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plumeria

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屋敷に帰ったら志乃さんが寝間着に羽織り物という姿で出てきた。

「・・・総二郎様、何事かございましたか?数人ほどお屋敷を出たようですが?」
「あぁ、気が付いた?悪い・・・少しトラブったから車を持ってこさせたんだ。それと、もう少ししたら其奴らが女を抱えて帰ってくると思うから風呂に入れてやって。すげぇ汚れてると思うからさ」

「まぁ!そのような女性を?総二郎様、少しお考えになりませんと!」
「違うって!俺の女じゃねぇよ。でも訳ありだから黙って帰せねぇの。明日ゆっくり説明するからさ」


そう言ってた時に弟子達が戻って来て、志乃さんは怒って車まで出向いて行った。
でもすぐに引き返してきて「すぐにお医者様を呼んだ方がいいですわ!」・・・と。


「は?医者に診せねぇとダメか?」
「これは完全に急性アルコール中毒ですわ。どの程度飲んだか知りませんが、意識がないのですぐに診ていただいた方が!」

「判った。俺が運ぶから志乃さんは主治医を呼んでくれ。親父達にバレないようにな」
「・・・畏まりました」


元々は弟子達が運ばせるつもりだったのに、意識がないと言われたら気になる・・・だから俺が車からこいつを抱きかかえて降ろし、すぐに本邸の客間に連れていった。
志乃さんは医者に連絡をした後で布団の用意をしてくれて、こいつをそこに寝かせようと思ったが吐瀉物でかなり汚れてる。それは志乃さんが綺麗にすると言うから任せることにして、俺は1度自分の部屋に戻った。


シーンとした真夜中の本邸に客間の薄暗い灯りが目立つ。
着替えて再び廊下を歩きながら、その灯りでお袋達が起き出さないかとヒヤヒヤした。


「・・・入ってもいいか?」
「・・・どうぞ」

そこには住み込んでる若い女性の使用人が呼ばれていて、酔っ払いの服や顔、髪も綺麗にしてくれていた。それにも気が付かないのか布団に寝かされた女は相変わらず苦しそうだ。
その顔はメイクも落としたから真っ青・・・色味のない唇が症状の重さを感じさせた。


「総二郎様、お見えになりましたよ」

こっそり呼んだ主治医を客間に通して診察させ、点滴をして様子を見ることになった。


「どのぐらい吐きましたか?」
「・・・随分吐いてたからな・・・もう胃の中は何もないと思うけど?」

「呂律も回らない感じでした?呼吸困難とか発汗とか・・・頭痛は訴えませんでした?」
「いや、出会って1分以内にこの状態だ。その途中は遠目で見てたけどフラフラしながら叫んでたぞ」

「叫んでた?そうですか・・・その後急に脱力した感じかな?ご一緒に飲まれた訳ではないのでしたら状況は判りませんねぇ」
「当然!俺はこいつの素性も名前も知らねぇし」

「飲み慣れていない人が一気に飲んでの事でしょうね。またお昼に様子を見に来ましょう。ブラックアウトの可能性も高いかな・・・でも若いお嬢さんだから覚えてない方が幸せかもしれませんね」

「ブラックアウト・・・部分的記憶喪失ってやつ?」

「泥酔中の失態について後で思い出せないことです。それではお大事に・・・」


お大事にって・・・無関係だけど。



そして朝になって毎日の日課である作業を済ませたら、昨日の客間から話し声が聞こえたから足を向けてみた。
「なんとかつくし」が目を覚ましたのか・・・って障子を開けようとしたら、そいつが飛び出して来て今度は俺に頭突き!

驚いたけど女の方が蹌踉けたから慌てて抱き留めたら、昔と同じデカい目で俺の事を見上げていた。


バクン!と心臓が鳴った・・・・・・と、同時にこいつはまだ酒臭かった。



**



「今度は体当たりか?俺には足を上げるなよ?」
「・・・は?」

「助けてやった上に蹴られるのは迷惑だって言ってんだ」
「あっ、ご、ごめんなさい!昨日は・・・いや、今日か?と、とにかくありがとうございました!お恥ずかしいところをお見せして・・・」


くくっ、残念・・・ブラックアウトしてねぇのか。
って事は自分の醜態を覚えてんだな?可哀想に・・・。


「で、あんたに話があるんだが、先に風呂に入って来い。その酒の匂いをどうにかしろ」
「えっ?お酒の匂い・・・」

そう言って自分の事をクンクン匂ってるけど、そんなの自分で判る訳がない。
志乃さんに目配せすると「畏まりました」と言って部屋を出ていった。

こいつは部屋の中をキョロキョロして自分の荷物を見付け、フラフラしながら鞄の中からスマホを取り出した。でもまだ本調子じゃないからなのかそいつを落とし、頭を抱えている。
頭痛がするのは当然。重症な二日酔いなんだろうから。


「おい、何をする気だ?」
「・・・会社に電話しなきゃって思って。もう始業時間過ぎてるから遅刻だけど、連絡無しは不味いでしょう?いたたたた・・・」

「今から行く気なのか?」
「だって今日は休みじゃないんですよ、だから行かなきゃ」

「あんたが行かないと仕事が進まねぇの?」
「は?いや、そんな事は・・・」

「じゃあ今日は仕事を休め。そんな体調で酒の匂いさせて行っても迷惑なだけだ。大人ならそのぐらい判るだろう」


俺の言い方が気に入らなかったのかキッと睨まれたけど、言ったことは事実。
このまま出勤したって何も出来ないだろうし、下手したら遅刻したクセに早退。それなら居ない方がお互いに不快な思いをせずに楽ってもんだ。
そう言うと暫くスマホを握っていたけど、溜息1つ漏らして電話を掛けていた。


「・・・あ、もしもし牧野です。はい・・・大変申し訳ありません。具合が悪くて起きられなくて・・・それで連絡が遅くなりました。はい・・・はい・・・そうします。明日届け出を出しますので・・・はい、失礼致します。宜しく・・・高田先輩」


あぁ、牧野・・・「牧野つくしの大馬鹿野郎」だったと、この電話を立ち聞きして思い出した。
牧野は電話を切ったらその場にしゃがみ込んで項垂れて、何度も「はぁ・・・」って情けねぇ声を出していた。
聞けば「無遅刻無欠勤の皆勤賞だったのに・・・」、そんなものに何の意味がある?って聞いたらまたジロッと睨んでいた。


「そのぐらいしか自慢がねぇの?他の事で自慢しろよ」
「・・・助けてもらったんだから言い返したくないけど、真面目に勤務してる証拠じゃない!簡単にそのぐらい、だなんて言わないで下さい!」

「確かに皆勤賞ってのは自己管理できてる証拠になると思うから悪い事じゃない。
でも勤務評価ってのは自分がやった仕事の内容と結果じゃね?あんたがそうだとは言わないが、風邪引いて発熱してるのに出勤して他の人間を巻き込んだり、出勤したはいいが居眠りしてても休まなかったら皆勤賞だ。だからそんなものどうだっていいって。俺が言いたいのは休んだからって気にすんなって事だ」
「私の個人的な満足感なのよ!放っておいて下さい!でも・・・」

「でも?」

「・・・よく考えたら行かなくて良かったです。今日は電話で話した先輩に会いたくなかったから・・・」


そう言った時に畳についていた手の平をギュッと拳に変えた・・・そして俯いてるけどすげぇ悔しそうに眉を顰めた。

それは昨日フラフラしながらも歩いて来た時と同じ顔。
そういう事か・・・と「牧野つくしの大馬鹿野郎」の意味が判った気がした。


「まぁいい。さっき話したとおり、志乃さんが風呂を準備してるから入って待っててくれ。俺は午前中に1件仕事があるから昼には戻る。また夕方から打ち合わせが入ってるが、その空いた時間に昨日の事を話そうじゃねぇか」

「・・・昨日の事?」

「忘れてねぇんだろ?俺の愛車を蹴り飛ばして凹ませ、その車に吐きやがったんだ。あの車がどう言う車種か知らねぇだろうから後で教えてやる。まさか知らん顔して逃げねぇよな?」

「・・・・・・はっ!そう言えばそんな記憶が・・・」


馬鹿め!今頃真っ青になっても遅いんだよ!

戻って来た志乃さんに牧野の事を頼んで、俺は仕事に向かった。




*********************




「・・・・・・ここがお風呂ですか?」
「何に見えますか?いいから早くお入りなさい。お湯から上がったらしっかり水分を取って、まだ身体に残ってるアルコールをお出しなさい!若い娘さんが飲み過ぎて路上で吐くなど以ての外ですよ?!」

「ごめんなさい・・・」


脱衣場と浴室を会わせたら私のアパートの部屋よりも広いかもしれない。
そんな総檜風呂の爽やかなお風呂に入る前に、何故か他人の志乃さんにまた怒られていた。
でも、こんな醜態を怒ってくれる人なんていないから、怒られてるのに少しだけ嬉しい・・・って思いながら浴室に入った。


凄くいい香りのシャンプーにコンディショナー、ボディソープも極上・・・こんなきめ細かい泡立ちのものは初めて。
それで洗ったら全身さっぱり♡もしかしたら肌が綺麗になったかな?って勘違いするほど洗い上がりが気持ち良かった。

そして今度は檜風呂。
こんなの旅行雑誌でしか見ないのに、まさか自分が入るなんて・・・って温泉に行った気分。


「ふわぁ・・・気持ちいい・・・・・・凄いなぁ、毎日こんなお風呂に入ってるのかしら、あの人」

あまりの気持ちよさにズルズルと身体が倒れていき、気が付いたらもう少しで鼻まで湯の中に入るところだった!
慌てて身体を起こしてバシャバシャと顔を洗い、浴室を出た。


脱衣場には新しい下着と私のものじゃないワンピース?
でも不思議とサイズが合っている。何故?って不思議に思ったけど、ワンピースは後でクリーニングして返せばいいかと借りることにした。

志乃さんが言ってたとおりに準備されていたのはミネラルウォーターで、それを飲んでからさっきのお部屋に戻った。



部屋に敷いてあったお布団はすっかり片付けられていて、だだっ広い部屋には何もない。
どうしていいのかも判らなくて障子を開けて庭を見ていたら・・・そこは現代とは思えないような和風庭園で、何処まで続いているのかと見渡してしまうほど広かった。


茶道宗家のお屋敷・・・そう言えばそんな事を言ってたなって、この時にやっと頭がすっきりしてきた。

この先、恐ろしい話が待ってるとも思わずに・・・。




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2019/09/03 (Tue) 14:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

ははは!ホントですよね~!
忘れてしまえば良かったのにね~。

私○○歳からお酒は飲んでおりましたけど、酔って総てを忘れてことはないですねぇ~。
高級外車に吐いたことはありませんが、タクシーで2回吐いたことがあります(笑)
めっちゃ怒られましたよ💦当たり前だけど。

1回は停めてもらって車外でしたが、もう1回は見事に車内・・・あれ、どうなるんでしょうかねぇ?💦
ホントに申し訳ない事をしました。

今はもう全く飲みません。昔はヤバい事ばっかりだったなぁ(笑)


つくしちゃん、どうなるんでしょうかね?
総ちゃんの悪巧みが始まりそうです。

2019/09/03 (Tue) 19:58 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/05 (Thu) 10:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

ちょっと!何をさせる気ですか(笑)
いきなり総ちゃんのキャラをそこまで崩せないわ💦

まぁ、似たような感じだけど、もっと健全なお話しです!キリッ!

そのような要求にも負けず、正しい社会人のお話を書きます!キリッ!

(ん?説得力無し?ですよね~)

2019/09/05 (Thu) 18:47 | EDIT | REPLY |   

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