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「・・・・・・・・・・・・ここが入り口なのかしら」


次の週の月曜日、9時って言われたからその時間前には西門邸に着いていた。

朝は6時から目が覚めて落ち着かず、珈琲を飲んでも味が判らないほど。
今でもその他に何を食べたか覚えてない・・・それよりも何を着ていけばいいのかと悩んで、入社式の時に着た濃紺のスーツを引っ張り出した。
メイクは出来るだけ上品に・・・って言っても元々下手くそだから薄めだし、ネイルだってヌードカラーしか持ってない。
髪はハーフアップで纏めて、少し高めの勤務用パンプス。


時刻は8時45分。まるで学生の面接みたいだと自分でも思いながら、ビジネスバッグを持って「西門」と書かれた大きな門の前に居た。

視界に入るのは着物姿の男の人・・・私の事を不審者見るみたいな訝しげな目で見てる。
だけど何も言ってくれないから自分から声を掛けてみた。


「おはようございます・・・本日からここに勤務する牧野と申しますが、西門総二郎さんはいらっしゃいますか?で、ここから入っても宜しいのでしょうか?」

「・・・総二郎様?あんたが今日から西門流に・・・私はここの守衛だがそんな話は聞いてないが?」

「そう言われましても私は西門総二郎さんに半分強制的にここで働くように言われたんです。本日の9時からって言われたのでこれ以上ここに居ると遅刻になります。取り敢えず中に入りたいんですけど」

「・・・少し待ちなさい。確認する」


・・・・・・何なの?この守衛さんの高飛車な態度は!
ちゃんと彼の名前も出してるし私も名乗ってるし、ここで今日の9時って言われたって言ってるのに!取り敢えず入れてくれても良くない?私1人でこんな道場みたいな門の前にいたら怖いんだけど!

チラチラ時計をみるけどもう少しで9時になる。今までパソコンで打刻していた私はこの状況が凄く不安だった。
このままズルズルと初日から遅刻・・・そんなの嫌だから早く着たのに~!




暫くしたら守衛さんと1人のおじさんが姿を現して「お待たせしました!」ってニッコリされた。
その笑顔でホッとする・・・このおじさん、誰だか判らないけど。

「牧野さんですね?えーと、ここは西門流の正門ですから明日から裏に回っていただけますか?この前あなたが帰った場所です。宗家の方々以外は西と東にある裏口から入ります。今日はもういいですからここから入りましょう」

「はい、申し訳ありません。何も聞いてなかったものですから」

「ははは、いいのですよ。お屋敷がこんな感じだからと言って堅苦しくなることはありません。お茶事の時以外は皆さん普通の方ですから。私は事務長の西村と申します。宜しくお願い致します」

「西村さん・・・はい!宜しくお願い致します!」

ちょっとだけ可愛い体型のおじさん・・・じゃない事務長の西村さん。この人に案内されて正門を潜った。



正門から入るとそこは別世界・・・。
表通りから離れているから騒音も無いし、凄く綺麗に刈り込まれている植木と計算されたように組まれている置き石、それに敷石が自然な形で並べられてて、その隙間を黒く光る玉砂利が埋め尽くしていた。

シダなんかもあるけど多分見せるための植えられたもの・・・まるで何処かの観光名所に来たかのような通路だった。
それに石灯籠なんて一般のお屋敷にあるの?

不思議な空間に入り込んだような気がしてキョロキョロしながら歩いていたら、その先には吃驚するほど大きな玄関が見えてきた。


「・・・・・・・・・」
「ははは!ここが正面玄関。ね?ここから入る気なんてしないでしょう?」

「た、確かにそうですね・・・ははは」


目眩がする・・・。
この前歩いた時、裏口だけでも驚いたんだもん。そうだよね・・・正面玄関はこのぐらいの迫力あるよね。

入ったら今度は高級旅館かと思うような広い内玄関に、真正面には大きな生け花がドーン!壁には日本画がバーン!と飾られていた。そして廊下は磨き上げられ右にも左にも正面にも広がっている。
細工も見事な衝立がお洒落に飾ってあって、天井の照明も白木造りの凝ったもの。

でも靴なんてひとつも出ていない。綺麗に収納されてるんだろうけど、下駄箱のようなものも見当たらない。

息と止めてしまうほど緊張感溢れる玄関・・・西村さんはここで靴を脱ぎ、私にも「靴を持っていらっしゃい」と言って正面の廊下を進んで行った。


どんどん歩いて行くけど何処が終点なのかさっぱり・・・西村さんの可愛い背中を見ながら一生懸命転けないようにと足を速めたら、見覚えのある庭があった。
この前見た庭だ、そう思ったらクルリと向きを変え、今度は知らない廊下へ!

まるで迷路みたいな廊下を5分ぐらい歩いたら、やっと事務所みたいな所に着いた。


「ここが西門流の事務所でね・・・あれ?どうかした?」
「・・・はぁはぁ・・・つ、疲れました」

「ははは!大きなお屋敷だからねぇ!じゃあ座っててくれるかい?総二郎様をお呼びするから」


総二郎様をお呼びするから・・・その言葉でドキン!と心臓が鳴った。




カチカチカチ・・・・・・


この部屋の壁時計の音だけが聞こえる。
そのぐらいシーンとした事務所で1人、ソファーに座って西門さんが来るのを待っていた。

チラッと見たら窓ガラスに自分が映ってる・・・そこで髪が跳ねてないかを確認。そして手鏡を出してメイクを確認・・・最後にスーツに埃がついてないかを確認。よし・・・大丈夫かな?
意味もなく自分チェックをしていたら足音が聞こえてきて、ガチャッとドアが開いたら・・・西門さんは今日も着物姿だった。


何色なんだろう・・・。
紺でも紫でもない不思議な色の着物・・・その色が西門さんの顔に似合ってる。重たい感じの色なのに素材が夏向きなのかしら、何故か彼を見ていたら涼しげに思えた。

この顔は業務用?迎えに来てくれた時のニヤけた感じじゃなくて上品で落ち着いた表情・・・ちょっと冷たく思える瞳。ピアスもブレスレットも何もない・・・それなのに何でこんなに色気があるの?!


「遅れずに来たのか?」
「お、遅れてませんけど守衛さんが入れてくれませんでした。ちゃんと話しててくれればいいのに・・・」

「あぁ、忘れてた。いきなり正門から来るとは思わなかったから」
「それだって言ってくれなきゃ判りませんよ。あそこが入り口だって誰でも思いますって」

「・・・そりゃ悪かったな」
「い、いえ、怒ってるわけじゃありません」


あれ?どっちが雇い主なのか判らない感じ・・・西村さんもクスクス笑いながら私に入社書類のようなものをくれた。
年金関係、健康保険関係、雇用保険関係、まるで普通の企業のようにきちんとされてるみたい。ついでに西門流の歴史が書かれたような資料ももらってパラパラ捲って見たけど全然判らなかった。

そしてピラッと1枚の紙が出てきて、上部に書いてあったのは「賃金計算書」・・・それには流石にハッ!として、下部に書いてある金額に目が行く・・・・・・


「えっ!」
「どうした?」

「・・・・・・これ、何かの間違いですよね?この金額・・・」
「いや、間違いじゃねぇけど?」

「だってこれ!これまでの私のお給料の倍以上ありますよ?まるでボーナスじゃない!」
「だから言っただろう?うちの方が稼げるって」

「・・・うそっ!」
「心配すんな、ヴァンキッシュに半分取られるんだから」

「・・・・・・・・・うっ」


それを言われると何も言えない。
でも、普通の事務員でこのお給料はやっぱりおかしい・・・上手い話には裏があるって言うじゃない?
それに昨日、勤務時間も勤務場所もコロコロ変わるって言ったよね。それは一体どう言う意味なんだろう?

賃金計算書は取り敢えずテーブルに置いて、改まって西門さんと向き合った。


「今日は教えてくれるんでしょう?私、ここで何をするんですか?」

「牧野の仕事は俺の秘書だ」

「あぁ、事務員じゃないん・・・・・・秘書?」


「そう、俺専属の秘書。ずっと前から付けるように言われてたからな。だから時間も場所も総て俺に合わせるから決まってない。俺の仕事が始まって終わるまで、あんたも仲良く一緒に仕事って訳だ」



・・・何だって?!
私がこの人の秘書?!


出来る訳ないでしょーーがっ!!





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Comments 10

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2019/09/09 (Mon) 12:47 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/09 (Mon) 13:18 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/09 (Mon) 15:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: No title

夏音様、こんばんは。

ご訪問&コメントありがとうございます。
ははは!どうしましょう💦それはまた・・すごいリクエストですね?

そうだなぁ(笑)出来れば書きますが、ちょっとまだ判りませんね。
気長にお待ち下さいませ。

私の場合そんなに早くに話が終わらないので、どっちにしても時間が掛かります。
宜しくお願い致します。

2019/09/09 (Mon) 21:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

そうそう、漏れなくついて行くのです(笑)
総ちゃんですから意地悪しそうですよね~💦怖いわぁ❤

いや、間違いなくパタパタしています。それこそ類君のようですねっ!


ホントにね~(笑)
そのぐらいいいじゃんって思いますが。

もっと面白いのはR様がコメント欄に❤マークを沢山入れたら送れなかったそうです。
流石、R様(笑)その時は笑いました~。

2019/09/09 (Mon) 22:18 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

5分は長かったか?!(笑)
京都に行ったときに二条城の中を相当歩いたから、そのぐらいあってもいいかと思ったのよ(笑)

なっがっ!、にめっちゃウケた💦
近くのコンビニに行けそうな時間だったね💦

秘書の設定・・・確かに花沢専務でつくしちゃんが秘書課だけど、総ちゃんは無いかも。
てか、総ちゃんに秘書がついたのって「喧嘩」のゲイだけかな?(笑)←名前忘れた💦

さて、何をさせようかなぁ~❤

2019/09/09 (Mon) 22:42 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/10 (Tue) 00:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

Aria様 おはようございます!

うふふ、ありがとうございます。
嬉しいです❤

楽しみましょうね~~~~~!

2019/09/10 (Tue) 07:28 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/10 (Tue) 08:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: おはようございます(о´∀`о)

Aria様、ありがとう~~~❤

残暑厳しいですが、身体に気を付けて下さいね!
またそちらにも遊びに行きます~~❤

2019/09/10 (Tue) 09:23 | EDIT | REPLY |   

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