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plumeria

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もう何年も前の事・・・歳だってはっきり覚えてないが、俺は1人の小さな女の子を見掛けた。
・・・ってか、体当たりされて跳ね飛ばされた!

俺はそんな事は初めてで、しかも女に・・・って事で限りなく高かったプライドはズタズタ。
真っ黒いおかっぱでデカい目で、迫力ある眉毛に低い鼻。色だって黒くて毎日外で遊んでるんだろうって一般庶民丸出しの子だった。


「何すんだよ!女のクセに生意気な!」
「なによ!あんたがここに咲いてるお花を足で踏んづけたからでしょ!」

「わざとじゃねぇ!気付かなかっただけだろう!」
「そんな訳無いじゃん!チューリップだよ?どんな馬鹿でも気が付くでしょ!謝りなさいよ!」」

「馬鹿・・・お前、この俺に向かって馬鹿って言ったのか?」
「なによ、この俺に向かってって。あんたが誰かなんてこの花には関係ないっつーの!しかもここは公園だよ?みんなの花壇に咲いてる花を踏んだんだから怒られて当然だよ!」


俺のする事にイチイチケチ付けた奴なんてこれまでいなかったのに。
ただ、そこでのほほんと咲いてる花が憎たらしかっただけだ。俺はあんな家で窮屈な毎日なのに、何も考えずに太陽に照らされて咲いてる花が嫌いだったんだ。

だからつい・・・それを見ていたこいつがタックルして来やがった!


「あぁっ!総二郎様、こんな所にいらっしゃったのですか?お稽古の時間ですよ!」
「・・・・・・うるせぇよ!」

「勝手にお屋敷を抜け出されてはいけません。何かあったらどうするのです?」
「そんなの困るのは親父じゃん・・・」

「なにを言ってるのです、さぁ、戻りましょう。お稽古が終わったら剣術の講師が来られる日ですよ」
「・・・面倒臭ぇ・・・」


チラッとそいつを見たら俺が踏んだ花を元に戻そうと必死になってる。
茎が折れたものは持って帰るつもりなのか、花びらが千切れていても拾い集めていた。


チクッと心臓に棘が刺さる・・・だけど、知らん顔して屋敷に戻った。
まだ小学部の低学年の頃だった。



それから数年経って小学部の高学年になった頃、稽古をサボってあきらの家に行った。あいつの家はのんびり出来たから。

帰りは車で送ってもらったけど屋敷から少し離れた所で降ろしてもらった。
「俺が引き止めたって言ってやろうか?」なんてお人好しのあきらは言うけど、そんなガキっぽいことも断わった。たとえあきらが言ってくれても親父達には関係無い。「美作家にもひと言言っておかないと」・・・なんて言葉が出るのは判りきってる。

あきらに迷惑かけるって言うより友達を悪く言われるのは好きじゃなかった。
・・・彼奴らだけが何でも話せる相手だったから。


屋敷までの道をブラブラ歩きながら帰ってる途中、稽古をサボった言い訳なんて考えて、そこにあった小石を思いっきり蹴ってみた。そしたら思いの外良く飛んで、丁度横道から出てきた女の子の持ってる買い物袋に命中!
そこで驚いたその子がドサッと荷物を落とした。


「ああーーっ!!玉子が割れたぁ!」
「・・・・・・・・・は?」

「どうしてくれるのよ、折角買った玉子なのに半分割れちゃったじゃないの!だいたい道のド真ん中で石なんて蹴る?!」
「うるせぇ!お前が落としたから割れたんだろう?俺の蹴った石で割れたって証拠があんのかよ!」

「でもあんたが蹴らなかったら私だって落とさなかったわよ!少しは反省したら?先ずはごめんなさいって謝りなさいよ!」
「誰が謝るかっての!」


よく見たらそいつは数年前、俺を突き飛ばした女?
多少背が伸びてるぐらいで全然顔が変わってない・・・で、こいつはもしかしたらこの俺の事を覚えてねぇのか?!
俺の方が吃驚した顔してるのに、こいつは全然そんな風でもなく、あの日と同じように「謝れ!」を連発しやがった。
馬鹿馬鹿しくなって無視して屋敷に戻ったけど、俺の背中から暫くの間「卑怯者!男のクセに逃げるのか!」ってな声が聞こえていた。

女のクセにはしたない言葉を出しやがって・・・!


この頃の俺は結構荒れていた・・・まだ抵抗してた。
こうやって荒れた態度を見せていたら親父達も茶道から解放してくれるんじゃねぇかって・・・それを願ってわざと荒れた感じを表に出して暮らしていた。



また数年が経って中等部の頃になると暴れていた感情が少し諦めに変わった。

どう足搔いても自分の運命は変えられないんだと悟った・・・それなら縛り付けられるまで遊び倒してやる、そんな風に考え始めた。だから酒だって飲めない歳なのに夜通し歩き回ったり、踊りに行ったりクラブやゲーセン、飲み屋の個室で色んな遊びを覚えた。その時はあきらや司やたまには類もいて、馬鹿な話で盛り上がり、意味も無く騒いで喧嘩して、何度かサツに追われた事もある。

勿論捕まるようなヘマはしない。

その時、その時間だけ自由になれたらそれだけでいいって・・・4人共が同じ気持ちで憂さ晴らししてた。


そして空が白み始める頃に屋敷に戻り、こっそり裏木戸から戻る。
そんな事も1度や2度じゃないから小さな木戸がいつも開けてあった。

今日もそこから帰ろうと木戸に手を掛けたら、少し離れた道を走る女を見付けた。

朝の5時前・・・こんな時間に走る女?
そいつが俺の方に近づいてくるから何の気なしに待っていたら新聞配達の子だった。でもその顔は・・・あのおかっぱ頭!
あの子が今度は新聞の束を持って、白い息を吐きながら走って通り過ぎた。


「おはようございます!」
「・・・・・・・・・・・・」


形式的な挨拶なんだろう。
ニコッと笑って俺の横を通り過ぎていったけど、前の「玉子事件」の事なんて思い出してもいないようだった。
俺は振り向いてその子の後ろ姿を見ていた。

あの子が新聞配達をしなきゃいけねぇほど逼迫した経済状況なのか・・・どんな家庭の子なんだ?って頭を捻った。



次に見掛けたのは高等部の頃。
その時は車の中からだった。この辺りの高校の制服を着て、信号待ちの俺の車の前を猛スピードで走り抜けた。

「は?まさかここから走って帰るのか?相当距離が・・・」
「総二郎様、如何されました?お知り合いでも?」

「いや、何でもねぇ」
「帰宅しても宜しいので?」

「・・・あぁ、出してくれ」
「畏まりました」


そう言いながら目ではあの子を追っていた。そして車が走り出すと当然追い抜く・・・1度だけ振り向いて見たけど、長い髪をブンブン振ってすっげぇ真剣な顔で走ってやがった。
バスとか乗らねぇのかな・・・って思いながら空いてる自分の隣の席を見た。いや・・・乗せる気なんてないけど。




それがあの子を見掛けた最後だった。
わざわざ明け方に屋敷に戻ってみたけど、もう違うヤツが新聞を配っていた。
買い物袋を下げて歩く姿も見なかった。そしてあの公園は無くなって小さなアパートが建てられた。

印象的な黒髪のあの子は何処かに引っ越したのかもしれない・・・その後、俺の頭からもあいつの姿は消えていた。


そして俺は24歳になり、家を飛び出した祥兄の代わりに次期家元を命じられた。
あれだけ嫌っていた茶道も今となっては俺の天職だと思えるようになった。


ただ喧しいのは親父にお袋。
側に人を置かない俺に「秘書を付けろ」「嫁をもらえ」・・・毎日聞かされるこの言葉にウンザリしていた。




**




「あれ?総二郎君、もう帰るの?まだ1時前だよ?」
「ん~?明日は午前中に茶会があるんだわ。流石に客の前で欠伸できねぇから帰って寝る・・・またな!」

「え~!サボっちゃいなよ!」
「そうだな。この店からの帰り道で好みの女と出会えたらサボるかもしれねぇけど」

「あはは!それなら私でどう?」
「やだ、私にしてよ、総二郎く~ん!」

「・・・・・・そのうちな!」


早い時間に茶会がある前日の遊びはノンアル・・・だから今日みたいに自分で運転してくることもある。
基本乗り物が好きってのと、気が向けば何処かに1人で移動できるから。まっすぐ帰らずに海風に当たりに行く事もあれば星を見たくて田舎に向かうこともあった。


「・・・今日はどうするかな。真っ直ぐ帰るか・・・・・・ん?」

駐車区域に止めていた愛車に近づいた時、その向こうから歩いて来る酔っ払い女を見付けた。
飲み慣れて無いのか足元がフラフラなのに、着てるものは子供っぽいワンピースだったからすげぇ違和感。
時々大きく蹌踉けながらガードレールに凭れ掛かっては大きく息を吐き、また歩き出しては通行人に体当たりして怒鳴られて。

それでもヨタヨタと近寄って来るその女に見覚えがあった。


多少伸ばしてるが黒髪のストレートで低い鼻・・・肌は白くなってたけど華奢な身体。
ここからじゃ良く見えないし、俯いてるからデカい目なのかどうかは判らない・・・でもいきなり「馬鹿にすんじゃないわよ!」って叫んだ声に懐かしさを感じた。


マジで・・・?

この俺を馬鹿呼ばわりしたあの女が現れた?






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総ちゃんの新連載「命短し恋せよ乙女」でございます。
今回の画像イメージは「牡丹」♡

いきなり思い付いて始めたお話しですのでもしかしたら毎日更新出来ないかもしれません。
そして今回はComedy・・・かな?まぁ、のほほんとしたお話しで、これまでのお話しのリハビリのようなものです。

事件も少なめ(笑)LOVE度は後半アップ予定(笑)
気軽にお付き合いいただけたらと思います♡
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Comments 4

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2019/08/31 (Sat) 13:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは🎵

meimei様 こんにちは。

はい、取り敢えず始めてみました。
今度はあまり難しい話ではありません。

気楽に書けるものを、と思いまして気負わずに書きたいと思います。
長編の後は本当に切り替えが大変・・・のんびりやります♡

どうぞ宜しくお願い致します。

2019/08/31 (Sat) 14:32 | EDIT | REPLY |   
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2019/08/31 (Sat) 22:24 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: No title

亜利沙さま、こんばんは。

初めまして。ご訪問&コメントありがとうございます。
そうですね、歌のタイトルからですね。

一瞬ビビりました?(笑)
いやいや、その命ではありませんから💦

いいタイトルが浮かばずに、これが1番しっくりきただけです。
まぁ、緩いお話しではありますが、お暇な時に遊びに来て下さいませ♡

どうぞ宜しくお願い致します。

2019/08/31 (Sat) 23:05 | EDIT | REPLY |   

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