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昼になって本邸に戻ったら、先ずは親父に仕事の報告。
ついでにまた「専属の秘書を作れ!」と小言を言われ、無視して親父の茶室を出た。

向かったのは客間・・・そうしたらお盆を手にした志乃さんが別の廊下から来るのに出くわした。


「あぁ、総二郎様、お帰りなさいませ」
「志乃さん、あいつ逃げてねぇよな?」

「逃げるだなんて。ここで監禁してるみたいな言い方はお止めくださいな。これからお昼を持って行くところですの。総二郎様はどうします?丁度今でしたらダイニングに家元夫人がいらっしゃいますよ?」

「・・・そうだな。バレて騒がれても面倒だから俺もそこで食ってから客間に行く。悪いけどあいつには1人で食うように言っといてくれる?」
「畏まりました。でも、本当にご存じない方ですの?」

「あぁ、全然知らない女だ」


顔だけ知ってて、ガキの時に喧嘩しただけ・・・それに牧野は俺の事を覚えてるのかどうかも確かめていない。
だから「全然知らない」って言葉は正解。
ま、花を踏み散らかした事や玉子落とした事なんて普通は忘れる・・・俺が忘れない方がどうかしてるって事だ。


志乃さんにあいつの事を任せてダイニングに行き、ここでも仏頂面で飯を食う俺にお袋がスッと差し出してくる釣書。
そんなものには目もくれず、知らん顔していたら両手でズズッと近づけてくる。


「・・・やめてくれねぇか、飯食ってる時に」
「この時間しか総二郎さんと話せないじゃないの。いつも私から逃げてばっかり!親がどれだけ心配してると思うの?」

「あのな?俺はまだ24歳、世間で結婚してるヤツの方が少ねぇだろう?まだそんなのする気にならねぇよ!」
「世間の人は普通の恋愛をしていると思うのよ?あなたみたいに不特定多数の女性を取っ替え引っ替えしてないでしょう?落ち着いた恋愛をしてくれるなら結婚は先でもいいけど、そうじゃないなら強制的に決めるわよ?」

「馬鹿言え!今時親が口出しする問題か?!もう30年経っても独身ならその時に心配しろ!」
「それじゃあ遅いでしょ!」

「・・・ご馳走さん、これは却下な」
「見てないくせに!」

「見ても見なくても同じだ。俺は自分で決める・・・親父やお袋が持って来たものは全部お断りだ。そいつの中身が見えない釣書に興味はねぇよ」

「総二郎さんっ!!」


だからここで食うのは嫌なんだ。
まだ言い足りないお袋のことは放っておいて、牧野が居るはずの客間に向かった。



「入るぞ」、そう声を掛けて中に入ったら、こいつも飯を食い終わって志乃さんが片付けている所だった。
風呂に入ったからなのか小綺麗になって、用意させた服もサイズピッタリ。似合うかどうかは置いといて昨日よりはお嬢に見える・・・ただ溢れそうな目でガン見する辺り、まだガキだなって気がした。


全然変わってねぇ・・・あのチューリップで怒鳴った時と同じ目だった。


「もう少ししたらお帰りいただいた方が宜しいですよ?いつまでも客間を閉め切ってると家元夫人にバレますわ」
「あぁ、判ってる。これから俺の部屋に移動するからこの部屋開け放っといてくれ。色々ありがとう、志乃さん」

「あまり使用人に見られないようにお願い致します。そういう事だけ噂が広まるのは早いですから」
「・・・はいはい」


志乃さんが出て行ってから、牧野には自分の荷物を持つように言って母屋の奥、俺の自室に連れて行った。




**************************




総二郎って人に「俺の部屋に行くぞ」と言われてお部屋を出たけど、その廊下の長さに驚いた。

学校の廊下なんてもんじゃない。それにどれだけ磨けば気が済むのってぐらいピカピカで、ストッキングだけで歩く私には滑りそうで怖かった。
しかも凄く複雑な作りで、まるでだだっ広いお寺の中を歩いてるみたい・・・上を見たら細かい模様の入ったお洒落な天井に、欄干付きの外廊下なんて初めて見た。

お掃除大変そう・・・そんな事を思いながら自然とすり足で歩いちゃう。


数人すれ違った人はみんな上品な着物を着てるし、彼が歩いていたら端に避けて頭下げてる。そんなに偉いわけ?って、この世界が全く判らない私には理解が出来なかった。
それに総檜風呂やあの部屋から見た庭、この廊下から見る光景も凄い・・・何かの教科書で見た「石庭」ってものがあって、武家屋敷みたいな池まである。

その向こうの松や名前も知らない木が綺麗に刈り込まれていて、息をするのにも緊張するほどピリピリした空気が流れていた。


こんな記念館みたいな家に住んで楽しいんだろうか・・・って、他人様の家なのに心配してしまう。
少し前を歩く着物の彼の後ろ姿も「窮屈だ」って言ってるみたいだった。


それにしてもこんなに歩かないと自分の部屋に辿り着けないの?
振り返ったら・・・自分が歩いてきた廊下がどれなのかさっぱり。ホントに凄い豪邸なのね、って後ろ向きのまま歩いていたら、ドスン!と何かに当たってその場に倒れてしまった!

何かにって思ったのは彼の背中で、私が前を向いてなかったから立ち止まったことに気が付かなかっただけ。
それを「何してんだ?」って馬鹿にしたような目で見下ろされた時の彼の視線・・・その時にワンピースの裾が捲れて太股丸出しだった事に気付いて慌てて隠した!


「見たわね?!」
「お前が見せてたんじゃねぇか」

「そんな訳ないでしょう!どうして急に止まるんですかっ!」
「どうしてって・・・ここが俺の部屋だからだけど?」

「はっ!あぁ、ここ・・・ってか、ひと言声掛けてくださいよ!」
「そういうお前の目は何処見てた?まだ酔ってんのか?ま、いいや・・・滅多に他人は入れねぇけど今日は特別だから入れ」

酔ってる・・・いや、もうお酒の話はしないで欲しいんだけど。
そう言われただけで気持ち悪さを思い出してガクッとくる・・・そんな私をクスクス笑いながら、彼は自分の部屋のドアを開けた。


「・・・お邪魔しまーす」

「着替えてくるから座ってな」
「・・・あ、はーい」


すごく広い部屋・・・整然としててブラウン調で統一された、如何にも男性の部屋って感じ。
真ん中にあるローソファーに段差のあるフロア。本棚には凄い数の本、ローボードの上にはオーディオ・・・杉本さんの部屋にも入ったことがないから、実質これが初めて入る男の人の部屋だ。

・・・って思うと緊張する。


でもあれだけ格好いい人だからきっと彼女ぐらい居るんだろうし、私が部屋に入った事がバレたら喧嘩にならないのかしら。何気にキョロキョロしたけど、女性を感じさせるものは何もなかった。
写真や彼女からのプレゼントを匂わせる可愛らしいもの。大きな縫いぐるみがあったら気持ち悪いけど小さな置物程度のものさえなかった。

バイクが好きなのかしら・・・ヘルメットが綺麗に並べられていた。

奥に見えたのは大きなベッド。
それは見ちゃいいけないような気がしたからすぐに視線は外したけど・・・やっぱりチラ見してしまう。


「・・・・・・・・・・・(あそこで西門さんが・・・)」


いやいや!なに想像してんのよ!1人暮らしのマンションとかじゃないんだから・・・それに武家屋敷だし。
女の人が入りにくそうなお屋敷だもんね、って想像した場面を打ち消した。



暫くしたら奥の部屋から彼が出てきた。
着物じゃなくてTシャツにジーンズ・・・凄くラフな格好になってて、むしろこのスタイルにドキッ!とした。

本当に凄い色気・・・さり気なく髪を掻き上げる仕草と少しだけ傾く顔。目を伏せがちにしてるから判ったけど長い睫、それに薄い唇の形が綺麗。
鎖骨のラインが少し骨張ってて、さっきまで見えなかったゴールドのネックレスがキラッと光った。


ゴクリと私の喉が鳴る・・・金縛りに掛かったみたいに釘付けになっていた。


「なに突っ立ってんの?座れば?」
「は、はい!」

「・・・そうビビるなよ。男の部屋は初めて?」
「・・・・・・えぇ、まぁ」

「昨日フラれたんだ?」
「そっ、そんなのあなたに関係無いでしょう!」

「くくっ、そりゃそうだ。じゃあ昨日の車の弁償のことから話そうか」

「はっ!車・・・そう言えばどうなったんですか?ホントにごめんなさい!修理代金、ちゃんと払いますから!」


そうだったーーーっ!!
私はこの人の車を蹴り飛ばして凹ましたって・・・傷の程度は覚えてないけどそんなこと言ってたよね?

あの高級車、修理代金はどのくらいなのかしら💦


「あんたが足蹴にしてくれた俺の愛車はイギリスのアストンマーティン『ヴァンキッシュS』。価格は改造費こみで4000万ってとこかな。特別仕様にしたし日本上陸第1号なんだよな。ボディはフルカーボン製、エアロパーツもすべてカーボンで武装してんだ。世界にただひとつの俺仕様のヴァンキッシュって訳だ」

「・・・・・・・・・は?」

「そいつをあんたは足蹴にした。傷が元通りになっても俺の気分は回復しねぇよなぁ?おまけにゲロったし?」

「・・・・・・・・・」


ニコニコしてるけどめっちゃ怒ってるのね?

さっきと全然違う意味で喉がゴクリと鳴った・・・。





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2019/09/04 (Wed) 23:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: No title

亜里沙様、こんにちは。

ご訪問&コメントありがとうございます。
判りますよ~(笑)私もそうですから。

長編の後はこんな感じです。また問題だらけの重たい話は疲れるでしょう?
その中間ぐらいの丁度いい話が書けたらいいんですけどね💦

まぁ、暇つぶしって感じでお付き合い下さいませ♡

ふふふ、基本コメディですからね!

2019/09/05 (Thu) 10:03 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/05 (Thu) 11:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

待て待て・・・そんなもの持ったつくしちゃんとかイヤでしょ(笑)
そんなの私も想像出来ない・・・ってか想像出来るけどしたくない💦

それが似合うのはあきら君じゃない?
と、思うけど、あきら君がそれを持って総ちゃんを攻めるのも面白いかも・・・いやいや(笑)

・・・・・・・・・いや、やっぱりやめよう。


うんうん、やっぱりSだよね(笑)空さんか?!

2019/09/05 (Thu) 21:53 | EDIT | REPLY |   

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