FC2ブログ

plumeria

plumeria

「それじゃ今日はシャワーだけ浴びて早く寝ろ。足りない物は志乃さんに言えよ」
「だから普通の服ですって。こんなの着て過ごせません!」

「毎日着てれば着熟せるようになる。ゆったりした服は寸胴を作るだけだ」
「・・・・・・💢💢!」


悲しい夕食の後、私に使えと言った部屋を出ようとする時に言われた一言・・・あまりにも当たってたからムカついたけど言い返せなかった。両手をギュッと拳にしてみたけど、それを向ける訳にもいかない。
精一杯頑張って怒った顔を見せたけど、西門さんはクスクス笑うだけだった。


「図星だろ?じゃ、今日はここまで。お疲れさん!」
「・・・はっ!これで業務終了ってこと?」

「まぁな!」


そう言ってパタンとドアは閉められた。
これから毎日「今日はここまで」を待たないといけないんだ・・・そう思ったら全身の力が抜けた。



**



慣れない部屋で寝られないかと思ったのに爆睡・・・目が覚めたのは8時で、捻挫したことも忘れてベッドから飛び降りたらめっちゃ痛かった!いや、それどころじゃない!
急いでクローゼットの中から仕事用に出来そうなスーツを選んで着たけど・・・何故だかスカート丈が短い。その他のスーツも全部同じだった。

これも西門さんの好みか?とムカつきながら着替えてドアを開けたら、丁度志乃さんが朝食を持って来てくれた。
また朝から作法を言われるのかと思ったけど、意外にも珈琲とトーストで「9時前には秘書控え室に行って下さいね」とだけ言われて、お盆を置いて出ていった。


誰にも何も言われないご飯・・・昨日のお料理に比べたらすごく簡素なんだけど、最高に美味しかった♡



8時50分・・・ヒョコヒョコと歩いて秘書控え室に行ったら、もう堤さんは業務を開始していた。
真面目な顔でパソコンに向かい、カタカタと何かを打ち込んでいる。


「おはようございます・・・すみません、こんな格好で・・・」
「あぁ、おはようございます。昨日のことでしたら総二郎様から聞きました。どうぞ、こちらに座りなさい。本日の仕事について説明します」

「・・・はい」


包帯巻いてる姿を見ても動揺しないのか、堤さんはすごく冷静・・・私に対して無関心なのか、それともそう言う性格なのか?でも、やっぱり真面目な表情が格好いい・・・。
私は言われたデスクに向かい、そこの椅子に座ったけど仕事の緊張と言うより、堤さんに近いってことでドキドキしていた。


「大変でしたね。でも総二郎様の秘書になったのならこう言うことはこれからもあるかもしれません。特に相手が女性担当者の場合は気を付けて下さいね」

「は、はい。すみません、まさかこんな事になるなんて・・・」

「女性が秘書になることで総二郎様の精神的苦痛は軽減すると思うのですが、牧野さんにとってはその逆でしょう。体力も根性もないと務まりませんから、怪我が治ったらトレーニングでもして身体を鍛えたらいいですよ」

「は?私が・・・トレーニングですか?」

「冗談です」


・・・・・・・・・こんなにも冗談が冗談に聞こえない人も珍しいかも。
気を取り直して今日の西門さんの予定から確認した。

彼は午前中、都内の茶道教室に特別講師として出掛けて行き、午後も後援会の方に呼ばれてるから外出。私はまだ歩くには足を引き摺るから、本邸で茶道のことや西門流について勉強するように言われた。

講師は堤さん・・・資料を貰ったけど、私はその資料の間から彼の顔を見ていた。


「茶道表千家は茶道流派の一つ、千利休を祖とする千家の家督を継いだ千家流茶道の本家です。西門流はその中のひとつ、現お家元は15代目になられます。よって総二郎様が跡目を継がれましたら16代家元と言う訳ですね」

「そんなに・・・」
「昨日お渡しした西門流の歴史に目を通しましたか?」

「・・・申し訳ありません」

「あとで見ておくように。千利休没後、千家は2代千少庵、3代千宗旦と続きます。宗旦の三男である江岑宗左は宗旦の隠居に伴い継嗣として菴を継承し千家の直系を継いだ訳ですが、ここで宗旦の死後、千家の庵の裏に作りました新しい庵を四男の仙叟宗室が受け継いで独立し、裏千家となった訳です」


・・・・・・これはなんの授業だろう?
歴史・・・しかも殆ど世間に関係のない特殊な歴史の授業?何を言ってるのか、昨日の食事作法同様さっぱり・・・。

それよりも話す時の口元に目が行っちゃう・・・この人もなかなかいい声してる。
資料の文字はお経と同じで全然頭には入らないけど、彼の声だけ聞いてうっとりしてた。


「牧野さん、ページがズレています。もう次の18ページですけど」
「・・・はっ!ごめんなさい!」

「勤務中です。真面目に聞いてちゃんと覚えてください。お客様に尋ねられた時、総二郎様がご説明出来ない状況だったら秘書であるあなたの仕事ですよ」
「が、頑張ります!」

「それでは武者小路千家ですが、こちらは次男の千宗守が養子先から出戻ってきて、別に一家を起こしたものです。こうして表・裏・武者小路の三千家が成立した、判りましたか?」

「判りました!(要するに家庭内分裂・・・うちみたいなものでしょ?)」


この後も私は茶道についての勉強を、堤さんは真剣な顔をしてパソコンに向かってる。
時々掛かる電話は日本を代表する企業の誰かだったり、地方支部の支部長さんだったりで忙しそう。頭の中には家元のスケジュールが全部記憶されているのか、スラスラとその場で返事している姿に驚いた。

それに来月家元が九州に行くからって旅館の手配。
それが終わったら英語で何処かに電話・・・凄い!英語もペラペラなんだ?

それに驚いていたら、チラッと私の方を見て今の英会話の説明をしてくれた。


「九州の後にアメリカで茶道のデモンストレーションがあるのですよ。総二郎様も時々欧米でのお仕事があります。牧野さん、英語は?それか何か外国語は?」

「えっ?!いえ、日本語もままならないので・・・」

「・・・簡単でいいので挨拶程度は勉強しておいた方がいい。
家元は簡単な英語でしたらお話しになられますが、私が通訳に入ることもあります。総二郎様は数カ国語お話になれますから会話は困らないでしょうが、同じ場所に居る秘書が話せないのは格好が悪い。せめてパーティーなどで恥をかかない程度の英会話を覚えてください」

「・・・は?外国でパーティー?」

「招待される事が多いのです。少しずつでいいですが、私はそこまで面倒見られません。ご自分で勉強してください」


・・・・・・そこは「教えましょうか?」と、言って欲しかった。




***********************




「お帰りなさいませ、総二郎様」
「ただいま。志乃さん、牧野は?」

「牧野さんなら秘書控え室で堤さんに色々教えてもらってると思いますわ。午前中はそうするようにと言われたのは総二郎様では?」

「・・・いや、そうだけど」


秘書を付けたと言っても昨日から。
それまでは1人でやってたんだからどうって事はない。どうって事はないが、足は自然と秘書控え室に向かっていた。


事務所を通り過ぎて、もう少しで秘書控え室って所まで来たら、丁度堤と牧野が2人で出て来るのを見掛けた。
堤はいつもの表情だが、牧野は何故か真っ赤・・・両手を前で合わせて、ちょっと肩を竦めてやがった。

阿呆か!そんなポーズで可愛く見せようとしてんのか?
しかも堤が相手・・・先日変な男に手痛くフラれたばかりなのに、今度は堅物の男ってか?



「おい、まき・・・」

声を掛けようとしたのに言葉が止まった。
堤と向かい合って話してる時の顔・・・すげぇ嬉しそうに笑ってるように見えた。

昨日一日俺と居た間に見せなかった顔・・・まさか、本気で堤を?歳だってすげぇ離れてんのに?


2人は俺が近くまで来た事にも気が付かずに奥の資料室に向かった。
捻挫してるから堤が片方の腕で支えながら、牧野は堤の背中に手を回していた。それなのに回りに気付かれねぇようにとは思わないのか、思いっきり横の堤をガン見。
それにも驚いたが、胸の中にモヤッとしたものを感じて俺は向きを変えた。


「あぁ、総二郎さん。丁度良かったわ、午後の渡辺邸への手土産だけどね・・・」
「悪い。午後から至急で執筆の仕事が入った。渡辺邸へはお袋が行ってくれ」

「はっ?私が・・・ちょ、ちょっと待ちなさい!あなた、昨日までは自分が行くって言ってたじゃないの!」
「すげぇ急ぐんだ!頼んだぞ!」



・・・・・今日の午後は本邸に居座ってやる!





にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡

関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/09/19 (Thu) 14:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

ひえぇぇ~~~💦怖い想像していませんか?(笑)

堤さんは・・・変わり者だと思います。でもアッチじゃない(笑)
それはねぇ・・・私が書けない部類の話ですからねぇ~💦

このお話のつくしちゃん・・・男嫌いと言いつつ、落ち着いた大人の男性には興味があるようで(笑)
総ちゃんみたいな軽い男が一番ダメなのかもしれませんね!


あら!今、どっちの話もヤキモチ焼いてるみたい(笑)
類君も総ちゃんも頑張れ~~~!!

2019/09/19 (Thu) 19:35 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply