FC2ブログ

plumeria

plumeria

清水真凜・・・耳障りな甲高い声で喋りやがって鬱陶しい。
俺が機嫌悪く言葉を出したもんだから初めのうちシュンとしていたが、暫くしたらいつもの笑顔に戻った。

そして小指を立てながらの帛紗捌き・・・もう注意する気にもならなかった。


そう言えばこいつも牧野の事で嫌がらせをしに来たと言ってたな。
目の前でやたらクネクネしながら茶を点てる真凜の手元を見ながらムカついていた。

茶の稽古をなんだと思ってるのか・・・。


着物で来てるのはいいが派手すぎる柄。しかも濃いピンクのネイルにラインストーンまで付けているが完全に茶席ではアウトだろう。その小さな石でも茶碗に傷が入るかもしれねぇのに。
そしてキツくはないがフレグランスを付けてる・・・しかもフローラル系の甘いヤツ。
それも茶の香りを邪魔するからダメだと何度も言ってるのに聞きゃあしない。W大在学中って言うが、実は頭悪いんじゃね?

濃すぎる口紅も茶碗を汚すだけ、髪飾りも付け過ぎ、そして何より姿勢が悪い。胸を強調したいのか突き出し過ぎてるし、着付師の腕を疑うほど胸が帯に乗ってる・・・悪いがそれにエロさは全然感じねぇ。むしろ目を逸らせたいぐらいだ。

いや、稽古にエロさを求めてる訳じゃねぇけど・・・。


胸はいいとして、総てにおいて俺の稽古を真面目に受けているとは思えない。
それに笑い過ぎ・・・そこまでニヤニヤしながら茶を点てるなっつーの、遊びじゃねぇんだから!

その時、牧野が鏡を見ながらニヤニヤしていたのを思い出した。
女がニヤニヤする時ってどんな時だ?買い物をする時、食い物を見た時・・・気になる男が目の前に居る時・・・?


「総二郎様、お抹茶の量はこれで良かったですか?」
「・・・・・・いいんじゃないですか」

「総二郎様、お湯はこのぐらいですか?熱くないかしら」
「・・・・・・いいんじゃないですか」

「総二郎様、茶筅の回し具合、このぐらいで宜しいのかしら?」
「・・・・・・いいんじゃないですか」

「総二郎様、お味見、宜しくお願いします~」


そう言われて真凜の茶を飲んで・・・慌てて口元を押さえた!どれだけ抹茶を入れたんだ?!
こんなの飲めねぇだろうがっ!しかも熱湯じゃね?!


「・・・・・・コホ、真凜さん、大変失礼致しました。結構なお点前でしたが、もう少し抹茶の量を少なめが宜しいかと思います」
「はい!判りました~。今度はそのように~」

「・・・コホ・・・はい、それでは本日はここまで」
「ありがとうございました~」


語尾を伸ばすなって何度言えば判るんだ!・・・って俺が反応するのを待ってるんだろうから無視。
茶室にあるワイヤレスチャイムを押して事務所と秘書控え室に稽古が終わったことを知らせ、暫くしたら足音が聞こえて牧野が廊下に現れた。

「清水様のお帰りだ」、そう言うと静かに障子が開けられて真凜が部屋を出る・・・今度はそれを牧野が玄関で見送る。


「それではまた来週お待ちしています。変更などございましたら牧野にお願い致しますね」
「・・・・・・変更など致しませんわ。ありがとうございました、総二郎様~」

「・・・気を付けてお帰り下さい」


真凜が茶室を出る時に牧野に向けた目は俺の前では絶対に見せないもの。
まさか今日も暴言吐いて帰る気じゃねぇだろうな?と、2人が出ていった後、少し間を開けて玄関に向かった。


そうしたら玄関に正座している牧野と、それを見下ろす真凜を見てしまった。
そして真凜から出てきた言葉は・・・

「あなたに出迎えられたり見送られるのなんて不愉快だわ。さっさとお辞めなさいよ・・・場違いって判らないの?」
「ですから何度も申し上げておりますように私はここで働いてるだけです。場違いと言われましても・・・」

「私は西門家に似合うようにと自分を磨いてきたの。あなたみたいになんの努力もしてないような女にこの家に入られるのは許せないのよ!しかも総二郎様のお側に!」
「なんの努力もしてない?・・・それは言い過ぎじゃありませんか?」


「・・・何よ、私に楯突く気なの?」

「楯突く気なんてありませんが、反論はさせていただきます!」


正座していた牧野が立ち上がった。
くくっ・・・面白ぇ。真凜に何を言う気だ?と、すぐ近くまで来ておきながら姿を隠して2人の会話を聞くことにした。

真凜も牧野が立ち上がったからビクッとしてる。
あいつはマジで甘えん坊の箱入り娘だから、誰かに言い返された事なんてないだろう。自分は何を言っても許されると思ってる我儘なお嬢だからな。


「確かに私の家は苦しくて買いたいものも買えなかったから、このお屋敷には場違いと言われればそうかもしれません。
でも、そういう環境だったから子供の時から家事全般こなしてきました。ちょっとしかない食材でも工夫してご飯を作ることは出来るし、小学生の時から買い物係は私だったわ。僅かな食費でどうやって沢山のものを買うか、毎日やりくりして大変だった・・・中学生の時からはアルバイトもやって家計の足しにして来ました!
高校までしかいけなかったけど、凄く勉強して社会に出たんです。それを美容とお洒落にだけお金掛けてるあなたに努力してないなんて言われたくありません!」

「馬鹿じゃないの?貧乏人だって自分で言ってるの?」

「貧乏の何処が悪いんですか?世間に恥じるような事はしていません!ちょっと要領の悪い両親の元に生まれたってだけでしょ?真凜さんだってたまたまお金持ちの家に生まれたってだけです!」

「なんですって?生意気な・・・総二郎様に頼んであんたなんか速効クビにしてやるわ!」



・・・・・・いつからそんな立場になったやら。
これ以上騒ぐと弟子達に気が付かれて噂が広がる。丁度両親も堤も志乃さんも居ないんだから、さっさと真凜を帰してしまおうと玄関に姿を見せた。

俺を見てビクッとしたのは牧野で、真凜は急に目に涙を浮かべて泣き出し、俺に縋りついてきた。
大したもんだ・・・嘘泣きで涙まで出せる技。


「総二郎様!牧野さんが・・・牧野さんが私に酷い事を言うんです・・・もう、悲しくて真凜、立ち直れない!」

そう言って俺の着物に化粧をつけるなっての!お前の口紅がついたら落ちねぇだろうが!
身体の真横に落とした腕は真凜を抱き締めたりはしない。暫く俺に抱きついていたけど、そう言う行動に移さなかったからなのか、彼女は嘘泣き顔のまま俺を見上げた。
「あれ?」って小さな声が漏れ聞こえたのには笑えたが、俺も無表情のまま・・・そうしたら真凜は身体を離して余計に悲しそうな顔を作った。


「聞いて下さいませ、総二郎様!この人、真凜の事をたまたま裕福な家に生まれた世間知らずだって言うんです!」
「ちょっと!そんな言葉は出してませんけど!」

「私、そんな事言われたの初めてで・・・確かに世間知らずかもしれませんけど、総二郎様に似合う女性になろうと頑張ってきましたのに・・・」

「だから誰もそんな!」
「牧野、黙ってろ!」


その言葉に真凜がニヤッとしたのを見逃す訳がない。
で、牧野の方は眉をひん曲げて何か言いたそうなのに止めたもんだから、口をへの字にして俺を睨みつけた。

・・・お前の敵は俺じゃねぇだろうに!


「総二郎様、お願いですわ。この人を秘書になどなさらないで下さいませ。そうじゃないと私、こちらにお稽古に来る事が出来ません!」

「・・・そうですか。それでは本日で稽古は終了と言う事ですね?」

「は?いえ、そうじゃなくて・・・」

「申し訳ないが、会話は総て聞かせていただきましたよ」

「・・・・・・えっ?!」

「牧野は私が選んだ秘書なのですよ。それなのに場違いとは?それに何故あなたが西門家に似合うようにと努力されるのでしょう?そんな事を考えずに自分自身の為に磨きを掛けられたら宜しいのでは?あなたほどの美しさならそれに引っ掛かる男は沢山居ると思いますよ?
私に言わせれば家の優劣で個人の評価をするようなお考えのあなたこそ、この屋敷に出入りすることは許せませんが」


この言葉で一気に表情を変え、俺にまで鋭い目を向けやがった。
こいつこそ俺を容姿と家柄で選んで中身を見ないヤツ・・・連れて歩くのには丁度いいと思ってるだけ。そして俺の横を歩いても自分なら見劣りしないと思ってる、それは雪乃も同じだろうけど。

遊びの女はこの屋敷には入らないから安心していたんだろうが、いきなり現れた牧野には徹底攻撃か。



「・・・総二郎様、清水家は後援会の幹部ですのよ?それなのに敵にお回しになるの?」

「敵だなどと思っておりませんよ。後援会の脱退でしたら構いません、いつでもそちらのご自由になさって下さい。
ですが逆にこの西門を敵に回す覚悟がありますかね・・・お父上とよくご相談なさい。そして2度と私のした事に口出ししないと言われるのでしたら来週も稽古にいらっしゃい」

「・・・総二郎様はこの人の味方ってこと?」

「味方も何も私の秘書ですから。牧野、真凜さんを門前までお見送りしろ」


真凜はこの後「見送りなど結構です!」と言って、1人で玄関を出て行った。
牧野は慌てて靴を履いたけど自分の目の前で扉をピシャリと閉められ呆然・・・俺の方を振り向いた。


「ちょっと!どうするんですか?帰っちゃいましたよ?怒ってますよ?」
「いいんじゃね?多分父親には何も言わねぇと思うから。言われたとしても清水家がうちに刃向かったりしねぇよ」

「は?ホントに?でも・・・」
「阿呆か!お前が散々罵られたんだろうよ。いいから次の準備に取り掛かれ。もうすぐ京都の連中が来るぞ」

「はっ、そうだった!」
「志乃さんがいないから厨房で料理の確認、西村さんと手土産の確認、大広間の席順の確認、車とホテルの確認、やることは多いけど?」

「ひゃああーっ!行ってきます~!!」
「転けるなよ!」




『確かに私の家は貧乏で苦しくて、子供の時から家事全般こなしてきました。小学生の時から買い物係は私だったわ。僅かな食費でどうやって沢山のものを買うか、毎日やりくりして大変だった』


・・・・・・だから玉子を割った時にあれだけ怒ってたのか。
あの時、不満を小石にぶつけて蹴り飛ばした自分はすげぇガキだったんだと思えた。






にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
にほんブログ村
応援、宜しくお願い致します♡

関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/09/23 (Mon) 15:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

こちらにもいつもコメントありがとうございます。

これもお仕事と思って割り切ってるんでしょうね。そう言う生徒さんは教える方も注意をしなくなるんだそうです。

バレエの先生もよくそう言ってました(笑)

レッスン中に真剣じゃない生徒には注意はせずに「いいでしょう」で終わるんですって。
何度も何度も厳しく言われるのは幸せな事だそうです。
「先生は私には酷い!」って泣く子が多かったですが、それは愛情なんですよね。

総ちゃんの愛情は・・・ちょっと違うかもしれませんが💦


今日はめっちゃ静かで鈴虫の声が綺麗です・・・なんか癒やされる~♡

2019/09/23 (Mon) 21:53 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply