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「きゃああぁーっ!類お兄様、見てぇ!可愛い~!」

花音はトラットリアを出てから何もなかったかのように・・・いや、むしろ態とハイテンションで水族館の中を走り回っていた。
俺が「すぐにどっかに行きそうだから」って言った言葉そのままに、本当に横になんていなくて俺の前10メートルぐらいを歩いていた。


『それも母様に似てるの?』・・・あんな言葉を出させておいて、その後何も答えられなかった。

だから花音はそんな事をしてるんだろうかって思うと、上手く対応出来ない自分の不器用さに今更ながら呆れてしまう。
昔、牧野にはもっと上手く出来たのに・・・。


「お兄様、今からシロイルカを触れるみたい!行ってみましょうよ!」
「ん、いいよ」

「場所は・・・あっ、あそこだ!」
「花音、走らないで。あんた、ヒールでしょ?危ないよ」

「大丈夫ーーっ!」

ロングスカートでヒール・・・いつもと違って女の子らしくしたんだろうに、動き方が全然変わらない。スカートの裾を膝が見えるぐらいまで翻してその場所を目指した。
そして軽く躓いては器用に立て直し、肩から落ちた鞄を持ち直して「えへへ!」って笑う・・・西門流の令嬢には見えない活発な花音。

初めて見た時も次に会った時も、いつも思い出すのは無我夢中で走ってくる姿だった。
今日みたいに走る背中を見るのは・・・初めてだ。

シロイルカが近づいてきたら恐れもせずに丸い頭を撫でて大笑い。
「お兄様、写真撮っといて!」って言うから慌ててスマホを出して花音の笑顔にカメラを向けた。

スマホ越しに見る花音は正直・・・大きな口を開けて笑ってるのに少しだけ淋しそうな瞳に見えた。


「あっ!今度はカワウソと写真撮れるんだって!お兄様、行くわよ!」
「はっ?俺も?」

「そうよ!これは記念写真ですもの、一緒に撮るの!」

今度は細長いケースの中で立ってるカワウソとの記念撮影って事で、俺と花音の間にカワウソが映るようにして並んだ。だから寄り添ってるわけじゃない。

「ピースサイン!ほら、お兄様!」「えっ?俺が?」
「他に誰が居るの?真顔なんてダメよ?笑って!」「・・・笑うの?」
「せーの・・・はい!」「はい・・・」

カシャ!って音で俺と花音の記念撮影終了・・・でも、出来上がった写真の俺が笑ってないって凄く怒られた。
「カワウソの方が笑ってるじゃん!」って、ホントに母子して俺の事を馬鹿にするよね・・・牧野も昔から俺の無愛想には呆れていたから。言葉には出せないけど。


「類お兄様、喉渇いたね~」
「花音がはしゃぎすぎるからでしょ」

「ふふっ・・・楽しんだもん。こんな所、あんまり来ないから」
「そうなんだ?」

「うん。友達はみんな彼氏と行くでしょ?それにこう見えてお稽古もあるんだもん・・・私、お休みの日しかお稽古しないから」
「・・・そう」

「あっ!あそこで珈琲飲まない?」
「・・・ん、いいよ」


花音が向かったのは屋外で販売してる珈琲の専門店。
そこで俺はエスプレッソ、花音はダブルクリームラテなんて甘そうなものとチュロスを頼んで、近くのベンチで座って休憩・・・「美味しい~」って、ここでもほっぺたを押さえながら頬張っていた。


「花音、正座出来るようになったの?」
「失礼ねぇ、30分ぐらいなら出来るわよ」

「えっ?30分って・・・茶会ってまだ長いだろ?」
「うん。でも今度の紅葉の茶会は立礼式だから。椅子だから大丈夫だもん」

「くすっ・・・溢さずに出来るの?」
「あら!じゃあ来てみれば?私の前にはおじ様達が並んでるわよ?」

「・・・そうなんだ」
「目的はお茶じゃないんでしょうけどね」

「・・・・・・・・・・・・」


そう言う事か。
西門との縁組みを考える家が息子の・・・って?

もうそんな歳なんだね。そう言えば牧野が紫音と花音を産んだのも22歳・・・1歳しか違わないんだ。


それに総二郎から聞いた事がある。
西門は紫音が継ぐ決心をしてくれたから、花音にはある程度の所までしか教えない・・・と。



『あいつは兎に角自由でいたい子みたいだから、西門の風は似合わねぇのかもな。それならそれで、花音が伸び伸び出来る場所を見付けたらそこで頑張れって言うつもりだ。西門の事は作法だけ知ってればいい・・・茶も飲めるようにはなったからな』

『・・・手放せるの?誰か男が現れたら・・・総二郎、どうなるんだろうね』

『まずは許さねぇだろうな。たとえそいつがどんなにいいヤツだろうと、1回で許すなんて出来ねぇ。この俺が何度引き離しても食らい付くぐらいの根性があるヤツ・・・そして花音を絶対に守ってくれるヤツじゃねぇと安心して渡せねぇな』

『・・・そりゃ難しいな。こんな父親、面倒臭い・・・』

『うるせぇよ!それだけ花音は俺の・・・』




「お兄様!なにぼーっとしてるの?!飲み終わった?今度はイルカの水槽に行きましょう?」
「・・・・・・あぁ」

総二郎の言葉を思い出していたら急にグイッと引かれた腕・・・ここに来てから初めて花音が俺の腕を持ったからドキッとした。




********************




アーチ状の水槽の中を自由に泳ぐイルカと魚を見ながら「可愛いね」って・・・その言葉を出すお兄様を、水槽を眺めるフリして横目で見ていた。
凄く優しそうな顔・・・お兄様が見てるイルカにまでムカッとするぐらい。


トラットリアであんなこと言ったから、それから何となくギクシャクしてる・・・。
きっとお兄様は呆れてるんだろうけど、私はここからどうやってお兄様の気持ちを聞き出せるのかとそればかりを考えていた。

二人っきりの時に聞く方が良いんだろうけど、そこで言われた言葉に耐えられなかったら誤魔化せない。
大勢の中でサラッと聞いて、もしもそれが嬉しい言葉だったら超残念な気分になる・・・そんな馬鹿みたいな考えが頭の中をグルグル回って、大はしゃぎしてるけどうわの空だった。


「あっ!花音、見て?頭の上をイルカが通ってる!・・・あはっ!面白い」
「・・・・・・そうね」

「花音、ここに黄色く光る魚がいるよ、なんだろ?」
「お兄様、そこに名前が書いてあるわ」

「あっ、回転した!こんな角度で見るの初めてかも」
「・・・・・・か、可愛いよね」


ダメだわ・・・今度は類お兄様がハイテンションになってしまった・・・。
こんなにウキウキするのもレアだからここはそっとしておいた方が良いのかも?

その時、両手をガラスにくっつけて微笑んでるお兄様に近寄って来た人懐こいイルカ。真正面でお兄様の顔を見て、そしてクルッと向きを変えて友達のところに戻ってしまった。


「あ~あ!行っちゃった」なんて子供みたいに笑う、私にはそのイルカが母様に見えた。
そしていつまでも遠くに行ったイルカを目で追う・・・・・凄く息苦しくなった。


「お、お兄様、もうすぐイルカショーがあるみたい。そっちに行こう?」
「え?もういいの?奥にも水槽があるよ?」

「うん、可愛かったね!でもほら、ショーは時間制だから」


ここで手を持てたらいいんだけど、小さい時には出来たことが今では出来ない。
お兄様のコートの袖を引っ張ってイルカの水槽を出て、ショーが開かれる場所に向かった。



「うわっ・・・凄いお客さんの数だね!」
「上から見ようか?ほら、あそこでもいいみたい」


お兄様に言われて見上げたら、会場の2階通路みたいな場所のフェンスにも人が集まっていた。
だからそこに行って、ショーのプールがよく見える位置をゲット。

でもやっぱり凄い人混み・・・背中や腕に人がぶつかって来るから何度も「痛っ!」って声を出してしまう。
それでもショーが始まったら、カラフルなプロジェクションマッピングとそれに合わせた音楽、イルカのダイナミックな動きに感動してその光景に魅入っていた。


「凄いねぇ~!ちゃんと言う事聞くんだね~」
「くすっ、花音がイルカならプールで大人しくしないよね」

「あはは!そうね、脱走するかもね」
「あっ、背景の色が変わった・・・面白いね」

「うん・・・(あれ?)」


暫くショーを見ていたけど、この時誰もぶつかって来ない事に気が付いた。
類お兄様の右手は私の右側でフェンスを持ってる・・・もしかしたら?って左側を見たら、お兄様の左手は私を守るみたいに伸ばされていた。
驚いて顔を上に向けたら私の頭の真上にお兄様の顔がある・・・つまり、私をガードしてくれてたの?


「どうした?ちゃんと見てないとすぐに終わるよ?」
「・・・うん、ありがとう、お兄様」

「どういたしまして。花音の頭の上から見えるから大丈夫だよ」
「くすっ・・・私、チビだからね」


ガードしてくれる手が私に触れないのは少し淋しかったけど・・・それでも凄く嬉しかった。


・・・やっぱりちゃんと話そう。
そうじゃないとこのままじゃ苦しい・・・・・・。


ショーが終わる頃、目が潤んでイルカどころじゃなかったのをお兄様は「そんなに感動したの?」ってクスクス笑う・・・。
私は「うん、感動した!」って答えたけど、それよりもこの後の事を考えてドキドキしていた。





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2019/10/10 (Thu) 11:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

さくら様、こんにちは。

大変申し訳ないのですが、お話しに関するコメントではないようなのでスルーさせていただきます。
しかもリンクは同じジャンルの方としかするつもりはございません。

失礼ですが、お話しを読まずにコメントされていますよね?一体何を勉強されているのでしょうか。
それでリンクを依頼される意味が判り兼ねます。



2019/10/10 (Thu) 11:53 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/10 (Thu) 12:31 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/10 (Thu) 13:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

ははは、類君の思いやりにやられましたか?
本当は両手でフェンスを持ってもらいたかったのですが、それは完全に恋人ですよね。しかも中の彼女が結構苦しいはず(笑)
それを感じさせないけど守るとすれば・・・って考えました。

う~~ん、そこはどうでしょうねぇ💦
でも独身だとそれも可哀想(笑)せめてパートナーは居て欲しいなぁ、と思う事もあります。
そこが微妙な所でして。

ここまで来ても「どっちのラスト」にしようか悩んでますよ(笑)


ま、多分私は・・・・・・って言うラストを選ぶと思います(判んないよッ!ww)

2019/10/10 (Thu) 15:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

ははは!凄い緊張感溢れるデートですよね💦
こんなの凄く疲れそうで、嫌でございます(笑)

コツメカワウソとの写真撮影が可愛くてここにしたのですが、実際どんな場所か判らなくてめっちゃ調べました💦
私の住んでるところも結構有名な水族館があるんですが、イルカのショーは在り来たりなもの。
都会の方のイルカのショーって凄いんですね!調べてたらそっちに夢中で、いろんなの見ちゃった(笑)

「いかんいかん、類君のデートだよ!」

って思うけどついつい・・・これ、動物園にしてたら花沢城物語を書き始めたかも(笑)


あぁっ・・・10月の向日葵の類君・・・(泣)
自分で書いてて号泣した類君(笑)懐かしいなぁ・・・今度は泣かないラストにしたいですけどね💦

2019/10/10 (Thu) 15:50 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/10 (Thu) 15:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: 類さまがボコボコにされちゃう~~~う

ただの******様 こんばんは。

コメントありがとうございます。

えーと、えーと、えーと(笑)
どう言えば宜しいのやら(笑)

あの顔にその格好(割烹着)を想像したくないんですけど💦やめてくださいよっ💦
頭から離れなくなるじゃありませんかっ!

ってか、新曲って出ないんですかね?(笑)
何気にあの紫のドレスは好きでしたけど。

いや、勿論類君には着せませんけど・・・うん、無理無理。


どうだろう?あっさりくっついたりして💦総ちゃんも許したりして♡

マジで悩んでるのになぁ~(笑)

2019/10/10 (Thu) 19:38 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/12 (Sat) 17:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

あっはは!判る!
私も動物書いたら「花沢城」になるもん!

きっとこのコツメカワウソは「ずんだ」「くるみ」「あんこ」の中の誰かですよ!
ヤだわぁ、水族館でアルバイトかも💦


総ちゃんをど根性ガエルみたいに言うの止めて!(笑)

でも確かに類君には似合わないかも・・・どうにかしてこっそり連れ去りそうだよね💦

「花音はもらったよ」ってメモだけ置いてね♡


総ちゃん、めっちゃ怒るだろうなぁ(笑)

2019/10/12 (Sat) 22:16 | EDIT | REPLY |   

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