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牧野を抱きかかえて屋敷に入ったら、奥から志乃さんが小走りで近寄って来た。
そして包帯巻いてる牧野を見て眉根を寄せ、「今度は捻挫ですか!」のひと言。牧野は「すみません・・・」としょぼくれていたが、原因は俺だと言えばその呆れ顔は俺に向けられた。


「総二郎様が毎回女性の担当者に甘い顔をなさるからですわ!以前からそう申し上げておりましたのに」
「はいはい、判ってるって。でも怪我したもんは仕方ねぇだろ?部屋は何処にしてくれた?」

「わたくしの部屋の向かいですわ。何かがあっても声が掛けやすいでしょうから」
「くくっ、そう言って俺が近づかねぇようにって思ったんだろ?」

「総二郎様、自覚があるなら行動を慎み下さいませ!」
「・・・真面目にやってるって」


牧野はこの会話を変な顔して聞いていたが、黙ってしがみついていた。
通り掛かった使用人が驚く度に「申し訳ありません!」と謝って、小さく溜息を漏らす・・・情けねぇぐらい項垂れて、俺の肩に頭をくっつけていた。

そして志乃さんの部屋がある棟に来たらひとつの部屋の扉を開けられ、そこに牧野を連れて入った。
部屋はたまに使用人が泊まり込む時に使われていたらしく、家具なんかは全部揃ってて、家電品も困らない程度に置かれていた。

ベッドもきちんと新しい布団が用意されてて、取り敢えずそこに牧野を降ろした。


「歩けるようになるまでここで寝泊まりしろ。で、今後も時間が不規則だから、業務終了が真夜中になった時はこの部屋を使え。ここは西門でのお前の個室・・・いいな」

「・・・・・・はぁ」

「明日、俺は1日中本邸での仕事だから外出はない。丁度良かったじゃん」

「その時は何をするんですか?」

「基本その先のスケジュールに合わせて色んな手配とかが殆どだ。それは堤が教えてくれると思うし、まずは茶道ってもんを少しずつ体験してもらおうか。説明したと思うが何も知らないじゃ困るからな」

「・・・・・・・・・全然自信ないですけど」

「阿呆、何度も言わせるな。牧野が茶道家になるわけじゃない。まずはどんなものか、どんな歴史があるのかを勉強しろと言っている。俺に拘わる人間は半分が茶道家だ。秘書のお前が無知だったら仕事が出来ねぇから」


阿呆と言われてムッとしてる。
その時の顔は「玉子の時」と同じで面白かった。

そして今日はこの後の飯を一緒に食うことにした。
これも和食マナーの練習だと言えばがっくり肩を落としていたが、緊張しないように部屋着に着替えておけと言い残して自分の部屋に戻った。




************************




西門さんが出ていったら志乃さんが残って色々と教えてくれた。
おトイレの場所、この前入ったお風呂の場所・・・家元ご夫妻も西門さんも自分の部屋に専用のバスルームがあるから、あの総檜風呂には入らないそうだ。


「志乃さん達もそのお風呂なんですか?」
「私は小さいけれど専用のバスルームをいただいておりますから」

「あら、じゃあお弟子さん達と一緒なんですか?入る時間帯って何処かに書いてありますか?」
「いえ、住み込みの使用人とお弟子さん達にはそれぞれ別棟に宿所があるので、そちらに大浴室がありますの」

「・・・・・・じゃあ、あの総檜風呂って」
「今はあなた専用です。総二郎様の指示ですから気になさらなくて宜しくてよ。お好きな時間に入って下さいな」

「・・・・・・・・・」


宜しくてよ・・・って言った後でチロッて見られた気がするんだけど、志乃さんのお風呂より大きいって事なのね?
あの広い檜風呂が私専用・・・毎月の水道代っていくらなのかしら。



「少しは歩けますか?ここのクローゼットに総二郎様がご用意なさったお洋服がありますからね。この下には下着が入っています。こちらには寝間着とガウンなどの夜着が入ってます。
お化粧品はこちら、日用品はこちら、お茶を飲むのでしたらミニキッチンがここにあります。お料理などが出来るスペースはありませんけどお湯を沸かして珈琲ぐらいなら飲めますから」

「・・・こんなの、全部のお部屋にあるんですか?」

「全部ではありませんけど、誰かが専属で使うお部屋には整っておりますわ。もうお判りでしょうけど西門本邸と母屋、別棟を入れましたら相当な敷地ですの。ですからお湯を沸かしに厨房に、と考えていたらお湯が冷めるのですわ」

「成る程、確かに・・・」

「そんな事より着替えて総二郎様の指示に従って下さい。ダイニングはお家元、家元夫人がお食事をされるでしょうし、あなたは足を怪我しているから食事はここに運びます。
総二郎様は何かと会食の多い方、秘書同伴と言う事も希にございますから、あなたの食べ方が悪いと総二郎様が恥ずかしい思いをなさいます。よく練習して下さい」

「・・・・・・お仕事って事ですね」


志乃さんは家元夫人の秘書も兼ねている。
聞けば残業ってものはここの秘書にはないらしい。だからそういう手当的なものが入って、あの高額給料だとか。
だから普段着に着替えてもまだ勤務中と考えなさいと・・・そう言われれば何も言い返せなかった。


今頃悔やんでも仕方ないけど、あの時車を蹴らなければ・・・自分の痛めた足が余計に恨めしかった。



志乃さんが出ていってからクローゼットに行き、そこに用意されてる服を見た・・・そして固まった。

「なにこれ!こんなの着れないじゃないの!これが普段着だって言うの?!」


そこにあったのはどれをとっても身体のラインが丸判りのピッタリフィットな服ばかり!しかも色だって少し濃いめのセクシーカラーが多くて、黒いミニドレスなんて何着も・・・!
派手なものだと真っ赤なスリムワンピースや真っ青なミニワンピ。

「ちょっと!こんなの着てウロウロ出来ないって!Tシャツと短パンって組み合わせはないの?ジャージの上下でも全然構わないんだけど?やっぱりアパートに帰るしかないんじゃないかしら・・・」


ガサガサ探したけど1番無難なもので紺色のニットワンピースがあった。
勿論ニットだから身体のラインは判る・・・それの何が問題って、ぺったんこの胸と括れのないウエスト。所謂子供体型なんだから、ふんわりカバーする服しか着たことないのに!

ブツブツ言いながらそれに着替えて、自分のスーツはたたんでそこに置いた。
そして片足浮かせたまま鏡の前に行って全身を見た・・・・・・やっぱり似合ってない。


広めのデコルテラインはなで肩でズリ落ちてるし、ささやかな胸のラインは強調することも出来なくて可哀想・・・それなのにポコンと出てる気がするウエスト。
いや、太ってはいないのよ・・・本当に貧弱な身体なんだもの。

改めて確認して本日何度目かのがっくり・・・立ち直れそうになくて足を引き摺りながらベッドまで戻った。



その時軽くノックの音が聞こえて、入って来たのは着替えた西門さん。
今度はVネックのTシャツにビンテージもののジーンズ、そしてアクセサリーもまた変えていた。

その彼がベッドに座った私を見て「くくっ!」と笑い、その理由が判るだけにムカつく・・・それでも仕事中だから我慢して怒鳴らなかった。


「いや、悪い・・・気にすんな」
「誰も何も言ってないんですけど?それよりも西門さん好みの服じゃなくて『私の服』が欲しいんですけど!」

「いいじゃん、そういうの着ねぇと女子力上がんねぇぞ?」
「今の私には女子力あげる必要なんて無いんですよ。580万貯めるのにそんなもの邪魔です!」

「馬鹿言え、昔から言うだろ?『命短し恋せよ乙女』・・・今がその時じゃね?」

「・・・はっ?恋せよ・・・乙女?」


馬鹿はそっちじゃないの?
命無くなったら恋なんて出来ないじゃないの!・・・そう言ったら完全に馬鹿にされた。「これは大正時代の歌なんだよ!」って。


「た、大正時代?」

「『いのち短し恋せよ乙女 あかき唇あせぬ間に 熱き血潮の冷えぬ間に 明日の月日はないものを』
・・・つまり若くて1番綺麗な時には恋をしろって意味だ。艶っぽい唇がくすんで色褪せねぇうちに、身体の中の血が熱く流れてるうちに熱く燃えるような恋をしろってこと・・・」


「・・・西門さんが言うと凄くイヤらしく聞こえるんだけど」

「そうか?ははっ!違いねぇな」


ニヤリと笑って斜め上から私を見下ろしてる。
やめて欲しいわ、そのダダ漏れの色気・・・・・・身体の中が熱くなるから・・・。





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Comments 4

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2019/09/17 (Tue) 14:00 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/17 (Tue) 15:45 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

あっはは!鋭いっ!
総ちゃん、確かにどんなお仕事の仕方だったんでしょうねぇ💦

茶道じゃない取材があったんでしょうか(笑)面白いなぁ💦

そうそう、その下着を使うためには協力者が必要ですねっ!
でもまだまだ先みたい(笑)

2019/09/17 (Tue) 22:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは♡

えっ?!もうそんな期待してるんですか?(笑)
そのお風呂は個室内じゃないからヤバいでしょ💦みんなにバレるんじゃない?
だって総ちゃんとだったら・・・悲鳴間違いないでしょ?

いやいや、もうちょっとどころじゃなく待ってて下さいよ💦


多分、この総ちゃんとつくしちゃん、今の類君ぐらい時間かかると思うから(笑)

2019/09/17 (Tue) 22:15 | EDIT | REPLY |   

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