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堤さんからは淡々と業務内容を聞き、その様子から困ってる感じは受けなかった・・・って言うか、聞けばT大卒のエリートで、代々医者の家系だとか。
堤さんはお医者様になりたくなくて薬剤師になったけど、とある日ホテルで開かれていたイベントで飲んだお抹茶に感動して西門流に入り、たまたま前秘書が辞めた時だったから雇ってもらったらしい。

「人生とは不思議なもので・・・」

なんて言ってるけど、私の場合はこの人の愛車を蹴ったから?
そうだとしたらやっぱり人生って何が起きるか判らないわ・・・。振り向いたら西門さんは不敵な笑みで私を見てるし。


「堤さんはお茶の心得は全くないんですか?あの、お稽古は・・・」
「薬剤師を辞めてこちらに入門した時に3度まで稽古しましたが挫折しました。家元のお作法を見させていただいた時は自分にも出来そうな気がしたのですが、やってみると案外難しい。それに私は考え過ぎる性格のようで、無心になれなかったのです。ですから諦めるのは早かったのですが、この世界は好きなんです。だから秘書として関わっています」

「それで不自由だったことはないんですか?」
「家元に茶席のことでお手伝いが出来る訳がないのです。ですから茶道で困った事はありません。
物事を覚えるのは得意ですから専門用語だけは早く覚えました。あなたの場合は総二郎様ですから、総二郎様が望まれる範囲の事が出来たら宜しいと思います」

「・・・はぁ、そうなんですね」


もう1回振り向いたらやっぱり何故か嬉しそうに笑ってた。
・・・・・・何をさせる気なのよ?!

この後は家元と家元夫人・・・つまり西門さんのご両親にご挨拶。
秘書室を出て、今度は西門流の本拠地に向かった。



私が入って来た正面玄関から入って右側・・・こっちにはお茶会が行われるお部屋が並んでいるらしい。
チラッと覗いてみたけどこれまで私が見た庭よりも自然な、あまり刈り込まれていない感じに見えた。その奥の方には鬱蒼とした場所があって、そこは本格的な茶事を行う庵があるらしい。

・・・全然意味が判らないけど。


「茶会と茶事は別物なんだ。茶事は茶懐石って言う簡単な飯付きで炭点前、濃茶、薄茶まで全部で4時間近く掛かる時もある。茶会ってのは大抵薄茶のみの簡単なものだ。それ以外では茶室から出て外で行う野点。この時は立礼棚を使って椅子に座って点てるのが多いな」

「・・・・・・はぁ。覚えないとダメですか?」

「茶を点てろとは言わねぇが誰かに聞かれた時に知らないでは困る。だから少しずつ稽古してもらおうか」

「正座、出来ません」
「訓練すれば茶会ぐらいは耐えられるようになる」

「・・・・・・着物を着る事も出来ません」
「着付けは俺が出来る。これも追々1人で出来るようになればいい」


「580万円ってどのぐらいで貯まりますかね?」
「数年はかかるだろ?0円生活する訳じゃないんだから」


はぁ・・・数年間働いて弁償するまで辞められないのか。
初出勤で既に退職日の事を考えたけど、流石に気が遠くなりそうだった。



**



「・・・と、言う訳で俺の秘書になった牧野つくし。宜しくな」
「よ、宜しくお願い致します!」

「こちらこそ宜しくな。まぁ、慣れないうちは大変だろうが堤に相談しながら頑張りなさい」


ひえ~!これが茶道の家元?!
威厳ある・・・と言うよりなんて素敵なおじ様なのかしら!西門さんのお父さんだけあって格好いい・・・こんな渋いイケメン、滅多に居ないと思うわ!
会社でナンバーワンのイケメン部長って言われた佐藤さんなんて全然敵わないじゃない!

同じ着物着てても家元は本物の色気、西門さんは色っぽいけどチャラいだけ・・・こりゃ堤さんが惚れるだけのことはあるわって家元ご本人に見惚れていた。

そうしたら隣から聞こえた「コホン・・・」と言う小さな咳払い。
こっちは西門さんの女装かと思うような美人が座っていた。これが・・・家元夫人?!


「・・・総二郎さんが初めて秘書を付けるのだからご無理を言う事もあるかもしれません。もしも男性に相談しにくかったら私に何でも話して下さいね。味方も多い子だけれど同じくらい敵も多い子なの。どうか宜しくね」

「・・・は、はい!頑張ります!」


・・・・・・敵が多いって何?
私はこんな大男、守れないわよ?殴りかかられたらこの人よりも先に逃げると思うけど?

家元夫人の言葉にもふふん!と笑うだけの彼は私を紹介し終わったら元来た廊下を事務所の方に向かって歩いて行った。さっきは動揺して書類を書けなかったから書いてこいと・・・そう言えば入社書類は事務所に置きっぱなしだ。


その途中、彼がピタッと足を止めて、私は真後ろを歩いていたから西門さんの背中にドン!と体当たりしてしまった。
吃驚して鼻を押さえ「なんで急に止まるんですか!」って言いながら前を見たら、綺麗な着物を着た女の人が私を・・・じゃなかった西門さんを見ていた。

日本人形みたいに綺麗な人・・・彼女が上品な微笑みで軽く頭を下げると、西門さんも同じように綺麗なお辞儀を返した。
私は見様見真似で頭を下げたけど気品で完全にOUT。その女の人は顔を赤らめて西門さんを見つめ、着物の袖で口元を隠した。
その仕草の可愛いこと!女の私でもゴクッ、と喉が鳴った。


「ごきげんよう、総二郎様。本日はお稽古に参りましたの・・・少し早かったかしら」
「いえ、早めの準備は良いことです。今日も素敵なお着物ですね、雪乃さん」

「母の着物ですのよ。でも、そう言っていただけると嬉しゅう御座います。この季節に合うかと思いまして選びましたの」
「はい、良くお似合いです。その柄はこれから初冬まで大丈夫ですよ。流石ですね」

「・・・今度、新しい着物を選びに行こうと話してますの。ご相談に乗っていただけます?」
「勿論。でも成宮様はセンスがお有りになるから私の意見など取り入れなくても大丈夫ですよ。雪乃さんにもその感性は受け継がれているのでしょうね」

「うふふ、有難う御座います・・・あら?そちらは?」


今まで気が付かなかったの?!
これだけ会話してて西門さんの真横の私が目に入らなかったって?!・・・そんな馬鹿な!


「は、はじめ・・・」
「彼女は本日から私専属の秘書になった牧野と申します。どうぞ宜しくお願い致します」

私が挨拶しようと思ったのに言葉を遮られて西門さんが紹介した感じになった。
だから慌てて頭だけ下げて「宜しくお願いします」と小さな声を出すだけ・・・でも、その雪乃さんと言うお嬢さんは冷たい目だけ見せてすぐには言葉を出さなかった。

・・・あれ?何で今度は怒ってんの?


「秘書?こんな子供みたいな女性が総二郎様の秘書・・・ですか?」

・・・は?今なんて言った?
子供みたいな女性って言った?うそっ・・・さっきまでの気品に満ち溢れた笑顔はどこに行ったの?数秒前だよ?

今度は西門さんが私の肩を抱き寄せるようにして引き寄せ、一段と色っぽい笑顔を雪乃さんに向けた。
その前にこの手を退けてよ!って西門さんを睨んだけど無視。私の顔が彼の腕に当たるんじゃないかってぐらい近くまで寄り掛かっての紹介になってしまった。

いや、彼女じゃないんだからっ!


「えぇ、私が選んだ秘書です。今度から稽古の変更などは私ではなく牧野にお願い致します。牧野、こちらは成宮家のご令嬢、雪乃様だ。今後、ご連絡があったらすぐ俺に伝えるようにな」

「それなら直接・・・」
「判ったな、牧野」

にっこり笑ってるけど私の言葉を封じたわね?仕方なく「判りました」と答えたけど、目の前のお嬢様のご機嫌は急降下。
私達の横をツン!とした顔で通り過ぎ、その時に私に肘打ちのような事もして、思わず蹌踉けてしまった。
そうしたら西門さんが「アブね!」って支えてくれたけど、私達から遠離ってく雪乃さんの歩き方はさっきと全然違っていた。

何なの?あの変わり様は・・・。




「あの子は一見お嬢だけど気が強過ぎるから、俺の回りに女が居たらいつもああ言う態度で来るわけ。電話してくる時も用件より雑談が長くて困ってたんだ。でも今度から俺にじゃなくてお前に連絡してくれるんなら助かるわ~!」

「だからわざとあんな事を?」

「勿論!この後の稽古の時、グチグチ言うんだろうけどなぁ~!あ~、面倒くせ!」


冗談じゃないわ!
この人が殴られるのはいいとしても、標的が私だったら困るじゃないのっ!


「あのねぇ!」

着物の袖を引っ張って抗議しようと思ったけど、その時に見上げてしまった彼の瞳・・・その妖しい視線にゾクッとして何も言えなかった。





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Comments 8

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2019/09/11 (Wed) 14:02 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/11 (Wed) 14:32 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/11 (Wed) 17:06 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/11 (Wed) 17:37 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは!

今日もコメント有り難うございます。
総ちゃんはどうやらつくしちゃんをそのように使いたいようですが、その本心は?って感じですよね💦

確かにご機嫌・・・面白がってるようです。
新しい風になってくれればいいですね~!


それと・・・どうも有り難うございます💦
一瞬の出来事だと思いますが、応援していただけてとても嬉しく思います。

私は書き始めて2年7ヶ月、全然気にしていなかったので本当に驚きです。
どの位置にいても自分自身は変わる事が出来ないので、これからもマイペースにやっていきます~❤

いつも気に掛けてくださって有り難うございます。





2019/09/11 (Wed) 19:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは~♥️

いつも応援ありがとうございます🎵
いや(笑)一瞬のこととは言え、嬉しかったです♥️

でも、私はポンコツ6号なので大したお話は書けません😅

これからもマイペースに、好きなように楽しみます。
(は!Secretも書かなきゃね💦)

いつも気に掛けていただき、本当に感謝します。
ありがとう❤️

2019/09/11 (Wed) 20:31 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

ははは!そうかもしれません(笑)
総ちゃん、楽しそうに紹介していましたが、これでつくしちゃんの危険は増したような気がします💦

ヤバい事が起きなければいいのですが、つくしちゃんも負けてないかも?(笑)
敏腕秘書にはなれないかもしれませんけど、ある意味総ちゃんがご機嫌になって仕事が捗るのかもしれませんね。

2019/09/11 (Wed) 21:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様 こんばんは。

あはは!そう言う事ですかね?
面白いなぁ、その脳内変換(笑)それなら坊ちゃんも大丈夫なのでは?(笑)

そう言えばうちの娘のところもそんな天気だって言ってました。
私の所は急に暑さが戻ってきて、何だか体調がおかしいような・・・。

8月の終わりの方は少し肌寒かったのに、今は猛暑・・・ちょっと集中力が欠けてます💦困るなぁ・・・。

2019/09/11 (Wed) 21:12 | EDIT | REPLY |   

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