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対談と撮影が行われるホテル2階の中庭・・・そこの真横の部屋が控え室で、西門さんが「今日は見学しとけ」って椅子に座らせてくれた。
抱きかかえられた腕から降ろされる時も意外と優しくて、表情はクールなのに女性の扱いは丁寧・・・。
こんな風に抱えられた経験もないクセに、そんな風に思う自分がちょっと恥ずかしかった。


「牧野、スマホ持っててくれ」
「は、はい!」

「車のキーも・・・無くすなよ」
「・・・判りました」


余計なものを服のポケットに入れたまま撮影したらシルエットがおかしいんだとか・・・そんなもの?って思うけど、彼の持ち物を任されると言う特別感・・・それにはドキドキした。


その時、目の前が暗くなったかと思ったら、そこに立っていたのは響子さん。
彼女は私の靴をドン!と床に置いて鞄もバン!とテーブルの上に置いた。
その見下ろす顔は西門さんの腕に抱きついた人と同一人物だと思えないほど怖い・・・美人で完璧なメイクだけに、鋭い視線は余計に恐ろしかった。

西門さんは既に対談する中庭でスタンバって資料なんて見てるし、私が響子さんに捕まってるなんて全然気にしてないみたい。
丁度彼1人での撮影なんだろうか、カメラマンと笑いながら喋ってて、時々フラッシュが光ったり「もう少し横向きで~」、なんて声が聞こえている。


「どうして私があんたの靴を取ってこないといけないのよ!冗談じゃないわ!」
「・・・すみません」

「・・・あんた、総二郎君にどうやって近づいたの?」
「は?どうやってって・・・お酒飲んだ時にって感じでしょうか?(詳しく話せばややこしすぎるのよね・・・)」

「お酒の席で?あんたみたいな子供が総二郎君と同じ店に居たなんて信じられないけど?」
「同じ店に居た訳じゃありません。でもそれを説明する義務も無いと思いますけど」


確かに西門さんの仕事上大事な人かもしれないけど、その言い方にはムカついて言い返してしまった。
その時に中庭から来たスタッフさんに「響子さん、そろそろ出てもらえますかぁ?時間、押してるんで!」、そう言われるとプイッ!と向きを変えて出ていった。


そこには西門さんがいる・・・彼は妖しげな笑みで響子さんを迎えると、対談するための席に向かった。勿論響子さんが座るまでエスコートして、彼女が座ったらその横に座る。
それをカメラが色んな角度から捉えていた。



凄い・・・こんな現場初めて。

私も足が腫れて痛かったけど、パンプスを履いて控え室から中庭の隅に行ってみた。
それをチラッと確認した西門さん・・・でも怒ってないようだったから、邪魔にならないところで撮影の様子を見ていた。


「・・・と、言う訳で日本人のライフスタイルの多様化や様々な国の文化の影響もあり、日本の伝統文化の衰退はどんどん進んでいるような気がするんですよ。茶道の世界は如何でしょう?何か感じていらっしゃいますか?」

「有り難いことに茶道は多くの方に今でも愛されて、趣味として習われている方は多いですね。ただし、それが流派を守るべき人間の数と言う事であれば随分少なくなったような気が致します」

「成る程・・・では、どうすれば衰退を止められますかねぇ?若い人達は『時代の流れだから仕方ないでしょ』なんて簡単に返事が返って来そうですが」

「それで終わらせれば先人が苦労して積み上げてきた伝統文化がなくなってしまいますね。総ての芸能において可能と言う訳ではありませんが、新しいスタイルで本来の形にとらわれずに進化しているものもあります。たとえば和太鼓や三味線なんかは・・・」


・・・・・・これが私に襲いかかってきた・・・じゃない、いきなり濃厚なキスをしてきた男と同一人物だとは。
見た目は如何にも今時の若者でしかも顔は極上、スタイル抜群で手足は長いしその上イケボ。どの角度で話せば1番綺麗に見えるかを知ってるって感じ。

時々手を使いながら話すんだけど、その指先が綺麗で品がある。
あんなエロい事する人なのに育ちが良いんだって感じさせる・・・ヤバい、なんかムカつくんだけど!



「正直堅苦しさを無くして、今の時代に合ったものに変えていくという発想は茶道にはありませんか?」

「そうですね・・・茶道に関しては一定の作法を崩す事は出来ません。堅苦しいのは事実でしょうが、それ自体が素晴らしいものです。でも確かに次世代に受け継がれなくては意味はありません。ですから茶道教室では子供達に野点と言う形で野外で楽しむお茶や、馴染みのある七夕の茶会、節句の茶会など工夫を凝らしていますよ。勿論基本は丁寧に教えていますけどね」

「総二郎さんにもご自分の後を継ぐお子さんが必要って訳ですが、今のところそんなお話しは?」

「ははは!まだありませんよ。私もまだまだ半人前ですからね、今は修行の真っ最中です」


・・・・・・特定の恋人は無しって言いたいのね?
雪乃さんも響子さんも残念!って事なのかしら・・・いや、もっと他にも居そうだわねぇ・・・。



「それでは最後の撮影でーす!響子さんと西門さん、寄り添っていただけますかぁ?」

スタッフさんがそう言うと2人ともモデル顔負けの笑顔でニッコリ・・・少し響子さんが寄り掛かりすぎじゃないの?って思うけど、西門さんの手はポケットに入ったまま動かなかった。
それもそうか・・・婚約会見じゃあるまいし、女性の肩なんて抱いたらとんでもない事になるわ。


「西門さん、すみませんがもうワンポーズ、この辺りでお願いしまーす!」
「・・・はいはい」

カメラが外されると途端にクールな顔・・・でも、また「はい、撮りまーす」の声でガラッと変わる・・・その秒単位の表情変化に呆れるばかりだった。


「それでは本日の撮影、終了です!お疲れ様でしたぁ~!」
「「「有り難う御座いましたぁ」」」

「・・・お疲れ様。じゃ、校正の時、連絡宜しく」


そんな声が聞こえてきて、ここでの仕事が終わったんだと足が痛いのも忘れて立ち上がった!
でも瞬間痛みが走ってガクンと膝が曲がり、慌てて近くの壁に寄り掛かったら西門さんが私の横までやってきた。


「ドジだな・・・ホントはここでお前が次の打ち合わせを聞くんだぞ?でも今日は捻挫もしたし、初日だからいいや。秘書は健康1番、怪我も御法度だ」

「・・・申し訳ありません」

「こう言う仕事が月に1度は入るから。じゃ、本邸に戻るぞ」
「は、はい!」


元気よく答えたものの足は言う事を聞かない。
ヒョコヒョコと引き摺りながら彼の後について行こうとしたら、また響子さんがわざとぶつかってきて、私は中庭からホテルの部屋に入る通路でもう1回転けてしまった!


「きゃあっ!!」
「あら、ごめんなさい。ボサボサしてるからよ。ねぇ、総二郎君・・・今日はもう仕事終わったんでしょ?飲みに行かない?」

「痛っ・・・」
「・・・そうやって総二郎君の気を引こうったってダメよ。新人は新人らしく荷物だけ持って帰りなさいな」


誰が西門さんの気を引こうってのよ!
私は無理矢理この仕事に就かされたんだからね?荷物だけ持って帰っていいんならそうするっつーの!
・・・って言葉は出せないから、足首を押さえてひたすら我慢・・・また疼き出した足に力を入れて何とか立ち上がったけど、壁を持たなきゃ歩けなかった。

それを黙って見ていた彼は響子さんが出した手をサッと避けて私の前に来た。


「阿呆か!そんな歩き方で駐車場まで行けると思ってんのか?」
「・・・だ、大丈夫です!今、少し痛いだけで歩き始めたらちゃんと歩けます!」

「やせ我慢したって怪我は酷くなるだけだ。ほら、来い!」
「・・・はっ?!」

「抱いてってやる。滅多にこんなサービスしないんだからラッキーだと思え」
「えええっ?!駐車場までですか?!無理無理無理!!」


無表情で両手を広げられても「ありがとう~」って、その手を持てる訳がないじゃない!すぐそこに鬼みたいな顔した響子さんが居るのよ?今度はホントに2人纏めて突き飛ばされたらどーすんのよ!

西門さんの手を押し戻して「大丈夫!」を繰り返したけど、彼の視線は変わらない。
そんなに見詰めないでよ!って心臓が爆発しそうなのに、どんどん近づいてくる両手・・・どうしていいのか判らなくて手を掴めなかったら「仕方ねぇな・・・」って無理矢理ガバッ!と抱っこされた!


「ひやぁっ!・・・あっ、あの、西門さん、ホントに・・・」
「おんぶの方が良いのか?あれは見た目も悪いぞ?ケツのラインが丸判りだし」

「いや、そう言う意味じゃなくて・・・あっ、判った!肩だけ貸してください!片足は痛くないんで!」
「馬鹿言え、身長差を考えろ。俺の肩持って歩けるほどお前に背がねぇだろうが」


そうじゃなくてーーーっ!!
すぐそこの美人をよく見なさいよっ!顔真っ赤にして怒ってるんだってばっ!


案の定、響子さんがツカツカとヒールの音を響かせて私達の前に来て、腕組みをしたまま西門さんを睨んだ。

怖い・・・思わず目を逸らせて、抱き上げてくれてる彼の肩に顔をくっつけた。
片手で彼の服を掴んだらチラッと見下ろされたのが判ったけど、私はここで顔なんてあげられない。


「どう言うつもり?総二郎君・・・この私を怒らせたらうちのエッセイ打ち切りもあるわよ?」
「好きにしたら?悪いが原稿料なんて俺の小遣いの極一部であって、入らなくったって困りゃしねぇけど?」

「・・・それでも西門流にしてみれば宣伝効果はあったでしょう?!家元に怒鳴られるわよ?」
「どうだろうな?俺が茶道に本腰入れた方が喜ぶだろうから気にしないと思うけど。それより響子さんの上司が怒るんじゃね?俺が手を引いたほうが痛手だろうから」

「・・・・・・何ですって?!」
「そう言うこった。もし次回もあるんなら牧野に連絡入れてくれ。そうしたら俺は喜んで書かせてもらうから。じゃ、今日はお疲れさん」


「・・・総二郎君!待って!」



西門さんは響子さんの言葉を無視してサッサと歩き出した。

私はまた彼にお姫さま抱っこされて高級ホテルの中を駐車場まで運ばれていく。
その途中の人の目が気になって「恥ずかしいから降ろして」って言うと・・・


「俺は気にしない。恥ずかしいなら俺の胸に顔を埋めとけ」


・・・・・・・・・よく、そんな台詞を真顔で言うよね?
でも言われた通り、彼の服を握り締めたまま・・・温かさが伝わる胸におでこをくっつけていた。





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Comments 8

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2019/09/15 (Sun) 12:27 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/15 (Sun) 16:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは♡

あっはは!
女の数だけ・・・(笑)怖いわぁ~💦
間違いなくその「会」が出来そうですよね(笑)

こりゃ総ちゃん、全力で守らないとつくしちゃんの命がいくつあっても足りないわ💦

今度はどんな女が出てくるやら(笑)
ってあんまり出してたらこんがらがっちゃうよね💦程々にしておこうーっと!

類くんはおんぶ、司君は俵担ぎ、総ちゃんはお姫さま抱っこ・・・あきら君は何が似合うんだろう?
やっぱりお姫さま抱っこかな・・・?と、真剣に考えてる私。

2019/09/15 (Sun) 21:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは!

いつもコメントありがとうございます。

こんな女性って会ったことあります?(笑)
私、女性ばっかりの職場にいたので被害には遭ってませんが、見たことはありますよ。

年下でしたけどね(笑)美人で頭の良い人でした。
気に入った男性訪問者の椅子の端っこに座って(つまりひとつの椅子に2人で)夕食をお強請りしたり、他の子と喋っていたら嫌がらせしたり。
その男性は総ちゃんみたいに撥ね付けませんでしたが、結局担当者が代わっていくんですよ。

響子さんはその彼女を思い出しながら書きました。


今頃どうしてるんだろう・・・もうあの色気も通用しない歳になってるだろうなぁ・・・なんて(笑)

2019/09/15 (Sun) 21:49 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/15 (Sun) 23:49 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/16 (Mon) 10:12 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!

おおおーっ!!肩車いいねぇ!

って、子供じゃなくてつくしちゃんをだよね?
それって・・・どうなの?

ねぇ、オトナをオトナが肩車・・・怖くない?(笑)
想像したらおんぶより笑えるかも~!!

2019/09/16 (Mon) 10:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、爆笑!!!

私も気がつかなかった!ごめんなさいっ!!💦

2019/09/16 (Mon) 10:21 | EDIT | REPLY |   

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