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plumeria

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機内アナウンスでもうすぐ羽田に着くと聞いてから、漸く私達は目を覚まして支度をした。
もう12時間近くも乗ってるからあちこちが痛い・・・飛行機に慣れてる類と違って、私はギシギシする関節をさすりながら何度も身体を伸ばした。

そしてまだ疲れが取れない・・・着陸態勢に入ったのに、またウトウトして類に「珍しいね」って笑われた。


「・・・そんなに笑う?誰のせいなの?あたたた・・・」
「えっ?まさか俺のせい?あはっ、あんたが可愛かったからだよ」

「そんな言葉で誤魔化されませんよーだ!今日は絶対ゆぅーーーっくり休むから!」
「なんで?機内で充分眠ったでしょ?俺はもう大丈夫!」

「・・・うそっ!」
「ほんと。いいよ、明るいうちからでも」

「・・・・・・ばか・・・」


そんな会話をしたけどやっぱりまだ怠い・・・飛行機が完全に止まるまで、私は類に凭れ掛かって目を閉じていた。


飛行機から降りる時に持ってるのはシャルル・ド・ゴール空港で買ったお土産ぐらい。ここでも荷物を類が持ってくれてファーストクラス専用のゲートに向かい、入国手続きもすぐに終わった。
それからは花沢の迎えが来ている所まで歩くけど、私がフラフラしてるからって類がガッチリと手を握っていた。


つい数日前に日本を出ただけだから懐かしいってほどじゃない。
でもやっぱり帰って来たんだなぁ~って少し淋しような、ホッとするような・・・半歩前を歩く類に身体を預けるようにして空港内を見回していた。

その時・・・


チリン・・・・・・


何処かで聞いた事がある音がした。
それにハッとして足が止まり、同時に手を繋いでいた類も足を止めて私の方に顔を向けた。


「どうした?誰かいた?」
「・・・・・・音が・・・」

「音?なんの?」
「・・・・・・ううん、何でもない。気のせいだわ」


こんな場所で鈴の音が聞こえるわけがない。
しかも鈴の音は有栖川の屋敷で聞いたもの・・・羽田の雑音の中で聞くわけがないのよ。それに有栖川だって誰も知らないと言ったあの鈴の音・・・私の空耳なんだってずっと思っていたのに。

類が変な顔して見てるから「なんでもないって!」と、笑顔を作ってまた歩き出した。


「マンションって何処まで片付けてたっけ」
「家具と電化製品入れただけじゃない?買い物しないと何も冷蔵庫に入ってないのと、日用品なんかもまだ箱詰めのままだったと思うよ」

「う~ん、それは明日のお昼に少しずつ片付けるから今日はやめとく。買い物だけは行かないと朝ご飯作れないよね」
「俺は珈琲だけでいいけど、珈琲豆もどうなってたっけ・・・覚えてない」

「うん、じゃあそれも買おうね。結婚したんだもん、何も食べないで出勤なんてさせられないから」
「そんなもの?俺は1秒でも長くあんたとベッドの中がいいけど」

「類っ!!」
「はいはい」


そんな会話をしていても。何処かで誰かに見られている気がする・・・背中側?それとも横から・・・?
どこだか判らないけど不気味な視線を感じて少しだけ神経がピリピリし始めた。

その時また音が聞こえた。


チリン・・・・・・・・・・・・・こっちだよ・・・


背中がゾクッとして今度は類の手を振り解いて後ろを向いた!


「つくし?」
「・・・・・・・・・・・・」

「何かあったの?変だよ、つくし・・・疲れてる?」
「・・・・・・あっ、ごめん。そうなのかも・・・」


確かに誰かが私に声を掛けた・・・そう感じた時、人混みの中にチラッと見えた髪の色・・・・・・見覚えのある後ろ姿とその髪が私の視界に入ってきた。
でもそれはすぐに判らなくなって、色んな国の人達が急がしそうに行き来する普通の光景に戻った。


今のは誰・・・?
もしかして、今のは・・・・・・鈴音?


何故かその一瞬の影が彼女に見えて、足がそっちに一歩出た時に類が私を引き止めた。
その手の温かさ、それにハッとして我に返り類を見上げた。


「ごめん、何処に行くつもり?もしかしてトイレ?」
「え?・・・ううん、違う!あはは・・・ヤだなぁ、なんだか夢見てるみたいな気分になっちゃって」

「寝惚けてるって事?そんなに疲れたんだ・・・俺のせいだね」
「・・・は?あっ、そんな意味じゃなくて!」

「やっぱり今日は我慢する・・・だから許してくれる?」
「だから!ホントにそんなんじゃないって!」


またケラケラと笑いながら空港出口を目指したけど、ほんの少しだけ残る不安・・・それを彼に悟られないように誤魔化した。




***********************




つくしと一緒に羽田に到着して荷物を受け取り、花沢の迎えが来ているはずのロビーに向かった。

殆ど寝て過ごしたとは言えその前の無茶な夜もあるし、その前は結婚式・・・いくら寝ても寝足りないと思うぐらい身体が怠かった。珍しくつくしも同じみたいで欠伸ばっかり。お土産の袋まで落とすほど力が入らなかった。

それに途中から何故か怯えたように回りを気にしてる。その原因は判らなかったけど、余程疲れたんだろうと思うと早くマンションに戻って休ませたかった。


「何処に居るんだろ。いつもならあの辺に立ってるのに」
「あれ?ホントだね。いつもの運転手さんでしょ?」

「多分ね・・・あっ、あれかな?」
「どこどこ?あっ、ほんと!あんなところに居た!」


いつも待っているはずの場所じゃなくて、少し外れた場所にうちの運転手の姿を見付けたけど・・・何か様子がおかしかった。
いつもならニコニコ笑って姿勢を正し、俺達を見付けたら丁寧にお辞儀する男が、今日は背中を向けて空港ロビーの外をぼーっと眺めている。
服装と背格好で彼だと判ったものの、そんな態度じゃ見付けられないだろうと少し気分を害した。

でもつくしの居る前であんまり人を怒鳴るのも・・・そう思って黙って彼に近づき、俺達の方から声を掛けた。


「お待たせしました~!いつもお迎えありがとうございます!」

「・・・・・・あ、あぁ、お帰りなさいませ」

「もう少し見える所で待っててくれないと判りにくいんだけど。俺だけならいいけどつくしが不安になるだろ?」

「・・・・・・申し訳ありません。ではお車の方に」


覇気のない上に顔色も悪い。
何故かすごく嫌な予感がして「具合が悪いならタクシーで」、そう言うと「問題ありません。申し訳ありません」と繰り返すだけ。

運転手は車内に戻り、つくしも俺を置いて先に後部座席に座った。
本当に疲れてるみたいでもうシートに埋もれてる。俺はそんなつくしに「少し待ってて」と声を掛け、花沢邸にいる加代に帰国の報告をした。


「・・・あ、加代?今羽田に着いたから」
『まぁ、予定通りでございますね。お疲れ様でした。改めましておめでとうございます、類様』

「ん、ありがと。1度そこに寄るけどすぐにマンションに行くから食事は要らない」
『さようでございますか。畏まりました』

「・・・それとさ、今日運転手の様子がおかしいけど何か知ってる?」
『あら、そうですか?丁度皆様がフランスでしたから3日間の休暇願いを出されてましたわ。でも今朝もちゃんと時間通りに出勤しましたし、挨拶した時は普通でしたけど?』

「そう・・・それならいいんだけど」
『ではお待ちしていますね。少しだけでもお話しを聞かせて下さいませ』


休暇明けでぼーっとしてるのか?
この運転手がハンドルを握る車に不安を抱いたけど、確かに今更移動するのも・・・結果、溜め息をつきながら俺も後部座席に乗り込んだ。


「それではお屋敷に向かいますので」

「気を付けて運転してよ?なんだか怖いんだけど」

「ははは・・・いや、もう歳ですからねぇ、申し訳ありません」


その言葉を聞いて数分後、すごく眠くなった。
あれだけ寝たのに・・・そう思ったけどつくしもウトウトしてるから俺も目を閉じた。


この後、悲劇が起こるなんて思いもせずに・・・。





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