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面白くもない宴会が続いていたが俺は酒を飲まなかった。
「少し体調が悪いので」なんて言いながらノンアルコールだけ少し口にする程度。京都の爺さん達は「本邸ですので宜しかろう」なんて言うが、それを頑として受けなかった。

「私達だけ飲むなんて・・・そりゃ面白うない言うもんですわ、若宗匠」
「申し訳ありません。実は明日も大事な用がありまして、これ以上具合を悪く出来ないのです。でも宴席は楽しんでおりますので皆様は遠慮なく飲んで下さい。宿泊先も用意してありますので大丈夫ですよ」

「大事な用、ですか?まさか良いお人でも?京都にはそんな噂は来ておりませんが?」

「いえ、そのような事ではありません。仕事の一部・・・そんな感じですから」


イチイチ人の予定を聞くなっての!
慰安旅行気分で東京に遊びに来て、ここにはついでに寄っただけのクセに・・・。
しかも隙あらば昔みたいに宗家を京都に移そうと提案ばかりしてくる連中なのに鬱陶しい!

そんな爺さん達に適当な言葉で酒を勧めて酔わせ、世間話の相手をしていた。


その時、ジッと俺を睨む目に視線を向けた。
間島支部長の孫・・・間島剛。ここに入った時から仏頂面だったから判ってはいたが、相変わらず宗家に対して歪んだ感情を持ってるのか愛想もクソもない。
そんな顔見せるぐらいなら来なきゃいいのに、と思うのに末席から1歩も動かず、誰とも話さずに酒を飲み、飯を食っていた。


「ほら!剛、お前も総二郎さんに酒を注ぎに来んかい!そんな隅っこで無愛想せんで!」
「・・・・・・・・・」

「いえ、間島支部長。私は酒と言ってもアルコールではないので気を使わなくて結構ですから」

「いやいや、そこまで頻繁に会う訳やないんやから、こういう時には会話のひとつもせんといけませんのや。総二郎さんのお婆様の妹が剛の婆様、まぁ儂の家内ですが、そういう縁もありますからなぁ」


それはそうだがあんな顔で近寄られてもムカつくだけ。でも、祖父である支部長の言葉に逆らえなかったのか、剛は俺の前に来てノンアルの瓶を差し出した。
それでも無言・・・それならって事で俺も黙ってグラスを出した。

「何か喋らんか!」、また横から言われて渋々出した言葉が・・・


「牧野さんと言う秘書・・・何歳なのですか?昔からのお知り合いなのですか?」
「・・・・・・は?牧野・・・ですか?」

「えぇ、牧野さん。随分お若く見えましたから秘書なんて務まるのかな、と思っただけです」
「あぁ、そう言う意味ですか。それなら彼女は23歳で、私より1歳年下です。秘書としての勤務経験がない上に茶道の心得もありませんが、それが何か?」

「・・・そのような人を秘書に?またどうして?」
「家元から適当な人間をつけろと言われておりましたのでそうしたまで。特別な理由などありません」

「適当な人間だったんですか?」
「・・・ 適当の意味はある条件・目的にうまく当て嵌まることです。つまり程度などが程良いこと・・・そう言う意味で適当です。いい加減に選んだわけではありませんが、何か?」

「・・・何方か決まった人が居るのでしょうか?」
「さぁ、プライベートなど知りませんね。でも知っていたとしてそれを説明しなくてはなりませんか?あなたになんの関係がありましょう」


俺に絡む女が聞いてくるのは想定していたが、なんでこいつまで聞く?!それにムカついて少々声が大きくなったら慌てて支部長が剛を俺の前から引き離した。
そして「気を悪うせんといて下さい、無愛想な子でして・・・」って、判ってるなら初めっから呼ぶな!

それに何故俺の前でする話が牧野なんだ?!
まさかこいつ・・・牧野に一目惚れとか言わねぇよな?


あんな女に一目惚れするヤツなんてこの世に居るのか・・・・・・・・・いや、居るかも。




*************************




結局西門さんとは何も話せないまま時間が過ぎていった。
もう午後8時・・・勿論真っ暗。

はぁ、と溜息をつきながら宴会が続いている大広間が見える廊下で部屋の灯りを見ていたら、誰かが出てきたのが判った。

その体型からしてお爺ちゃんじゃない。あれだけ背が高いってことはもしかしたら剛さんって人かしら。
西門にあまり良い感情を持ってないって言う京都支部長のお孫さん・・・それなら隠れた方が良いのかな、って思った時にはその人が近くまで来ていた。


やっぱり剛さんだった。でも、この距離で無視する訳にもいかない。
だから廊下の端に避けて頭を下げ、通り過ぎるのを待とうとしたら・・・また目の前で足が止まった?

驚いて見上げたら、来た時と同じように私をジッと見ている。


「あんた・・・牧野さんだったよね?」
「はい、そうです。牧野ですが・・・」

「西門には関係無いって聞いたけど本当?」
「は?関係無い・・・そうですね、私の勤務先ですので関係無いとまでは言いませんが・・・何か?」

「総二郎さんのこと、どう思ってる?」
「・・・・・・は?」


総二郎さんって・・・西門さんの事をどう思ってるかって?

そんなの馬鹿正直に言える訳ないでしょ!
女ったらしで常に発情してるような男で、ナルシストで強引。俺様的発言で意地悪で・・・でもまぁ、少しは優しいところもある掴めそうで掴めない人だけど?


「どうって言われましても、まだ働き始めてそんなに経っていませんから判りません。お仕事は真面目な人・・・だとは思いますけど、プライベートなんかは知りませんから」

「プライベートは知らないの?」
「秘書だからって総てを晒してるわけではないと思いますし、私も踏み込もうとは思いません。どうしてそんなことを聞くんですか?」

「・・・・・・いや、何でもない。でも総二郎さんの言う事をあんまり信用しない方がいいと思うよ。ただ、それだけ・・・」

「・・・はい?」


それだけ言うと剛さんはトイレに向かった。
私はその後ろ姿を見ていたけど、何故か気持ち悪くなって秘書控え室に戻った。


西門さんの事を信用するな?
確かに信頼関係ってのはまだないかもしれないけど、それをこの人に言われるってどういう事?
変な人・・・何で私にそんなことを話すんだろう。西門さんの秘書だって判ってるんだから、今の話が彼に伝わるかもしれないのに・・・。


部屋に戻ったらすぐに鳴った私の業務用スマホ。
こんな時間に誰が掛けてきたのかと思ったら・・・堤さんだった!

途端に頬が熱くなる・・・今まで夜に電話なんてなかったのに?それに堤さん、家元に同行して軽井沢じゃなかった?
まさか、このスマホに掛けてきたけど・・・プライベートな内容だったらどうしよう~!!

・・・・・・って、そんな事がある訳無いか。


「も・・・もしもし、牧野です」
『・・・堤です。ちゃんと帰れました?電話に出るのが遅かったから』

「いえ、まだ本邸です。実は西門さんに帰っていいのか聞けなくて・・・それでまだ待機中なんです」
『あぁ、そうだったんですね。どうですか?宴席は穏やかですか?問題は起きてないですか?』

「問題は・・・」


私はここで剛さんの話を堤さんにしてみた。
どうしてそんなことを言われたのか判らないと・・・そうしたら堤さんも驚いていたようだけど、その話は西門さんの耳に入れないようにと言われた。


「西門さんに話しちゃダメなんですか?」

『伝えるべき事と控えておいた方がいい内容があると言ったでしょう?恐らく今の話は控えておいた方がいい類いのものです。
剛さんは総二郎様が感情的になって騒ぎ出すのを待ってるんですよ』

「は?騒ぎを起こすのを待つ?どう言う意味ですか?」

『西村さんから聞いたとおりです。剛さんも間島さんもどちらかと言うと京都本邸を望んでいる人達で、家元のご兄弟がいらっしゃる関西西門・・・つまり京都に宗家を戻したいのです。
その為に東京の宗家でゴタゴタを起こし、次期家元がその立場に不適格だと思わせたい・・・そう言う意図があるのかもしれません。どちらにしても総二郎様のお心を乱すようなお話しは秘書のあなたで止めるのです。判りましたか?』

「はい、判りました」

『それでは私は家元がこちらでお泊まりになられるそうなので、明日東京に戻ります。牧野さんも今日はご自分のアパートに戻るのでしたね?土日は総二郎様も仕事が入って無いようなので、しっかり休んで来週からの業務に備えて下さい』

「はい!ご相談に乗って頂き、ありがとうございました!」

「・・・おやすみなさい」
「おやすみなさい!」


やっぱりオトナだわ・・・♡
電話を切った後も真っ暗な画面をいつまでも覗いてニヤニヤの私・・・耳にはまだ堤さんの声が残っていた。





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Comments 4

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2019/09/25 (Wed) 12:50 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/25 (Wed) 14:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

ははは!恋かどうかは判りませんよ?
このつくしちゃん、恋愛音痴の設定なんで、まだよく判ってないって感じじゃないですか?

それを総ちゃんが変えなきゃねぇ・・・(笑)
変える前にそんな事しちゃダメだよね~(笑)セクハラ通り越して強○になっちゃうよね💦

怖い怖い・・・なんて事言うんでしょ!


は?今夜・・・・・・・・・何かあるっけ?(笑)もしかしたらバッくれるかもよ?

2019/09/25 (Wed) 15:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

ふふふ、総ちゃんが飲まない理由は・・・もう少ししたら判りますよ~♡
でもノンアルコールってどうなんだろう?私は飲んだことないのですが、美味しいのかしら・・・。

最近やたらノンアル飲む人が増えたような気がするんですけどね~。
私は最近全然飲まないので、逆に飲めなくなりました。昔はウィスキーも日本酒もビールもなんでも飲めたのに~。


間島君・・・ふふふ、忘れずに覚えてて下さいね(笑)
何かするかもです・・・。

2019/09/25 (Wed) 16:29 | EDIT | REPLY |   

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