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次の日になって、西門さんに言われた通り普通に会社に行った。

よく考えたら私が姿を現さなかったのに連絡のひとつも無かった杉本さん。
会社を休むと連絡した時に何故か声が弾んでいた高田先輩・・・要するに私が来ることを予想して見せつけたんだって事に気が付いた。

でも不思議ともう腹は立たない。だって恋じゃなかったんだって私も気がついたから。
・・・そう西門さんが教えてくれたから。

だから何事もなかったかのようにいつもの時間通り出勤し、社員カードで打刻、総務課に向かった。


「おはようございまーす」

「おはよう、牧野さん」
「もう大丈夫なの?って言うか、突然ねぇ?」

「は?突然って・・・(まだ何も話してないんだけど?)」

「だって今日で最後だったんでしょ?言ってくれれば送別会、やったのに!」
「いきなり2人も退職だから驚いちゃって・・・」

「へ?2人って・・・私と誰ですか?」

「知らなかった?高田さんも今日から来ないんだって!」


・・・・・・うそっ!!高田先輩が退職?
私の退職が既に知れ渡ってるのにも驚いたけど、高田先輩が退職なんて聞いてないわよ?もしかして超スピード結婚退職?!
あの後そう言う話になったのは私じゃなくて高田先輩のほうだって言うの?

腹は立たないけどそれには少しショックを受けた。
でも私が間に入ったおかげであの2人が幸せになるのなら、祝ってなんかやらないけどそれはそれでいいのかしら・・・?
いやいや、そんなお人好しでどーすんのよ?!私は騙されてたんだって!


・・・自分で勝手に想像して自分で突っ込み・・・これ以上考えるのは止めようと、取り敢えず自分の席に向かった。

隣の席には誰も居ない・・・いつもならここに座ってる美人がいなくなった。
最後に見たのが杉本さんとイチャついてる笑顔だったのかと思うと・・・やっぱり溜息しか出なかった。


この後、早速朝礼で私の退職が正式に告げられた。

理由は何も言われないし聞かれない。
それもおかしいなって思ったけど「短い間でしたがお世話になりました」、その言葉を不本意ながら口にした。



「牧野さん、少しいいかな?」
「部長!はい、すぐに・・・」

退職願をすっ飛ばした「退職届け」、それを書いていたら部長に呼ばれた。
私がこの会社に入ってから1度も直接話した事がない総務部長・・・課長も同席して応接室で向かい合って座った。

何だろう・・・凄い緊張感。


「・・・いや、この度は本当にすまなかったね。気が付いてあげられなくて・・・全然そんな風に見えなかったから」
「本当に申し訳ない。まさか総務課でそんな事が起きていたとは。私の責任だ、牧野さん。許してくれ」

「・・・・・・はい?」


何のこと?総務課で何が起きていたの?
許して欲しいって課長に頭下げられて、部長に謝ってもらうような出来事、私には何もないけど?
禿げた頭のてっぺんを見せる2人に「あの~」なんて声を掛けるけど、聞いていいのかさえ判らない。そして眉間に皺を寄せた2人が顔をあげ、次に出た名前は高田先輩だった。


「高田君もね・・・プライドの高い人だから少し裏の顔みたいなものがあったんだろうねぇ・・・いや、許される事じゃないんだけどね」
「そうですね。私は側で見てても判りませんでしたが、数人の女子社員からはそのような話もチラホラ・・・」

「高田さんですか?」

「まさか君に酷い嫌がらせをしてたなんて・・・しかも取引先の男性まで使って君を危ない目に遭わせようとしたなんて」
「驚きですね・・・その取引先にも厳重注意して暫く取引停止にしました」

「・・・嫌がらせ・・・」


嫌がらせなんてされてないんだけど?
あの日、確かに本性は見たけど、それまでは普通に良い先輩だったけど。
でも課長と部長の話だと高田先輩が入社時から私を嫌って虐めを続け、とうとう男性・・・杉本さんらしいけど、彼を使って私に乱暴させようとしたのを寸前で逃げた事になっていた。

何処からそんな話が?って思ったら・・・1人しか居ない気がした。


「まさか牧野さんが西門家に縁の人だとは知らずに・・・昨日それで西門家から苦情が来てね。うちの会長がお茶好きであちらの後援会に入っておられるのに、このままだと除名処分だと言われてね。それだけは勘弁して欲しいと頼んだんだよ」
「そうしたら牧野さんをすぐに辞めさせて欲しいと・・・随分傷ついてるから高田君とは会いたくないと泣き付いたんだろう?高田君は知らないと言い張ったが今日から謹慎処分なんだよ。そうしたら逆ギレして彼女も辞めると言い出してねぇ・・・」

「それにしてもとんでもない男だ!美人に言い寄られたからって、うちの大事な社員にそのような破廉恥な行為をしようとしたなんて!」
「彼も我が社では人気の営業マンでした。向こうの会社でどう言う処分がされるのかは判りませんがねぇ~」

「牧野さん・・・2人ともそういう訳で処分を受ける事になったから、何とか会長の除名だけはしないでおいてもらえないだろうか」
「そのように西門家に頼んで下さい、牧野さん!お願いしますっ!!」

「わ、判りましたから頭を上げて下さい、部長!」


・・・・・・どんな話を出したのよ、あの男は!
「俺に任せとけ」の内容がこれなの?!未遂にしてくれたことはいいとして、随分恥ずかしい退職理由じゃないのよ!



**



「では、皆さん・・・お世話になりました」

「元気でね、牧野さん」「たまには遊びにおいでよ!」「今度ご飯でも行こう!」・・・これが私の1番始めに勤めた会社の退職の仕方か・・・そう思うと何故か不思議だった。
夢に見たのは『結婚おめでとう!』『幸せになってね』だったのに。

何処まで知ってるのか判らないけど、みんなぎこちない笑顔なんだもの。
男の人達も微妙な表情・・・急いで準備したんだろうけど、花束と贈り物をもらって、纏めた荷物をどうやって持とうかと悩んでいた時に何処かから悲鳴があがった。

何事かとみんなで振り向いたら、その悲鳴はエレベーターの方から聞こえてきて総務課に近づいてる。


そしてバタンとドアを開けたのは・・・・・・西門さん?!

その後ろに屯ってるのは営業部、秘書課、経理部、資材部の女子社員じゃないの!


今日は緩めのシャツにブラックジーンズで耳にはピアス、腕にはブレスレット、身に纏ってるのは威力200%の色気。
そりゃあんな悲鳴も出るわって納得の彼が総務課に現れた!

ここで一気に私の送別ムードが西門さんの鑑賞会に変わってる・・・今まで泣きそうだった同僚までが、私を押し退けて彼に近づいていた。


「牧野、お疲れさん。荷物どれだ?持ってやるから出せ」
「はっ?あぁ、えっと・・・これとこれ・・・重たいけど大丈夫?」

「このぐらいどうって事ねぇよ。お前はせっかくだから貰った花とプレゼントだけ持っとけ」
「え?ひとつぐらい持てるけど?」

「バーカ!何の為に迎えに来たんだよ。いいから貸せ!」
「・・・・・・あ、ありがとう」


なに彼氏感出してるのよっ!

そう思ったけど彼が迎えに来てくれたおかげで色んな人から「すごーーい!」の声をもらう退職になった。
そして玄関まで各部の部長が出てきて「お疲れ様でした、牧野さん!」「今まで有難う。牧野さん!」・・・これは西門さんに対するさり気ないアピールだとは判ったけど、まぁ・・・気分は悪くない。

もう1度みんなに頭を下げて、西門さんの車に乗ることに・・・これも昨日のメタルブルーの外車だ。


「それじゃ牧野がお世話になりました」、なんて西門さんが運転席に乗る前に声を出したら再び奇声が上がった・・・。



**



「なんて作り話したんですか!驚くじゃないの!」
「ははっ!すぐに辞められただろ?」

「それに迎えに来てくれるなんて聞いてないし!」
「助かったろ?荷物持ちが居て」

「そうだけど!」


今日も飄々としてる西門さんは車を私のアパートに向けていた。
怒りたくて横を見ると目に入った彼の唇・・・昨日のキスを思い出してドキドキした。

だから貰った花束で顔を隠し、運転席とは反対側を見る・・・それでも彼の香りが私の鼻を擽って鼓動を速め、目の端に映る綺麗な指がハンドルを回す度に掴まれた時の感触を思い出した。


何これ・・・初めてなんだけど。


頭の中が痺れてるような変な感覚のまま、西門さんも喋らなかったから私も黙っていた。
そしてあっという間についてしまったアパート・・・会社と同じようにここでも荷物を持ってくれて、ドアの前まで運んでくれた。


「・・・送ってくれてありがとうございます。あの・・・私はいつから西門家で働いたらいいんでしょう?」
「そうだな、丁度今週末で月が変わるから、来週から来いよ。時間は取り敢えず9時でどうだ?」

「は?時間って決まってないの?」
「茶道宗家に定時なんてねぇの。夏は早朝からの時もあるし冬は深夜まで茶会が続く日もある。休憩時間はその日によって違うし勤務場所もコロコロ変わるかもな。まぁ、詳しい話は来てからって事で!」



・・・・・・なんつー適当な職場なの?




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Comments 6

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2019/09/08 (Sun) 13:02 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

総ちゃんにしては優しいお仕置きだと思いますけどね(笑)
こんなもので済むでしょうか?ふふふ・・・また何かあるかもしれませんね。

総ちゃんのお迎え・・・う~ん!こんな退職、してみたいですねぇ~♡
私は今までの退職、全部いい思い出はありません。

出産の時は産休中に会社が無くなったし、今回は半分リストラ(笑)
送別会の経験がありません・・・トホホ!💦

2019/09/08 (Sun) 18:50 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/08 (Sun) 21:09 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様 こんばんは。

あはは!私、元々類君一筋でしたよ。
そして同じです・・・申し訳ないですが、読めません(笑)理由も同じです。

ふふふ、内緒にしておきますよ♡
それぞれにいい感じの部分がありますよね(笑)

私が両方書いてるのは似てないから・・・なんだと思います。

強引に引っ張る総ちゃん、ひたすらつくしちゃんを守り抜く類君・・・うへへ!大好物ですね♡
いかん、ヨダレが・・・💦

2019/09/09 (Mon) 00:34 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/09 (Mon) 15:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!

ね!予告なく現れて「荷物だせよ」・・・「はい!荷物は私ですっ!」って手をあげるよね(笑)
会社の中までですもんね!いや、勝手に入ってるんだけどね・・・。

私なんて旦那が迎えに来てくれる時は遠い所に駐車させましたよ(笑)

そしてこの前の退職の時、私は店舗勤務だったのでみんな接客してたから、心の中で「お世話になりました」って言って1人で帰りました。
淋しい退職だったなぁ(笑)

その前の会社はもう随分前で、産休中に会社が無くなったので郵送で「退職届」が自宅に届き、返信用封筒で送りました。
ははは!今思えば笑い話です。

2019/09/09 (Mon) 22:26 | EDIT | REPLY |   

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