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ハワイから帰って数日間、その前と何も変わらない日が続いた。

牧野は相変わらず夏休みなのに朝6時に起こしに来て、俺を急かしてダイニングに連れて行き半分寝たままの朝食。そして部屋の掃除とキキの世話を終わらせたら朝のバイト終了だと言って勉強が始まる。

大分旅行からサボっていたから牧野は必死・・・当然俺の家庭教師は始まり、勉強の殆どは俺の部屋。
牧野専用の机を用意し、コップと筆記用具は俺の部屋に置きっぱなしだった。


「やっぱり難しい~!フランス語、全然ダメだわ・・・」
「覚えた単語を忘れないように『SR方式』で復習したら?」

「SR方式?」
「Spaced Repetitionの略。今日勉強した内容を次の日、2日後、1週間後、2週間後、最後は3ヶ月後に復習する方法のこと。結構有効な復習方法らしいよ」

「花沢類、そうやって覚えたの?」
「俺は1回で覚えるから」

「・・・・・・・・・」


そう言うと凄く嫌そうな顔して睨むけど仕方ないじゃん・・・本当の事だから。
自分なりの方法でいいんだよって言えばシャーペンで頭を掻きながら溜息ついて、暫くしたらラグの上に大の字で寝てた。

そして10分寝たらムクッと起き上がってひたすらノートに向かい、判らない事は俺に聞いてくる。
苦手だと言いながら結構上達してる・・・家庭教師としては嬉しいところだ。これが試験前になると本気出してくるから、多分面白く思えてきたらスラスラ頭に入るんだろう。


フランス語が面白くなるためには向こうに住めばいいのかも・・・なんてちょっと思ったりもするんだけど。


「はぁ~!どうして単語は覚えられても文章になったらダメなんだろ?」
「どうしてだろうね?」

「・・・私が聞いてるんだけど」
「ん~、俺は子供の時に覚えたからそんな記憶はないんだけど、単語を視覚化して覚えるといいらしいよ?」

「は?」

「たとえば、『Puis-je avoir un gâteau aux fraises?』、苺のケーキをいただけますか?って言う時にはその映像を頭で思い浮かべるんだって。子供は無意識のうちにそうやって言葉を覚えるらしいよ」

「・・・やだ、食べたくなっちゃった!苺のケーキ、買って来る~!」

「は?牧野、勉強中・・・」
「ケーキ買って来たら続きやる~!」


部屋の窓から覗いて見れば日差しの中を元気よく走っていく牧野の後ろ姿。
そして部屋に残されたのは彼女の勉強道具・・・また、ここに戻ってくるって確信できるほど散らかしたままだった。




**********************




「7月はバイト代少なかったもんなぁ~。8月は頑張らなきゃ!」

苺のケーキを買いに行く、なんて言いながら本当は少しドキドキする胸を落ち着かせたかっただけ。
ハワイから帰って、前と同じ気分で仕事をしようと思っても色んな場面を思い出して顔が熱くなる・・・気が付いたら花沢類の顔を見ちゃってるし、買ってもらったネックレスを触ってる。

ダメダメ・・・そんなんじゃ仕事も疎かになるし、4年間も続けられない。
しっかりしなきゃ!彼は雇い主の息子さん・・・世界有数企業の後継者。そうは見えないけど、そうなんだもん・・・だからこれ以上考えちゃだめ!

片手にケーキの箱を持って、おまじないのように呟きながらお屋敷に戻った。

そうしたら田村さんが裏口にやってきて「奥様がお呼びですよ」と・・・今度は何をしたんだろうと、恐る恐るお部屋に向かった。



コンコンコン・・・

「牧野です」
「お入りなさい」

「・・・失礼致します。奥様、ご用件は何でしょうか?」

静かにドアを閉めて奥様の座ってる椅子の近くまで行くと、目に入ったのは随分前に作った薔薇のリース。
それにその横にはこの前買ったアロハシャツとムームー・・・こんなに綺麗でゴージャスな奥様にムームーなんて買って来た自分に今更ながら驚いてしまう。
しかも旦那様が帰ってくるまで飾ってる気なのかしら・・・それを見るとちょっと目眩がした。


奥様はお仕事の書類だろうか、英語で書かれたものを読んでいたみたい。それをテーブルに戻して私に「座りなさい」と、向かい側の椅子に向けて手を差し出した。


「あら、それはなぁに?」
「あっ!これは苺のケーキなんです。類様にフランス語を教えていただいてるのですが、糖分補給と思って・・・ははは!」

「まぁ、そうなの?ふふふ、類も食べるの?」
「無理矢理ひと口食べてもらうんですけど、甘いからって私に戻って来ます。えへへ・・・実はそれも計算済みなので、私のとは違うケーキにするんですけどね♡」

「ほほほ、いいじゃない。楽しそうね~」
「・・・・・・はは」


楽しそうね~、をどう受け止めたらいいんだか。
素直に聞いてていいのか、それとも注意されてるのか・・・上品に笑う奥様とは反対に引き攣った笑顔しか出来なかった。



「ところで、牧野さんに頼みがあるんだけど」
「はい、何でしょう?」

「実はね、今度の日曜日に都内でちょっとしたパーティーがあるの。花沢物産と古くからお付き合いのある会社の創立記念なんだけど、それに私と一緒に行ってくれない?」

「・・・・・・は?」


今、なんて?

何処かの会社の創立記念パーティーに私が・・・私が奥様のお供で一緒に?

いやいやいや、そんな事出来ないわよ!なんの作法もマナーも知らないのに!やっと最低限必要なマナーを覚えたけど、相手が花沢類だから殆ど無視してるし!
それなのに正式なパーティーなんて無理!絶対に無理!


「申し訳ありませんが奥様のお供なんて私には出来ません。そんなパーティーに出たこともありませんし、裏方のお仕事は覚えましたけどゲストとしてのマナーなんて知りません。それに私は使用人です。場違いな所に行くと奥様が恥ずかしい思いをされますから」

「あら!そんなに気負わなくてもいいのよ?立食パーティーだしテーブルマナーも気にしなくていいわ。私の話し相手になってくれればいいの。たまたまそのパーティーに出席予定の奥様達にお友達がいないのよ・・・それでもダメ?」

「いや、ダメって言うか・・・ホントになにも知らないので・・・」
「私の横に立ってたらいいわ。ホントにそれだけよ?そうねぇ・・・男性に誘われたらワルツぐらいは踊るかも?」

「はっ?!踊れませんもん!」
「大丈夫よ~!男性がリードしてくれるから♡なかなか刺激的よ?」

「いや!そんな刺激要りませんから!」
「うふふ、誘われたらの話よ、誘われたら!ねっ♡」


ああ言えばこう言うって感じでとうとう奥様の押しに負けた・・・。
でも着て行く服がないと言えば、今度は隣の部屋からドレスショップの店長さんって人が満面の笑みで現れた!そしてガラガラと沢山のドレスが掛けられたハンガーラックを引っ張って来て、私達の目の前にドーン!と・・・。

・・・まさか、待機させてたの?!


「こちらのデザインの方が体型カバー出来そうですね」
「そうねぇ、夜のパーティーだからロングドレスでもいいんだけど牧野さんにはこの方がいいわね」

「色は薄めの方が宜しいでしょう。童顔ですし、黒髪に濃い色ですとねぇ・・・」
「ほほほ、若いのだから可愛らしい色でね」

「上半身にボリュームが全くありませんから少し詰めないといけませんね」
「そうね、ズルッとなると可哀想ですものね」

「・・・・・・・・・」


この2人、さり気なく酷い会話してるって判ってるのかしら。
いくら私が鈍感で脳天気だと言っても、この手の言葉には流石に傷つく・・・つまり「似合わない」って言ってんのよね?




**********************




ケーキを買いに行ったまま牧野が戻ってこない。

散らかしたままなのは戻って来るから許されるんであって、このまま俺に片付けろとか言わないよね?
そう思ってキキの横で窓の外を見ていたけど何にも変わらない光景・・・太陽が少し、いや随分傾いたなってぐらい。

時間ももうすぐ5時で牧野のバイト時間なのに・・・なんて考えていたらひょっこり戻って来た。


「長かったね・・・何処まで買いに行ってたの?」
「えっ?あぁ・・・えっとね、その・・・」

「まぁ、いいや。もう5時でしょ?今日の勉強は終わりだね。続きをするんならまた夜にね」
「・・・・・・うん」


あれ?どうしたんだろう・・・なんでそんなに顰めっ面?
牧野は何か困ったような顔して勉強道具を片付け、シャーペンやらマーカーを落としながら自分の部屋に帰っていった。

その後も制服に着替えて掃除用カートを持って来たけど、壁には当てるしモップは倒すし、また同じところしか拭かないし・・・うわの空状態で掃除なのか汚してるのか判らない。
だから今日もベッドメイキングはヨレヨレのボコボコ・・・それも見慣れたから驚かないけど、今更押して開けるドアを引いて「開かない~!」と叫んでるのには唖然とした。

だから俺が無言で押して開けると「あれ?」って吃驚顔・・・いや、俺の方が吃驚だから。


「・・・大丈夫?何かあったの?」
「へ?あっ・・・うん・・・よ、夜、相談する・・・」

「・・・・・・夜の相談?」



・・・夜の相談ってなに?!




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Comments 4

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2019/09/17 (Tue) 08:10 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/17 (Tue) 09:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

ははは!カメ💦ホントですよね~💦
でも進んでるんですよ(笑)少しずつですが・・・そうじゃないと終われないし。

そして出ました!私の好きなパーティーシーン♡
つくしちゃんをドレスアップするのが好きなので、いつも必ずあるんですよね~♡

ふふふ、ここで類ママは何をするか・・・って、もう判りますよね?(笑)


夜の相談(笑)つくしちゃん、そんな風に言ってないのにね💦
類君、1人で妄想してるみたいです。

2019/09/17 (Tue) 19:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

そうなのよ~、困った類君でしょ?(笑)
ホントよ、大人しく枕投げられてるクセに。

「の」は入ってないっつーの!
それなのに脳内変換しちゃったのね・・・。

そこでスイッチ入るぐらいならハワイで襲えよ!って感じでしょ♡ははは!


苺のショーケーキの可愛い画像がなかったからロールケーキになってしまったんです💦
毎回画像で悩む人(笑)自己満足で探してるんだけど、それよりも内容で悩めよ!っていつも思う・・・。

2019/09/17 (Tue) 19:20 | EDIT | REPLY |   

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