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plumeria

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「で、名前もまだ聞いてないんだよな。あんた、何処の誰だ?働いてるのか・・・何処の会社だ?」
「・・・はっ?!ああっ、そうか、ごめんなさい!」

牧野つくしだってのは叫び声で知ってるが本人からは直接聞いてない。
だからそう言うと急に畏まってド真剣な顔をしやがった。


「この度はご迷惑お掛けしました。牧野つくしと申します。えっと・・・T町で1人暮らししてるOLで、会社は村崎商事です。昨日はその・・・ちょっと嫌なことがありまして1人でお酒を飲んでしまい、実は何も覚えてませんで・・・」

「覚えてない?蹴ったこともか?」
「いや!それは覚えてるの!・・・覚えてます・・・その前の事をあまり覚えてなくて・・・ははは」


・・・嘘つきやがって。
覚えてるから会社休んでホッとしてるクセに。
女が路上で自分の事を「大馬鹿野郎!」って言う理由なんて男絡みくらいしかないだろう。友情が拗れた場合はあんまり酒に逃げないと思うけど。

興味のない女の行動なんて今まで気にしたこともなかったのに、何故かこいつの深酒の理由は聞きたかった。

ホントにどうしてかは・・・判んねぇけど。


「初めから1人で飲んでたのか?」
「・・・そ、そうなんです。えっと・・・あんまり食べてなかったのに飲んだから悪酔いしちゃって」

「食ってない?女って普通飯食ってから少しずつ飲まねぇか?男でもいきなり吐くほど飲まないぞ?」
「だってご飯食べられなくて・・・あっ、あの・・・ざ、残業で遅くなってね、もう食べるより飲みたくて・・・そうそう、残業したんです!」

「へぇ・・・村崎商事ってあの辺り?」
「会社はM町で・・・はっ!」

「くくっ、随分離れてるじゃん?わざわざあそこまで酒だけ飲みに?」
「・・・・・・・・・そ、そうです」


家がT町で職場がM町・・・それなのに飲んでた場所があそこってのはどう考えてもおかしい。
しかも嫌なことがあったのならわざわざ遠くまで出向いて飲むより自宅で自棄酒の方が納得・・・つまり待ち合わせ場所で嫌なことがあってそのまま1人で飲みに行った訳だ?

で、自分の顔見ながら腹が立つならその理由は男に振られたから・・・って線が濃厚だ。


「ホントは男に何か言われたんだろ?」
「・・・何も言われてませんよ」

「言われてねぇのに喧嘩したのか?って事は、あんたの目の前で女に手を出した?」
「あれは女に手を出したって言うより、2人で私を騙したって言う方が・・・・・・はっ!」

「成る程ね~。その彼氏か女のどっちかがあんたの先輩ってこと?」
「・・・・・・・・・・・・そうよ!」


なんて分かり易いんだ・・・引っ掛けたら簡単に喋ってやんの。




************************




どうしてバレてしまったのか・・・いや、よく考えたらこの人にバレたってどうってことないから、結局この後に高田先輩と杉本さんの事を話してしまった。
それでショックを受けて飲めないお酒を飲んで、そのお店の中での事は本当に覚えてないんだけど、気が付いたら路上をフラフラ歩いててあの赤い車に腹が立って蹴ってしまったと・・・。

西門さんは呆れたように私の話を聞いていて、話し終わったら「だから大馬鹿野郎って叫んだのか」って。


「え!私、そんなこと叫んでました?」
「すげぇデカい声で叫んでたぜ?俺、車に乗ろうとしたのにそれで立ち止まったから。あんたが叫ばなかったら近寄る前に自宅に戻ってたと思うけど」

「・・・スミマセン・・・」

「そんなに惚れてたのか?」

「・・・・・・よく判りません」


確かに会社のみんなが憧れていた人・・・だからって私はあまりドキドキして杉本さんを見たことはなかった。あぁ、イケメンだなってそのぐらい。普通に挨拶して通り過ぎても振り向くなんてことはなかった。
杉本さんにお茶を出した時もあったけど手が震えるなんてないし、帰る時も普通に見送った。


ただ、告白されてからは早かった・・・初めてだったから嬉しかった。
自分は男嫌いだって言い続けたのに、女子力だって高くないのに、そんな私の事が好きだなんて・・・凄く嬉しかったんだもん。


「そいつの事を考えて眠れない日とかあったのか?」
「・・・いえ、毎日爆睡してました」

「そいつが会社に来るかもしれないって時はメイク変えたのか?」
「・・・変えられるほどお化粧品、持っていません」

「そいつの好みは?好きな食い物、好きな場所・・・好きな曲とか好きな映画は?」
「・・・聞いたことありません」

「電話切る時に悲しくなったか?」
「・・・毎回明るくサヨナラしてました・・・って言うか、まだ告白されて1ヶ月ぐらいです」

「・・・その間に何回寝たんだ?」
「はっ?!いえ、それが・・・昨日で5回目のデートで、初めてお泊まりっぽくて・・・」

「お泊まりっぽい?何処のホテルだった?」
「いえ、飲みに行こうって」


あれ?西門さんが頭抱え込んじゃった?
麗しい顔を歪めて片手でほっぺた支えて「ん~~」って小さく唸ってる・・・私はそんなに変な事を言ったんだろうか?

確かここに連れて来られたのは車の弁償の話だったのに、いつの間にか私の失恋話に変わってて、それで混乱しちゃったのかな?
どうしたんだろうってウズウズしていたら、漸く西門さんが姿勢を起こして腕組みをした。


「ひとつ聞くけど、お前・・・泣かなかっただろ?」
「は?えっと・・・先輩との話を聞いた後ですか?うん・・・腹は立ったけど泣いてないかも・・・驚いて逃げましたから」

「だよな。要するにあんたは失恋なんてしてねぇって事だ」

「・・・はい?」


いやいや、失恋でしょう?!
だって自分の彼氏が自分の先輩とグルになって私を騙してたんだよ?彼は確かに私の事を初めから好きじゃなかったのかもしれないけど、私はちゃんと返事して彼女になったんだよ?
嘘でも告白されたから嬉しくて付き合って・・・めっちゃ軽かったけどキスだってしたよ?

私から見たら杉本さんは彼氏で、私は失恋した・・・そうじゃないの?


「・・・あんたは恋してみたかっただけでその男の事は何とも思ってなかったんだ。
自分の思ってた恋が想像と違う・・・だから腹が立っただけだろ?本当にそいつが好きで恋しかったら、寝られない夜もあるだろうし、いつでも会いたいと思うはず。多分あんたは自分からそんな努力せずに男から連絡待ちだっただろ?」

「そ、そんな事は・・・」

「そんなあんたの性格をそいつは見抜いてたんだ。だから利用したんだよ。
本気で自分に惚れてる女を使ったら面倒だから、暇な時だけ連れ出して少しだけ付き合ったフリして、本命にヤキモチ焼かせたようとした・・・そういうこった」


・・・恋してみたかっただけ?

私の初恋は・・・本物じゃなかったって言うの?


「でも、杉本さんは私にキ、キスしてくれました!普通は好きな人としかしないでしょ?!だから私達はちゃんと恋人だったんです。もう別れたからいいけどあなたにそんな事言われなくてもいいでしょ!」

「キス?どんな?」

「どんなって・・・キスはキスでしょ!」

「本物のキスって経験あんの?」
「五月蠅いわね!それが初めてだったけど何か問題でも・・・・・・」


そう言ったらいきなり西門さんは私の前にやってきて腕を引っ張り、片手を背中に回したと思ったら・・・抱き締められて、そのまま唇を重ねられた!


それは杉本さんのとは全然違う。
噛み付かれたかと思うような、でも凄く優しくて甘いような・・・全身に電気が走るような衝撃的なキスだった。





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2019/09/05 (Thu) 12:49 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/05 (Thu) 13:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

いきなり撃ち抜かれました?(笑)
これぞ総ちゃん♡です。

「本物ってのはこうするんだぜ」ってヤツですね~!
それを言葉抜きでいきなり噛み付く!

ヤガーですね♡


これをあの類君が・・・?

あの類君はナマケモノと同じスピードですからね・・・。
多分、その時間が掛かりすぎてつくしちゃんにビンタされると思いますが?

なんたって枕が顔に当たる人ですから(笑)

2019/09/05 (Thu) 22:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは!

はい!簡単に吐かされてしまいましたね。

恋をしている自分に憧れていただけのつくしちゃん・・・本物の恋とはどんなものか、これから探していただきましょう♡
そしてあの2人・・・このままにはしておかないでしょうね(笑)

暫く絡んできそうな2人ですが、それ以外にもややこしい人は沢山居そうです。
さて・・・総ちゃんはつくしちゃんをどうするんでしょう?

もう判ったかな?(笑)

2019/09/05 (Thu) 22:43 | EDIT | REPLY |   

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