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双子の誕生日を西門で過ごした後、屋敷内では新しい動きがあった。

親父が使用人全員を集めてつくしと子供達の説明をし、公表までは極秘事項だと伝えた。けじめとして俺の再婚は半年先とするが、時期を見てつくしと子供達が西門に迎え入れる・・・そう付け加えられた。

後援会には定例会の時に同じ事が伝えられ、鷹司会長が援護してくれた。
当然ここでは婚約、結婚の期間に不貞行為があったのではないかとの質問が上がったが、再会は離婚後だと言う事にして否定、その場にはあきらにも同席してもらった。
美作商事も後援会幹部に名を連ねているし、出席している連中の殆どがあきらのことを知っていたからだ。


「どう考えてもこれは離婚の理由の一つでは・・・?」

「もしそうならこの再婚には納得出来ませんわ。茶道に馴染めなかったのは事実かも知れませんが、前奥様がお気の毒ではございませんか」

「それにどちらにご縁のお嬢様でしょうか?」
「牧野家・・・はて、聞き覚えなどありませんが?」


そんな意見があちこちから聞こえてきた。
そこで俺が喚いても逆効果と言う親父の考えで終始無言、その代わり親父とあきらが答えてくれた。


「私も初めて知らされた時はそのように考えましたが違うようでございます。
実は・・・お恥ずかしいのだが、私はその牧野さんと言う方をよく知らなかったのですよ。ですから宝生家との縁談が決まった時に関係を絶つように申し渡したのは私なのです。総二郎に2度と会わないようにと酷い事を言いましてね・・・どうもその時には子供を宿しておられたようです。それをこちらの美作家が保護されたようでして・・・」

「ご存じ方もおられるでしょうが私と総二郎は幼馴染みであり学友です。そして牧野つくしさんは私たちの後輩ですから面識がありました。2人の交際も当然知っていましたが婚約により彼女は総二郎から離れることになり、偶然ですが東京を離れて暮らしていた場所で私の方が先に再会してしまったのです。その時に彼に伝えていなかった妊娠の事実を知りました。
牧野さんはどうしても産みたいとの事でしたので、西門家にも総二郎にも一切告げずに我が家が住まいを提供し、出産も私たちが付き添いました。今回総二郎が離婚となったことをきっかけに彼女と子供の事を伝え、会わせたのはこの春のこと・・・総二郎はそれまで子供の存在を知ってはおりません」

2人が並んでそう言っても「まさか」「いや、それでも」と言う声は聞こえる。
その時に鷹司会長も言葉を添えてくれた。


「先日・・・牧野さんのお茶をいただきました。それは優しい味の、美味しいお茶でございましてな。
若宗匠の元で真面目にお稽古に取り組まれておいでのようでした。若宗匠だけでなく西門流の事も考えて下さっているようで、強い覚悟はおありのようです。
何方かご質問されたようだが牧野さんは極普通のご家庭のお嬢さんです。でも、この方が支えて下されば若宗匠は安心してご自分の茶に向かうことが出来るのだそうですよ。家柄より血筋よりそれが何より・・・そうは思いませんか?」

「いや、たとえそうであっても西門流ですよ?一般家庭からお迎えしたことなど無いでしょう?」


「・・・おぉ、そう言えば牧野さんと特別仲の良いお友達に道明寺様と花沢様もおられましたかな?ねぇ、美作様」

「は?・・・あぁ、そうですね。道明寺も花沢も牧野さんに何かあればすぐに動き始めると思います。特別な存在・・・でしたからね」


ここで司と類の事を持ち出すと連中から唸り声が上がった。
道明寺ホールディングスと花沢物産・・・それに美作商事がバックアップとなると誰も何も言わなくなる。特別な存在を連呼され少々癪だったけど、それで治まるのならと俺も黙っておいた。



全員がこれで納得してくれたとは思わないが、何とか初めの報告は終わった。
半年後の入籍は西門家の強い希望であることは勿論だが、そこに紫音の存在も大きかった。

西門流を継ぐ者が居る、それだけでこの場全員の表情が穏やかになったのは事実だ。


「皆様もいつかつくしさんという方に会ってご覧なさい。とても温かい気持ちになると思いますよ」

最後に締め括ってくれたのも鷹司会長だった。



本邸では紫と住んでいた離れの改修工事が進められた。
元々子供が出来てもいいようにと作られてはいたが、それが既に4歳の男女とあって部屋を増設し、内装や家具も総入れ替えするとお袋が張り切っていた。

出来上がるのは秋・・・西門に移るのはその頃にしようとつくしと話し合った。



**



8月の終わり頃、あきらから連絡があった。
それはあの香川真一の事・・・紫がくれた土地の中で気になる場所があると言って、屋敷ではなく美作商事の執務室に呼び出された。


「あぁ、悪いな、屋敷じゃ話しにくかったから」
「いや、大丈夫だ。それで何か判ったのか?」

「ん、ここなんだけど・・・」
「何処だ?」

あきらが地図を広げたのは北関東のとある場所・・・そこは紫名義に変更された土地の一部だった。そこに赤く×印がされていて、タブレットで画像を見せられた。

雑木林で何もない山奥・・・回りに民家も少なくて整備なんてされていない道に外灯すらない場所。画面を動かしていくと、その奥に古びた祠のようなものがあった。
誰も手を加えないから朽ちて崩れそうな木製の祠で、切妻屋根を備え観音開きの戸があった。普通そこを開けると内部に仏像や神像などが収められているはず・・・だが、その中には何もなかったと調査した人間から言われたそうだ。

こんな場所にあるなら神道的な自然崇拝を偲ばせるものとも考えられるが、問題は私有地だという事。
そう言う意味で土地の所有者が建てたものならこんなにも放置しないだろうし、もっと回りを整備するだろうと・・・。


「・・・・・・つまりそういう事か?」

「はっきりしないが調べた人間が気になって近所で聞いたら、随分前に何人かの男が来たことを思いだした住民がいたんだってさ。しかも数日間だけでそれっきり誰も来ないって言うんだ。
それに特別この土地で災害があったり供養しなきゃいけない事件は起きてないらしいから、どうして祠が雑木林の中にあるのかも判らないらしい」

「ただ時期は不明って事か」
「まぁな。私有地だから踏み込まないし関心はないだろうし」


紫から口頭だが立ち入りの許可はもらっている。
次の日曜日にあきらと一緒に行ってみることにした。



**



「あきら様、なにかありますね」

そう言ったのは美作の人間で、この土地を調べてくれた作業員だった。
祠そのものは古くなっていたから人間の手で簡単に移動でき、数人でその下を掘り起こした結果、ボロボロの毛布のようなものが出てきた。
それを抱えて地面に置き、ゆっくり広げてみると・・・・・・人骨だった。


「・・・やっぱりな」
「あぁ、間違いないだろうな。どうする?鑑定するか?」

「・・・いや、待ってくれ」

泥塗れの人骨と泥と同じ色になった衣服だと思われるボロ布の間に何かがあった。こんな土色の中で微かに色付いたもの・・・何故かすごく気になって手を伸ばしてそいつを持ち上げたら・・・殆ど原型を留めていない桜貝だ。

何とか桜貝だと判る塊が棒のようなものの先にくっついてて、俺が持ち上げて掌に乗せるとそこで呆気なく崩れ落ちた。


紫が探し続けた桜貝の髪飾り・・・それが香月真一と一緒に眠っていたのか。


あの事件の時、この男の衣服の何処かに入り込んだんだろう。
まさかここから出てくると思わなかった俺は呆然とした。

だがこれで人骨は香月真一と確定された。

恐らく宝生の先代がここに香月を埋め、祠を建てることで当面の間この土地を掘り起こしたりしないようにと考えたんだろう。しかも紫名義にすれば、不動産に興味のない彼女なら放置する・・・そう思ったんだろう。



香月の骨はこの場から回収し、美作の医学研究施設で洗浄してもらい骨壺に入れた。
そして両親とつくしに総てを話し、つくしには一緒に京都に納骨しに行って欲しいと頼んだ。

つくしは涙を浮かべながら頷いてくれて、1週間後、双子を夢子おばさんに預けて2人だけで出掛けた。



明日香堂の夫婦が眠る寺の中にある墓・・・18年経って、やっと香月真一は両親の元に帰った。
それが済んだら西門の先祖の墓につくしを連れていき報告、先代にも香月の事を教えてやった。


「・・・悲しい事件だったね」
「まぁな・・・」

「今頃天国でご両親にお説教されてるんじゃないの?」
「くくっ・・・かもな」

「でも、家族一緒・・・になったんだね」


つくしと見上げた空には波状雲が広がっていた。
明日は雨かもしれない・・・。



少しずつ季節は夏から秋へと変わって行く・・・俺達が一緒に住める日が近づいてきた。






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2019/08/22 (Thu) 16:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

そうそう!もう少しで香月君の事を忘れるところやった!(笑)
いやいや、見付けてあげないと可哀想でしょう~。

あれだけヒントばっかり出して来たのに「本人何処行った?」って終わるところでしたよ(笑)
桜貝の髪飾りもですけどね。

この場面は考えていたのに書き忘れそうだった(笑)危ないわ~💦


土の中から出したのは作業員ですよん。
総ちゃんは出てきた髪飾り取っただけ。人骨なんて遺跡でしか見た事ないですが、実際に掘り出したら怖いでしょうね💦
(てか、二次小説に人骨出すなよ!)

これで事件絡みは全部終わったどーーーー!!!


よし、ゴールを目指して頑張ろうっ!!




2019/08/22 (Thu) 21:36 | EDIT | REPLY |   

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