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西門の屋敷に近づいたら、門の前で着物姿の女性を見付けた。
すっかりその姿が板についちゃって・・・ってクスッって笑ったのを助手席の花音は見逃さない。こう言う鋭いところは総二郎に似たのかもって、そっちも可笑しくて笑いが出た。

そして車から降りる前に大きな溜息・・・本当に降りたく無さそうだったけど「着いたよ」って声でドアを開けた。

そうしたら駆け寄って来る心配顔の牧野。
その横を知らん顔して通り過ぎようとする花音を引き止めてお小言・・・その母親っぷりにまた笑いが込み上げた。


「花音ったらまた花沢類に迷惑掛けて!ダメでしょう?大事なお仕事中なのに!」
「・・・紫音のお喋り!」

「違います!親を誤魔化せないって事よ?ほんとにもうっ・・・!」
「類お兄様、またねぇ~!」


くすっ・・・全然変わんない声。それに怒ってるのに怖くない顔・・・そりゃ花音もビビらないよね。
俺に手を振って大きな門を潜った花音とは反対に、牧野は俺の車に走り寄って来たから運転席から降りて久しぶりに顔を合わせた。

薄暗い中、門灯のオレンジ色が牧野の横顔を照らす。
もうすっかりいい歳なのにやっぱり幼げな顔・・・ホッとするこの顔で俺の口元も緩んだ。


「ごめんね?また会社に行ったんでしょ?今度から入れないで帰していいからね?」
「・・・そんなこと出来ないでしょ?帰り道が心配だから」

「何言ってるの!もう二十歳過ぎの大人なんだから大丈夫よ。そんな事より仕事の邪魔だって事が判らない方が良くないわ!ホントに昔っから花沢類のあとばっかり追い掛けて!」
「あはは!エビの殻ばっかり剥いてたよね!」

「そう言えばそうだっけ?ふふ、花沢類、優しいもんね~」
「・・・花音は特別なだけだよ」

「・・・・・・花沢類?」


だってあんたとそっくりに感じたんだから。
総二郎に似てるって言うけど俺にはどうしてもその中にあんたを見てしまうから・・・俺の腕で抱けるのは花音だったから。
「小さな牧野」の願い事は拒めなかったんだよ・・・。

不思議そうに俺を見るけどこの言葉は出せない。だから笑って誤魔化すけど、牧野も少しは勘付いちゃうからそれ以上の事は言わない。


「もう総も中に居るわよ?花沢類、ご飯食べて行かない?」
「嬉しいけどまだ業務が残ってるんだ。また社に戻らないといけないから今度にする」

「そっかぁ・・・花音のせいだもんね。ホントにごめんね」
「いいよ、気晴らしになったから。花音、何も言わないだろうけど色々悩みがあるみたい。そのうちゆっくり聞いてやりな?俺じゃ答えられない問題みたいだからさ」

「うん、判った。成績かな・・・友達かな?やっぱり・・・年頃だから恋・・・かな?」
「あんたも俺もそう言う相談には疎いよね」

「あはは!間違いないわね!」


大きな口開けて笑ってる牧野・・・いつまでも見ていたいけど、そうしたらやっぱり現れるのは・・・総二郎。
俺達が門前で喋ってるって誰かから聞いたのか、総二郎が奥から出てきた。

すっかり落ち着いた父親の顔・・・でも、俺が牧野と話すと昔と同じ鋭い目付きになる分かり易いヤツ。


「・・・類、久しぶりだな。花音がまた世話掛けたって?」
「久しぶり、総二郎。別に問題ないよ、そこまで忙しくなかったから」

「そうか。じゃ寄ってけよ」
「牧野にも言われたけど、今日は社に戻る。少しだけやり残した事があるから」

「んじゃまた時間が出来たら飯でも食おうぜ。何処かの店に集まってさ」
「ん、あきらと司が帰国したらね」


いつまで経っても心配性なんだから。
俺と話してる最中に牧野をさっさと屋敷の中に戻すなんて・・・ホント、ムカつく。




***********************




・・・なによ、わざわざ門まで母様が出て来なくてもいいのに。
そんな事をするから類お兄様が・・・


「花音様、お帰りなさいませ」
「・・・ただいま戻りました、志乃さん」

「お帰りなさいませ、お嬢様」
「・・・ただいま」


お屋敷に戻ったらあちこちから掛かる声。
ちょっと紫音と帰らなかったらすぐこれなんだから!ホント、昔っから私が何かしないかとみんなで心配して、まるで見張られてるみたいで息苦しいったら!

ズンズン歩いていたら向こうに見えた父様の姿・・・ヤバいと思って別の廊下から自分の部屋に戻った。



バタンとドアを閉めて鞄をその辺にポイッと投げて、そのままベッドにボスッ・・・!
目を閉じて遠い昔を思い出していた。


類お兄様を初めて見た日・・・私の初恋の日。
あの日のことは今でもはっきり覚えてる。類お兄様の肩車・・・あの目の高さとお兄様の髪の香り。

忘れる事なんて出来ない・・・本当にドキドキしたんだもの。





『しおーん!!ボールがあそこにひっかかったぁ!』
『どこ?かのん、どこに蹴ったの?』

『あそこぉ!木のえだのとこ!』


美作のお屋敷で一緒に遊ぶのはいつも紫音、ただ1人だった。

今でも詳しい事情は判らないけど病気だった母様の代わりに育ててくれた美作家。でも他の子供と遊ぶ事はなかった・・・何故か外出は少なかった。それに同じ年頃の子供が遊びに来ることもなかった。
お客様が来る時にはお部屋に戻されるか小夜ちゃんがドライブに連れてってくれるかで、それに旅行も外国が多くて遊園地や動物園なんてあんまり行かなかった。

夢子お婆ちゃまもお手伝いの小夜ちゃんもよく遊んでくれたけど、それでもいつも途中でお仕事に戻るし、紫音は大人しいから私の後をついてくることの方が多かったっけ。


私は毎日何か刺激を求めて庭を走ってた。
紫音より速く、誰よりも速く・・・「つくしママ」が来ても「そうちゃんパパ」が来てもやっぱり何かを探して走り回っていた気がする。

狭い世界に閉じ籠もりたくなかった。
このまま限られた大人の中で暮らしたくなかった・・・もっとドキドキする何かが欲しい、そう思ってた。


そんな時に蹴り飛ばしたボールが木の枝に引っ掛かった。


あ~あ・・・またボール(私)は止まっちゃった。
あんなところに居たくないのに・・・・・・ヤだなぁ~。

そう思って紫音に頼んだけどボールは取れなかった。


その時、急に現れたのが類お兄様。

『こんにちは。ボール取ってやろうか?』・・・初めて聞くその声に、魔法にでも掛かったかのように私は固まった。


だってこんなに格好いい男の人は絵本にだって出てこなかったんだもん。
あきらパパもこんな感じだったけどそれとも違う。父様もイケメンだけどそれとも違う・・・私にはその人が本当に王子様に見えた。
一緒に司おじ様が居たことも覚えてるけど、私の目は類お兄様しか見てなかった。


そして引っ掛かったボール(私)を木の枝から降ろしてくれた。
『はい、どうぞ』って手渡されたボールを私は両手で受け取ってお礼を言った。

その時に近くで見た茶色の瞳・・・すごく綺麗だった。


私とは全然違う色・・・どんな風に世界が見えるんだろうって真剣に考えた。
こんな綺麗な目で見る世界は私が見る世界よりも綺麗なんじゃないかしら・・・本当にそう思った。


『かのん、お兄ちゃんの肩にのりた~い!』

勇気を振り絞って叫んだひと言で類お兄様は肩車をしてくれた。
勿論あきらパパだって父様だってしてくれたけど、それとは違う感じ・・・同じぐらいの高さなのに私には1番高く感じた。

柔らかい髪はあきらパパと似ていたけど、それよりもさらさらしてて良い香りがする。ぎゅって持ったら『痛いじゃん!』って笑ってるけど離したくなかった。


『お兄ちゃん、お名前なんていうの?』
『ん?俺?あぁ、言ってなかったね、俺は・・・』

ドキドキしながら高い場所から聞いたのに、それを途中で遮ったのは母様・・・


『花沢類・・・!』


その時に類お兄様の身体がビクン、ってした。
私は肩に乗っていたからそれが全部伝わって、小さな声で『牧野・・・』って言ったのも聞こえた。

牧野は母様のことだ・・・この人は母様を知ってる。
父様のお友達だけど、母様も知ってる・・・そしてそれは特別なんだって、小さいながらに思った。


恋なんて言葉は知らなかったけど、好きって言葉は知ってた。
だからすぐに思ったの・・・類お兄様は母様が「好き」なんだって。


『牧野・・・会いたかった・・・』


類お兄様がそう言った時、私はもう肩から降ろされてた。
良く判らないままお兄様が母様を抱き締めるのを、チクチクした気持ちで見ていた。


まだホントに小さかったけど、私は母様を好きな類お兄様に恋をしたんだ。





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Comments 6

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2019/09/28 (Sat) 13:57 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/28 (Sat) 15:26 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/28 (Sat) 17:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あはは💦またやっちゃった!
おかしいなぁ・・・何度もそこは見たはずなのに・・・(笑)

毎度見付けていただき感謝しています!ありがとうございました♡


そうそう、すごく切ないのですよ~💦
あの花音ちゃん、何も考えてないようで本当はすごく感受性のある子なのですね~。

さて、どう言う展開になるのかしら?
もしかしたら少し遅れるかもしれませんが次話も宜しくお願い致します。

2019/09/28 (Sat) 17:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様 こんばんは。

はい、一途・・・ですよ(笑)
類君も花音ちゃんも一途です。そこがなんとも・・・切ないですけどね~!

この時の類君は44歳ですかね・・・ふふふ、まだまだ王子様で大丈夫でしょうか♡
私の脳内では類君は何歳になっても同じ顔です(すでに妖怪💦)

健全な・・・?うん健全な男性でしょ?えっ?不健全って・・・アッチ?(笑)

嫌だわ~(笑)それはダメですよ~💦

2019/09/28 (Sat) 18:24 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

再会シーンの1番は私も「向日葵」ですよ。
あれは自分でも好きだわ~♡泣けるけど・・・(自分でかいっ💦)

そして今回もお邪魔虫総ちゃんの登場・・・いや、旦那だけどさ(笑)
読み返せないんだけど、向日葵の時は花か何か持って帰って来た時に類君と会ったんだっけ?
あれをパール様に笑われた記憶があるんだけど(笑)

今回は花音ちゃんを持って帰ったぞ♡


さて、おませな花音の初恋はどうなりますやら・・・見守ってやってくださいね!

2019/09/28 (Sat) 18:41 | EDIT | REPLY |   

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