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「それでは分娩待機室に入ります。お父様はもう少しだけ控え室か廊下でお待ち下さい。西門さんの場合はすこし検査をしますからね。それが終わればお呼びしますが帝王切開に切り替わった時には立ち会えません。ご理解くださいね!」


看護師はそう言って俺を廊下に置いたまま処置室に入っていった。
今までこの腕で抱いていたつくしが居ない・・・それだけですげぇイライラしたがこればっかりは仕方がない・・・だから取り敢えず椅子に座って彼奴らに報告しておいた。

『産気付いたから病院に入った。無事産まれたら連絡する』・・・時差の関係で彼奴らがいつこれを読むかは知らねぇけど、そう思った時には電話が鳴った。
掛けてきたのは類・・・時差を考えたらフランスは真夜中のはずなのに。


『総二郎?牧野、どうなの?大丈夫?』
「今はまだ待機室で陣痛と闘ってる。検査が終われば俺も中に入れるんだけど、今は外に出されてんだよ」

『ホントに自然分娩可能なの?無理させてないよね?』
「阿呆か!どうして俺が無理させるんだよ!あいつ、こういう時には頑固だから自分の考え曲げねぇんだよ」


『・・・・・・総二郎、任せたからね。牧野に何かあったら許さないから』
「おい、どう言う意味だ?何かある訳ねぇだろう。後で連絡するから待っとけ!」


こいつ・・・自分が旦那だと勘違いしてるな?
類にムカッとして電話を切った途端に鳴ったのは司!こいつまで掛けてきたのかと電話に出てみれば・・・


『どっちだったんだ?男か?女か?』
「・・・・・・司、文字をよく見ろ。病院に入った、無事産まれたら連絡するって書いてあるだろう」

『いいからどっちなんだって聞いてんだ!』
「だからまだ産まれてねぇよ!日本語が通じねぇ奴だな!!」


くそっ!イライラする・・・って時には流石あきら、ちゃんとメールで返信してきた。

『男が大騒ぎしても邪魔なだけだ。総二郎は静かにしとけよ?頑張るのは牧野だ。
それと産まれた後の感謝の言葉は絶対だ。一生言われるから今から練習しとけ』


・・・・・・・・・お前ってヤツは・・・。



それにしても何も言って来ない・・・それに苛ついて廊下を行ったり来たり。
何度往復したか判らないぐらい歩いて、それでもそのドアは開かなかった。

何度も立ち止まって様子を窺おうとしたが、その度に近くを通る看護師に止められた。「ちゃんとお呼びしますから」、それしか言われない。
帝王切開に切り替えてもいいからどうか無事に・・・ただそれだけを祈って1時間が経った。


その時・・・


「西門さん、中にお入りになってもいいですよ」
「すぐ産まれんのか!」

「もう少し掛かりそうですけどこればっかりは判りません。でもなんとかご希望の方で進みそうです。今は1番辛い時なので励ましてあげて下さい!」


希望の方・・・つまり帝王切開じゃねぇって事か!
看護師から白衣のようなものを手渡されて消毒をし、急いで支持された場所に向かった。そこには病衣に着替えてベッドに横たわり、苦しそうな表情をしているつくしの姿があった。
「お父様は頭の方に立ってください。腰や背中を摩ったり、痛みが来た時には声かけを。でもあまり大声を出すと逆に興奮するので止めてください。妊婦さんは凄い痛みと闘うんです。赤ちゃんも同じように頑張ってますからね!」

「・・・判った!」


身体を横に向けて辛そうに、眉を顰めながら笑うつくし・・・「総、頑張るからね」って小さな声を振り絞るように出して片手を伸ばしてきた。
だからその手を両手で取って、汗をかきまくってる顔を覗き込んだ。


「つくし・・・もう産まれるまでここにいるからな!しっかりしろよ、すぐに紫音達も来ると思うから」
「はぁはぁ・・・可哀想なこと・・・したね。楽しんでるのに・・・・・・はぁ」

「馬鹿言え!新しい家族の誕生の方が嬉しいに決まってるだろう!そんな事は考えるな・・・つくし、根性出せよ!」
「ふふっ、うん!・・・はぁはぁ、やっぱりいいなぁ・・・総の手・・・・・・ううっ!!」

「つくし?!」
「ああっ!ううっ・・・うーーーっ!」


もう随分陣痛間隔は短くなってる。
看護師の話では分娩第2期・・・子宮口が全開大になってから赤ん坊が生まれるまでの期間だと言うが、これが経産婦だと1時間・・・だがつくしは自然分娩が初めてだから計算通りにはいかないらしい。

俺の手に爪を食い込ませて、真っ赤な顔の血管が浮き出るほど・・・そんな痛みに耐えるつくしを見るのが辛くて何度も看護師を見るがそっちは見慣れているのか平然としている。
つい、「これは普通なのか!」と叫んだら・・・

「そうです。このぐらい痛い思いをした後で赤ちゃんはこの世に生まれてくるんです。お父様もしっかり支えてください。奥様が命懸けで産むんですからあなたが逃げてはいけません。大丈夫、奥様は痛みを逃す呼吸法を練習されていますから」


・・・言われなくても判っているが、何も出来ない俺は腹立たしかった。


「はぁはぁ・・・大丈夫、このぐらい・・・平気だよ?総の手が・・・こんなに・・・ごめんね」
「こんなの平気だから気にすんな。俺の腕で安心するならずっと持っとけ」

「うん・・・そうする。ううっ・・・・・・あぁーっ!」
「つくし!!頑張れ!」


そんな状態を繰り返すこと2時間・・・やっと看護師が医者を呼びに行った。
いよいよ分娩第3期、出産が始まるんだと思った。

分娩室が慌ただしくなり術衣を着た医者が姿を現し、看護師達は産まれた後の準備に取り掛かってるようだった。俺はそんな光景を視界の端で捉えながら、歯を食いしばって頑張るつくしを見下ろしていた。
荒く辛そうな息をゆっくりと吐き、時々襲ってくる痛みの時はすげぇ力で俺の腕を掴みながら小刻みな呼吸を行う。

いきんで息を止めたりしない呼吸法で、酸欠になりやすい赤ん坊にしっかり酸素を送り込むんだそうだ。
そうすることで痛みが無くなるわけじゃないが、気分的に随分楽になる・・・そうは言われても男の俺には全然判らない。

早く解放されてこいつが笑えば良いのに・・・それだけしか頭に無かった。


「西門さん、いいですか?もう赤ちゃんがそこまで来ています。身体のリズムに任せて次の痛みの時に息を吐いて!」

「・・・はぁはぁ・・・はい・・・はぁっ!」
「息を止めないで・・・落ち着いて、大丈夫ですよ」

「はぁはぁ、ああっ・・・ふぅーーーっ、うっ・・・!」
「頑張れ、つくし!!」


・・・情けねぇが足が竦む。
こんなに頑張ってるつくしを見てるだけなのに俺の方が心臓が破裂しそうなぐらいバクバクしてる。

俺の腕を掴んでくれてるのにこんなに汗をかいて、逆に滑って力が入れられないんじゃないかと思うと焦りまくって落ち着かない。つくしの苦しそうな息だけが部屋に響いて、すげぇ緊張感に包まれた。


「はぁはぁ・・・はぁはぁ・・・うぅーーっ・・・!」

「・・・よし、頭が見えてきましたよ!もう少しです!次のタイミングで押し出す感じで息を吐いて!・・・はい!」

「はぁはぁ・・・うっ、あぁっ・・・うーーっ、ふぅーーーーーっ・・・!!」
「つくし!!」

「もう1度、はい、吐いて!」
「はっ、はっ・・・はぁ、うぅっ・・・ふぅーーーーっ・・・・・・!!」
「頑張れ、つくし!!」


これまでで1番強く俺の腕を掴んだかと思ったら、次の瞬間につくしの力がガクッ!と・・・・・・抜けた?!

そして耳に入ってきたのは・・・


ほぎゃあ・・・ほんぎゃあぁっ・・・ふんぎゃあああぁ~~!!


「産まれましたよ!おめでとうございます!」
「「「おめでとうございます!」」」



・・・・・・・・・・・・は?うま・・・れた?

今のは・・・赤ん坊が産まれた瞬間・・・そう言う事か?


つくしを見下ろしたら安心したのか真っ赤な顔で息も荒いのに穏やかに笑ってる。
その閉じた目から涙が流れていくのが見えた。それでも俺の腕は離さない・・・その指先が小刻みに震えて俺に伝わった。

俺の顔からも汗が滴り落ちてつくしの顔の近くに落ちて、すぐに声を掛けたかったのに言葉が出なかった。




「おめでとうございます。西門さん、可愛い女の子ですよ」

「・・・・・・おん・・・な?」
「・・・総、抱っこ・・・してあげてね・・・」

汗塗れのつくしが泣きながらすげぇ嬉しそうに笑った。
俺の前には生まれたての赤ん坊・・・先につくしの胸に抱かせた後で、俺の前に差し出された。


頼りなげな・・・まだしわくちゃの・・・それなのにすげぇ愛らしい俺の宝物。

真っ赤な肌で信じられねぇほど小さな指で、目だって開けてなくて大声で泣いてて・・・そんな新しい命が俺の腕の中に居る。



「よく頑張ったな・・・産まれて来てくれてありがとう・・・。
つくし、本当にありがとう・・・お疲れさん・・・」


「・・・うん!」


ぐしゃぐしゃなんだけどすげぇ輝いてるつくしにキスを・・・

生まれたての赤ん坊の額にもキスを・・・・・・俺の夢がひとつ、叶った。





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Comments 4

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2019/09/11 (Wed) 14:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

いつもご訪問&コメントありがとうございます。

ふふふ、総ちゃんイライラMAXでしたねぇ❤
でも、このシーンを書きたかったので満足です~♪

ただ、昨日まで男の子にしようか女の子にしようか迷っていました。
そして女の子に・・・❤

賑やかな西門家になりそうです。もう少しだけ2人の番外編です。
どうぞ宜しくお願い致します~。

2019/09/11 (Wed) 21:01 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/12 (Thu) 14:43 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

はい、今度は女の子でしたぁ❤

私の時はラマーズ法しか聞かなかったけど、今は色んなのがあるんですね。
今回は「ソフロロジー」という呼吸法を取り入れたイメージトレーニングを書いてみました。

でも自分が経験してないのでよく判らなかったんですよね。
陣痛を「怖い・痛い」と感じるのではなく「赤ちゃんに会える・嬉しい」などと考える方法らしいです。
でも、痛くないわけじゃない(笑)

どうなんでしょうかね?

ま!産まれたから良しとしよう❤

2019/09/12 (Thu) 21:54 | EDIT | REPLY |   

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