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もう1度痛めたかと心配した足も然程酷くならず、その週の金曜日には何とか普通に歩けるようになった。
だから今日の業務終了後、西門邸のお部屋から出て自分のアパートに戻ることにした。

今週の土日はお休みだと言われたから自分の部屋でゆっくり出来る・・・それにやたら露出の高い部屋着から解放されてスエット上下の自分に戻れるかと思うと嬉しい♡
残念なのは来週から西門さんが外出する時には同行するから堤さんとの時間が減っちゃう・・・でも、それも仕方ないと目の前に座っている彼の顔を見ていた。


「・・・ではそろそろ家元が外出されるので準備に入ります。牧野さん、総二郎様の午後の予定は?」
「今日は午後1番に生徒さんのお稽古があって、その後は京都支部の支部長さんがお見えになるそうです。その方と夕食をご一緒にすると言われてましたよ」

「牧野さんもその席に?」
「いえ、私は入りません。その前に業務が終わるのでは無いかと・・・」

「夕食が絡む時はその確認をちゃんとしておくように。本邸以外の場所ですと付き添いはするでしょうが、本邸内の食事の場合、職務を離れていいのか食事が終わるまで待った方がいいのかを判断をしなくてはなりません。帰る時には必ず総二郎様の許可をもらって下さいね」

「判りました」


静かに席を立ち、何かの書類を鞄にしまって堤さんは外出の支度をした。
必ず出る前には鏡で全身をチェック、小道具も再度確認。虫刺されの薬に目薬と頭痛薬、男性だけどソーイングセット、それに絆創膏と手鏡。
ハンドクリームも小さめの物を入れてるし、意外な所ではミストまで。乾燥した場所では役に立つのだとか。
それに歯磨きセットと小さな本。同行と言っても控え室で待つこともあり、本を持っていれば時間が潰せるのだそうだ。

でも漫画本じゃないのが流石・・・経済に関する本だった。


それにシステム手帳。
それには書き込んでいいものといけないものがあると言われた。

「牧野さんの場合、総二郎様は殆どご自分でスケジュールを管理されていますから問題はないと思います。家元はあまりパソコンをされませんので私が管理するだけです。
でも自分でも把握しないといけませんからパソコンで管理するか、手帳を使うかは総二郎様とお話したらいいですよ。でも手帳の場合、絶対に相手のフルネームを書いてはいけません。もしも紛失した時にプライバシーに関わるような事を書いていて、そこにフルネームがあったら大問題ですからね」

「判りました。自分にだけ判るようにメモすればいいのですね?」

「そうです。自分で持って歩く物は相手によっても変わります。総二郎様ならこれを持っていた方がいいと思う物があれば携帯するといいですよ」


西門さんなら持っていた方がいいもの・・・防犯ブザーとか?
勿論被害に遭うのは私で、相手は・・・いや、考えるのは止めよう。


最後に言われたのは身だしなみの中でも特に気を付けるもの・・・それは靴だそうだ。汚れがないか、かかとがすり減っていないかを毎日チェックすること。
それと前から見た姿ではなく「後ろ姿」、この2つを注意するように言われた。


「それでは行ってきます」
「行ってらっしゃい」


やだ・・・2人だけの部屋でこんな言葉を出したら新婚さんみたいじゃない?
堤さんは私の事なんて振り向きもしないのに、1人で真っ赤になって見送った。




***********************




「それでは私はこれから軽井沢での会合に向かうからな。夕方来る京都の連中を任せたぞ。母さんも婦人部の旅行で今日は居ないし、志乃さんも同行してるから何かと不自由だろうがな」

「あぁ、別に問題ねぇよ。親父の帰りは?遅いのか?」

「遅くなったら向こうに宿を取る。堤、宿の仮押さえは出来ておるな??」
「はい。いつもの旅館を手配してありますのでご心配はいりません。では、お車を回してきます」


・・・・・・相変わらず無愛想だが仕事は出来る男。
堤は俺にも軽く一礼して裏口に回った。親父は正面玄関から出るから数人の弟子が付き添って見送り・・・俺はその様子を部屋の中から眺めていた。

これが牧野だったら俺達は間違いなく野宿だろうな・・・そんな事を考えながら。


堤も出て行ったと言うことは牧野が秘書控え室に1人・・・今から昼飯だけど俺も1人。
それならって事で声を掛けてやろうと部屋に向かった。


コンコン・・・

ノックをしたが返事がない。
トイレにでも行ってんのかと思ってドアを開けると、牧野は半分背中を向けた状態でちゃんと椅子に座っていた。
でも入り口に顔を向けないところを見ると、何かに夢中になってるようだ。だから足音を消して静かに真後ろまで行ってみれば、鏡を覗き込んでニタニタ笑っていた。

マジ、気持ち悪い・・・何してんだ?こいつ。


もっと近づいて牧野が覗いている鏡に俺が映るようにしてみたら、そこに映った俺を見て驚いた顔をした。


「きゃああぁーっ!なんで真後ろに居るのよっ!!」

「いや、ちゃんとノックしたし。お前が返事しないから開けて入ったんだろうが」
「それなら先に声掛けなさいよ!驚くじゃないのっ!」

「驚いたのはこっちだろう。ノックしたのに部屋に居て鏡見て笑ってんだから。何してたんだ?」
「はっ?!えっ・・・いや、その・・・え、笑顔の練習?」


秘書にそこまでの笑顔が必要か?
どっちかって言うと真面目な表情で仕事してくれた方が牧野の場合はいいんじゃね?笑うと子供にしか見えねぇし。
それにホステスじゃねぇんだから愛矯振りまかなくてもいいんだけど。

そんな事するぐらいなら机の端に避けられてる茶道の教本とか西門流の歴史の資料を読めばいいのに。


「堤がそんな事しろって?」
「え?ううん、堤さんはそんな事言いませんけど・・・」

「・・・・・・・・・」

だからなんでそこで赤くなる?
堤の名前出しただけでそうなるってのか・・・?まさか堤に見せる笑顔の練習・・・・・・?


「・・・今から昼飯だろ?本邸には親父もお袋も居ねえし、向こうで一緒に・・・」
「結構です。私、ここで1人で食べます!厨房の人がご丁寧にお弁当にして持って来て下さるんですよ、だからここで!!」

「・・・随分即答だな」
「だって西門さんと食べても食べた気がしないんですもん。まだマナーを覚えてないのでご遠慮します」

「・・・・・・勝手にしろ!午後1時にはお嬢が来るから俺の茶室まで案内だ。判ったな!」
「判ってます。ちゃんとご案内しますから大丈夫です!」


さっきまでの笑顔の練習は何処に消えたんだ?
俺には「ケダモノ」見るみたいな目付きしやがって・・・!




************************




「あら、まだ居たの?早く出て行きなさいと申し上げましたのに。日本語がお判りにならないの?」


午後1番のお稽古がこの人だったとは・・・。

先日私を見て高笑いした清水真凜さん・・・彼女が午後1番の生徒さんだった。
雪乃さんに見劣りしない着物と美貌、それに後援会幹部のお嬢さんだっけ?可愛らしい顔だけどプライドも一級品みたい・・・今日も玄関で正座して出迎えた私を蔑むような目で見下していた。


「ホント、総二郎様も物好きでいらっしゃること。こんな並以下の女を秘書に選ばれるなんて」
「・・・ご案内致します。こちらにどうぞ」

「あなたに案内されなくても判ります。私の前を歩くなんて図々しい。お下がりなさい!」

雪乃さんと台詞まで一緒・・・打ち合わせでもしてるのかと思うぐらい態度も言葉遣いも同じで呆れてしまった。
でもこれも仕事仕事!イチイチ頭に来ても仕方ない。志乃さんにだって上手に受け流しなさいって言われたし。

「申し訳ありませんがこれは若宗匠のお言い付けですから」

「・・・・・・偉そうに!」
「・・・・・・(どっちが!💢)」


悪いけどそう言うくだらない偏見に負けるような私じゃないんだから。
並以下ですって?その基準は何処にあるってのよ!W大のお嬢様かもしれないけど、社会に出たらそんなプライド、持ってても全然役に立たないから!
お花畑の中でしか威張ることが出来ないお嬢様に、雑草の強さを教えてあげようじゃないの!

・・・と強がってはみたものの、つまりは辞められないってことで。
真後ろからの殺気にほんの少しだけビビりながら西門さんのお茶室まで案内した。



「若宗匠、清水様がお見えです」
「・・・入っていただきなさい」

「・・・はい」


あれ?何だか今の声、凄く不機嫌じゃなかった?
これまでもっと穏やかに返事していたと思うのに、急に低めの無愛想な声だったから驚いた。
でも理由なんて聞けるわけでもないし、後ろには怖い顔した真凜さんが小さな声で「早くしてよ!」って・・・だから、障子を開けて彼女を茶室に通した。


「総二郎様、ごきげんよう~。本日も良いお天気でございますわねぇ~♡」
「そうですか?天気まで見ていませんでした。どうぞ、お座り下さい」

「・・・は?・・・総二郎様?」
「どうしました?お稽古を始めます。では帛紗のご用意を」

「えっ?は、はい!」
「茶室で大きな声はお出しになりませんように。静かにお願い致します」


・・・・・・・・・・・・ぷっ!なに怒ってんのかしら。でも、ちょっとすっきりしたわ♡
その場でちょっとだけニヤけてしまったら・・・


「牧野、いつまでそこに居る!稽古の邪魔だ!!」
「・・・・・・はい」


何よ!お茶室では大きな声出さないんじゃなかったの?!





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2019/09/22 (Sun) 16:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

まさに今、台風が来ております(笑)
結構風が煩いですねぇ~💦どうやらこの状態が0時頃まで続くようです。
取り敢えず類君のチェックが終わったので一安心(笑)

このお話の総ちゃんはちょっとお子ちゃまですね(笑)
今までクールな総ちゃんだったので、こんな感じの幼い総ちゃんを書きたかったんですよね(笑)

でも268話もシリアス書いていたので、中々コメディになりません💦ホント、リハビリ中です・・・。

2019/09/22 (Sun) 20:10 | EDIT | REPLY |   

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