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それから暫くは西門邸に泊まり、午前中は殆ど秘書控え室で勉強。
堤さんが家元と出掛けることもあるから、その時には宿題みたいに資料を渡され、それを彼が戻って来たら覚えたかどうかの確認をされた。

と言っても彼は元々が秀才だから覚えるのも早かったんだろうけど、私は普通の頭なんだから専門用語が並ぶ資料はなかなか頭に入って来ない。


「写真を見ただけではピンと来ないのかもしれませんね。それではやり方を変えましょう」
「・・・はい」

そう言われて今度は資料館に行き、実物を見て茶道具の名前を覚えたり、茶事や茶会の映像を見て順番を覚えたり・・・それでも全然知らない世界に戸惑う。極普通の企業、村崎商事の研修はすっごく簡単だったと思えた。

でも確かに目の前で触れば少しは判る。
初めて聞く名前のお道具ばかりだったけど、実物と資料を見比べながら覚えていった。

お茶会の映像には西門さんも映ってる・・・その姿がこれまでの彼と一致しなくて不思議な感じさえした。
「見るのは総二郎様ではなくお茶会全体ですよ」、その堤さんの言葉で視線をモニター全体に変えたけど、最終的には西門さんを見てしまう。

茶道家・・・って、意外と格好いいのかも。



西門さんからは業務用だと言ってスマホを持たされたけど、これが鳴ったことはまだ1度も無い。
正確に言えば西門さん以外の人からは1度も無い・・・って事は、あのお嬢様たちは相変わらず西門さんに掛けているという事だ。絶対に私の存在は認めない、そういう意思表示なんだろうと思うとやっぱり気分は悪かった。

西門さんもお稽古をつけているお嬢様全員にこのスマホの電話番号を教えていると言ったけど、自分に掛け続けることに腹を立てて一切無視。
それで生徒さんが減らなければいいけど・・・って、そんな心配は無用だった。


成宮雪乃さんも先週と同じ時間、ちゃんとお稽古に現れた。
でも、出迎えたのが私だったから急に機嫌を悪くして、今日も綺麗にお化粧してる顔を引き攣らせていた。


「あなた、まだ居たの?なによ、その足・・・総二郎様の気を引こうとしてるの?」
「そんなんじゃありません。これは私の不注意で怪我しただけです。若宗匠は茶室でお待ちですのでどうぞお上がり下さい」

「あなたより私の方がこのお屋敷をよく知ってるのよ?案内は無用・・・お下がりなさい!」
「そう言う訳にはいきません。私の仕事ですから」

「・・・そう。じゃあ時間がないから急いでちょうだい。その足で出来るのかしら?」
「えっ、あっ・・・はい、判りました」


・・・そう言われたら意地でもやってやる!
あれから随分腫れも引いたんだから平気よ!そんな言葉を心の中で叫んで「こちらにどうぞ」と雪乃さんの前を歩いた。

捻挫の治りかけで速くは歩けない私だけど、雪乃さんだって着物で足袋なんだもの、そんなに速く歩けるはずはない・・・そう思ったのに意外と速かった!流石お嬢様・・・着物にも慣れているから急ぎ足だって余裕で出来るんだ?!
私は真後ろの気配を気にしながら痛む足で廊下を進み、1度曲がり角で力を入れたらガクン!と膝が緩んだ。

「どうかしたの?遅いんじゃなくて?」、なんて急かす雪乃さんに「申し訳ありません」とひと言・・・その後も意地になって西門さんの待つ茶室まで案内した。



「・・・若宗匠、成宮様がお見えです」
「入っていただきなさい」

「はい。成宮様、どうぞ・・・」

「失礼いたします。総二郎様~、ごきげんよう♡」


その声は何処から出るのよっ!!
足が・・・足が痛いっ!!もうーーーーっ!💢💢


茶室から少し離れた廊下の柱にしがみついて、足の痛みが引くのを待っていたけど余計にジンジンしてきた。
「こりゃ痛み止めを飲んで湿布を貼り替えないとダメか・・・」、なんて片足引き摺りながら歩いていたら、私の前方からやってきたのは志乃さん。
この様子を見るなり「また痛めたの?」って聞くから、今の事を話した。


「まぁ・・・そのようにお嬢様達の言葉を真に受けていたら怪我が治りませんよ?総二郎様の外出について行かないといけない立場なのに困ったこと」
「・・・申し訳ありません。あんな風に意地悪く言われるとつい・・・」

「お気持ちは判りますが上手に受け流さないと総二郎様の秘書は務まりません。早速次のお嬢様があなたをお呼びですわ」

「・・・・・・はい?」

「本日は総二郎様のお稽古日ではないのですが、あなたの噂を聞いて来られたのでしょう。
清水家のご令嬢、真凜様が秘書という女性に会わせて欲しいと仰って百合の間でお待ちです。後援会幹部のお嬢様で、W大在学中の才女ですわ。それに華道の師範免状をお持ちの方で、勿論総二郎様のお相手候補のお一人です」

「そのお嬢様が西門さんじゃなくて私に・・・どうしてでしょう?」

「それだけ総二郎様のお側に居る女性が気になるのでしょうね・・・まぁ、粗相のないようにご挨拶だけして下さいな」



その清水真凜さんにも散々言われた。

「あなたが?本当にあなたが総二郎様の秘書なの?大学はどちら?」
「・・・大学には行ってませんけど」

「何ですって?何かの間違いじゃないの?もしかして今まで海外でお過ごしだったの?」
「・・・日本から出たことがありませんけど」

「何を嗜んでいらっしゃるの?まさか茶道だけは完璧とか?」
「・・・茶道はこのお屋敷に来て初めて知りましたけど」


この後、高笑いしながら「心配して損しましたわ~」って帰っていった。
それでも「早くこのお屋敷から出て行くことね」と睨まれる『おまけ』つき・・・ムカムカしながら真凜さんの車が見えなくなるまで頭を下げていた。


これも仕事なのかしら・・・?💢💢


痛み止めを飲んで湿布を交換したらもう雪乃さんのお帰りの時間で、私は再び平然を装ってお見送りをした。
本日2回目の「早く出て行きなさいよ!」・・・その言葉、西門さんの前で言えばいいのに!💢💢




***********************




「え・・・牧野が?」

「はい。成宮様にキツく言われてムキになったらしいですわ。治りかけですのに無理して歩いてまた痛めたようですの」

雪乃の稽古が終わった後で志乃さんに聞いた事・・・それに驚いて片付けの手を止めた。
しかも今の稽古の最中には真凜が来て、牧野を嘲笑って帰ったと・・・そして今また雪乃を見送ったはず。

嫌な予感がして玄関に向かうとブスッとした顔で足を引き摺った牧野が戻って来た。
そして俺の顔を見るなり余計に眉を顰めて口をひん曲げ、如何にも「あんたのせいでしょ!」って言いたそうな顔をしていた。


「何か言われたのか?」
「いいえ、先週と同じ言葉だけですよ!早く出ていけって・・・やれやれです!」

「くくっ、そんな顔で見送ったのか?」
「まさか!ちゃーんと失礼のないように見送りました!だって仕事ですもん・・・腹が立っても、これもお給料の一部ですから!」


見送り用に準備してある履き物を下駄箱に戻してから壁に手をついて上り框に足を置き、そこで痛そうに捻挫した足を摩っていた。
そして目の前の俺を通り過ぎて秘書控え室に向かおうとしたから、壁につけてる手をとってひょいっと持ち上げた。


「えっ?!はっ・・・ちょっと!大丈夫ですから!」
「暴れるな。落とすぞ」

「いや、勝手に持ち上げて落とすなんて言わないで下さいよっ!やだっ・・・人が見るから!」
「別にいいだろ。秘書なんだし」

「何処の世界に秘書を抱っこして普通だって言う人がいるんですか!歩けるんだってばっ!」
「喧しい!!早く治さねぇと俺が困るだろうが!いいから黙ってろ!」


「・・・・・・・・・自分のため?」
「当たり前だ」


早く治さねぇと俺が困る・・・もうそんなに本邸でやる仕事がねぇんだから。
出先の仕事を親父とお袋に回すのもそろそろ限界だし。


俺が自分の為だと言ったからなのか、牧野はブスくれたまま腕の中にいた。
何度か「もういいから」って言うのを無視。黙って秘書控え室に向かっていたら反対側から堤がやってきた。


「・・・牧野さん、どうしたんですか?また怪我ですか?」
「あっ、堤さん・・・いえ、これは・・・何でもないです!西門さんが過保護で・・・!」

「過保護・・・あぁ、そう言う事ですか」
「そ、そそ、そうなんです!いいって言うのにこんな・・・」


また堤を見て過剰反応・・・まさか、こいつ本気か?
それまでブスくれていた顔を真っ赤にさせて、乙女チックに片手で口元まで隠して、堤とは反対側に顔を向けた。「西門さんの馬鹿!」って小さな声で言われて、まるで俺が悪いみたいじゃね?

雪乃の言葉に乗せられて、ムキになって足を痛めたクセに!


玄関からここまで俺には見せなかった顔・・・・・・マジ、むかつく!





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2019/09/21 (Sat) 12:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは!

ははは!第3の女で終わればいいですけど(笑)
これは総ちゃんですから仕方ないですね~。本人にはその気がなくても寄って来たら営業スマイル、そんな感じでしょう。
それも必要以上に振りまく色気・・・罪な男ですから。

確かにつくしちゃん、可哀想ですよね(笑)
総ちゃんにしっかり守っていただかなくては💦


コメント、ありがとうございました♡

2019/09/21 (Sat) 23:09 | EDIT | REPLY |   

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