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門から出てきた牧野はすぐに俺の車に気が付いた。
でも、すぐには近寄って来なかった。

多分彼女からは俺達の表情は確認出来ないだろうけど、俺は牧野の表情がよく判った。すごく・・・驚いてる。
一瞬、花音を遅くに帰した事を悪いと思わずに、自分が女性と一緒に居るところを見られた事を不味いと思った。

今更・・・なのに。


花音はそんな俺の気持ちを察したのか、勢いよくドアを開け、車から飛び出して行った。

いつもは笑って「またね」って言うのに、言葉も無ければ振り返りもしない。
車の中に水族館で撮った記念写真も置き忘れて、牧野の横を走り抜けて門の中に入って行った。
牧野はそれを追い掛けるわけでもなく花音の背中を見ていた。そして彼女を追って中に入ってしまうのかと思ったら、俺の方に向かって歩いて来た。

ちょっとだけ辛そうな笑顔・・・俺も同じような顔をして車から降りた。


「こんばんは。花沢類」
「・・・ごめん、こんな時間になって・・・」

「ううん、花沢類だと思わなかったから驚いただけ。あの子、何も言わなかったから・・・」
「叱らないでやって?ディナーに誘ったのは俺だから」

「・・・くすっ、何を言っても総には無駄だよ。花音の事を心配し過ぎて中でイライラしてるから」
「・・・・・・・・・1番気に掛けてるからね」

「小さい頃から危なっかしいのよ。お転婆で聞き分けなくて、我儘で喧嘩っ早くて・・・でもすごく淋しがり屋で甘えん坊なの。紫音が落ち着いていたから余計にね・・・」
「・・・ん」


母親の笑顔・・・昔みたいに大騒ぎしなくて穏やかになっちゃって。
自分の周りに沢山の愛があるから・・・なんだろうね。
でも、それまで優しく笑っていた顔は急に不安の色に変わった。そして俺から視線を外し、何かを聞きたそうなのに言葉を出さない。


「あ・・・牧野。これ、花音に渡してくれる?」

そう言ってカワウソと一緒に撮った写真が入った封筒を渡すと「見てもいい?」って・・・俺は隠しても仕方ないと思って「総二郎には内緒ね」って言うとクスクス笑っていた。


「あら!水族館に行ったの?」
「ん・・・何処がいいかって聞いたらそう言ったから」

「そうなんだ・・・うふ、花沢類ったらもう少し笑いなさいよ!」
「え?だって急に花音が言うからさ」

「・・・花音はいい顔してるわね。やっぱり・・・あなたの隣だからかしらね」
「・・・牧野、俺は・・・」


牧野はそこで写真を封筒に入れて、やっぱり辛そうに笑った。
1度本邸の方に視線を向けて、少しの間考え込んで・・・ふぅ、と小さな溜め息を付いたら俺の目を真っ直ぐ見上げた。学生の時と変わらない、大きくて吸い込まれそうな瞳で。


「花音が花沢類を困らせることを言ったのね。でも、いつかはこんな日が来るんだと思っていたの。あの子は昔から体当たりしちゃう子だから、黙ってる事が出来なかったんだと思うわ」

「・・・・・・・・・」

「花沢類が気にすることはないのよ。きっと今は辛くても、これであの子も次に進めると思うから。
大丈夫・・・泣いたっていいのよ。人生にはもっと辛い事だってあるし、恋だって沢山してもいいんだから。だから花沢類があの子に流されずに、自分の気持ちをちゃんと伝えてくれたのならそれでいいの」

「・・・・・・牧野」


「花沢類・・・あなたにも幸せになって欲しいの。花音は勿論だけど、あなたにも・・・・・・」

「・・・ん。牧野も入りな。総二郎が花音を叱ったらいけないから」


「うん」って小さく頷いて、牧野は俺に手を振って門の中に消えて行った。

俺にも幸せになって欲しい・・・何となくそのひと言が淋しかったけど、多分牧野も判って口にしてる。
『自分以外の誰かを選んで』、そう言う風に言わないだけだ。

くすっ、そんなの出来るのならとっくの昔にしてるけどね。



牧野も屋敷の中に入って、門灯の光りが少しだけ暗く落とされた。
それを見てから車に乗り込みエンジンを掛ける。
微かに残ってる花音の香りと2人で飲んだジュースの缶を見て、今日はあの子とデートだったんだと・・・これもいい思い出になるだろうか、そう考えながら車を発進させようとしたらスマホが鳴った。

掛けてきたのはフランスにいる母さんだ。


「もしもし、何かあった?・・・・・・・・・え?」




*********************




母様を見たら類お兄様の表情が変わった・・・。
困ったように見えるけど本当は違う。ほんの少し嬉しそうに口元が上がったのを見てしまった。

たった今、お兄様に気持ちを打ち明けたのは私なのに・・・!
それでも真横の私じゃなく、離れたところに居る母様を見てそんな顔をするのね?

それに我慢出来なくて「さようなら」も言わずに車を飛び出した!そして類お兄様も母様も見ないようにして門を潜った。


今から2人が何かを話すのかもしれないけど、そんなの見たくない・・・・・・!


玄関で靴を脱ぎ捨てて早足で廊下を歩き、溢れそうになる涙を堪えながら自分の部屋に向かった。
でもそんなの堪えきれなくて途中からポロポロと頬を伝う涙・・・そのせいで廊下は歪むし胸は苦しいし、指先はどんどん冷たくなって、足先だって冷たくなって・・・!

大声で叫びながら走りたいぐらいだったのに、それも出来なくて夢中で離れまで急いだ。
その時に背中から聞こえて来た声・・・


「花音・・・何処に行ってた?」


「・・・・・・父様・・・」
「どうしたんだ?なんで泣いてる?何かあったのか?」

「な、何でもないです。遅くなってごめんなさい・・・」


濡れた頬を拭うところを父様に見られた・・・。
昔から私には厳しいのにこんな時は鬱陶しいほど聞き出そうとする・・・それがイヤで、父様が近づいてくるのにクルッと向きを変えた。
勿論、それで放ってくれるような父様じゃないからすぐに片手を掴まれてしまったけど・・・。

今度は真正面から私の顔を見て、あまりに酷いからなのか驚いてる・・・それが判るから尚更イヤだ。


「花音、どうしたんだ?ちゃんと説明しなさい」
「・・・帰って来たんだからいいでしょう?私だってもう21なんだから色々あるわよ・・・父様が思ってるような子供じゃないの!」

「子供っぽいとか成人してるとかの話じゃないだろう!どうして泣いて帰るんだ!そんな顔されたら何かあったと思うだろう!」
「何かがあっても父様には関係ないでしょう!・・・もう休みます。ごめんなさい、父様」

「花音!!」


父様の手を振りきって廊下を走り、離れに飛び込んだら兄妹達が驚くのを無視して自分の部屋に入った。
そして両手でドアを塞ぎ「花音姉様?」って言う絢音に返事もしない。「花音、どうした?」って言う紫音の声にも返事しない。
「放っておけば?男にフラれたんじゃねぇの?」って言う颯音を・・・出ていって殴りたかったけど我慢した。



『俺はダメ・・・君を幸せには出来ない。もっと花音に似合う男が現れると思うよ』
『花音の事は親友の子供としか見ていない。そう言う意味での好き・・・だよ』



類お兄様の声と顔が頭の中で繰り返される・・・・・・その度に胸が押し潰されそうになる。


失恋って言うのかなぁ・・・これ。


ドアの内側に踞って自分の両足を抱え込み、その向こうの家族の声を聞かないようにした。
これまでで1番ドキドキして楽しくて嬉しくて・・・そして苦しい1日が終わった。




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Comments 2

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2019/10/15 (Tue) 12:27 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。
えーと💦進展が無くて申し訳ないです💦

何となく1番板挟みのつくしちゃんも可哀想になってきました(笑)
ヤバいですよね~!

次話、少し動きます。
そうそう、あの電話で・・・ちょっと風向きが変わります♡

類つくさんには「お楽しみに~」とは言えませんが💦

2019/10/15 (Tue) 18:12 | EDIT | REPLY |   

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