたい。学校が絡んでくる前、そう思ってのことだ。
それにあの子達に本当の親が俺達だと伝えたのも半年前、それなのに一緒に住めない理由があいつらには理解出来ない。だから小さいながらに心を痛めて時々不安定になるんだ。
やっとつくしを母親だと認めてくれたけど、俺はまだ本当の意味で父親じゃないってさ。たまに泊まりにくる程度の男・・・そう思われてるらしい」

「たまに来る・・・か」

「あぁ。それに今は美作邸の離れに住んでるから、いつまで経っても気持ちが美作に向かってしまうんだ。そういうのを全部ひっくるめて解決させたいと思ってる」


家元は総の話を聞きながら、夕日の中で笹竹に飾りを括り付けている紫音たちを見ていた。それは家元夫人も同じで、この人には紫音の姿が幼い頃の総に見えるのかもしれない。

総が着ていた浴衣・・・総の子供にと思って大事にしていたものだもの、特別な想いがあるように感じた。


この後、総は日光での紫音の様子や、あの子が私の稽古に興味を持っている事を話した。
それには嬉しそうな表情を向けた家元だけど、総は「それでも将来の事は本人に決めさせる」なんて言って親子で睨み合ってる。説得しようとしているのか怒らせようとしてるのか、私は2人の会話を聞いてドキドキだった。


「牧野さん、あなたに聞いてもいいかな?」
「・・・はい」

急に私に言葉を掛けてきた家元に向き直り、私は緊張して姿勢を正した。
チラッと総を見たら軽く頷くだけ。自分の気持ちを素直に話せ・・・そういう意味だと思ったから真っ直ぐ家元の目を見つめた。


「色々な事が重なってあなたにも申し訳ないことをしたのは認める。
だからと言って、その時の詫びのつもりでこの西門に迎えるという考え方は持ってはおらんのだよ。総ては西門流のため、その為に最善だと思う道を選びたいと思っていることに変わりはない」

「私としましても、あの時の事を理由にお認め下さいと言うつもりはございません」

「それなら聞くが、あなたはこの西門に入る覚悟はおありか?総二郎は色々改革を、と言うがそんなに簡単に変わる世界ではない。この世界を知らないあなたには苦痛でしかないと思う。
口煩い連中も居るし、辛く感じる行事もあり厳しい決まり事もある。我慢しなくてはならないことも、自分の気持ちを抑え込む事も多かろう・・・それに耐えられると本気で思うのか?」


覚悟があるのか・・・そう言われたら自信なんてない。
そう言えばアパートに来た時にも「本気で考えているのか?」なんて酷い言葉を出されてショックを受けたなって思い出した。

でも今はそんな言葉を出されても驚きもしないし悲しくも怖くもない。
それだけ色んな経験をして逞しく、図太くなったんだなって思うと、この4年半はある意味無駄じゃなかったんだって気がした。

少しは強くなったのかもしれない・・・と。


「1人でここに住むのでしたら難しいと思いますが支えて下さる総二郎さんがいてくれれば大丈夫、そう信じています。私の助けにもなってくれますし、直すべきところがあれば教えて下さいます。
再会してからいつも話すことは2人でいれば前に進める、と言う事です。それに私たちには希望である子供達が居ますから」

「その子供が辛い修行をするかもしれない・・・それを傍で黙って見ることが出来るのかな?たとえ子供であっても修行するとなると横から余計な口出しは困る。総二郎の跡を継ぐ場合、そのような苦しみも味わうと思うが?」

「その時は見守りたいと思います。紫音の心に任せて、あの子の判断に任せて、それでも茶道を選んだのならずっと傍で見守ります。甘えは許されなくても愛情は注ぎたい・・・私こそまだ何も知らない人間ですのでそれ以上の事は言えません」


「・・・・・・まだまだ宗家の嫁になるには知らない事が多いようだ。
今年中に西門についての勉強をしておきなさい。後援会の方々にお会いしても恥ずかしくないように・・・な」

「はい、一生懸命努力致します」




*********************




親父がつくしを認めて、来年になったら俺達の再婚を公表する・・・今日はそこまでの話合いで終わらせ、早速双子の誕生日会が始まった。
志乃さんが大至急用意させた子供向けのメニューがテーブルに並び、いつの間に手配したのか豪華なバースデーケーキまで出てきた。

この屋敷では出たこともないジュースに可愛らしいコップ、和食器ではなくて洋風なイラスト付きの皿が何処から来たのかと俺の方が面食らった。それに子供用の箸にスプーン、そんなものがこの屋敷にあるなんて知らない。
志乃さんに聞いたら「総二郎様達が使われたものを家元夫人が大事に取っておられたのですよ」と言われ、耳の辺りが熱くなった。


浴衣姿の紫音と花音は大はしゃぎで、目の前に並んだ料理をつくしと俺に催促し、その自由な行動に親父達は吃驚していたが大笑いしていた。

ガキの頃、俺達兄弟がこんな事していたら先代や親父が怒鳴り散らしてたから、毎回飯の時間になるとビクビクしたのを思い出した。箸の使い方を間違うとその場で手の甲を叩かれ直される・・・直される事は間違いじゃないが、そこに恐怖が伴う為に飯が美味いと思った事がなかった。


「ほら、紫音。綺麗に食うんだぞ?残しちゃダメだからな」
「うん!ありがとう、そうちゃんパパ!」

「花音、好きなものばかりはダメよ?作って下さった人にありがとうって気持ちでいただくのよ?」
「はーい!ママ、でも初めはこれがいい~」

紫音と花音に手渡された皿に希望のものを乗っけて戻すと、嬉しそうに頬張って「おいしい~!」って言葉を出す。それを傍で聞いていた料理長がニコニコしながら照れていた。


「ママ、あの向こうのたまご、たべたい!えっとね、2こ!」
「やだ、紫音ったら、1個ずつにしなさい!」

「そうちゃんパパ、かのん、エビたべる~」
「お前、毎回エビだよな・・・」

「そうちゃんパパ、これなぁに?ぼく、たべられる?」
「ん?こいつは茶碗蒸し。熱いから気をつけて食え」

「ママ~!にんじんがお花になってる~!」
「花音が食べやすいように可愛くして下さったのよ?はい、食べましょうね~」


こんなの聞かれて小っ恥ずかしいが、口元がニヤけてる気持ち悪い親父と、まだ飯が始まって数分なのに泣いてるお袋。
流石紫音と花音、そんな2人にもサービスするのを忘れなかった。


「おじいちゃま、これおいしかったよ?たべてみて?」
「お?お、おぉ・・・ありがとう」

そう言って子供用に味付けられたハート型の卵焼きを親父の皿に置く紫音。

「おばあちゃま、泣いたらごはんがしょっぱくなるんだって。だからね、甘いものたべたらいいんだよ」
「えっ?えぇ、そうね、いただくわ」

今度は花音がお袋の皿にさつまいもの甘煮を置いてった。



紫音と花音がいつの間にか親父達の隣で食べ出したのを、オロオロしながら見守るつくし・・・俺はそんな光景をここで見られるなんて思わなかった。
あきらの家には程遠いが、少しは飯を美味しく食べられる家になるだろうか。



1年後、3年後、10年後・・・昔は考えたくもなかった将来に夢を描いていた。




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2019/08/20 (Tue) 14:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

あっはは!そうね、気絶していたのに立ち直り早かったですね!
そこは家元だから?
格好付けておかないとねぇ♡

でも、どうやら孫には甘いようですね♡
この家元にハート型の卵焼き・・・気持ち悪いですねぇ💦ははは!


イラスト付きの食器・・・頭に浮かんだのはラスカルです(笑)
なんでだろう?我が家にラスカルのお皿があるのよ~💦

いつ何処で手に入れたのか全然記憶がないんだけど、先月大掃除したら出てきた(笑)


うんうん、楽しいお誕生日会はまだ続きます。
紫音と花音のおかげですね!

2019/08/20 (Tue) 23:45 | EDIT | REPLY |   

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