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「それじゃあお世話になりました。夢子おば様、本当にありがとうございました。美作の皆さんが居てくれなかったら私、今頃・・・どこでどうしていたか・・・」

「あらあら、そんなに泣きながら言わなくったってすぐ近くに居るんだから!」
「・・・はい、そうなんだけど・・・」


いざ美作家を出ようとしたら足が動かない。
紫音と花音よりも私の方が玄関で泣き崩れて、総にも美作さんにも小夜さんにも・・・夢子おば様は双子を抱き締めたかっただろうに私の背中を摩ってくれていた。

それを見て紫音が総に「ママ、どうしたの?」って聞いて、花音が「パパ、いじわるしたの?」って・・・そんな言葉を聞いたら泣き止まなきゃって、涙を拭いておば様と向き合った。


「馬鹿ねぇ!いつでも来たらいいじゃないの。それに花音のピアノの上達も知りたいし、2人の英語も聞きたいわ。
自転車は西門じゃ使えないからここに置いておくんですってよ?だから遊びにいらっしゃい。私が居るときならいつでもお菓子を焼くわよ」

「うわぁ~い!ゆめこおばあちゃまのケーキ、食べに来る~!」
「こんどはアップルパイがいい!ぼく、あれ好きなの」

「はいはい。来る前に食べたいものを教えてちょうだい?その連絡を待ってるわ」

「「うん!!」」
「はい・・・必ず連れて来ます」


この後は総が何度もおば様に頭を下げていた。
本当なら家元と家元夫人が来るべきだろうけど、まだ公表してないから大袈裟に出来ないと言うお詫びらしい。おば様も「美和子さんが来たら説教しそうだから来なくていいわ!」って笑いながら言っていた。

双子はいつも遊んでくれた小夜さんにも抱きついて「またね~」って言って、小夜さんの方が大泣き・・・エプロンで目元を押さえて紫音と花音の顔も見ることが出来なかった。
それでも「また一緒に遊ぼうね」って指切りして、これから寒くなるからってお揃いのマフラーをプレゼントしてくれた。

美作さんは私たちにもアメリカ行きの話をしたからなのか、穏やかな表情だった。


「紫音、花音・・・おいで」

「「はい!あきらパパ」」

「もう見たから判ってるだろうけど、総二郎の家はここと随分違うんだ。決まり事も言葉遣いも変わってくると思う。嫌だなって思う事も出てくるかもしれない。だけど牧野と総二郎はこれから毎日一緒だから、困った事はちゃんと言うんだぞ?」

「いやなこと?どんなこと?」
「きまりごとってなぁに?」

「たとえばご飯の食べ方とか挨拶の仕方とか・・・かな?急に全部出来るようにならなくてもいいから、1日ひとつだけでも覚えていけよ?そして笑顔は忘れるなよ?紫音と花音が笑ってないと俺にはすぐに判るんだから」

「うわ!ひとみママだけじゃなくてあきらパパもわかるんだ!」
「じゃあかのん、まいにち笑う~!」

「あぁ、そうしてくれ」



こうして双子は4年2ヶ月、私は9ヶ月過ごした家を後にして西門邸に向かった。
美作邸の屋根が見えなくなる・・・その瞬間まで3人で手を振った。



**



西門に到着しても車のまま敷地内に入れる裏口から入り、総の車が停まったら奥から数人のお弟子さんが荷物を運ぶために出てきてくれた。
子供達は前にも来てるから驚いたりはなかったけど、やっぱり気になるのは玉砂利らしく、2人で早速拾っていた。


「この赤いの、きれい~つるつる~!」
「大きさがちがうね。ここのは大きいよ?あっ、みどりいろ~!」

「おい・・・ただの石なのにそんなに拾いたいのか?」
「まぁ、見慣れたら止めるんだろうけど・・・」


そして裏口に向かったらそこには家元も家元夫人も待っていて、両手に玉砂利を持ってる双子の事を笑っていた。


「牧野さん、こんな場所から入れて申し訳ない。事情が事情だからね」
「本当にごめんなさいね。正面でも良かったのでしょうけど、何かと噂されると面倒だから」

「いえ、こんなに荷物を持ってきましたのでこっちの方が良かったです。それよりも騒がしくなると思いますが宜しくお願い致します。紫音、花音、ご挨拶なさい」

「「はーい!」」


双子はその場でお2人に挨拶し、家元夫人は勿論、家元も頬を緩ませお爺ちゃまの顔になっていた。それを「気持ち悪ぃ!」って総は悪態付いていたけどやっぱりちょっと笑ってる。
私たちが挨拶をしている間にお弟子さん達に指示をして、車から荷物を出し終わると漸く私たちの所に戻って来た。


「じゃあ、これからは宜しく・・・って言いたいけど、暫くは屋敷に慣れるために自由にさせるから。立ち入り禁止場所とかは説明しておくけど、すげぇ暴れん坊だから驚くなよ?
それと初めのうちの生活圏は母屋だけにして茶道にも触れさせない。きちんと公表が済んだらその時から宗家の事を教えていこうと思うから」

「・・・まぁ、いいだろう。紫音の気持ちを優先させるのだろう?」

「あぁ、無理強いはさせたくない。ただ興味はあるようだから望めば今でも茶室に入れてもいいと思ってる。花音は・・・こいつはまだ無理だから時間が掛かるかもな」

「先ほど夢子さんにこれまでのお礼の電話をしたら、今度2人だけでお食事でもって言われたわ。あの方の明るすぎる声、何故か怖いのよね・・・」

「くくっ、いいんじゃね?説教されてこいよ」
「総ったら・・・」



こんな会話の後、双子の手を引いて長い廊下を歩いた。

七夕から約2ヶ月。
植木の色が少し褪せただけで他は何も変わらない庭と今日も磨かれて光ってる廊下、それに張り詰めた空気・・・それを感じる私の気持ちはすごく穏やかだった。

少し前を歩く頼もしい背中があるからなのかもしれない。
私の手を握ってくれる温かい手があるからかもしれない。
これまでに沢山の人に支えて貰って、躓きながら蹌踉けながらでも進んで来られたから・・・私は1人じゃなかったんだと今はすごく感謝している。


絶対に許せないと思っていた人も今は傍に居る。
その人達はこれから家族になる・・・でも怖くはなくなった。


遠く離れた場所に大事な人が沢山居る。
呼子の女将さん、アメリカに旅立つ美作さんと仁美さん、会ったことはないけれどスイスに行った紫さんと薫さん。
フランスには花沢類、アメリカには道明寺・・・何処かで穏やかに暮らして欲しいと願うのは吉本さん。


色々な事を思い出しながら私はこれから住む場所に向かっていた。




***********************




「うわぁ!ここが今日からのおうち?」
「すごーい!しおん、ここから前に行った池が見えるよ?あとで行こうよ!」


離れに入ってから子供達が始めたのは各部屋の探検で、幾つもある部屋のドアを片っ端から開けて大声を張り上げていた。
特に自分達の部屋だと判った場所ではその置いてあるものに興味津々で、つくしも一緒になって「すごいね~、可愛いね~!」を繰り返していた。

「ママ!見て、ここかのんのおへやみたい!」
「ママ、ここはぼく?男の子色になってる」

「そうみたいだけど一緒がいいならまだ同じ部屋に居たらいいわよ。こんなにお部屋があるんだもん」

「ねぇねぇ!このおっきぃベッドはママの?パパの?」
「・・・え?えっとね・・・・・・パパとママのだよ」


子供相手になに照れてるんだか。

双子が嬉しそうに走り回るのを見ながら俺はつくしを後ろから抱き締めた。
こいつの首に腕を回し、つくしは笑いながら俺の腕を持った。そしてその肩に顎を乗せたら「何してんの?」ってケラケラ笑って・・・。


やっとここまで来た。
自分の家に・・・西門につくしと双子の居場所を作れた。


新しい生活がここで始まる・・・それが何より嬉しかった。





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2019/08/24 (Sat) 13:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんばんは!

はい!体調は大丈夫です。
急に涼しくなりましたよね・・・扇風機すら要らなくなりました。
って言いながら今日は実は義父の一周忌で朝からドタバタ💦

私は話せる人が居ないのでポツンと1人でいましたが、それでも長男の嫁なので気持ちだけ疲れる(笑)
なのでお返事遅くなってごめんなさい。


やっとここまで来ましたねぇ。
あきら君はね、やっぱりこれまですごく可哀想なポジションだったので(誰のせいだ?)
いい感じで終わらせてあげたいな、と。そういう番外編も考えています。


ドキドキはもうないですよ💦
ゴールテープ寸前ですので、穏やかにほんわかとラスとを迎えます。


あっ、類君ですか♪
笑っていただけると有り難いです♡少し巫山戯すぎだと言われますが、総ちゃんのシリアスの反動なので(笑)
こっちもくっつきそうでくっつかない💦

類君のキャラ崩壊が気になる所ですが、どうかお許しを💦



次のお話しは類君にドシリアスが来ますから・・・そっちの方が心配です(笑)

2019/08/24 (Sat) 22:31 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/26 (Mon) 14:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!


あっはは!そうね!
切り替え早いよね💦

特にこの双子は早いわ~!実際はこんなに素直じゃないと思うけどね(笑)
妄想の中では子供も可愛くなるものです。

うんうん、現実は・・・違う(笑)

2019/08/26 (Mon) 23:25 | EDIT | REPLY |   

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