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絢音が退院してから1ヶ月が過ぎた。

本邸には可愛らしい泣き声が響き、それは使用人や弟子達の顔も綻ばせた。
意外なことに1番喜んでいたのは親父で、余程大事な茶事の時以外はその泣き声の中で茶を点てていた。
しかも客人に絢音の話をしまくって呆れられる事もあり、俺に責任重大だと言った割りには親父が西門の評判を落とすんじゃないかとヒヤヒヤした。


「家元、口元が緩みっぱなしですわ!もう少しシャンとしていただかないと」
「・・・う、うむ・・・そうは言ってもなぁ」

ほぎゃあ~ほぎゃあ~・・・

「おっ!泣いてるな?ちょっと見てこよう・・・」
「ちょっと!つくしさんが居るんだからお止めなさい!」

「・・・・・・・・・」


まさか親父、つくしが飲ませてるところを覗き見してねぇよな?
それが心配になって、絢音が泣き出したら親父の見張りをするようにと弟子達に頼むほどだった。



そして俺とつくしにとって初めての「育児」。

絢音は生まれた時よりも随分ふっくらして手足をバタバタとよく動かしていた。
時々思いっきり身体を反らせてみたり、顔を動かしたりして、それは何時間見てても飽きなかった。気が付いたら4人が絢音を囲んで見てることもあって、その時には絢音も嬉しそうに見えた。

そんなある日の夜・・・


「ほぎゃあ~ほぎゃあ~・・・」
「・・・・・・ん?絢音・・・お腹空いたのかな」

「・・・・・・起きるのか?」
「ん、絢音が呼んでるから。総は寝てて大丈夫だよ・・・」


夜の授乳ってのは大変そうだった。
でも、つくしは紫音達の時には自分でもやろうとしなかったし、ショックからその後全然母乳が出なくなったからって、この時間は嬉しいと言って絢音のところに行った。
当然俺も行くんだけど、それを見られるのは恥ずかしいらしい・・・真っ赤な顔して「来ないで」って言うつくしは可愛かった。


「いいじゃん、なんでダメ?」
「ダメじゃないけど・・・寝ててほしいなって思うだけ」

「・・・・・・よく飲んでんのか?」
「うん・・・結構吸う力が強いみたい」

「・・・・・・・・・」
「馬鹿なことは考えないでよ?」


なんで判ったんだろう・・・俺だって力はあるぞって思っただけなのに。

飲み終わらせたら胸の張りがなくなり、つくしはさっさとネグリジェを着込む。
危険を察知してんのか急いで俺から逃げようとするのを掴まえ、ネグリジェの上から優しく揉んでやると「まだダメだって・・・」なんて抵抗する。

この頃の女性はまず第一に子供に栄養と愛情を与えようとするホルモンの分泌により、旦那・・・つまり俺の事は本当に後回しになるらしい。
性欲抑制作用ですぐに次の子を宿さないための仕組みだと、医者が俺の方に口煩く言ってたがそんなの無視。サイズアップしたつくしの胸を弄って暫く戯れるだけ・・・でも、つくしの方が先に夢の中に入ってしまう事が多かった。

早く俺を欲しがってくれよ・・・なんて無防備に晒してる唇にキスをした。



生後1カ月健診ではなんの問題もなかった。
だから少しずつ外気に触れる機会を作るってことで、まずは窓を開けて庭を見せてやった。
赤ん坊には全然面白くねぇ庭だろうけど、光や風、音や匂いなどで五感が刺激されるだけでいいんだそうだ。休日には縁側に寝かせて紫音と花音に監視役を頼むこともあった。

「あ~や~ちゃん!お姉ちゃんだよ?か・の・ん!いつ頃話すのかなぁ・・・」
「まだ先じゃない?あきらパパの赤ちゃんだってまだ何も言わないもん」

「そっかぁ~。早くお話ししたいねぇ~」
「うん・・・お兄ちゃんって呼べるかな。花音はずっと紫音だったもんね」


そして気持ち良くなって絢音のことを見ずに自分達も昼寝・・・それを抱きかかえて部屋に戻すのが俺の仕事だった。



「いい?3歳児とは訳が違うわ、落とさないでよ?」
「・・・・・・心配すんな。だ、大丈夫だ」

この日は絢音を抱いて風呂に入った。

つくしは俺が入れてる間に着替えやオムツ、タオルを準備して、あがったらすぐに寝かせられるように待機。
すげぇ緊張した空気の中、大人にはぬるめの湯だけどその中に静かに入れた。時間は僅か30秒ほど。そして1度湯から出して関節や首まわり、耳の後ろも忘れないように洗ってやる。

絢音がグネッと動いたら、濡れてるだけに持ってる手から落ちそうになり、思わず指先に力が入ったら「ふぎゃあー!」と泣く。それにビクッとして腕が緩んだら、絢音の顔に湯が掛かってすげぇ焦る・・・!


「・・・総、息止めてない?」
「・・・・・・はっ!あぁ、道理で苦しかった・・・!」

「ぷっ!後は私が拭くわ。ありがとう」
「・・・じゃ、頼むわ」


絢音と初めての風呂・・・全部で数分間だったのにすげぇ疲れた。



7月の中頃・・・双子が植えた向日葵が、部屋の窓から見えるところで元気よく咲いていた。

絢音の体重も生まれた時の2倍になって、「あ~」「ん~」「う~」なんて声を出すようになった。目の前を動く紫音や花音を目で追ったり、手を伸ばして何かを触ってみたり、誰に似たのか好奇心旺盛。


そして、俺だけが離れで絢音といた時に初めて寝返りをしたから大騒ぎした。

「ホントだって!こうやってな、こうやって・・・くるんと!」
「誰も総に再現してって言わないよ。いいなぁ、私も見たかったなぁ~!」

「くくっ、エッセイサボってて良かったわ~!」
「ダメじゃん!ちゃんと仕上げないと編集さん、明日来るってよ?」

「・・・・・・ヤべっ!」



首が据わったのは真夏の8月。

盆も近くなったある日の夜、親父達も一緒に庭で花火をして、絢音はお袋が抱いていた。
花音が振り回す花火をジッと目で追ったり、紫音がすぐ側で線香花火を見せてやるとキャッキャッ!と可愛い声をあげて喜んでいた。


「あら・・・絢音、眠たいのかな?お義母様、もう部屋に連れて入りましょうか?」
「・・・ねぇ、つくしさん。おんぶしてみようかしら」

「え?おんぶ・・・え、えぇ、いいですよ?」
「恥ずかしいんだけど、した事がないの・・・手伝ってくれる?」

「・・・はい!」


急にお袋がそんな事を言って絢音をおんぶした。
背中を少し丸めて顔を横に向けて、小さくリズムをとるみたいに動くお袋・・・俺はそんな姿を初めて見た。

お袋はすげぇ嬉しそうだった。
昔は俺達を抱き上げたりおんぶしたりなんて許してもらえなかったから・・・と。
そのうち絢音がウトウトし始めてお袋に身体を預けて寝入ったら、そっとつくしの腕に戻していた。

お袋にも初めての事・・・つくしの腕の中で寝てる絢音の頬を撫でているお袋には昔の厳しい面影はなかった。



秋本番の10月・・・本邸では紅葉の茶会や野点が多くなる頃。
この頃になって絢音の離乳食が始まった。

それは紫音や花音の食事を見ている絢音が欲しそうな様子を見せたり口を動かし始めたから。


「あやちゃん、食べたいの?あげようか?」
「うわぁっ!花音、食べさせちゃダメよ!」

「だって欲しそうな目で見るんだもん」
「だからって2人のお菓子なんてまだ食べられないの。初めはすりつぶしたお粥からって決まってるのよ」

「「そうなんだぁ~」」
「あ~あ~ん~~~まっ!」

「ジュースは?」
「花音、やめて・・・」


絢音にとって初めての飯・・・とは言えないぐらいの粥だけど。
それを作るつくしの嬉しそうな顔・・・ニコニコしながらキッチンに立ち、白い湯気の中に幸せを見ていた。





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Comments 4

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2019/09/17 (Tue) 12:36 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/17 (Tue) 15:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

本編からガラッと変わってほのぼのした西門家です。
何が気持ち悪いって・・・家元夫妻でしょうね(笑)

あれだけされたのに、そんなに簡単に許せるのか?って、思っちゃいますけど。

これは紫音と花音のお陰でしょうね。
素直におじい様とおばあ様に懐いたから・・・だと思います。
これが怖がって側に寄らなかったら・・・(笑)

「第5章 2度と帰れない場所」がスタートしちゃう💦

ひゃあああぁ~!勘弁してぇ~!

2019/09/17 (Tue) 19:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

そうそう!気持ち悪い爺さんになりましたねぇ(笑)
覗きですよ、今度は。ヤバいですねぇ~💦

本編で憎たらしい設定にしていたので、ここまで変えると結構笑える・・・💦
まぁ、そこはお許しくださいませ。

総ちゃんの色んな初めて♡
楽しんで育児しておりますねっ!良かった良かった!

類君にもいろいろと歴史を作った私ですが、総ちゃんに寝返りのマネさせた人もいないんじゃないだろうか。

総ちゃんはエロいか真面目かどっちかだもんね。
総ちゃんの赤ちゃん返り・・・じゃなかった寝返りはレアでしょ?(笑)えへへ!


2019/09/17 (Tue) 19:33 | EDIT | REPLY |   

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