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夕方近くになって、漸く牧野は教習所での運転を思い出したようで、なんとか走れるようにはなった。

滑らかな発進、穏やかな停車はイマイチだが、問題はこの車以外が走ってる一般道路で冷静に運転出来るかだ。
この田舎道を走らせてみるかどうか・・・それを悩むこと30分。牧野はその間暢気にベンチに座り、俺が買い出しに行って選んできたジュースやら菓子やらを食っていた。


「・・・・・・どうするかな」
「もう帰るの?うん、今から帰っても暗くなってるよね~」

「運転だっつーの・・・」
「あぁ、もう少し勘が戻ったら事故らずに運転出来ると思うわ。初めは怖かったけど」

「怖いのはこれからかもしれねぇけど・・・」
「そうなの?まぁ、あんまり悩まずにお菓子食べたら?考え事する時、脳に糖分が必要だって言うじゃない?」

「アホか!今からお前に途中まで運転させて帰るんだよ!」
「へぇ~、そうなん・・・・・・はっ?!


右手に菓子、左手にジュースを持った牧野が硬直。

でも、こうでもしないと平日公道を走る事が出来るかどうかだ。仕事中に運転教習はヤバすぎるし、まずは諏訪から中央道に入る手前まで運転させて様子をみるか。
流石に今日、都内の道路を事故らずに走れってのは無謀だろう・・・それに思ったよりこの車がヤバかった。牧野と車の相性が悪いのか距離感がイマイチ掴みにくいのか。

それとも高速道路なら取り敢えず走るだけ・・・俺が助手席に居て指示を出せば何とか・・・・・・なるだろうか。
すげぇ恐怖だけど、やるっきゃないか?猛スピード出さなきゃ他の車が避けてくれるだろう。

まだ唖然としてる牧野に今の話を伝えて車に戻った。


「ほんとに?大丈夫かなっ?!」
「大丈夫だろう。最後は俺のアドバイス無しでコース一周したんだし」

「う、うん・・・記憶は蘇って来たんだけど・・・」
「それを速効忘れなければな。俺がついてるから万が一の時は代わってやるし、運転するのはそこまで長距離じゃないって」


牧野を運転席に座らせて、俺は助手席ですぐにシートベルトを装着。こいつはかなりの衝撃にも耐えられる車だから大型トラックに喧嘩ふっかけなきゃ何とかなる・・・!
「生きて帰るぞ!」なんて、まるで出兵する時の台詞みたいなのを口にして呼吸を整えた。


「いいか?この門を出たら公道だ。今までは花沢の私有地だから警察の管轄外だが、ここからは道路交通法に違反したら捕まるからな?」
「わ、判ってるって!」

「深呼吸してマイルド発進だ・・・よし、エンジン掛けろ」
「りょ、了解!」


こうして俺のGT-R は超スローモーションで花沢のロードコースを出た。
ここからは山道の下りが続くが、そこまで急なカーブなんかはない。それに対向車も殆どないから慎重に・・・慎重に中央道の諏訪ICを目指した。

車内の空気はピリピリ・・・気が付いたら息を止めてるから、交差点で停車した時は2人で窓を開けて深呼吸した。


牧野はシートも前に出してハンドル握ってる腕に力が入りすぎ。背中もシートから離れて、むしろハンドルに身体が寄ってる・・・その目は何処を見てるんだ?
真正面一点に集中せずに定期的に周囲を確認しろよ・・・って言いたいけど言葉を出した方が事故りそうだった。

そうやって田舎道を走ること30分。公道に慣れてきた頃に少しずつ街に近づき、昂ぶってた気分も落ちついて来たのかシートに縋ってハンドルを持つ手の力が抜けてきた。


「もうすぐ入り口だ・・・見逃すなよ?」
「絶対に声掛けてよ?声掛けてくれなかったら入れないから!」

「標識が出てるだろ?それ見てたら大丈夫じゃね?」
「通り過ぎたらもう戻れない~!」

「・・・・・・いや、道交法に従ってUターンしろよ」


「あっ!高速の入り口、あれじゃない?」
「お?」

「何よ、ちゃんと見てって言ったでしょ?」
「・・・・・・・・・悪かった」


なんで俺が謝るんだ?!


**


何とか無事に中央道に入ったが・・・流石に悲しくなった。
まさかこの車が軽自動車に追い越されるとは・・・。


「牧野・・・いくら何でも渋滞してねぇのに高速道路を時速50キロで走行するな!この速度は低速違反だぞ!」
「だ、だって!この車ちょっとアクセル踏んでもすぐに200キロとかいくんだもん!」

「そりゃそうだが加減ってもんがあるだろうよ。もう少し踏み込め、せめて80近くは出せ」
「待って、前に車がいるから・・・」

「前の車?それって500メートルぐらい離れた車の事か?」
「そうよ!あれにぶつかったら困るでしょ!」


サーキットじゃねぇんだから、あんな遠くの車を一瞬で抜こうって考える方がどうかしてると思うんだけど。
その時何気に振り向いたら、今度は真後ろから大型トラックがかなりのスピードで追い上げて来るのが見えた。

でもこの車は走行車線。
この速度で走っていたらトラックの方が追い越し車線に移動して追い抜くだろうから何もしなくていい、そう思って黙っていたら牧野の方がそのトラックに気が付いた。
そして自分が追い越し車線に変更しようとウインカーを出したから驚いた!


「牧野!変更せずに真っ直ぐ走れ!トラックの方が変更するから大丈夫だ!」
「ええっ!そうなの?」

「いいから変更するな!ウィンカーを戻せ!」


「きゃあああああーーっ!!」
「叫ぶ前に戻せーーーっ!!💢」

ブゥォオオオオォォォォーーーーン!!


「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」

「・・・・・・・・・次のパーキングエリアで交代しよう」
「・・・・・・・・」


別に危険でもなんでもなかったけど声と音だけは凄かった・・・。




***************************




凄く疲れた・・・緊張しすぎて身体中が痛い。
足だって治ったばかりなのにズキズキするし、無駄に視力を使ったから頭も痛い。

でも東京に入る前に西門さんが交代してくれたから、それからは快適なドライブだった。うん、車はやっぱり助手席がいいわぁ、なんて思いながら都内に戻ってきた。


運転席の西門さんはあれからもずっと無言で、私同様疲れてるみたい。
明日はお休みだから自宅でゆっくり寝るんだろうなぁ~って、もうすっかり暗くなった街で輝くイルミネーションを見ていた。
ついさっき高速道路も降りて一般道・・・お腹空いたなぁって思った瞬間お腹が鳴って、やっと西門さんもくくっと笑った。


「流石に俺も腹が減った。何処かで食って帰るか。どうせアパートには食うもんがねぇんだろ?」
「あっ、そうだった!」

「何でもいいなら、少し先にリストランテがあるけど」
「イタリアンって事?うわあぁーい!パスタ、大好き!」

「良かったな、飯が食えて」
「あっはは!生きて帰れたって意味?うん、本当に良かったねぇ~!」


そう言うとかなり呆れられたけど、その目はもう怒ってなかった。

本当はかなり落ち込んでいた。もう少し運転出来ると思ったのに教習所より緊張してしまった。
隣に座ってる人が何か言う度に、事故っちゃいけないって言う気持ちと見事なドジっぷりと・・・これをどう思われてるかが気になって情けなくて全然集中出来なかった。

でもロードコースでどれだけ失敗しても付き合ってくれて、その度に怒るんだけど教えてくれて・・・ちょっと嬉しかった。
まさか最後に高速道路を走るとは思わなかったけど。

もうこれで運転しろだなんて言わないかなぁ・・・。
いつか自分で小さな車でも買える日が来たらその時にもう1度練習しよう・・・なんて、いつになるか判らない事を想像していた。



西門さんが連れて行ってくれたのはリストランテって言ってもそこまで高級な店じゃなかった。
今日の私達の格好でも入れるカジュアルな感じの可愛い外観で、ウェイターやウェイトレスも朗らかな対応。シェフの笑顔もホールから見えて、フレンドリーな雰囲気だった。


「・・・ねぇ、ここでもマナー講座するの?」
「ははっ!今は勤務中じゃねぇからな。行儀悪くなきゃ好きに食っていいぞ」

「えへへ!良かった♡今日も美味しく食べられなかったらどうしようかと思った」
「・・・しかし、あれだけ危ねぇ運転した後でも飯が食えるってすげぇな、お前」

「心臓と胃袋は別だからね~!」


アンティパストにはモッツァレラのカプレーゼとサーモンマリネにポテトサラダ。
小さめのピッツア・マルゲリータに本日お薦めのパスタ、最後にはミニドルチェが出たけど、彼が食べないって言うから両方食べてしまった。

この時の会話は茶道の事じゃなくて車の事が殆どだった。
今日の反省だとかこれまでのドライブの話だとか・・・西門さんはたまにバイクで遠出をするらしい。
その時はいつも1人、無心で運転するんだそうだ。

あのスピードの中で自分の中に溜まったものを全部吐き捨てるのだと・・・それを話す時の彼には着物を着てお茶を点てる茶道家の面影はなく、少し少年っぽかった。

あぁ、こんな顔で笑う人なんだ・・・って、別の西門さんを見た気がした。



「あ~!美味しかったぁ!ご馳走様でした」
「俺のも半分ぐらい食っただろ?そんなに食ってもガリガリって可哀想なヤツだな・・・」

「は?可哀想ってなによ!胸とかお尻とか大きくても邪魔なだけですよ~だ!」
「くくっ!1回でも大きくしてから言えよ。ガキの頃から成長してねぇんだろ?」


「うわっ!それ、セクハラだからね?今が勤務中じゃなくても・・・・・・あれ?」


駐車場に向かう途中、私達の歩いてる歩道の反対側、そこを歩く男女を見て足が止まった。



小柄な女性と笑いながら歩いてる男の人・・・・・・・・・堤さんじゃないの?




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Comments 4

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2019/10/02 (Wed) 13:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

あら!そうなんですか?
確かに都市高速の方が判らないですよね~💦

私は勿論首都高速は知らないのですが、一番近い所だと福岡都市高速・・・あそこで毎回怖い思いをします。
今はもう殆ど行きませんが、昔は子供の習い事で毎年必ず福岡に行ってたので。

合流が全然判らないのと、私は地元じゃないので地名を知りません。
ですから初めて行った時は運転歴が長くても緊張して怖かった(笑)
で、都市高速って意外と高さがありませんか?(福岡しか知らないんだけど)
中国自動車道も九州自動車道も山道ですから「橋」って感じはないんだけど、都市高速って「橋」みたいな気がして💦

ま、つくしちゃん、事故らなくて良かったですね♡
総ちゃんはクタクタみたいだけど。

このつくしちゃんと運転音痴な類君でドライブでもさせようかなぁ~(笑)

2019/10/02 (Wed) 19:02 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/03 (Thu) 12:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

高速道路ね(笑)

私は高速道路の運転って結構多いんですよ。
でも中国自動車道は殆ど山道・・・景色が変わらず、実は非情に眠くなるんですよね。

で、あまり速度出してるとヤバいので控えめ運転になります。山道だからカーブが多いんですよ。

てか、私これ書いてて何か思い出したと思ったら「桜狩り」だった(笑)
猛スピードの類君だった。
(この作品、何かと思い出すんだけど、激しいお話しだったのね💦)


そうね!総ちゃんも饒舌になっちゃって❤
もう恋人の雰囲気じゃん!

いやいや、まだまだ・・・そう簡単には(この話も焦れったくしようかなぁ~)

2019/10/03 (Thu) 21:58 | EDIT | REPLY |   

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