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「おはようございまーす!」
「あぁ、おはよう、牧野さん。もう足は大丈夫ですか?」

「ご心配かけました、西村事務長。走らなければ大丈夫です。暫くはぺったんこの靴にしましたし」


月曜日、何となく気が重たかったけど元気なフリをして西門邸に出勤した。
これから堤さんの顔を見なくちゃいけないけど、あの人は私達に彼女を見られたなんて知らない・・・あの日の事を何も聞かなければいいんだって、長い廊下を歩く時に自分に言い聞かせていた。


「あら、牧野さん。どちらに?」
「・・・へ?あぁ、おはようございます、志乃さん。何処って秘書控え室に・・・」

「それなら通り越してますよ?控え室はこの廊下を右です」
「・・・・・・・・・」

考え事をし過ぎて交差点を通過し、道路を1本間違えたって事ね?
車の運転だけじゃなく普通に歩いてても通り過ぎるのか、と肩をがっくり落として道路(廊下)を引き返した。



「おはようございます・・・」

遅刻してもないのに小さな声で部屋に入ると、やっぱり堤さんはもう業務を開始していた。
いつものようにパソコンのキーボードをカタカタ言わせながら「おはようございます」と無機質な声で言われ、私はコソコソと自分のデスクに向かった。

・・・で、私は何をしたらいいんだろう?今日の予定をまだ西門さんから聞いてなくて、パソコンを触るような業務もないし、調べ物すら頼まれていない。
手持ち無沙汰で、つい・・・聞かなければいいと思ってたクセに先週の出張の話を聞いてしまった。


「堤さん、軽井沢はお疲れ様でした。土曜日、遅くなったんですか?」
「・・・えぇ、予定にはなかったのですが家元が昼食までご招待されましてね。それが済んでから東京に戻りました」

「そ、そうなんですね~。じゃあクタクタでした・・・よね。せっかくの土曜日だったのに休めませんでしたねぇ~!」
「・・・いえ、夕方早くに自宅に戻ってからは外出もせず1人でゆっくりしていましたから」

「・・・・・・・・・そうですか」
「急な予定変更など良くあることですし、定時制の勤務ではないので覚悟していますよ・・・・・よし、出来た。では私はこれから家元と出掛けますので、牧野さんは総二郎様に本日の行動予定を確認して下さいね」

「あっ!判りました・・・行ってらっしゃい!」


今まで打ち込んでいたパソコンの電源を落として鞄を手に持ち、堤さんはさっさと部屋を出ていった。

自宅に戻ってからは1人でゆっくり・・・・・・いや、それは嘘だよね?誰かと一緒に過ごしてたよね?
それはイチイチ私なんかに説明しなくてもいいと思ってついた嘘なんだろうか。


正直に恋人が居るって・・・そう言えばいいのに。



シーンとしてる部屋で何処を見るわけでもなくボーっとしていたら、西門さんがカジュアルな格好で入って来た。
それを見てやっと勤務時間だったと飛び上がり、その拍子にデスクの下に太股をぶつけて悶絶・・・挨拶もしてないのに西門さんに「バカか!」と怒鳴られた。

「いたたた・・・マジで痛い・・・!」
「狭い場所で慌てて立つからだ!まずは椅子を引いてから立てっつーの!」

「ごめんなさい・・・はぁ痛かった!擦り剥いて出血してんじゃないかしら・・・」
「確かめてやろうか?」

「・・・馬鹿言わないで下さい!勤務中に秘書の太股見る気ですか!」


くくっといつものように笑ってる西門さん・・・それまで何となく暗かった気分が吹き飛んでしまった。

それにしてもカジュアルな服装でこれからどうするんだろうと今日の予定を聞いてみたら、都内の呉服屋さんに来年用の着物を作るために行くらしい。
呉服屋さんが本邸に反物持参で来る事の方が多いけど、今日はそれ以外にも行く場所があるからこっちから出向くそうだ。

すぐに出掛けるから裏口に来いと言われ、私は急いで鞄を持って彼の後を追い掛けた。



**



「それではこちらのお色で仕立てさせていただきます。仕上がりましたら本邸にご連絡致しますね」
「あぁ、それだったら今度から秘書の牧野にお願いできますか?」

「は?秘書・・・・・・」


はぁ・・・今度は呉服店・鈴乃屋さんの女将さん?
どう見ても40歳は超えてると思う女将さんだけど、流石に着物は似合ってるし色気はあるし美人・・・その人が西門さんの後ろにくっついてる私にやっと気がついたのか、打ち合わせの最後の方で視線を向けられた。
いや、初めに気が付きなさいよ・・・って思うけど、そこはグッと飲み込んだ。


「まぁ、秘書の方でしたの?西門の新しい使用人をお連れになったのかと思っておりましたわ。総二郎様が秘書ねぇ・・・どうなさいましたの?お仕事の移動は1人がお好きだったのでは?
あまり知らない他人と行動するのは嫌いだってあれほど言われてましたのに・・・まさか、この方のことをよくご存じなの?」

・・・このスーツ姿を見て判らなかったかな?💢
新入りの使用人が跡取り息子にくっついて出歩く訳がないでしょうよ!
それに何でも知ってる風に話さなくても良くない?私だって基本「1人」が好きですよーだ!・・・と、心の中で叫んでも表の顔は常に明るく朗らかに・・・ニコッと笑って女将さんを見ていた。


「まさか!親父が煩いからつけたんですよ。牧野、鈴乃屋の女将さんの尚美さんだ。家元達もここで着物を作ってもらっているからお前も来ることがあるだろう。顔を覚えてもらえよ」

「初めまして。秘書の牧野と申します。最近西門に入りましたので若宗匠の事はこれっぽっちも知りません。不慣れではございますが、どうぞ宜しくお願い致します」

あら嫌だわ、なんか強調したみたいって思ったら、西門さんに凄い目で睨まれた。


「・・・鈴乃屋の尚美と申します。それでは出来上がりましたら牧野さんにご連絡しますね・・・」

どうしてそんなにテンション落ちるのよ!



一体この人は今までどんな風に女性と接してきたの?あと何人ぐらいこんな人が居るっての?
一気に顔色まで悪くなった尚美さんに見送られて呉服屋さんを出たのは11時、そこから西門さんは車を青山方面に向けて走らせた。

今度は何処だろう?と窓の外をキョロキョロ・・・そうしたら細い路地に入って小綺麗な駐車場に停め、そこから歩くこと3分。
私達が来たのは高級感溢れる靴屋さんだった。


「今度は靴を買うんですか?」
「買うって言うより作ってもらうんだが」

「オーダーメイドってヤツ?高いんでしょう?」
「そんなに高くはねぇ。20万ぐらいだ」

「へぇ~!私5000円以上の靴なんて履いたことがないかもっ!」
「だからカパカパ脱げて怪我すんだよっ!」

確かにねぇ~と頷きながら店内に入ったら、嬉しいことにここはお爺ちゃんが店長さんだった。
は~良かった!と胸を撫で下ろしたら、綺麗な店内から奥の作業場のような所に移動・・・そこで何するんだろうと西門さんの後ろに立っていたら、彼は私の腕をグイッと引っ張ってお爺ちゃんの前の椅子に座らせた。


「履いてる靴を脱いで。ストッキングもね」
「・・・はい?」

・・・お爺ちゃんのくせになんて大胆な発言!パンスト脱げって男性に言われた事ないんだけど?!
腹が立って私の後ろに立ってる西門さんを見たら・・・


「裸足にならなきゃ正しく計測出来ないだろう?」
「・・・・・・・・・え?」

「アホか!お前の靴を作りに来たんだ」


そんな事をここで言われて呆然・・・。
男性2人が(1人はお爺ちゃんだけど)すぐ側にいるのにそんな事言われて恥ずかしいったら!ここは洋服屋さんじゃないから試着室みたいなものがあるわけじゃ無く、私は物陰に隠れてパンストを脱いで再び椅子に座った。

そうしたら足の外側・内側の輪郭・土踏まずの位置・指の位置や出っ張りなどにマークをつけられ、メジャーで足囲・くるぶし・甲の高さ・履き口・踵のカーブなどを計測された。
その上「3Dスキャナー」ってのに乗せられ立ったまま何かを測られ、座っても同じ事をした。聞けば立った時と座った時の足の裏に掛かる体重の差で、日常の基本的動作の中でも快適に過ごせる形状を作るんだとか。


「これでまずはお前専用の木型を作る。そいつがあれば2足目からは比較的速く完成するし来店しなくてもいいからな」

「はっ?木型?2回目?そんなに高い靴を何回も作れる訳がないでしょう?!」
「これは必要経費だ。また怪我されても困るし、意外と靴ってのは見られているんだからそれが西門の評価にも繋がるんだ」

「いや、でもっ!」
「お前に出せって言ってねぇだろ?だから気にすんな。この先そんな中学生みたいな靴で同行されても困るって事だ」

「・・・ち、中学生・・・」


通常のお客様の場合は2~3ヶ月待つのに西門の場合は2週間・・・その頃に私の靴が出来上がるらしい。
このお店に置いてある試し履き用の靴を履いて鏡を見たら、流石にシルエットが綺麗で履き心地が良かった。

「お仕事用でしたらヒールの高さは5㎝で宜しいですかな?」
「そうだな・・・ポインテッドトゥとスクエアは5㎝にして、チビだからアーモンドトゥを7㎝にしようか」

「畏まりました」

・・・・・・なんの話?しかも私の靴なのにどうして西門さんが決めてるの?
私、7㎝なんて履いら転けると思うんだけど?


「それでは大至急製作に入ることにしましょう。はは、若宗匠はせっかちだから・・・」

「よ、宜しくお願い致します!」
「いつも悪いな。急ぐのはスクエアだから、まずはそれが出来たら連絡宜しく!」


・・・・・・靴をその日に持って帰られないなんて初めて。




このお店を出たらもうお昼過ぎ・・・西門さんに連れて行かれたのはすぐ近くにある高級料亭で、そこで吃驚するほど美味しい穴子を食べた!
勿論作法の注意付き・・・それでも個室だったし前より煩く言わなかったから楽しく食べられて大満足♡
これで午後も頑張れる!って思ったら・・・


「3時から茶道教室で講師だから急ぐぞ」
「ここから遠いんですか?」

「いや、すぐ近くだ」
「・・・3時からでしょ?時間あるんじゃ・・・」

「今から車1台買いに行く」
「あぁ、そうなんですか、車をね・・・・・・は?!


私の驚きなんて無視されて、このあとご贔屓のお店でコンパクトカーを1台買った。
しかも「早めに本邸に届けておいてくれ」・・・車ってパン買うみたいに買えるの?!

どうやらこの車は私が運転するらしい。
これも必要経費だって言われて、出た言葉が「気にすんな」。

いや、気にするでしょーっ?!


「牧野が乗るんだから好きな色にしろ。どれがいい?」
「え?えっと・・・じゃあ、元気が出そうだから黄色で!」

「黒で納車してくれ」
「畏まりました!」

「・・・・・・・・・・・・」


じゃあ聞かなきゃいいじゃないのっ!!💢💢





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Comments 8

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2019/10/04 (Fri) 14:39 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/04 (Fri) 15:01 | EDIT | REPLY |   
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Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。
そうそう、総ちゃんの場合は判りにくいんですよ(笑)

どうでも良かったら「お前の為に」って言うんですよ。天邪鬼ですからね♡
つくしちゃんだと「俺と西門のため」って言いながら100%つくしちゃんの為(笑)

うんうん、ポケットマネーじゃないかしら♡

そう言えば私の勤めていた会社は靴が「経費」でした。
で、女性はストッキング、男性は靴下の支給がありましたよ。

でも流石にオーダーメイドじゃないから、サイズだけ申告したら届くんですけどみんな「痛い」って言ってました。
試し履きが出来ないからね~。
結局自分で買うって人が多かったですよ。


2019/10/04 (Fri) 20:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

黄色い車💦目立つでしょうねぇ~(笑)
確かに可愛いですけどね♡自分の車にするには勇気がいりますよね(笑)

私は黒以外乗った事がないので、本当はカラーの車に憧れるんですが、実際買いに行くとやっぱり黒になります。
赤い車とかって乗ってみたいと思うんですが・・・今はもう無理かな?

可愛い色の車ってやっぱり若いこの方が似合いそうだもん💦


少しは成長・・・う~~~ん、まだかな?(笑)
総ちゃんの方が必死な感じですね♡

2019/10/04 (Fri) 20:33 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/04 (Fri) 22:30 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様、こんばんは。

コメントありがとうございます。
その車も可愛いですよね~。色々見たんですけど、この車は結局車種を選べず(笑)
ご想像にお任せします。

あはは!じゃあ今度の類君のお話はダメですね💦
脳内変換したら苦しくなりますよ?

そして私もそれは読みません(笑)同じ気持ちですよ💦絶対に無理っ!!(笑)
不思議じゃないですよ~、類君愛ってものです♡

ふふふ、思う存分変換してください♡

2019/10/04 (Fri) 23:56 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/05 (Sat) 13:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

ヤバいっ💦
いただいたコメント読んでて、ずっと総ちゃんの型ってヤツをナニの型だと想像していた💦

はっ?って思って、どうやって取るんだろう?って(笑)
よく読んだら靴だった!!


もうダメだわ、私・・・普通に戻りたい・・・💦

2019/10/05 (Sat) 23:02 | EDIT | REPLY |   

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