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緊張しまくりの夕食が終わったら、テーブルの上には豪華なバースデーケーキが置かれた。

僅かな時間しか無かったのにチョコレートのプレートにちゃんと名前が入ってる。
小さなロウソクが左右に4本ずつ立ってて、子供達が吹き消しやすいようにしてあった。志乃さんの心遣い・・・本当に有り難かった。

勿論家元は歌わなかったけど、残りのメンバーと厨房の人も呼んで「HappyBirthday」を歌い、それが終わると今日2回目の誕生日会・・・紫音と花音は「せーの!」でロウソクの火を吹き消した。
家元は全く想像していなかったからこんな可愛らしいケーキを目の前に戸惑いが激しかったけど、家元夫人は嬉しそうに子供達に食べたい部分を聞いていた。


「かのん、ここのいちご~!」
「ぼくはどこでもいい。ママが先に好きなの取ったら?」

「え?ママはねぇ・・・いや、今日は紫音たちの誕生日じゃない!ママが選べないわよ!」
「くくっ、今お前、本気で言おうとしただろ?」

「おじいちゃまにはかのんが切ってあげる!」
「じゃあぼくはおばあちゃまに!」


そう言ってお2人に持って行くケーキのお皿、その時は演技ではなく嬉しそうに受け取ってくれた。

美作邸でのお昼は夢子おば様が可愛い演出をして、お手伝いさん達も加わって賑やかだったけど、ここはまだみんなに知られていないしお手伝いさんの年齢も高い。
だから静かなお誕生日会になったけど、子供達はそれなりに楽しそうだった。


こんな風に人懐っこく明るく育ってくれたおかげ。
それでもこの先西門で暮らせることになった時、この子達の性格を丸っと受け入れてもらえるだろうかって言う心配はまだ心の奥にあった。


「紫音くん、花音ちゃん・・・気に入ってもらえるといいんだけど」

ぎこちない呼び方で家元夫人が双子を呼んで、その手には可愛らしい袋が2つ・・・子供達へのプレゼントを用意して下さったみたい。子供達は嬉しそうに家元夫人のところに行くと「ありがとう!おばあちゃま」とお礼を言って受け取った。


紫音にはドイツ製の木製知育玩具。バランスゲームと言って色んな動物の形をしたつみきを崩れないように積んでいくおもちゃ。花音には可愛らしいバスケットに詰められた陶器で出来たお飯事セット。
どっちも似た感じのものは持ってるんだけど、そんな素振りは見せずに私に見せてくれた。

「良かったねぇ」って言うと2人とも「「うん!」」って・・・感謝の気持ちを大切にしなさいと言う夢子おば様の躾だと思った。



**



「きゃあぁー!しおん、きれい~!!」
「かのん、こっちに向けないでよ~」

「こら、花音!危ないから人に向けるなって」

「きゃははは!そうちゃんパパ、こわいんだぁ~!」
「ちがうよ、かのん、やけどしたらダメだからだよ」


ケーキが終わったら裏庭で総が子供達に花火をさせていた。

美作でも毎年必ずやっていたから2人とも花火は大好きみたい。
花音は欲張って両手に沢山持ってるけど自分じゃ種火をつけられない。だから総に叱られながらだったけど、全然反省しなくて目の前の花火を振り回していた。
紫音は1つの花火をジッと見るのが好き・・・だから1本だけ持った花火が終わると慌てて次の花火をもらいに行く。

ちゃっかりしてる花音とのんびりしてる紫音はここでもその性格がよくわかる。


この時家元はもうお部屋に戻っていたけれど、私と家元夫人は並んで縁側に座り、3人の姿を見ていた。
ここに来た時には緊張していたのに、この時間になったらそれもかなり解れていたから子供達の動きを見てはクスクス笑ったりして。
家元夫人もいつもキリッとしていたのに今は穏やか・・・昔、お稽古に来る度に雲の上の存在だと思っていたのに、すごく身近に感じられた。
だからって話し掛けてはもらえない・・・思い切って私から声を掛けてみた。


「家元夫人、ありがとうございます。急に連れて来たのに気を遣っていただきまして」

「・・・いえ、いいのよ。多分総二郎さんが連れて来るのだろうと思っていたから。これまでの事が判らなくて悩んだんだけど、総二郎さんに聞きたくても・・・ちょっとね」


その言い方だと、総はまだ自宅では怖い顔して歩いてるのかしら。
横を向いたら少しだけ淋しそうな顔で笑う家元夫人と目があった。でもその目はすぐに浴衣姿の双子に向かう・・・それとも子供と遊んでる総を見てるんだろうか。


「あの浴衣もありがとうございました。あれを持って来てくれた時、総二郎さんの方からここで誕生日会をしたいって言われたんですよ」

「そうなの?」

「えぇ・・・だから総二郎さんにも特別な浴衣なんだろうって思いました。冬に日光でお茶を飲ませた時は美作さんが作ってくれた七五三の着物だったんです。その時は悔しそうでした・・・いつか西門のって、そう言ってました」

「・・・ふふっ、ちゃんと持っていますよ。総二郎さんの着物・・・やはり処分なんて出来ませんもの。こう見えて私にも沢山思い出はあるのよ。でも顔に出して喜んだりはしゃいだりは出来なくてね。あの子達にとって母親って言うより家元夫人だと思わせるような態度で接したのは本当・・・そうしなきゃいけないって自分にも厳しく言い聞かせたから」

「親馬鹿みたいで恥ずかしいんですけど、紫音も花音もとてもいい子です。私が引き取る前の3年間、本当に美作さんに可愛がっていただきました。愛情たっぷりで育ててもらったので素直で明るい子になりました。でも暴れん坊でパワフルすぎて、これまでも総二郎さんを何回も怒らせてます。
だから西門に住むようになった時には驚かれたり呆れたりってあるかもしれないんですけど・・・それでも許してくださいますか?」


私がそんな事を言うもんだから家元夫人も苦笑い・・・この質問に「いいですよ」なんて言われる訳がないのにって慌てて口を押さえた。


「ねぇ、牧野さん。総二郎さん・・・どんな感じなの?教えてくださる?」

「子供達とですか?」

「えぇ・・・あなたから聞かないと、あの子は絶対に私には教えてくれないわ」

「そうですねぇ・・・この半年間のことですが・・・」


家元夫人が聞きたいと言ったから、私はこれまでの出来事を話した。
初めは総の子供だと言わなかったから「そうちゃん」って呼ばれて・・・でも、すぐに懐かれたこと。
親子だと名乗ってからは私と子供達の間に入って相談に乗ってくれたこと、子供達とお風呂に入って大騒ぎしたこと、一緒にご飯を食べる時には子供の世話をしてくれること・・・日光では着物を着せて嬉しそうだったこと。

私が階段から落ちて病院に運ばれた時も花音を叱らずに諭してくれた事、美作邸に泊まることが出来た時は子供達が総を起こしに行くこと、そのどれも黙って嬉しそうに聞いていた。

最後には「可愛がってるのね」と・・・その時には光るものを見てしまった。


「牧野さん・・・あの時は本当にごめんなさいね。いい歳して大事なものが見えていなかったのは私たちです。絶対に逆らえない、変えられないと決めつけて、総二郎さんに辛い思いをさせたのね」

「家元夫人・・・」

「判っていたのよ、でもね・・・西門はこうなのだと・・・これでいいのだと自分に言い聞かせてきたの。私に迷いがあっては示しが付かないと思って、たとえ半信半疑でも色んな事を家元の指示に従い貫き通してきたわ。
あなたの妊娠もそう・・・疑ったのに知らないフリをしたの。紫さんにも馴染んでないことを知りつつ、これでいいのだと見て見ぬフリをしました。それは・・・間違いだわね」


ここで私は鞄からあのお金が入った封筒をそっと取り出した。
それを家元夫人はキョトンとした顔で見ていたけど「東京を出て行く時にいただいたものです」、そう言うと少し悲しそうな顔をした。


「これをお返ししたいんです。家元にお渡し頂けませんか?」
「それは出来ません。私はそのお金に関わっていないのですもの」

「でも、持っていたら凄く気になるんです。思い出すんです・・・だから受け取って下さい」
「・・・・・・使わずに持っていたの?」

「出産の時に少し使わせて頂きました。その時は本当に助かったんです。その後、美作さんの関連会社で働かせてもらって戻しました。家元夫人・・・これがあったから安心でしたけど、それでも今はもう必要ないんです。お願いです・・・返したいんです」


家元夫人は私の言葉で頷いてくれて、封筒を受け取った。
そして紫音と花音の為に使いましょう、そう言ってくれた。


その時、花音が花火を持って走って来た。
そして私ではなく家元夫人に「おばあちゃまもしましょ?」って迎えに来た。

「いいじゃないですか、家元夫人。子供達と花火して来て下さい!」
「え?でも・・・私が?」


「くすっ、だって花音は家元夫人を・・・お婆様を呼びに来たのですから」




**********************




花音がお袋の手を引っ張って来たからここで双子の守り役を交代、俺はつくしのところに戻った。
お袋は久しぶりの小さな手に随分戸惑ってるみたいだったが、紫音の傍まで行くとライター片手に花火に種火をつけてる。
そんな姿を横目で見て・・・ふん、と鼻先で笑ってしまった。


つくしは縁側でニコニコしながらその光景を見て、俺が戻って来たら少し腰をずらして「ここに来て」・・・そんな可愛い言葉を出すから押し倒したい衝動に駆られた。いや、親も子供も居るからしないけど。


「なに話してたんだ?」
「ん?色々かなぁ・・・あの子達と居る時の、総の奮闘ぶりを教えてあげたよ」

「・・・余計な事言いやがって!」
「だってぇ・・・いいじゃない、息子の事は知りたいものよ」


ケラケラ笑ってるから嫌な話じゃなかったのか・・・それならいいと俺も笑って子供達に目を向けた。


紫音が自分の持ってる花火をお袋に渡した・・・「おばあちゃま、これ、きれいだよ」って言いながら。
花音がまだ色鮮やかに輝いてる花火を持ってるのに、そいつを見ないで次のを探してる・・・そしてお袋にもう火を強請ってる。

お袋が「花音ちゃん、これはどう?」「紫音君、煙が来ちゃうわ」って子供達に声を掛ける。
背中しか見えねぇのに嬉しそうだって感じるのは何故だろう・・・そう思ってお袋の後ろ姿を見ていた。



「パパ~!あたらしい花火、くださーーーい!」


花音が大声で叫んだ時、「そうちゃん」が消えていた。
それを聞いたつくしが嬉しそうに・・・「良かったね」って泣いていた。





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2019/08/21 (Wed) 13:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

そうそう!歌った方が怖いって💦鬼瓦みたいな顔で笑っても怖いって💦

ん?総ちゃんのお父さんが鬼瓦?そんな事ないか・・・でも怖いって!


ふふふ、花音ちゃん、相当なお転婆設定だよね~!
でも私はこのぐらいの女の子が好きです♥
どうせ女の子はお年頃になると変わるでしょ?子供の時はお転婆ぐらいがいいなぁ~。

うちのお嬢みたいに保育園脱走したらヤバいけど💦
(この時、フェンスをよじ登って脱走したんだけど、迎えに行ったら私が怒られたのよ?ご家庭の躾は!って。
それってどうなの?って思った・・・事故に遭ってたら保育園のせいだと思うけど・・・)


あっはは!明日の朝ね(笑)

「そうちゃんパパ!起きてぇ~!あれ?これ・・・なに?」by花音

さぁ、なんでしょう?

2019/08/21 (Wed) 21:06 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/21 (Wed) 23:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

あっはは!花音ちゃーん!朝からいいもの見たねぇ♥
ギュッ!ってしちゃダメよ♥


そうそう、、昔言いましたかね?(笑)
いい先生もいたんですが、その人のせいでどうしても思い出すのは

「ご家庭の躾は?」
「お母さん、ちゃんとご飯作ってます?」
「○○ちゃんには手が掛かりますね!」


・・・・・・・・・今でも先生なのかなぁ?
歳からして園長とかになってるのかな?


そう言ううちのお嬢はバレエ教室だけど2歳から6歳ぐらいまでの子供を教えています(笑)

「うちの生徒、めっちゃ可愛いよ~!」っていつも言うんだけど・・・
「あんたはめっちゃ暴れん坊やったよ?」って心の中で言い返します。

懐かしい・・・○○年前(笑)

2019/08/22 (Thu) 00:12 | EDIT | REPLY |   

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