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「牧野・・・!会いたかった・・・あんた、逃げすぎだよ・・・!」
「・・・花沢類、夢じゃないよね?」

「・・・・・・夢じゃない証拠、あげる」 、そう言って通りのド真ん中なのに彼は私にキスしてくれた。
甘いキス・・・優しくて懐かしくて、そのまま蕩けちゃいそうなキス。

そして唇を離したら凄く近くで目を見つめられた。
片手は私の頬を撫で、片手は逃がすまいと腰に回されてる・・・でも、私ももう何処にも行く気がなかった。


もう1度出会えたら離れない・・・そう思っていたから。



「でも、どうしてここに来たの?花沢類、日本には居ないってさっき会社に電話で確かめたのに・・・」
「くすっ、知りたい?」

「・・・うん、怖いけど知りたい。だって私、今朝まで・・・」
「知ってる。俺、大阪から来たから。そして・・・ほら、これ」


花沢類がポケットから出したのは小豆島にあるはずの貝殻の絵馬・・・私が願った『花沢類が幸せでありますように』。
驚いてそれを彼の手から受け取って、自分の手に平に乗せた。一昨日書いたばかりなのに、天使の所じゃなくて私の所に戻って来ちゃった?


「馬鹿だよ・・・俺が1人で幸せになれると思ったの?」
「・・・・・・・・・どうして?これ、だって・・・なんで?」

「・・・あんたがあの島に居る所がテレビ中継されたから。それを総二郎が偶然観たんだ。で、連絡もらってフランスから帰ってきたんだ」
「えっ!フランスから・・・これだけの為に?あっ、じゃあまさか・・・」


長谷川さんの事を聞こうかと思ったら指で唇を押さえられた。
話すなって事?花沢類・・・ヤキモチ、焼いてくれたの?


「何より大事だったからさ。あんたを掴まえるためなら他の何を放り出してでも、地球の何処に居ても迎えに来るよ」



もう1度抱き締められた腕は雨で濡れてて、私の髪からも雫が落ちるほどだった。
それでも優しい雨を悲しいとも冷たいとも思わずに・・・私たちはお互いを確かめ合うように抱き合ってた。




*******************




その日の夜・・・マンションの部屋で5年前と同じように牧野を抱いていた。
ずっと留守をしていたから何にもなかったけど、バスルームで身体を温めたらそのままベッドに傾れ込んだ。

あの頃よりもっと細くなった身体・・・でも、大人っぽい仕草が加わって艶やかだった。
いつも苦しそうに漏らしていた声も今日は凄く甘い・・・そうやって俺の耳元で囁くように吐き出す吐息はわざとなの?
時々聞こえてくる俺の名前と「愛してる」って言葉、あんた・・・そんなの昔は恥ずかしがってなかなか言ってくれなかったのに。


もっと聞かせて・・・
もっと囁いて俺を狂わせて・・・

もっと俺を欲しがって、もっと、もっと・・・


強請って欲しいと言いながら俺の方が牧野を強く求めて離せない。
どれだけ身体を繋げても、そのまだ先を求め続けるなんて・・・10年前の幼かった俺なら判るけど、大人の恋とはほど遠い愛し方だと我ながら恥ずかしかった。

でも、そのぐらい夢中だった。
牧野に俺の身体を思い出させたくて、俺の総てを受け止めて欲しくて・・・気が付いたら牧野は意識を飛ばしてた。


おやすみ・・・なんて言いたくない。
ねぇ、目を開けて、って・・・まだ足りないよって悪魔みたいに囁く俺を現実の世界に残したまま、牧野は夢の中に入って行った。




**



「・・・・・・クシュン!」
「・・・くすっ、おはよ・・・牧野。寒かった?」

「・・・・・・類、おはよ」


俺達が目を覚ましたのはもう昼前・・・疲れ切ってた俺達は、そんな明るい時間まで抱き合ってベッドの中にいた。
そして起きたてのキス・・・まだ汗ばんでる身体のまま、シーツに包まってキスをした。

何もないんだから珈琲すら淹れられないって2人で笑って、昼食も兼ねた食事はコンシェルジュに頼んで部屋まで運んでもらった。
それを昔のように向かい合って食べて、今日これからの事を話し合った。


「これから日本本社に顔を出して仕事してくる。全部放り投げて来ちゃったから気になることもあるしね。あんたは掴まえたから大丈夫だけど、フランスのクライアントは逃げちゃうかもしれないから」
「ん、判った。ごめんね、私の為にそんな事させちゃって」

「言ったろ?こっちの方が大事だって・・・5年前に俺が言わなかった言葉だけどね」
「・・・私も怖がってばかりで何も言えなかったから同じだわ。類・・・私、ここで待ってるね」

「ううん、ここじゃなくてさ・・・待ち合わせしようよ」
「待ち合わせ?」


珈琲を飲みながら目を大きくした牧野・・・彼女に5年前と同じ店で夕方待ち合わせてディナーしようって提案した。
あの日のやり直し・・・今度はちゃんと2人で帰ろうって言うと困った顔になった。

その理由は着ていくものがないって事だった。牧野は数日分の普段着しか持ってなくて、とてもディナーなんて無理だって。
だから彼女の手を引いてクローゼットに向かい、そこにある服を見せた。


「これ・・・!うそっ、まだあったの?」
「あんたの抜け殻だったからね。これ着て待っててよ」

「類・・・だってこれ5年前のだよ?体型はいいとしてももう歳が・・・」
「全然変わってないんだから大丈夫。俺もビジネススーツしかないけど構わないでしょ?」


気が付いたら「花沢」が無くなってた呼び方・・・凄く嬉しかった。




**********************




類が会社に行った後、あの日と同じように化粧して、あの日と同じハーフアップの髪型にした。
玄関にはあの時のハイヒールが保管されていたからそれを履いてみたら・・・うん、大丈夫そう。

あの日、ちゃんと彼に見せられなかったペールピンクのワンピース・・・それに着替えたけどすごく恥ずかしかった。
何度も鏡の前で全身を確認しながら、5歳増えてしまった自分を思い知る・・・それでもこれが今の私だと、気を取り直して部屋を出た。


リストランテも何も変わっていなかった。
あの日と同じ席に座って、あの日と同じように窓から外を眺めてる・・・今日は雨じゃなかったから街中を歩く人達に傘なんてない。私はその人混みの中に彼の姿があるのかなって、それを探しながら見下ろしていた。


そうしたら1人の男性が走ってるのが見えた。
くすっ・・・待ち合わせの時間に遅れてもいないのに。

彼は普段じゃ考えられないほど軽々と通行人を避けていく・・・私は目を細めてその姿を追い掛けた。


お店に入ってきた時には息が上がってる。
それでも嬉しそうに席まで来て「待った?」って・・・「ふふっ、10分だけね」って言うとその綺麗な瞳も細くなった。

お料理は美味しかった。
ワインも極上・・・私たちはこのお店で5年の時を巻き戻していた。


「あの時、俺が抱えていた仕事が認められたらあんたを花沢に連れて行くつもりだったんだ。その為に絶対に成功させて、父さんに俺の人生にあんたが必要だって示すつもりだった。だから夢中でさ、回りが見えてなかったんだ」

「そうだったの?私は自分が役に立てないからすごく不安だった・・・何をすればいいのか毎日考えたけど答えが出なくて、類には私なんて必要ないんだって思い込んだの。信じてなかった訳じゃ無いけど・・・何もかもが怖かったの」

「言わなくても判ってくれてるって思い込んだんだね」
「聞きもしないで自分勝手に決め付けたのよ」

「・・・あんたは俺の半分だって思ってたから」
「・・・私もあの日から心が半分引き千切られたみたいに思ってた」


愛は人を臆病にも盲目にもする・・・あの頃の反省会みたいな会話を少しだけしたら、お互いに噴き出して「馬鹿だよね」って笑った。
その後、彼は小さな箱を出して「開けてみて」って。
それが何なのかは見なくても判ったけど、ドキドキしながら自分の前に置かれた箱の蓋を開けた。


「・・・あれ?3つ・・・?」
「婚約指輪が1つでしょ?残りは結婚指輪・・・俺とあんたのね」

「・・・これ、類の?」
「そうだよ。はい、牧野・・・左手出して?教会まで待てないから」

「ここで?」
「うん、ここで」


類は箱の中のダイヤリングを私の指にはめて、そっとそこにキスしてくれた。
その次には結婚指輪・・・重ねるようにして左手薬指にはめてくれた。私からも類の左手に指輪を・・・その時には涙で景色が歪んで何度もやり直した。

それが終わったと同時に「おめでとうございます!」の声と拍手!
驚いて横を見たらリストランテのオーナーさんが薔薇の花束を差し出してくれて、お祝いのシャンパンまで・・・これも類の計画だと聞いて、私は1人で号泣していた。



「ありがとうございました。またお越し下さいませ」

今日はちゃんと2人でその声を聞いた。
ちゃんと2人並んであの道を歩き、私たちの手は繋がれていた・・・そんな歳じゃないのにねって笑いながら。




それからは毎日がドタバタだった。

2人で大阪に向かってアパートの片付けと引っ越し。
家具なんかは処分して必要な荷物は類のマンションに送り、それが終わったらまた東京に戻って荷物を受け取り、使ってない部屋に押し込めた。

私は渡仏のためにパスポートの申請をして、受け取りの日までは動けない。だから彼はその間もお父さんと半分喧嘩しながら、無理矢理許可を貰って日本本社で仕事をしていた。

残業して遅くなっても玄関で「お帰り~」のハグとキス・・・その後は一緒にお風呂に入って一緒に眠った。




数日後・・・

私たちは小雨の降る中、フランスへ旅立つためにマンションを出た。
持ってる傘は1つだけ・・・大きな傘の中に2人で入ってエントランスの階段を降り、同じ方向に向かった。


「ちょっと待って、類」
「どうした?」


私は遠い日に歩いていた道を振り返って見た。
5年前、遠離って行く類の背中を見送った赤い傘の私・・・今日はその時の私が笑いながら「頑張って!」って微笑んでる気がした。


『うん、もう大丈夫。ずっと側に居るよ』・・・そう過去の自分に呟いて類の手を握った。



「何かあった?」
「ううん、何でもない。楽しみだなぁ~!セーヌ川のお散歩コース、昨日調べたんだよ?」

「あはっ、そうなの?ん、連れてってあげる。それとね、行きたい所がさ・・・」



私たちの指にはお揃いの指輪。

傘に落ちる優しい雨・・・その音を聞きながら、もうすぐ青空が出そうな空を見上げた。







fin。




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2019/08/17 (Sat) 11:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんにちは。

あはは!終わり方はあっさりと、お決まりコースですよね♡

こちらのお話しは中西保志さんの「最後の雨」をイメージしたもので、あちらは悲恋ですが、それをグイン!とハピエンにしちゃいました。

類っぽいなぁ、って思った歌詞が「本気で忘れるぐらいなら泣けるほど愛したりしない」って部分♡
それを出せたかどうかはわかりませんが(笑)

最後まで応援いただきありがとうございました。


あはは!家元💦

本当はもう少し意地悪したかったけど、これ以上はヤバいと思うので(笑)
穏やかに進ませております♡

やっとラストが見えてきました。こちらも最後まで宜しくお願い致します。

2019/08/17 (Sat) 13:25 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/17 (Sat) 14:08 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/17 (Sat) 15:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

最後までお付き合いくださいましてありがとうございました。
はい、この2人はもう大丈夫だと思います♡

きっとこれからフランスに行って楽しく過ごすのだと思います~。
フランス語の特訓しなきゃですね💦

いやいや、暫くは2人の甘い生活がいいなぁ♡お幸せに~って事で、追い掛けっこ終了です。

2019/08/17 (Sat) 20:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様 こんばんは。

切ないお話しにお付き合いくださいましてありがとうございました。
焦れったい上に1度中断したので長く掛かってしまって。


あはは!離れてる時にそんな💦
いやいや、それは想像出来ませんねぇ💦特に類君にはちょっと・・・(笑)
元々誰とも付き合わないイメージしか無いので、余所見は考えられないなぁ(笑)

でも、そんなお茶目な類君が居てもいいかも?
誰か書いてくれないかしら?(笑)


雨のお話しがこんな猛暑時期に終わって申し訳ない・・・また暫く暑くなるようなのでお身体に気を付けてくださいね。

2019/08/17 (Sat) 20:25 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/18 (Sun) 00:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、おはようございます。

ははは!ジレジレさせて申し訳ありませんでした。
でもいつもの如く、ホッコリと終わらせましたよ~♡

ふふふ、素早かったでしょう?
そう言いながら毎回フランスとの時差で悩んでしまうんですが、何度も計算して「間違ってないよね?」とそればかり(笑)
1日ズレていたら大笑いですよね💦

まりぽん様、今度の旅行は小豆島、如何ですか?(笑)
是非、つくしちゃんと類君が(別々だけど)行った観光名所を訪れて下さい♡
そして貝殻の絵馬に何か残してきて(笑)

ご報告、お待ちしています!!あっはは!


最後まで応援、ありがとうございました。

2019/08/18 (Sun) 09:51 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/18 (Sun) 16:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様(笑)こんばんは。

ちょっと!さり気なく「ぼやかした」とか言わないで下さいよ💦
あれで充分じゃないですか♡伝わって来たでしょ?類君の甘い台詞で♡

最終話でR予告とか有り得ないでしょ(笑)怖いわー💦


そうそう♡
あのリストランテでプロポーズして、同じ方向に歩いて行くの。
これが書きたかったラストなんです~。

引き出物の事までは考えてなかったけど、フランスまで小豆島のオリーブオイルを?
何となくですが、向こうの方が本場じゃないですかね?(笑)

ま、長谷川君に伝えておきます(笑)

最後まで応援、ありがとうございました♡

2019/08/18 (Sun) 22:20 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/20 (Fri) 23:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

あはは!また切なくなっちゃいました?
確かに切ないのは似合うんですが、ラストが判らないうちはイライラしますよね~💦
原作を読んでいる時もそんな感じでした(笑)あれはハピエンを望めない状況でしたので余計にね💦


秋から冬は彼のシーズンですね~。雪が似合いそう♡

何か思い付けば短編書きたいけど、忙しくなったので・・・(笑)今年は無理かも💦
何とかクリスマスストーリーは書きたいなぁ、ぐらいです。

類君をHAPPYに・・・ふふふ、それだけはいつも考えています。

2019/09/21 (Sat) 11:19 | EDIT | REPLY |   

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