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新しい年になり初釜も終わらせた1月15日、離婚からほぼ1年が過ぎた時に西門は俺の再婚を公表した。


席を用意した記者会見などは行わず、西門の門前での発表・取材のみ。
そこで親父と俺が並んで記者たちの質問に答える形で終わらせる事にした。

私有地とは言え近所のことも考えて取材人数の制限、中継車の乗り入れは断りマイクなども使用不可。
今はもう日本から離れている紫だから気に留めないかもしれないが、それでも宝生家に取材などが行かないようにとの厳重注意はしておいた。


つくしに関しては英徳の後輩とだけ発表し、あの振袖を着た写真を公開して本人は表に出さなかった。再会も離婚成立後に知人を介してと説明し、美作の名前も伏せた。

それはつくしがどうしてもと希望したことでもあった。
先ずは幼稚舎だけど、その次にやってくる子供達の就学・・・あまり自分が表に出ると徒に騒がれるのではないかという心配があるらしい。出さなくても記者たちが何処かから映像を探してくるだろうし、つくしの家についても報道されるかもしれない。

1番危惧したのは司との事・・・それを面白可笑しく映像として流されることだけは避けたい。
だから前日に司と連絡を取り合い、会見後この件に関しての報道規制を各社に通達してもらうように手配していた。


「お渡しした資料の通りでございます。目出度い話とは言え、あまり大袈裟にしたく御座いませんのでご配慮のほど、お願い申し上げます」

親父がそう言っても記者の一部には聞きたいことが山のようにあるらしく、俺の方に身体を向け好奇心剥き出しって顔で迫ってくる。其奴らを睨むわけでもなく、とにかく穏やかに・・・つくしにも釘を刺されていたからムカつく気持ちを抑えて薄く笑顔を浮かべた。


「今回は普通のご家庭のお嬢様なんですね?申し上げにくいのですが旧家のご令嬢でも馴染めなかったお屋敷ですよ?そのお嬢様はどうお考えなのでしょうね?」

「堅苦しく考えず、西門家全体の仕事を覚えようと毎日勉強してくれています。それこそ庭木の手入れまでしてくれていますので私にとっては頼もしい限りです」

「茶道の心得は?」

「学生の頃私が稽古をつけていたことがございます。
今はその時に戻り、新たな気持ちで稽古にも励んでくれています。まだまだではございますがそのうちお客様にお出し出来るように、本人もそう思って頑張っております」

「今回はこちらにお住まいになってどのくらいなのですか?」

「宗家の仕事を覚えるために最近居住いを移しました」

「今回は・・・」


その「今回は」って言葉にイラッとする・・・一瞬引き攣る眉を見た記者はビビったように目を伏せるが、鈍いヤツはこれでもか!ってぐらい紫とつくしを比べた。
紫の時は笑顔すら見せなかったし言葉も殆ど出さなかった俺が、こんなにも受け答えするのが不思議なのかもしれない。
その苛立った感情をつくしと双子の顔を思い浮かべることで落ち着かせ、聞かれる質問に張り付いたような笑顔で答えていった。


「しかし、流石西門の若宗匠ですねぇ~!離婚から僅か1年でもうこのような会見を開かれるなんて。本当にこれで最後かな、なんて思っちゃいますがねぇ~」

「・・・・・・はい?」

「あっはは!失敬失敬!何と言ってもあの西門総二郎さんですから、私たちとしても・・・」


流石に今の質問にはブチ切れた。
何処の記者か知らねぇが叩き出してやる!・・・瞬間、形相が変わったのは俺だけじゃなかった。
急に横を向いて強面の弟子に「お帰りの方がいる。ご案内しなさい」・・・そう言うと、其奴らが前に出てきて記者の両脇を抱えて何処かに連れて行った。

親父の静かな怒り・・・初めて親父に助けられた気がして少し焦った。


「これが最後か・・・そう思われるのはご自由ですが、私の守るべきものは彼女だけではありません。ですから、当然次などある訳がない。本日はそちらもご報告させていただきます」


この言葉に記者たちが響めいた。
この言い回しで想像出来るのはただひとつ・・・この後に紫音と花音の事を公表した。

それについては事前の打ち合わせ通り、紫と会う前の事であり離婚後つくしと再会するまで存在を知らなかったと説明した。
「そんな馬鹿な」「有り得ない」なんて言葉が飛び交い、門前は婚約の報告の時よりも騒がしくなった。


「妊娠する可能性のあるお付き合いだったわけでしょう?それでお心当たりがあったのなら確かめなかったのですか?」
「この牧野さんと言う方も本当に1人で育ててたんですか?総二郎さんのお子さんだと親子鑑定済みなんですか?」

「双子なら養育費も相当掛かるでしょう?知らなかったと言うのは不自然ではないですか?」
「出産の病院はどちらで?」


「この件に関しましては子供の生活に絡んできますので総てをお話しする気はございません。
お話し出来る事は彼女が私の立場を考えた上で伝えることなく出産し、この4年間大事に育ててくれたと言う事だけです。私の子供であることも疑いようがありません。いずれその子を見ることがありましたら判ると思います」

「知人を介してと言われましたがそれは何方か教えていただけないのですか?ご友人・・・ご学友ですか?」

「それも申し上げられません。あまりそれについての詮索、調査を行うようでしたら西門としても然るべき措置をとらせていただきますので」


美作に取材なんて到底無理・・・病院も同じだ。
呼子の人達も協力してくれてるし、そこに辿り着く前に此奴らは調査を諦めるだろう。逗子の研究所のおばちゃん達も「田中春に似てるな」ってぐらいで終わるはず。
暫くは関係した場所に監視を付けるが、茶道家の再婚がそこまで長引くニュースだとは思えない。ギャアギャア騒ぎ始めた記者達の言葉には曖昧な笑みを返して無視した。


「家元は?急に聞かされて驚かれたのではないですか?」
「お目出度いことではありますが、何というか・・・跡継ぎとなりますと・・・」

「・・・総二郎の言葉を信じております。確かに大変驚きましたが、可愛らしい子供達でございます。
息子の教育方針に任せ、いずれは跡目を継いでくれればと願っております。総二郎も申しましたがこの件に関しましては温かく見守っていただきたい・・・私からもお願い申し上げます」


まだ何かを聞きたそうな連中はザワザワとしていたが、ここで親父の秘書が会見終了を告げた。
最後には俺の言葉で締め括る・・・これでつくしを堂々と連れて歩けると思えば嬉しかった。


「色々とお騒がせ致しましたが本当に偶然、あの後に再会することが出来まして子供の存在も知りました。
彼女には長い間辛い思いをさせましたし、私も当時の気持ちを心の奥底に持ち続けておりましたのでこのような結果になったものです。それに大変明るく元気な子供達で、この屋敷の中で楽しく過ごしております。
いずれ皆様の前に出ることもあると思いますが、その時にはどうぞ宜しくお願い申し上げます」


すぐにネットニュースで上がった「西門総二郎氏、スピード再婚・男女の双子も発覚」「実は結婚前からの女性」「再婚相手は英徳学園の後輩」・・・つくしは自分の事だから読めないと真っ赤になっていたが、アホらしくて当然俺も読まなかった。

そんな騒ぎも数日すれば落ち着いて、宗家では次の支度で大忙し・・・それは幸せな忙しさだった。





2月・・・春の茶会が始まる前に俺達は神前で結婚式を挙げた。

つくしの白無垢姿は本当に美しかった。
勿論京都で作らせた特注だったがそういう意味ではなく、内側から放つ光のようなものがあるからかもしれない。
いつもと違う化粧と綿帽子で、同じく着物を作ってもらった双子が華を添えた。

以前は出来なかったけど、今日はつくしの手を取り玄関から出て、両家の両親と一緒に神社に向かった。


参列は親族と後援会幹部、そしてこの日には司、類、あきらも来てくれた。
堅苦しい儀式が続いていたけど、俺はうわの空だったあの時と違い、神官の言葉を心に刻んだ。


そして誓詞奏上・・・これもすげぇ重みを感じた。

「今日の良き日に私たちは御神前で結婚式を挙げました。
これからは相和して夫婦の道を守り、苦楽を共にして平和な家庭を築き、子孫の繁栄をはかり、終生変わらぬ事をお誓い致します。どうぞ幾久しくお守り下さい」


読み上げた後のつくしが流した涙・・・後で紫音と花音に「パパが泣かした!」と責められたのには苦笑いだった。




式の後に大袈裟な披露宴はしなかった。

その代わり本邸の大広間で親族も後援会も一緒になっての大宴会。そこでは初めて姿を見せる紫音と花音が主役だった。
紫音はやたら女性軍に気に入られてあちこちに呼ばれては「にしかどしおんです。よろしくおねがいします」と練習通りに挨拶し、花音は彼奴らの側から離れなかった。
そこでお姫さまのように可愛がられて満足そうに、最後には類の膝の上に座って後援会の女性陣を敵に回していた。

「るいお兄ちゃん、エビのから、とって~」
「はいはい。その代わり俺の言う事は聞くんだよ?」

「類!やめろ、子供相手に!」
「てめぇ・・・今から婚約しようとしてねぇか?」

「くすっ、花音は俺の事好きだよね?」
「うん!だーいすき!エビのから、早くとって?」


色打ち掛けのつくしはその光景をハラハラしながら見ていて、俺は花音の将来に不安を覚えた。


親父とお袋も今回は気持ち悪いほど笑っている。
その話し相手は鷹司会長・・・この人も終始嬉しそうに紫音と花音を見つめていた。

婦人会会長はやや威圧的に「今後の会合には是非ご参加を」とつくしに話し掛けたが、つくしはすげぇ笑顔で「宜しくご指導くださいませ」と挨拶し、数分後にはケラケラ笑って盛り上がっていた。
そんなつくしの前には各支部長たちが我先にと押し掛けて俺なんか放ったらかし・・・仕方ないからあいつらの処に行って酒を酌み交わした。


「牧野・・・いい笑顔だね」
「・・・ふん!この先泣かなきゃいいけどよ」
「泣いてもいいんじゃないか?もう1人じゃないんだし」

「泣かせねぇから心配すんな!ほら、酒!今日は俺の結婚式なんだから」

「「「お前はどうでもいい!!」」」


そんな結婚式と宴会は夜通し続き、その日につくしも紫音も花音も揃って「西門」になった。




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明日が最終話です♡
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2019/08/26 (Mon) 15:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

ふふふ、何が怖いってやっぱり類君でしょうか?
将来つくしちゃんの事を「お義母さん」って呼ぶ気かしら?

今度からチョコチョコ帰国して来そうですねぇ(笑)


記者会見はね、もうここで揉め事起こすわけにもいかないから穏やかにしてみました。
確かに読みたいよね(笑)
司君の事は書かれてなくても類君が出てたりして(しかも本人がリークして)


うふふ、やっと一緒になれました♡
明日の最終回もどうぞ宜しく。

いつも応援してくれてありがとうございました。

2019/08/26 (Mon) 23:36 | EDIT | REPLY |   

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