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~side総二郎~

『・・・昨夜遅くに新潟県の山中で発見された事故車両は花沢物産の経営者、花沢家が所有する車であると判明し・・・』


その連絡が飛び込んで来たのは類達が帰国した日の翌日だった。
今もテレビでそのニュースが流れているのを俺は都内の花沢総合医療センターで見ていた。

画面には類が乗っていた車が倒木に正面から当たって大破している様子が何度も映されている。そして不思議なのはその倒木が自然に倒れたものではないという事。
この最近、この地区に大雨も降っていなければ、山の斜面に崩れた様子もない。その倒木は不自然な状態で道路の真ん中に横たわっていたようだ。

映像で見ると現場は片側が崖の山道で舗装もされてなく、昼間でも滅多に車が通らないらしい。管理されてないような雑木林が鬱蒼としていて薄暗いように見えた。
マスコミが周辺住民・・・と言っても数十㎞も離れているが、インタビューをしている様子も流れた。


『こんな道を夜に通るなんて誰もしませんよ?よっぽど慣れた人なら判んないけど~・・・』
『新しい道も出来てるからねぇ・・・』


『道を塞ぐぐらいの木だったら運んだって目立つけど、そんなトラックは見てないけど?』
『そもそもトラックなら尚更あんな道、通らんと思うがなぁ?』



・・・なぜ、こんな所を花沢の車が・・・しかも類を乗せた車が走ったんだ?一体何処に行こうとしたんだ?


オペ室の前では使用人頭の加代さんと執事の田村さんが心配そうに両手を組み、項垂れたまま座っている。
司もあきらもそれぞれの滞在国に行ってしまったし、花沢の両親から付き添いを頼まれた俺以外の人間はシャットアウト。類の秘書と常務は駆け付けたが手術の結果はまた連絡すると伝え、これから当面の予定変更をするために社に戻った。

勿論、マスコミ関係の人間も病院内には立ち入り禁止だ。


オペ中なのは類・・・。

運転手の吉岡は真夜中に運ばれた病院ですぐに手術が始まったが、類は出血も少なく、運ばれた病院の検査で内臓損傷も認められなかったことと、持ち物から花沢だと判りここに連絡が入った。
可能ならば類の処置はこの花沢総合医療センターで行いたいとの意向を伝えると、現地の病院は応急処置をした後で民間救急車で類を東京に運び、検査の結果骨折箇所の手術が始まったらしい。

ただ、怪我の詳しい情報は駆け付けた俺達にもまだ伝えられていない。全身打撲と骨折があるという程度の説明しかなかった。
フランスの両親には田村さんがすぐに連絡を入れた。2人は大至急帰国してくると言うが、それでもここに来るのは明日になると言う話だった。


気になるのは2人しか運ばれてないと言う事だ。
もう1人・・・あいつがなぜ姿を消したのか、それが全く判らなかった。


「・・・どうしてこんな事に・・・類様、どうかご無事で」
「帰宅が遅いことをもっと早くに調査するべきでした。何処かにお2人で立ち寄られたのか、先にマンションにお帰りになったのだと・・そう思ってましたので」

「本当に牧野の姿はなかったのか?」

「・・・はい。警察からの連絡で、車内で発見されたのは類様と吉岡さんだけだと・・・」
「只今捜索隊が付近を調べているはずですが、事故したのが夜中ですと辺りは真っ暗なはずです。つくし様が歩ける状態だったとしても動き回るとは考えにくいと・・・」

「携帯電波の届かない場所だったんだろ?必死に歩いて助けを求めたって事じゃねぇのか・・・」

「それだともう発見されているのではないでしょうか?どうやらあそこは1本道のようです。麓までに分岐した道はないとの報告でしたから・・・」
「それにあれだけ大破した車両で、つくし様だけが動き回れるほど無傷だとは考えにくいのでは?」

「くそっ・・・!!」


何も情報がないまま俺のスマホには司とあきらから交互に電話が入った。
この事故を聞いてからすぐに俺から連絡は入れておいたが、花沢物産後継者の事故だ・・・世界中に速報で流されているはずだから彼奴らもこの映像を見ているかもしれない。


『総二郎!何が起きたんだ!?類は無事なのか?牧野は?』
「類は手術中だ。まだ何も判らない。牧野は・・・」

『牧野は・・・どうして黙る?!総二郎、言え!ニュースじゃ牧野の事を何も言わねぇんだ!』

「司・・・落ち着いて聞けよ。牧野は・・・・・・行方不明だ」


『・・・・・・なん・・・だと?』

「牧野は事故車両にはいなかったんだ。今捜索中だが、まだ見付かってはいない」


・・・司の声が止まった。

だがこれは事実だ。報道されないのは花沢が止めているからだろう。
結婚して3日目の後継者が夫婦で事件に巻き込まれたなんて言われたら、これまでも何かと騒がれた牧野の事をさらに色々と調べるかもしれない。
いずれは報道するかもしれないが、今は類の名前しか出していない・・・と言うより類なら隠しておけないからだ。


『牧野が・・・居ない?』
「そうらしい。オペ室に入ってるのは類だけだ」

『だけだってどういう事だ!なんでお前はそんなに冷静なんだよ!道明寺の連中を使ってでもいいから探せ!!』
「それならもう花沢も動いている!お前みたいに怒鳴っても事態は簡単に進まねぇよ!何も判んねぇんだから!」

『喧しい!!・・・もういい、俺が動く!』
「それは勝手だが事情が判らねぇうちから動いて逆に牧野に何かが起きたらどうする!万が一、花沢に対する攻撃だとしたら牧野が捕まってるって可能性もあるんだ!」

『・・・・・・っくしょう!!』


「手術が終わってドクターから説明があったらお前にも知らせる。だからもう少し待て。判ったな!」


これとほぼ同じ内容をあきらとも話した。
あきらは美作のシステムならいつでも俺の判断で使えと言い、こっちからの連絡を待つと言った。


その時、オペ室から看護師が出てきて「花沢様のご関係者様!」、そう言われて急いで駆け寄った。
加代さんは身体が震えて椅子から立ち上がれず、看護師の元に向かったのは田村さんと俺。

「手術が終わりました。執刀医から説明がありますから、あちらの部屋でお待ち下さい」
「類は大丈夫なのか!」

「説明は執刀医からですが、ご無事ですよ」

その言葉を聞いて泣き崩れた加代さん。
田村さんが彼女を支えてその部屋に入り、類の両親から説明を聞くように頼まれていたから俺も一緒に入って1番端に座った。
そうしたら汗で変色した術衣を着たドクターがやってきて一礼、最初のひと言は「手術は無事に終わりました」・・・だった。


「骨折箇所は複数ですが奇跡的にも大きなものはありません。脊椎の損傷、内臓損傷、頭部外的損傷もありません。咄嗟にご自分を守られたのだと思いますが、左の上腕骨と肋骨を3本骨折しておられました。肋骨も肺や心臓を傷付けていませんのでご安心下さい。ただ、意識がまだ回復していませんから話すことは出来ません。
腕の手術だけで済みましたが本当にこれは事故の規模からすると考えられない事で、不幸中の幸いとしか言いようがありません」

「はぁーーーーーっ・・・良かった・・・」
「加代さん、大丈夫ですか?」

「意識はいつ頃戻るんだろうか・・・」

「それははっきりとは言えません。麻酔から完全に覚めた頃に意識が戻ればいいのですがねぇ。
あぁ、それと吉岡さんの方も向こうで無事手術は終わっているようです。命に別状はないとのことですが、かなり怪我が酷いようなので回復には時間が掛かるでしょうな。また連絡が入ったらお知らせしましょう」


・・・まだ喜ぶことは出来なかったが類は何とか大丈夫だと聞いてホッとした。
確かにあの事故の映像でそれしか怪我がないなら奇跡なのかもしれない。
倒木に当たる数メートル手前に急ブレーキの跡があったから減速出来たのか、類の防御が上手くいったのか・・・本当に偶然なのかは判らねぇけど。


「ありがとうございました!本当にありがとうございました・・・」
「お若いですし体力もありますから、意識がちゃんと戻れば回復も早いと思います。ただ・・・」

「ただ?」
「・・・聞きましたところ奥様が見付かっておられないとか。それを聞いて精神的なショックがあるでしょうから、回復にどう影響するかは判りません。その事をお話になる時には注意が必要です」

「わ、判りました・・・」
「加代さん、私が旦那様に連絡しますから、あなたも少し休みましょう」

「・・・ごめんなさいね、田村さん・・・」


震えが止まらない加代さんを支える田村さんは、入った時と同じようにして廊下に出ていった。
執刀医は流れる汗を拭い、手術室看護師が慌ただしく動き回る・・・あいつが手術室から出てくるのかもしれない。


「類は暫く集中治療室?」
「いえ、花沢家の特別室にお入りいただきます。そこでも集中治療室と同じように看護できますので」

「・・・了解」



俺は今の内容を司とあきらに報告。

まだ目を覚まさない類に付き添うため、その日は病院に泊まることにした。





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