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牧野から電話をもらってすぐに社を飛び出し、車をお台場に向けた。
花音が昨日何度も行こうと言ってた観覧車、そこに居るような気がしたから。

車を近くに停めて、走って乗り場前に行ったけど、辺りを見回しても花音らしい姿はなかった。
居なくなったのは朝だ・・・まさかここに1日中居るわけないか、と思うのに他には考えられない。その辺りにいた従業員に花音の画像を見せて聞いてみたけど誰もが首を横に振った。

でもすぐ近くにある飲食店の店員が花音らしい女性を見たと・・・


「本当に?何時頃?」
「私の勤務が昼からで、このお嬢さんが淋しそうに店の前に立ってたんです。『お席空いてますよ?待ち合わせですか?』って声を掛けたんですが『1人ですから』って言われて、すぐに何処かに行かれました」

「どんな服装だったか判る?」
「えっと・・・確か青っぽいワイドパンツに薄紫のカーディガンだったかな?それ以外は覚えてないですねぇ」

「いや、助かった。ありがとう」


やっぱりここには来たんだ。でもそれが昼ならもう他に移動したんだろうか・・・。
もうすぐ日が暮れる・・・やっぱりまだこの付近に居るんじゃないのか、そう思って観覧車を見上げた。


・・・もしかしたらこいつ全体がよく見える場所に居るのかも。
それなら少し離れた場所?

今度は目の前のセンタープロムナードに行って、そこからウエストプロムナードに向かって花音の姿を探した。
よく似た後ろ姿を見掛けたら急いで追い付いて確かめ、よく似た声を聞いたらそっちに顔を向けた。でも、どれも違う・・・自分の前後左右を何度も振り返りながら、見えにくくなった公園内を走りまくった。

よく似た背格好の女性がベンチに1人だったから慌てて近寄ると、「お待たせ」って声がして男が近寄った。
「お姉さん、1人なの」って男の声がしたから驚いて振り向いたら、全然違う女の子が気易くその誘いに乗っている。

そんな光景を見たら、早く探さないとってすごく焦った。


ぐるっと一周してもう1度大観覧車の前を通った時、日没と同時に行われるライトアップでパッとそこが華やかになった。それを横目で見ながら今度はイーストプロムナードに足を進めた。


その途中の夢の大橋・・・・・・・・・そこにラベンダーカラーのカーディガンが見えた。



もう薄暗くなった橋の真ん中辺り、街灯に照らされた場所で観覧車を見上げている花音を見付けた。


いつからそうしてるんだろう。花音は1人でライトアップされたばかりの観覧車を見ていた。
走りすぎて息が上がってる・・・馬鹿だとは思うけど、こんなところをあの子に見せたくない。だから先に牧野に電話を入れる事にした。勿論花音からは目を離さずに。


『もしもし!花沢類、見付かった?!』
「うん・・・見付けた。まだ声を掛けてないけど無事だから安心しな」

『何処に居たの?ねぇ、花音1人なの?』
「場所は・・・総二郎が飛んで来て叱ったらいけないから言わない。後で花音に聞きな。でも1人みたい・・・今から話して連れて帰るから総二郎にそう言って?もしかしたら時間が掛かるかもしれないけど、絶対に連れて帰るから」

『・・・おい!!類、何処に居る!』


牧野の電話を奪ったな?
すごく焦った総二郎の声が聞こえたから、そこで牧野に話したことをもう1度伝えた。でもこっちは聞く耳を持たない・・・「何処だ!」を連発しまくって、俺に苛立ちをぶつけていた。


「総二郎がそこまで感情的になると連れて帰れないだろ?確かに俺のすぐ近くに花音は居るから問題ないって。後で車に乗せたら連絡する。時間は・・・判んないけど」
『なんだと?!すぐに連れて帰れ!』

「もう切るよ。それまでにお前は気を鎮めてな」
『待て、類ーーっ!!』


やれやれ、ホントに花音の事になると回りが見えない困った親父だ・・・。
そして俺はやっと息が整った。

だからゆっくり花音に近づいて行く。
だんだんはっきり見えてくる表情は初めて会った時とそっくりだ。ボールが取れないと今にも泣きそうだった・・・そんな風に眉を下げて心細そうな顔をしていた。


「・・・花音、何してるの?」


・・・花音もその時やっと俺の姿に気が付いた。




**********************




大学まで行って紫音と別れた後、それまで頑張って元気良くしていたのに、またふっと気が抜けた。

それに寝てないから頭がふらふら。
もうすぐ講義が始まるのに、こんなんじゃ受けても無意味だと踵を返した。

そしてもうみんなが教室に入って静かになったキャンパスをトボトボ歩いて、気が付いたら門を出てバス停に向かっていた。


でも何処にも行く場所はない。
もう類お兄様のところにも行けない・・・あんなこと言っちゃったんだから。
家にも帰りたくない。仲の良い父様と母様を見るのは嫌だ。母様はお兄様じゃなくて父様を見てるから。

「いや、私にはその方がいいのかしら。でもそうしたら類お兄様が可哀想?ううん、だってそれは・・・」

・・・私の知らない母様達の学生時代。
どんなストーリーがそこで生まれて、どうやって変わっていったのか・・・誰が苦しんで誰が泣いたのかなんて知らない。
だから可哀想って思う事は違うのかどうか・・・それすら判断できない。



どうして私はこんな恋をしたんだろう。
どうして諦められないんだろう。人生に恋が1回で淋しくないの?花音・・・・・・って自分に言ってみたりして。


その時に来たバス・・・その行き先を見て「あそこ」に行けるって思った。
類お兄様がまた今度行こうって言ってくれた・・・お台場の大観覧車。
私は何も考えずそのバスに乗って、お兄様と行くはずだったのに1人で向かった。



そこに着いてから青く澄んだ空を見上げた。
カラフルなゴンドラがゆっくり動いてる・・・その中でみんながどんな会話をしているのか想像していた。

親子だったらはしゃぐ子供を抱っこしながら?
友達なら恋バナとかしながら?
恋人なら腕を組んで愛を囁きながら?

私ならどんな会話をするんだろう・・・って、自分がお兄様と乗ってる場面を想像していた。


ううん、きっと何も言えない・・・お兄様の顔も見れないかも。
だって向かい合ってるか、真横に座ってるもの。子供の時みたいに無邪気に触れることなんてもう出来ない・・・でも、あの頃に戻りたい。

お兄様の膝の中は私の特等席だって・・・飛び込んで行けたあの頃に戻りたい。


何周ゴンドラが回っても、どれだけの人が乗り降りしても、私はそれを見上げたまま離れられなかった。
乗りたかったなって・・・あんな事を告げずに乗れば良かったって思いながら、たまに流れる涙を拭きながら見上げていた。


「はぁ・・・もう暗くなっちゃった。帰ったらまた父様に叱られるんだろうな・・・。でもライトアップされたのを見てから帰ろうかな・・・」


もう空が薄暗くなって、日が沈んだらパッと観覧車が綺麗な色に染まった。
私はそれを夢の大橋から見ていた。

また足が地面から離れない。
このままだと帰れない・・・だからギュッと唇を噛み締めてあることを決めた。


あの光りが一周したら帰ろう・・・そしてこの恋は忘れよう。



そしてあともう少しで一周するって時に声が聞こえた。


「・・・花音、何してるの?」


「類お兄様・・・どうして?」
「ん?花音が居なくなったって聞いたから探しに来た。ここに居るような気がしたからね」


類お兄様の姿を見た時には私が決めていた光りは2周目に・・・そして私が決めていた事はあっさり砕かれた。
忘れようって思ったのに、また私の恋心はお兄様に向かって歩き出してしまった。



「馬鹿だね。みんなに心配掛けちゃダメだろ?」
「・・・・・・ごめんなさい」

「送って行くから帰ろう?」
「・・・・・・はい」

「でも、その前に・・・乗っていこうか?夜景には少し早いけど」
「・・・えっ?」


「花音に言わなきゃいけない事もあるから」





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Comments 6

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2019/10/19 (Sat) 14:39 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/19 (Sat) 14:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あぁ💦申し訳ありません!
見付かったってところにすぐに入ればいいんでしょうが、私はその途中が好きなものですから、つい書きすぎてしまって💦
焦らすつもりはなかったんですが、こんなドラマのような終わり方で(笑)

いやいや、話すことは前話の事ですが、それで花音ちゃんがどうするかですよね~。

類君好きさんを敵に回すこのお話(笑)どーしましょ💦

2019/10/19 (Sat) 19:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様 こんばんは。

コメントありがとうございます。

えっ?!そんな大事件は起きませんよ?(笑)類君が話すことは前話に書いた事ですから。

話さないと類君、日本から出て行きますからねぇ。
あれ?変な風に解釈しちゃいました?

でも、その後の展開は・・・まだ秘密です♡
ははは、もう謝っておきますね💦ごめんなさ~いっ!

2019/10/19 (Sat) 19:28 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/19 (Sat) 20:00 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

コメントありがとうございます・・・って爆笑っ!!

やめてっ!花音ちゃんがこんなに頑張ってるのにっ💦(笑)

一周16分しかないのよ?
えっ?総ちゃんなら2回ぐらいできる?

・・・・・・・・じゃあ類君ならどうよ?


「総二郎が2回なら俺はっ・・・!花音、頑張るよっ!」
「はいっ!お兄様っ!」

・・・てか?

いかんいかん・・ホントにいかん💦

2019/10/19 (Sat) 20:07 | EDIT | REPLY |   

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