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plumeria

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「流石!これが本職だけあって書き方は完璧ですねぇ~」
「ははは・・・5年間も総務でしたから、人事関係書類も少しは手伝いますし」

西門さんと別れてから事務所で入社書類を書いていた。
こう言う事務なら自信あるんだけどなぁ~って西村さんを見るけどにっこり笑うだけで何も言わない。「はぁっ・・・」って小さな溜息を漏らすと、そこで初めて「どうしましたか?」なんて聞いてくれた。


「・・・正直あんな人の秘書なんて自信ありません。どう見たって何でも出来るでしょ?必要ないんじゃないかしら・・・」
「ははは、確かに何でもお出来になりますね。逆に人に任せるのが嫌なんだと思ってましたがね」

「じゃあ尚更素人の私なんて邪魔じゃないですか?教えなきゃいけない事だらけでしょ?面倒くさがりみたいだし」

「面倒なんですかねぇ?確かに昔からあまり側に人を置かないのは事実だけど、今回秘書を置こうと思われたきっかけはご本人じゃないと判らないですがねぇ」


きっかけは・・・車を蹴った人間を取り敢えず監視したいから?
修理代金踏み倒されないように見張ってるんじゃないの?

そう思ったけどこんなお屋敷に住んでてお金持ちそうだし、他にも派手な車を持ってるのなら気にしないような気もするけどなぁ・・・。そこは思い入れがあるのかもしれないけら言わないけど。
茶道家の一日なんて知らないけど、忙しくて「猫の手も借りたい」って雰囲気じゃ無さそう・・・って、私は猫か?

いや、猫以下かも・・・。


「・・・西門さんっていつも夜は出歩いてるんですか?」

「ははは!この世界に息苦しさを感じておいでだから、本当はもっと楽なお気持ちでお茶を楽しみたいと思っておられるんじゃないかな。でも、今じゃ後継者です。なかなか自由がないからお屋敷を出たら伸び伸びと遊んでおられるようで・・・でも、そろそろ落ち着いていただかないといけないのですがねぇ」


伸び伸びと遊ぶ?飲むだけじゃなくて・・・つまりはそういう事?
だからあの時もあんな時間にフラフラしてたのかしら・・・やっぱりチャラ男なんじゃん!


そんな男にくっついて仕事・・・冗談じゃないわ、何が起こるか判ったもんじゃない。
何処かでまた変な気を起こしてこの前みたいに・・・って、あのキスを思い出して顔が熱くなった。それを見て「何かあったんですか?」って聞くけど、そんなの言える訳ないし!
「何でもありません!」と少し強めに言ったら変な顔された・・・。



「さっき雪乃さんと言うお嬢様にも睨まれました。あんなの、これから起きるんでしょうか?」

「あぁ、成宮雪乃様ですか?それはそれは・・・あの方は総二郎様のお相手候補の1人なんです。他にも名家のお嬢様が沢山おられますが、その中でも美人ですし家柄も良いですし、先代同士が親友ですので有力なのですよ。だからご本人はすっかりその気でしてね」

「は?お相手って・・・まさか結婚ですか?」

「総二郎様にその気がないので進んではいませんけどね。成宮家以外でも本気を出している家はいくつかあります。別にご両親も急かしてはいないのですが、総二郎様が落ち着かないのでさっさと決めてしまいたいみたいですけどね・・・おぉ、これは総二郎様には言わないで下さいね?ご機嫌が悪くなりますから」

「・・・はぁ、まぁ仕事外の個人的内容ですから」

「個人的ですが西門流には大事なことです。そこがこう言う家の難しさです」

「成る程・・・」


西門さんに跡継ぎが居ないと困るって事か。
なのにチャラ男だから心配だと・・・その気持ちは判るわ。恋をしたかどうかも区別出来ない私に言われたくないだろうけど。



**



事務所で書類を書き終わったら本邸内を案内すると言われ、西村さんに付いて行った。

「手っ取り早く正面玄関から行きましょうか。入ってきた場所ですけどね」
「はぁ・・・」

「先ほど家元のお部屋には行かれたのですね?ではお茶室からご案内しましょう。静かに歩いて下さいね」
「は、はい!」


ここでもお屋敷を取り巻くように作られている外廊下。
これは立派なお庭をガラス越しではなく、直に見る為にそうしてあるんだそうだ。台風などの天候不良の時は自動で雨戸が降りてくる仕組みだとか。これだけの大きなお屋敷なのに驚きのシステム!

西村さん曰く「お屋敷の中にも文化財級のものが多いので防犯設備も最新式ですよ」・・・ただの武家屋敷じゃなかったんだと感心した。


本邸から離れた場所で、わざわざ靴を履かないと行けない奥まったところにある庵に、お客様が待つという「待合」って小さな建物。そこにはわざわざ木戸まで作られて、別世界に迷い込んだかと思うような空間だった。
そのすぐ近くの棟にはいくつかの茶室があって、そこでは季節や時間に合わせて丁度いい部屋を選べるようにしてあるらしい。

桜の花が見える茶室、涼しげな池が見える茶室、紅葉が楽しめる茶室、雪を被った椿が見られる茶室・・・どれを見ても溜息が出るほど手入れされていた。
庭師さんは全部で8名。その人達が一年中忙しくしているって言われれば納得・・・ゴミがないかと見回したけど何1つ無かった。


「ここから先はやめましょう。今は総二郎様が成宮様のお稽古中ですからね」

「あっ、そうでしたね」
「この先・・・ほら、あの障子が開いている部屋が総二郎様のお稽古用の茶室です。ただしご自分のお稽古はまた別の場所。同じように家元、家元夫人、弟君の孝三郎さんのお茶室も数部屋あるんですよ」

「・・・・・・はぁ」


家族4人で二部屋しかなかったのに、この屋敷はどーなってんの?
そんなに部屋があっても全部使わないだろうに・・・身体は1つなんだからっ!

西村さんの説明を聞いて、逆にムカついて顰めっ面になった。そんな私を見てクスクス笑い「初めての人は皆さん、驚きますから」って。


でも、チラッと見えた西門さんのお茶室。
雪乃さんが泣いてるように見えたのは気のせいかしら?着物の袖で顔を覆って背中丸めてるように見えたけど?



「それでは今度は厨房とお茶の倉庫をご案内しましょう」
「あ、はーい!」

西村さんに言われてお茶室ゾーンを抜け出たけれど、その時の光景が目に焼き付いて消えなかった。


まさかあの後に西門さんが優しく抱き締めて、雪乃さんが彼に縋りついて・・・なんて?
いやいや、たとえそうでも私には関係無いんだけど。


そしてもの凄く広い厨房と、意味不明な漢字でいっぱいのお茶の倉庫、数え切れないほどのお茶碗が並んだ部屋、使用人さんの休憩室、そして資料館も兼ねてる茶道会館。
本邸内の部屋を説明されたけど、もう1回行けと言われたら行けない・・・迷路としか思えないと言えば笑われた。




「・・・もう結構ですわ!総二郎様、酷いっ・・・!」
「だからそう言う意味ではありません。落ち着いてもらえませんか?」

「嫌です!私は総二郎様だけを見てきましたのに・・・!」


西村さんと廊下の隅で石庭についての話を聞いていたら、突然奥の方からそんな話し声が聞こえてきて西門さんと雪乃さんが現れた。
やっぱり雪乃さんが泣いてる・・・でも、後ろから来た西門さんは呆れたような顔で真剣味はゼロ。
こりゃ抱いて慰めるなんて事はしてないな、と猫以下の私でも判った。


その西門さんが私達に気が付いた。
そして雪乃さんに延ばし掛けた手を止めて・・・今度は私に手招き?!


「あぁ、牧野。丁度良かった。雪乃さんがお帰りだからお見送りを」
「はっ?!私がですか?」

「そうだ。俺は今から急ぎの打ち合わせがあるから着替える。牧野も見送りが済んだら事務所で待機しとけ」
「えっ?あの、ちょっと?!」

「判ったな、頼んだぞ」


ちょっとーーっ!!
こんな状態のお嬢様を置いてかないでよーっ!!




雪乃さんは泣きじゃくってるのに西門さんはトンズラ・・・西村さんは「玄関判りますよね?」って言って事務所に戻るし、私とこの人だけになってしまった。
マジで超気不味いんだけど?!

それでも頼まれたのなら仕方ない。雪乃さんの側に行って小さな声で話し掛けてみた。


「あの、玄関、こちらですから・・・」
「・・・あなたに言われなくても判ってるわよ!触らないでちょうだい!」

「まだ触っていません・・・でも、私も仕事ですからご一緒に・・・」
「冗談じゃないわ!あなたと私が並んで歩く?!馬鹿にしないで!」

「馬鹿にもしていませんが、とにかく泣き止んで・・・」
「だからあなたのせいで泣いてるんじゃないの!早くこのお屋敷から出て行きなさいよ!」

「・・・・・・・・・えーと」
「いいこと?総二郎様に指1本触れたら承知しないわよ?覚えてらっしゃい!!」



本邸中に響き渡る声で喚き散らかした雪乃さんはダンダンと足音を鳴らして玄関に向かって行った。
指1本触れたらって・・・それより酷い事をされたのは私よ?


嘘でしょ?これが私の仕事なの?
これからこんな事ばっかり?!






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Comments 2

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2019/09/12 (Thu) 14:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

ははは!どんなハイテクな武家屋敷なんでしょ!
でも、外廊下って雨の時困るじゃないですか(笑)

うんうん、見てみたいよね~(笑)


雪乃さんは・・・初めてじゃない?すっごい昔に綾乃ちゃんが居たような気もするけど。
プル、「乃」って漢字が好きなのよ❤

そして近日中は・・・ないよね(笑)
そんな事したら犯罪ですやん💦せめて合意の上で・・・ねぇ?



2019/09/12 (Thu) 23:09 | EDIT | REPLY |   

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