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新しい年、初釜が行われるまでは身内だけの行事。
だから牧野の両親を本邸に招き、両家での宴席を設けた。

牧野の両親が絢音に会うのは生まれた時と今回で2回目だったから、すっかり大きくなった姿に驚いていた。それに兄姉の顔付きになった紫音と花音にも喜んで、今年は可愛らしいポチ袋に入った「お年玉」を渡していた。


西門にはない「お年玉」。
多分、美作にもなかっただろうから双子には初めての事だっただろう。
「欲しいものを買ってね」なんて牧野の義母さんに言われて、訳も判らず「ありがとう!」なんて言っていた。

入っていたのは3千円・・・俺は相場なんて知らないが、つくしに言わせれば大奮発らしい。


「私達が子供の時は500円とか千円とかだったわ。それでも嬉しかったなぁ・・・お小遣いなんてなかったから」
「・・・何を買うんだ?」

「ふふっ!可愛いノートとか消しゴムとかね。懐かしいなぁ~!」
「・・・・・・へぇ」


これだけはつくしじゃないと判らない世界・・・俺に出来るのはそんな昔を思い出してるつくしの邪魔をしない事だけ。
今となっては必要以上に何でも揃う西門に住んでいる訳だが、その苦しかった生活もつくしの人生の一部だから・・・それを馬鹿にしたり、からかったりすることなんて出来なかった。


1月の終わり頃、絢音はおすわりが出来るようになり、それで転けるなんて事はなくなった。
この頃から動きが活発になって離乳食も進み、つくしも厨房で料理長からいろいろ教わっていた。

そして困ったのはこの頃始まった人見知り・・・しかも相手は親父ただ1人。


「おかしいわねぇ?あれだけ会ってるのに嫌われるなんて」
「お義母様、決して嫌ってるわけでは・・・」

人見知りは自分の親兄弟とそれ以外の区別がつくと言うこと。
その自己主張も成長の証しだし、一時的な事だから気にしないようにと言われたのに、親父の落ち込みは酷かった。しまいには茶会も出来ないと言いだして俺と大喧嘩になったりもしたが、それも数ヶ月であっさり終わった。

もう少し長く人見知りがあれば良かったのに・・・。



2月、花音がバレンタインのチョコを類に送ると言いだして、つくしとチョコレート菓子を作ってた時の事。

2人はキッチンで楽しそうにしていたが、リビングの俺と紫音はオセロゲームで真剣勝負をしていた。
絢音は俺達の横でおもちゃを振り回していたが、急におすわりのポースから両手を前に出してハイハイを始めた。

「・・・え?!」
「うわっ、あやちゃん、何処行くの?!」

「あ~あ~まぁ~!」

そう言ってオセロのボードをぐちゃぐちゃにしながらその上を通過、つくしと花音がいるキッチンに向かった。


「つくし、花音!そっちに絢音が行ったぞ!」

「えっ?きゃあぁっ!絢音~、ハイハイ始めたの?!」
「うわぁーい!すごい、あやちゃん!」

「ま~ま~あ~~んまっ!」
「おりこうさーん♡」
「うわあぁっ!花音、チョコ塗れの手で絢音に触るなって!」


初めてのハイハイを見たのは家族全員。その後、絢音は得意顔で家中をハイハイしまくった。
そしてこのハイハイが思った以上に速く、花音が面白がって本邸の長廊下をハイハイさせてつくしに大叱られ。紫音と俺は大泣きする花音を見ながら溜息をついた。



初めてつかまり立ちをした日、
初めてつたい歩きをした日、俺はその瞬間を見逃したが夜には離れで見ることが出来た。
それを見る度に紫音と花音の時も見たかったと・・・悔しさで胸が詰まる時もあった。

つくしも同じだったのかもしれない。
絢音の「初めて」を見る度に、その日の夜は少し淋しそうだった。



**



そしてやってきた春・・・・・・桜の花が満開を過ぎた頃に行われたのは英徳学園、小学部の入学式。
着物ではなくダークブルーのスリーピースを着た俺を見て、紫音と花音は「格好いい~!」なんて言い、春色のスーツに身を包んだつくしを見ると「可愛い~♡」・・・その言葉に俺が噴き出すと、顔を赤くしたつくしに思いっきり背中を叩かれた。


「それではお義父様、お義母様、行って参ります。絢音を宜しくお願い致します」
「帰ったら親父達とも記念撮影しような!東門の桜ならまだ綺麗だったろ?」

「はいはい、気を付けて行ってらっしゃい」
「あ~ぁ、ん~ん~ま!」
「よしよし、絢音はじぃじとお花見でもしようか?」

「おじい様、おばあ様、行ってきます」
「行ってきます!」


小学部の制服に身を包んだ双子・・・この春から「パパ」「ママ」と呼ぶのを止めさせた。
それまでは美作で覚えた呼び方で自由にさせていたが、小学生になったら西門の呼び方に変えようとつくしとは話し合ってきた。

だから俺の事は「父様」、つくしの事は「母様」、絢音は喋り始める頃からそう呼ばせることにした。ただ、堅苦しくするつもりはないから離れでは呼び方以外は変えなかった。


「父様、ぼくと花音は同じクラス?」
「さぁ、どうだろうな?1年生の時はそうかもしれねぇな」

「母様、花音のクラスの先生は男の人?女の人?」
「ん~、どっちだろう?1年生は女の先生ってイメージだけどなぁ・・・花音、どっちがいいの?」

「女の先生!男の先生、こわいもん~!類お兄ちゃまみたいな人だったら男でもいいんだけどなぁ~」
「花音・・・それ本気か?」

「花音は類兄様のことが好きなんだよ。いつもそう言ってるもん」
「あ!紫音のお喋り~!」


それが小学部に行くまでの車の中での会話・・・つくしは笑っていたが俺はマジで心配だった・・・。


花音の期待通り、小学部の担任は女性で双子は同じクラスだった。
しかも席は前後で花音が前。何となく紫音が見張っててくれてるようで安心・・・そう言うとつくしも頷いてた。



小学部に入学して間もない頃、紫音を茶室に呼び、そこで2人だけの茶会をした。
きちんと着物に着替えさせ、前のように省略したものではない。茶会としては極普通の作法に則ったものだ。

俺に真剣な眼差しを向ける紫音に、茶を差し出した後に尋ねた。


「紫音・・・まだ6歳のお前にこんな話をするのは酷だと思うが敢えて聞く。
お前は俺の跡を継ぎ、この西門流を背負って行く覚悟があるか?もしそうだとしたら本格的な稽古を始めなくてはならない。
それはこれまでのような生半可なものじゃない。はっきりとした答えもなく、生涯稽古をし続け修行に終わりはない世界だ。だから自分の行き先が見えなくて悩むこともあるだろうし、満足出来なくて苦しいことも多いと思う・・・紫音の気持ちを聞かせてくれるか?」


俺の言葉でさえ理解出来るかどうかと言う年頃だ。
判らなくて黙ってしまう事も考えたが、紫音の返事は早かった。


「ぼくは父様のようになりたいと思います。だから父様の稽古を受けたいと思います」

「・・・言った通り厳しい世界だ。途中で投げ出すことは出来ないぞ」

「ぼくは逃げません。お茶はまだじょうずに飲めないけど、この部屋は好きです」

「・・・判った。では今日から本邸での稽古を始めよう。
母屋では父で構わないが、本邸では師匠になる。その他の弟子達も紫音には先輩だからな。まずは茶の前に作法と挨拶からだ。焦ることはないが、正しく丁寧に覚えなさい」

「・・・はい!」


紫音の返事は親父達も安心させた。
でもつくしは半分辛そうな笑顔だった。厳しい修行の連続だと知っているから・・・そして何度も壁にぶち当たって挫折しながらの成長だと知っているから。それを見守ることしか出来ない母の立場としては複雑だったんだろう。

それでも紫音の決めたことだから「応援しなくちゃ!」と潤んだ目で空を見上げていた。



花音にも別の日、同じように聞いてみたがこっちは返事が出来なかった。
モジモジとしていつもの花音らしくない態度・・・それにはつくしが「ちゃんとお話しなさい」と窘めていた。

「無理に茶道を始めろとは言わないが、花音も西門家の娘だから何も知らないと言うのは困るんだ。
茶会を仕切らなくてもいいから、せめて手順を覚えるぐらいの気持ちで始めてみないか?俺の稽古じゃなくて母様に教えてもらってもいいぞ」

「・・・うん」
「花音、こういう時は『はい』ですよ?お父様との真面目なお話しです」

「・・・はい。でも習うのなら父様がいいです・・・」

「えっ?!どうして?」
「くくっ、俺でいいなら俺が教えてやる。紫音は茶道家としての修業をするが、花音は嗜みとして・・・それでいいな?」

「・・・はい!花音も頑張ります!」


昔から正座も抹茶も苦手な花音だが、これからは紫音とは別に少しずつ茶室に慣れることから始めることにした。



そうやって月日は過ぎていく。
絢音の初めての誕生日、紫音と花音の7歳の誕生日。
今年も咲いた向日葵と朝顔、賑やかになる笑い声と増えていく洗濯物。

庭に並ぶ自転車、小さくてカラフルな靴・・・祝い事の度に溢れかえるプレゼント。



そして冬・・・また大きな腹を抱えたつくしが門前で俺を見送っている。


「いってらっしゃい。気を付けてね」
「あぁ、お前も転ぶなよ?もう少しの辛抱だからな」

「うん、大丈夫・・・いたたたた、今日もよく動くわぁ~!」
「くくっ、母ちゃんが動きすぎるから止めてんだよ。赤ん坊の言う事聞いて大人しくしとけ」

「・・・はーい」


4人目の子供は医者の勧めで帝王切開・・・これをつくしの最後の出産にすると決めた。

その手術予定日は2月14日。
今回も性別は聞かなかったが、俺達の中では何となく判っていた。


「なるべく早く帰るから、今日は鍋でも作っといてくれ」
「判った!美味しいの作って待ってるね」



これからも俺はつくしの待つ家に帰る。
それが本邸だろうが何処だろうが関係無い。

滅茶苦茶可愛い子供達と、愛しいつくしが笑う家・・・・・・そこが俺の帰る場所。





~新しい家族・終~




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次の番外編は「花音の恋」です。
公開はまだ未定ですが近日中に・・・その後はあきらくん、紫音君と続く予定です。

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Comments 8

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2019/09/21 (Sat) 12:28 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/21 (Sat) 17:59 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/21 (Sat) 18:14 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/21 (Sat) 19:17 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

いつもコメントありがとうございます。
絢音ちゃんの生後1年までのお話しでした~。4人目はそのうち他の番外編で出てきます。

賑やかになりましたよね~(笑)
うちは独りっ子なので4人とか想像出来ないのですが💦

家元💦総ちゃんを座敷牢に投げ入れた人なのにね~(笑)
それだけ孫は可愛いのでしょうか?私も孫が出来ればそれが判るのかな?(笑)

ふふふ、花音ちゃんの恋物語、少し待って下さいね~!

2019/09/21 (Sat) 23:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 愉しませていただいてます。

としお。様、こんばんは。

ご訪問&コメントありがとうございます。
それはそれは💦さっさと終わらせて申し訳ございませんでした。

次のお話では花音ちゃんが大きくなっておりますので楽しみにしてて下さいね♡
勿論小さい時からのお話しもありますが。

準備が出来ましたらまた1日おきに公開したいと思います。どうぞ宜しくお願い致します~!

2019/09/21 (Sat) 23:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

楽しんでいただけましたか?
本当に普通の家庭のように、笑いが溢れる西門邸・・・そんな風に変えていったのはつくしちゃんと双子かな?(笑)

バラバラだった感情を双子ちゃんが無意識に纏めていく・・・そして小さな笑い声がそのうちお屋敷中を笑顔に変えていく、そんな風に終わりたかったんですよね。
その中にも伝統を受け継ぐ厳しさをちょっとだけ入れて(笑)


さて、花音の恋♡
相手が誰か、判ってる人もいるかもです(笑)

元気いっぱいの花音ちゃんも大人になったら苦しい恋に悩むのかも・・・。
ちょっと切なくて、でも花音らしく突っ走って行こうと思います。

どうぞこの先の番外編も宜しくお願い致します。




2019/09/21 (Sat) 23:34 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 感謝

非公開ご希望の読者様、こんばんは。

いつもコメントありがとうございます。
ご希望の部分があったのでしたら良かったです♡
そして4番目の子供はこのあとの番外編で出てきます。

そこをこの「新しい家族」では書かなかったのは、このシーンで終わりたかったから・・・それだけです。

いつもラストシーンを描いて、そこに向かって書いていくので急に書き足すことが難しいのです。
本当に申し訳ありません。いずれ4番目の子供も出てきますのでお許しくださいね💦


台風は・・・ちょっと影響を受ける地域に住んでおりますが、今はまだ大丈夫です。
明日どうなるのかなぁ?日曜ですが家で1人の予定なので心細いけど(笑)

お気遣いいただきましてありがとうございます♡

2019/09/21 (Sat) 23:44 | EDIT | REPLY |   

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