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「親父、お袋、話があるんだけど」

朝1番、両親にそう言うと2人は同時に嫌な顔をした。
そう・・・この人達は常日頃の俺の素行から、いきなり隠し子発覚みたいなスキャンダルを恐れてる。だから、真面目な顔して言う度に「それ」だと決めつけている。

馬鹿馬鹿しい・・・俺はそんなヘマはしないし、そこまで阿呆じゃない。
10代の頃でそういう遊びは卒業しているんだから、今頃隠し子なんて・・・・・・多分出てこないと思う。

最近はそこまで深入りせずにちゃんとオトナの戯れ程度に抑えてるっての!


いや、そんな事はどうでもいい。


「そんなに嫌そうな顔をするなって。何だと思ってんだ?」

「だって・・・総二郎さんが怖い顔して言うんだもの」
「そんなに良い話じゃあるまい。で、何だ?」

「いい話って訳じゃねぇが今日から俺専属の秘書を雇ったから、それを言いたかっただけだ。説明のために後で親父の秘書の堤を借りるから宜しく」

「えっ!専属のって・・・男性なの?女性なの?」
「堤を使うのは構わんよ。今日は私が1日中本邸に居るからあいつも控え室に籠もってるだろう」

「雇ったのは女だ。後で連れて来るけど驚くなよ?この世界とは無縁の女だから」

「・・・・・・・・・秘書なのよね?」
「・・・・・・・・・秘書なのだな?」


どうして真顔で同じ事を言うんだ、2人とも。
兎に角反対はされなかったから良しとして、この後西村事務長に牧野が来たら俺を呼ぶように連絡し、1人で行う朝稽古をしていた。


絶対に秘書なんて面倒だから付けないって思っていたのに・・・茶碗や棗を拭きながらそんな事を考えていた。

四六時中側に居てあれこれ言われるなんて真っ平御免、そんな煩わしいのなら1人でやった方が気が楽、ずっとそう思っていた。別にスケジュールなんて覚えられねぇ訳でもなく、気になるならスマホに入れときゃいつでも判る。
パソコンがあれば調べ物は簡単だし移動は自分の運転の方が安全。信頼してないヤツの運転する車になんて乗る気にはならない。

何人か親父やお袋が連れて来た人間と一日回ってみたけど、ただ鬱陶しくてイライラした。
おかげで茶道教室で不機嫌な顔になり生徒を数人逃がしたほどだ。仕事として逆効果だったから速効やめた。


それなのにどうして牧野にあんなことを・・・・・・自分でもイマイチよく判らない。
何となく面白そうだと思った、それは当たってるんだけど。

ずっと気になってたヤツに会えたからなのか?
全然俺の好みじゃねぇけど?



「総二郎様、牧野さんを事務所に案内しましたよ」

漫然と茶碗を拭いていたら西村さんが呼びに来て、俺はほんの少しワクワクしながら事務所に向かった。



**



「・・・・・・秘書?」

想像通り。すげぇデカい目して固まった。
面白い・・・見てて飽きないってのはこういう事を言うんだろうな。

牧野は顎から先だけグイッと前に出して、阿呆みたいに目をデカくさせ口をポカンと開けた。その顔がおかしくて西村さんも肩が震えてる。俺は噴き出しそうになるのを堪えて平静を装った。


「そう、俺専属の秘書。ずっと前から付けるように言われてたからな。だから時間も場所も総て俺に合わせるから決まってない。俺が仕事始まって終わるまで、あんたも仲良く一緒に仕事って訳だ」

「私が秘書?! 出来る訳ないでしょ、何考えてんの?!」

「何って?居辛くなった職場から解放させて、給料のいい仕事を紹介したんだが?」
「両方とも私の希望じゃ無いわよ!」

「でも修理代は稼がなきゃいけない・・・・・・だろ?」


ニヤリと笑うと牧野が立ち上がろうとしたのをやめ、口を噛み締めたままもう1度座り直した。
その後にはデカい溜息、ガクッと項垂れて首を90度曲げ、肩から先の力が抜けたようだ。それを見て西村さんが「そこまで落ち込まなくても・・・」と言うと、一瞬顔をあげたが・・・すぐに真下を向いた。

牧野が動けなくなったから西村さんが置いた書類を纏めて封筒に入れ、今度向かうのは秘書の堤がいる部屋。
そこで秘書の仕事内容を聞くからと言えば、力なく立ち上がった。


「・・・・・・私に出来るんですか?・・・全然知らない世界なのに?」
「基本俺が何でも出来るから問題ねぇだろ」

「だったら秘書なんて要らないんじゃないの?事務員なら喜んで働かせていただくけど・・・」
「事務長が1人居れば問題ねぇよ。西村さんはうちで35年勤務のベテランで親父の旧友だからな。決まった事務員がいなくても弟子が山ほどいるから職務分担出来てんの」

「・・・はぁ」


親父の秘書、堤が居るのは事務所からそう離れていない秘書待機室。
家元夫人であるお袋の秘書には使用人頭の志乃さんが兼任しているから彼女の席もあるが、ここに座って業務をすることは殆ど無い。
だから今日みたいな日には基本ここには堤だけ・・・まぁ、俺も親父も本邸に居る時は堤と牧野が同じ部屋だけど、面白くも何ともない男だから問題ないだろう。

軽くノックだけして中に入れば、堤は無表情で書類に向かい、俺を見ると立ち上がって一礼した。


「おはようございます、総二郎様。家元から聞いていますが、そちらの方ですか?」

「あぁ、こいつが俺専属の秘書になる牧野。悪いがお前のしてる仕事を話してやってくれる?」
「牧野つくしと申します。突然ですが宜しくお願い致します・・・」

「家元秘書の堤大輔と申します。こちらこそ宜しくお願いします」


確か歳は35ぐらいのはず・・・牧野と随分違うのに丁寧に挨拶し、これから同じ部屋で仕事するのに名刺まで渡すヤツ。
ニコリともせずに牧野を自分の前の椅子に座らせ、俺は少し離れた席に腰掛けた。


「それでは私の仕事についてお話しさせていただきます」

「は、はい!」

「まず、家元のお好みを総て把握します。お食事から着物、宿泊される時の拘り、嗜好品等総てです。そして兎に角家元が気持ち良く茶事に向かえるように環境整備を第一とします。
その次に後援会やお付き合いのある方について覚えます。その方々の身の回りで慶事弔事があれば見逃さずに家元にお知らせし、行動されるのか贈り物だけなのかのご判断に従います。
そして西門流に有益となる事柄、逆に不利益になる事柄にアンテナを張り巡らしご報告します。有益となる事柄があれば先に手回しして接待の準備、不利益なことでお耳に入れるべき事かそうでないかを判断したら、時には自ら処理することもあります。
講演会に出向いた時には楽屋の整頓、相手先への対応、そして何より事故に巻き込まれないように常にガード致します。総二郎様の場合、この事故の中には女性問題も絡んでくると思ってください。いきなり襲ってくる女性もたまに居ますから。
勤務開始は家元が行動される前、業務終了は家元の許可が出てからになります。ご質問、ありますか?」


「・・・・・・はい?」




**********************




秘書待機室に居た堤大輔さん。
西門さんがすぐ側に居るから見比べちゃうけど、この人も凄いイケメンだった。


しかも西門さんには無い落ち着きがある。どう見ても30歳は超えてるって感じのオトナだから?
ニヤけた顔もしないし真面目そう・・・実はこう言う人がタイプかも?ってちょっと思った。

だって男嫌いになった原因のひとつは昔の横暴な西門さん・・・今も変わってなかったけど。
そしてイマイチはっきりしない世渡り下手なお父さんと、見てるだけで腹が立つ弱虫の進だもん。

この3人の誰にも該当しない堤さんに、ほんの数秒見惚れてしまった。


でもこの人が話してくれた内容は(意外にも早口だったせいもあるけど)、はっきり言ってひとつも理解出来なかった。


お好みを総て把握って、西門さんの好みを知れって?宿泊の拘りって何よ?
気持ち良くお茶を点てられるようにって、その為にお稽古してるんじゃ無いの?それまで秘書の腕に掛かってる、なんて言わないよね?
後援会って何なの?その人達の身の回りで慶事弔事があればって、それもプライバシーの侵害じゃ無い?見逃してあげてもいいことだってあるでしょうが!
西門流に有益となる事柄、逆に不利益になる事柄?何のことだかさっぱり・・・そんな判断出来たら一般事務してないわよ!
張り巡らすアンテナなんて持ってません!

それに不利益なことを自ら処理・・・いやよ、そんなの自分でしてよ!
自分の事だって満足に出来ないのに人の後始末なんてできないっつーの!

楽屋の整頓は出来るかもしれないけど、常にガードってなに!自分の身は自分で守りなさいよ!女性が襲ってくるって、この人なら喜んで襲われてるんじゃないの?
仕事の終わりは西門さんの許可が出てから?いや、定時制にして欲しいわ。


「何かご質問はありますか?」

「・・・何を聞いたらいいのかが既に判りません・・・」

「慣れれば出来ます。私だってここに来る前は薬剤師です。茶道に何の関係もございませんでした」

「はぁ・・・そうですか」


もしかしたら24時間、この男の側に居ることもあるのかしら・・・・・・勘弁して欲しいわ・・・。





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Comments 6

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2019/09/10 (Tue) 12:36 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/10 (Tue) 15:07 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/10 (Tue) 23:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

そうなんです~。
前作とはガラッと変えないと「私の・・・」を引き摺ってしまうのでこんな感じです。

今回はコメディ的要素が多いので事件は少ないかな?起きても辛くはないと思います。
つくしちゃんがどんな風に変わるのか、見守ってくださいね!

宜しくお願い致します~。

2019/09/10 (Tue) 23:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

ホントね💦そんな人居ましたね・・・気にしてなかったわ(笑)
何となく「大輔」を使いたかったの。そうしたらどうしても名字が「高橋」から離れなくて💦

そして・・・そんなものをひょっこり見付けないでください(笑)
面白いなぁ💦私は絶対に見返すことは出来ません・・・こう見えて照れ屋だから。


ちょっとーー!!
最後のいいじゃん!もらったわ、その案❤何処かに入れよっと!

やっぱ、お話し書いたら良いのに(笑)

2019/09/10 (Tue) 23:28 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

ふふふ、今回の西門家は比較的オープンで明るい・・・方だと思います。
厳しすぎるご両親じゃないですね。

企業の秘書のお仕事とはかなり違ってて・・・って言うか、多分総ちゃんが好きに動かすんだと思います(笑)
そうそう、そう言う事件も起きますよね(笑)

あはは!時間無制限・・・ちょっと良からぬ想像をしちゃう言葉ですね❤

2019/09/10 (Tue) 23:32 | EDIT | REPLY |   

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