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俺は紫音たちが腹の中に居る時の事を知らない。
だから今回のつわりが酷いのかどうなのかは判らなかったが、病院で診察を受けて1ヶ月もしないうちに飯が食えなくなった。
そして何度もキッチンや洗面所に駆け込む姿を見てはハラハラした。

でも紫音と花音が側に居る時は不思議と元気で、幼稚舎であった事も嬉しそうに聞いていた。
多少眉を顰めていたけど朝食は作るし本邸にも仕事に行く。それでも何度か身体を横にして休んだりして、その時には志乃さんやお袋が「悪阻に効く漢方薬」を飲ませたりしていた。


でも出産までまだ7ヶ月あるのに、俺が地方に行かないなんて言えない。
やむを得ず留守にする時には心配で堪らなかった。


「いいか、紫音。お前は男だから俺の代わりにママを守るんだぞ?」
「うん、わかった!」

「花音、お前は兎に角行儀良くしてママを慌てさせるな?走ったりさせちゃダメだぞ?いいな?」
「かのん、お利口さんってよく言われるよ?」

「・・・・・・ぷっ!」
「そんなの誰に言われるんだよ!爺さんと婆さんに言われるんなら本気にするな?孫馬鹿だからな・・・」


出掛ける時、そう言って離れの中で子供達につくしの事を頼んだ事もある。

ほんの少し腹が出てきた4ヶ月目の頃が1番つわりが酷かった。
日によっては朝、起きた瞬間にキッチンに駆け込んで苦しそうにしたり、着物を着るのが苦しそうだったから洋服で本邸の仕事をさせた。吐きすぎて逆に痩せたもんだからお袋達も神経質になって、つくしの後ろを常に誰かが歩いてる、そんな感じだった。



ある日の終わり、ベッドに入って昼間起きた事を話し合っていた時のこと。

「本当に自然分娩に挑戦したいのか?無理しなくても良くねぇか?」
「無理はしてないよ。もうお産から4年半経ってるから出来るって言われたの。でもまだ判んないなぁ・・・危険だって判断されたらお医者様の言うことに従うよ」

「腹の傷なんて気にしなくていいんだからな?」
「ふふっ、少しは気にするよ。だって、暫く目立つでしょ?」

「俺はそれでもいい・・・安全な方がいい。どんな方法でもその時には側に居るから」
「・・・ありがと、総・・・」


つくしが自然分娩を望むのには別の理由がある・・・実はそれを夢子おばさんから聞いていた。


少し前に紫音たちを美作に連れて行った時に話していた事を、すぐに俺に教えてくれた。つくしは内緒にして欲しいと言ったらしいが、これは夫婦にとって大事なことだから・・・と。


『基本的には初めのお産が帝王切開なら次もそうするのがベストなの。
帝王切開をすると子宮を切った部分が弱くなっちゃうから、妊娠後期や分娩の時に子宮破裂を起こす危険性があるからなのよ。だから予定日より早めに手術して赤ちゃんを取り出すことの方が安全なのね。確かに4年以上経ってるから設備の整った病院なら可能かもしれないわ・・・でも、大事なのは母子の命でしょう?私も無理をしないでって言ったのよ』

『それでも帝王切開したくないって?』

『・・・術後の痛みは耐えることが出来るんだろうけど、つくしちゃんはチャンスがあるならあと何人か欲しい、そう言ってたわ。家族は多い方がいいんですって。帝王切開は3回までが限界って考えられてるから、今回出来るなら自然に産みたいんだと思うけど・・・リスクが高いことだからよく話し合って?』


そう言われて帝王切開のことを調べた。
おばさんの言う通り、病院によっては3回目の手術時、今後妊娠しないようにと本人の同意を得た上で卵管をくくってしまうこともあるらしい。
そんな辛い事をつくしにさせようなんて全然思わなかった。
ただ、今は強く反対しないだけ・・・たとえ出産が今回で最後になっても、3人も子供が居たら充分だ。

つくしの体調が戻ったらちゃんと話そう・・・腕の中で気持ち良さそうに眠るつくしを見ながらそう思っていた。


妊娠5ヶ月の戌の日、今回は西門で安産祈願を行った。
俺達が式を挙げた神社に出向き、そこでお祓いと祈祷をしてもらい腹帯を受け取る。
つくしは腹が冷えないようにワンピースの上に羽織り物を着て、俺はスーツ。双子も行くと言ったから厚着をさせて4人で向かった。

「嬉しいなぁ・・・こうして安産祈願してもらえて。この子達の時はね、女将さんが久留米の水天宮でお守り買ってくれたのよ」

「へぇ、あそこって総本山じゃん。良かったな」

「うん、あの時はそれが宝物だったの。でも今回はもっと心強いわ」


この頃はつわりも治まってきて笑える日が多かった。
紫音と花音もつくしの腹に耳を当てたり話し掛けたり、少し目立つようになった腹を嬉しそうに抱えていた。



この屋敷での俺の誕生日もクリスマスもつくしの誕生日も、去年同様家族4人でホームパーティー。

今年はつくしが出来ないから、俺が双子と一緒に庭木に電飾を取り付けて、部屋の中のツリーはつくしが担当した。そ
して驚いた事に親父がサンタの格好で離れにやってきて双子にプレゼントを手渡した。


「MerryChristmas!良い子達にプレゼントだよ~!」

「はっ?!」
「お義父・・・さま?

「あれぇ?サンタさん、起きてる時に来たぁ!」
「サンタさんはベッドにプレゼント置くんだよ?」

「・・・今年は早めに来たのだよ・・・」


西門流始まって以来の珍事・・・流石の俺でもそんな事は出来ないと思ったが、相手が孫だとこうも変わるのか・・・?
その姿にドン引きして、思わず動画を撮りまくった。いつか祥一郎や孝三郎に見せてやろう、そう言うとつくしが苦笑いしていた。




年の瀬、本来ならつくしはお袋に同行して挨拶回りがあったが総て大事を取ってキャンセルした。
うっかり風邪をもらってはいけないとのお袋からの言葉があり、つくしは大丈夫だと言ったが姑に勝てる訳がない。俺もそこまで神経質にならなくても、と言えば一緒になって小言をくらった。

それは新年も同じで、外に出ることはせずに屋敷内だけで客の対応に当たった。そしてここでも母親に代わって存在感たっぷりなのが双子。茶会以外の客には玄関で親父達に並んで見送るのがこの子達の仕事だった。

だから初詣も俺と双子だけで行き、つくしには土産を買って帰った。


「はい!ママの好きなおまんじゅう~!」
「ママ、これね、お守りだって。それとね、ぼくのおみくじが大吉だったからママにあげる!」

「うわぁ、ありがとう、花音。紫音、ママとっても嬉しいわ。でもおみくじは紫音のものよ?大事に持っていなさい」
「紫音、花音、先にうがいしろ。風邪引いてママにうつしたら大変だぞ?」

「「はーい!!」」




初釜の茶事・・・つくしは体調に問題が無かったから出席した。
そして後援会の連中にも「お大事に」「元気な赤ちゃんを」と言われ、嬉しそうに話し合っていた・・・が、ここで風邪でダウンしたのは花音。続いて紫音。
こうなったらやはり母親がいないと泣いてばかりで、つくしは本邸の仕事が出来なかった。

ただでさえ動きが鈍くなってきてるのに双子の世話でてんてこ舞い。
俺は始まったばかりの新年の行事でスケジュールはびっしり。やっと紫音の風邪が回復したら、案の定今度はつくしが寝込んだ。


「大丈夫か?・・・苦しくないか?」
「うん、大丈夫・・・コホッ、このぐらい平気だよ。風邪は引いててもみんなが居てくれるから・・・だから看病してもらえて嬉しいよ」

「・・・ばーか、早く治せ。お前が動いてねぇと俺が淋しいから」
「くすっ・・・総、子供みたい・・・・・・でも、ありがと」


つくしは熱で赤い顔してるのに嬉しそうに笑った。



風邪も治りつわりも落ち着いたのは1月の中頃。
庭では椿だけが色付き、空はどんよりと重たい雲が今にも雪を降らせそうな日が続いた。


「・・・総、ね、ちょっと来て?」
「どうした?」

「いいから、ここに手を置いてみて?」
「・・・は?」


つくしがそう言ったのは風呂も終わらせて寝ようかって時間だった。
俺を呼んで横に座らせ、片手を取ると自分の腹の上に乗せた。

そうしたらポコン!と、腹の中の子供が俺の手を蹴った!


「・・・うわ!!」
「ふふふっ!ほら、最近動きがよく判るようになったって言ったでしょ?今ね、お腹の中で暴れてるから総にも伝わると思ったのよ。感動した?」

「・・・した!あっ、また蹴った!」
「今回は1人だからこんなの楽だよ~。あの子達の時はこっちで紫音、こっちで花音みたいに両方からボコボコやられて痛かったんだから」

「まだ蹴るのかな・・・もう終わりか?・・・くくっ、すげぇな!」
「うん、元気そうだね」


あまりにも感動したから手が離せなくなって、つくしを後ろから抱き締めるみたいにして座った。
そして両手で腹を触っているとグネグネと動くのが伝わって来てすげぇ不思議だった。つくしもクスクス笑いながら俺に縋り、同じように自分の腹に手を当ててその感覚を懐かしんでいた。


「・・・・・・それにしてもデカくなったなぁ」
「・・・あっ、総・・・やだ、ダメだよ・・・」

「どうして?いいじゃん・・・もうすぐ子供に取られるんだし」
「・・・もうっ、そんな言い方しないで・・・あぁ・・・総っ・・・」

今だけ手から溢れそうなほど・・・少し揉んだだけで甘い声を出すつくしが可愛くて、この体勢のまま耳元に舌を這わせた。
そうすると声を出さないようにと手の甲で口を押さえ、それでも快感が欲しくてキスを求める仕草を見せる・・・。


今は無茶できないからここまでで我慢・・・俺はすげぇ苦しかったが、たまにこうして抱き合う時間が好きだった。





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Comments 6

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2019/09/05 (Thu) 11:33 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/05 (Thu) 11:38 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/05 (Thu) 19:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!

あっはは!またやっちゃったよね💦
どうしてこう言う可愛いときとか、最終話にやるんだろうね?(笑)

おかしいなぁ、見直したのに(笑)
今日はドタバタしてるのでお返事は遅くなったけど、コメントは早くに読んでいたのですぐに修正出来ました。
何人かの方には見付かってるでしょうけど(笑)

胎動・・・お腹の中で金魚が泳ぐ感触。

総ちゃん、嬉しさのあまり手が違う所に伸びるという(笑)
困った人ね♡それが総ちゃんです。うへへ!

いつも有り難う御座います♡ご愛敬と言う事で💦

2019/09/05 (Thu) 22:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは!

あっ!見付かったのですね?ははは!
忘れて下さい💦修正しています!有り難う御座います~♡

なのでもう1通の方は削除しておきますね♡
ビオラ様は間違えていません💦やらかしたのは私です(笑)


お話しは・・・うんうん、苦しいけど嬉しい妊婦生活ですね!

そういう私は産むまで悪阻で吐いていました。快適な時は無かったですねぇ・・・思い出したくない💦

トマトばっかり食べてまして、おかげで産んだ後はトマトが嫌いになりました。
今は食べてますけどね(笑)10年ぐらい見るのもイヤでした。ははは!

2019/09/05 (Thu) 22:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: わーい

いちご様、こんばんは。

応援コメント、有り難う御座います。
本編は辛い部分が長かったので、番外編はこんな感じでのほほんと進めます。

うふふ、ニタニタしていただけると嬉しいですが、少しは切ない部分もあるかもですよ?
でも事件も苦しい場面もないと思います。気楽に読んでいただける・・・はず(笑)

色んなバージョンで進めますので不定期ですが宜しくお願い致します。


2019/09/05 (Thu) 22:49 | EDIT | REPLY |   

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