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イルカショーを見終わってから外に出ると、もう日が沈んで薄暗かった。
スマホを見ると父様からの着信、母様からはメール。

父様には悪いと思ったけど電話したら色々言われそうだったから母様にメッセージを送った。

『少し遅くなるけどちゃんと帰るから心配しないで下さい』・・・ちゃんと帰るからって打ちながら、少しだけ帰らないことも夢見たりして。


「電話あったんだろ?もう帰ろう・・・この時間から帰っても8時ぐらいになるから」
「え?だって観覧車の約束したじゃない。類お兄様、観覧車に一緒に乗りましょ?それが今日の終わり・・・ダメ?」

「俺はいいけど花音が困るんだろ?それ、総二郎が許可してるの?」
「・・・・・・花音はもう子供じゃないもの。それにお友達はもっと遅くまで遊んでるわ」

「友達の事はどうでもいいって。花音が叱られるのに連れては行けない。それに今日の事は親に話してないんだろ?」
「・・・うん。少し遅くなるとしか」

「・・・じゃ、何処かでディナーして帰ろう。それなら付き合うよ」
「・・・・・・はい」


お兄様も急に父様と同じになる。
私はいつまで経っても小さな子供みたい・・・。

今まで私の後ろを歩いていた類お兄様が今度はスタスタと先に歩いて駐車場に向かう・・・その背中を黙って見つめていたら、立ち止まって振り向き「花音、おいで」って・・・呆れたような笑顔で私を呼んだ。

そしたら行くしかないじゃない?
お兄様に嫌われたくないから自分の気持ちを押し殺して、私も泣きそうな笑顔を作って歩き出す。街灯の下に来たら顔を伏せて、悔しそうな顔を見られないようにした。


「また明るい時に行って乗ればいいだろ?」
「・・・うん、そうする」

「あ、俺のスマホで撮った花音の写真、転送しとくね」
「転送したら削除するの?」

「・・・・・・え?」


お兄様のスマホで撮ってって頼んだのは私をそのスマホの中に入れるためなの。可愛く映ってるかどうかは判らないけど、いつでも私が見られるように撮ってもらったの・・・もう少しでこの言葉が口から出そうだった。

でも、お兄様は「消さないよ」って微笑んだ。
そして車に乗ったらエンジンを掛ける前にそのスマホの中を2人で覗き込んで大笑いした。


「あはは!このシロイルカ、可愛い~!」
「ね、この角度で見たら花音ってホントに父さん似だね・・・」

「ホント?父様みたいに怖い顔してる?」
「あはは!総二郎ってそんなに怖いの?」

「だってぇ!昔から私だけに怒るのよ?絢音が悪戯しても颯音が悪戯しても『こらっ、花音!』って。ホント、いやんなっちゃう!そんなに暴れん坊だったのかしら」
「それだけ気になってたんだよ、あいつ・・・」

「・・・そうなの?」
「・・・多分ね」


類お兄様は私の顔を見ずにスマホの画面だけ見て笑ってる。
私はスマホの画面を見るフリしてお兄様を見る・・・その目は画面の中の私にも母様の面影を見てるのかしら、なんて思いながら喉が押し潰されそうなぐらい苦しくなってた。


「あっ!このカワウソと花音、可愛い・・・」
「・・・どれどれ?えっ、これ?可愛いって・・・私の顔変じゃない?」

「ううん、こんな顔好き。自然じゃない?」
「・・・そ、そぉ?」

「じゃ、全部送るね」
「うん!じゃあ私もお兄様の写真撮ったから送るね」

「えっ!撮ってたの?」
「勿論よ!記念ですもの」


その中で1番好きな写真・・・お兄様が魚でもイルカでもなく、ただ空を見上げてる横顔・・・。




************************




花音が何かを言いたそうなのは判っていたし、俺に聞きたいことがあるって事も判っていた。
でもそれは聞かない方がいい・・・花音にその時間を与えない方がいいと思いながら、悲しそうな瞳に負けてディナーだけ誘ってしまった。

それもやっぱり特別感を出さないような店で、極普通の席。
他の客に囲まれての堅苦しく無い食事。少し賑やかで、自分達の会話もその中に溶け込ませた。

花音は楽しそうに今日を振り返ってお喋りしてるけど、ほんの一瞬考え込むような困った表情を浮かべる。俺はそれを見ないフリして花音を制する。
これは卑怯なのかと自分に問いながら。


でも食事が終わって西門に送り届ける時、花音はそれまでと全然違っていた。
助手席からくる凄い緊張感・・・流石に運転しながら俺にも焦りがあった。

そして本邸が近づいてきたら「暗いから門の前まで行くよ」、そう言うと・・・


「類お兄様、ごめん!車を停めて?」
「え?」

「お願い・・・ここで車を停めてくれる?花音、お兄様にお話しがあるの」


そこはもう門が見えてる路地で、真横には本邸の白壁。ここまで帰って来たのに真剣な顔でそう言った花音の声に驚いて、取り敢えず門の少し手前で車を停めた。
横を確認したわけじゃないけど、花音が真っ直ぐ俺を見てるのは判る・・・自分のスカートを握り締めてる手も目の端に見える。

すぐには済みそうもないな、とエンジンを切りライトも消した。


「・・・・・・なに?」
「・・・類お兄様、どうして結婚しないの?」


いきなり飛び出した結婚って言葉・・・花音がそんな歳になったって改めて思う瞬間だった。


「・・・・・・そうだな・・・そう言う人に巡り会ってないから、かな」
「巡りあったらこれからでも結婚するの?」

「あはは・・・どうだろ。あんまり考えたことはないよ」
「ご両親に勧められても全部お断りしてるって聞いたわ。それだと・・・巡り会わないよね?」


総二郎達の会話でも聞いたんだろうか。
誰にも話してないはずなのに・・・こういう事は何故かすぐに知られるから腹がたつ。

その理由なんて、たとえバレバレでも言葉には出せない。特に花音の前では・・・そう思ったのに。


「巡り会わないなら・・・お兄様の横にまだ誰も居ないなら・・・」
「・・・・・・・・・」

花音、それ以上言うな。それを言われたら俺は・・・


「誰も居ないなら、花音をそこに置いて欲しいの。類お兄様の横・・・私、傍に居たいの。本気です、お兄様」



・・・それまで視線を外していた俺は助手席に目をやった。
そこには微かな光でも判るぐらい頬を染めた花音が、必死な目で俺を見ていた。

どのぐらいの勇気がいっただろう。
言葉を出した後の唇は固く結ばれてて震えている・・・せっかくのスカートの皺が深くなる。答えを待ってる時間が静かすぎて怖いぐらい。
1人の女性をこんな風にさせても、俺は・・・


「ありがとう。でも俺はダメ・・・君を幸せには出来ない。もっと花音に似合う男が現れると思うよ」

「そんな人、現れません!私はもうずっと・・・!」
「ごめん、花音。花音の事は親友の子供としか見ていない。そう言う意味での好き・・・だよ」


ごめんね、花音。
そんな目で見ないで・・・。

ふとした表情や仕草が似てても君は牧野じゃないって判ってる。
でも、君の中に牧野を見てしまう事がないって言えば嘘になる・・・そのぐらい俺の中にはまだ・・・


「・・・・・・やっぱり母様なの?こうやって一緒に出掛けてくれるのは母様に似てるから?」
「・・・そんな事はない。今日は花音と出掛けて楽しかったよ」

「私を母様だと思ってくれてもいい・・・そう言ったら?」
「君は牧野じゃない・・・花音は花音だ、他の人間にはなれない」

「・・・私、努力する。お兄様に好かれるように変わる努力をする!私のダメなところを言って?それか母様みたいに・・・」
「花音、そんなんじゃない!そんな事で自分を変えるなんて嘘をついて生きるのと同じだろう?!」


花音・・・判ってくれ。
俺の傍に居たら君が傷つくんだ。

楽しいかもしれない。いつも笑ってるかもしれない。でも、この先俺の心が花音を1番に求めるかどうか・・・


その時、門前に人影が見えた。
花音を心配して出てきたんだろうか・・・・・・不安そうな顔した牧野だ。




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Comments 6

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2019/10/13 (Sun) 13:19 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/13 (Sun) 13:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

そう!頑張ったんですよ(笑)
女の子から23歳も年上のおっさんに(笑)<*注 おっさん=類>

イヤ、マジで困りましたね💦
昨日から書いてたんですけど、公開する勇気が出ないくらい悩みました。
公開したら続かなきゃいけないしね・・・(当たり前)

どうしようかな・・・って(笑)
つくしちゃん、出てきちゃったけどどうしよう・・・(お前が言うな!)


2019/10/13 (Sun) 18:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 こんばんは。

一途・・・ですよね~。どうしましょう💦
花音ちゃんは私の大好きキャラですが、私は類つくですしね・・・。
書きながらすごい抵抗があるんだけど、ほぼ花音の為に書いてるみたいな(笑)

ラストは決めてるんだけど、それでいいのかどうかって困ってます(笑)
番外編だからあんまり気にしなくていいのかな?

「新しい家族」よりも少し長くなるかも💦
ヤバいなぁ(笑)

お気に召さないラストだったらごめんなさいね!

2019/10/13 (Sun) 18:43 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/13 (Sun) 22:40 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あっはは!それは・・・・・・ないかな💦
ここは総ちゃんのお話なので、そんな事したら総ちゃんに殴られますよ?

うん、ここはね・・・完全な類つくさんはお読みにならない方がいいかもしれません(笑)
○的な場面は書きませんけどね。

身代わり的な考えもしてないかも・・・?うーん、どうだろう?

題名の通り「花音の恋」ですから💦
類君も花音ちゃんも幸せに・・・したいです。

2019/10/13 (Sun) 23:04 | EDIT | REPLY |   

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