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~side総二郎~

その日一晩中類は目を覚さなかった。
全身包帯だらけで左腕は固定され、あちこちが痣だらけ・・・そんなボロボロになったこいつの顔を、俺は腕組みしたまま見ていた。


どうして類ほどのヤツがそんな所まで連れて行かれて黙ってた?
それに牧野を乗せていたはず・・・自分よりも大事にしていた牧野が側に居てそんな勝手な行動を運転手にさせる訳がない。

加代さんに帰宅時間を連絡しているんだから類の指示じゃないはずだ。
それなのに新潟の山中に行く?その先に花沢に関する場所は何もない・・・じゃあどうして運転手はその山に入ったんだ?

全然判らねぇ・・・それは運転手か類が回復しないと聞き出せねぇってか・・・?



類の左手には指輪がある。

こいつは結婚が決まった時、それまで見せなかった笑顔を俺達に見せて喜んでた。『家庭なんて持てると思わなかったんだ』・・・なんて牧野を抱き締めて嬉しそうだった。

それが実現したのは数日前なのに。

俺達の中で1番に結婚なんてして、吃驚するほど綺麗になった牧野と腕を組み、すげぇ幸せそうに笑ってたじゃねぇか。
普段からボソボソしか喋らなかったクセに、誓いの言葉の時だけ力強く返事しやがって・・・。

誓いのキスだって長過ぎただろう・・・どれだけ俺達に見せつける気だ?って本気で頭にきてたのに。
早く目を覚ましてその嫌味ぐらい言わせろ!・・・この大馬鹿野郎!!


その手も骨折して傷だらけ・・・護身術やら防護方法をマスターしたこいつがこんなに全身包帯だらけになったのなら、牧野は今頃どうなってんだ?
類が身体張って守ったのか・・・それとも投げ出された?

いや、そんな形跡はなかったって聞いた。


ドアは変形していたから無理矢理開けたかどうかは判らない。フロントガラスは砕かれてたけど後部座席の窓が割れてたって報告もない。
大体、本来なら類も一緒に後部座席に居なきゃおかしいんだ。
こいつが助手席で意識を失っていたのなら、それは運転手を止めようとしたのか・・・じゃあやっぱりそうなるまでに運転手を野放しにして寝てたとか?

・・・何時間もか?いくら類が寝太郎だと言ってもそこまでは考え難いが・・・。


とにかく何も判らない。
どっちでもいいが目を覚まして話してくれなきゃさっぱりだ。

30分と時間を置かずに看護師がやってくるが、朝になっても類の容体に変化はなかった。



**



「おはようございます、西門様、本当に申し訳ございません・・・私達だけ帰らせてもらって」
「いや、構わない。でもこの通り、意識は戻ってないんだ」

「・・・さようでございますか。類様、こんなに傷だらけで・・・」

朝イチに来た加代さんはその時点で既に憔悴しきっていた。
だから類の顔が見えるところに椅子を置いて座らせ、その後まるで孫に触れるように頬や額を撫でて涙を溢していた。

無理もない・・・こいつが産まれた時からの世話係だからな。


そして昼前にはフランスから帰国した類の両親が病院に駆け込んできた。
その時点でも類の意識は戻ってなくて、お袋さんは特別室に入るなり鞄を床に落とし動揺しまくってた。

「類!!いやぁっ!!どうしてっ・・・!!」
「落ち着きなさい!命は助かったと聞いたじゃないか!」

「だって、類がこんな姿に・・・誰がこんな事をっ・・・!」

「奥様、大丈夫ですよ、きっと意識を取り戻されます!類様はお強い方ですから!」


類のお袋さんは取り乱して寝たままの類に縋りつき、親父さんは辛そうな顔であいつの腕に触れていた。

たった1人しかいない息子だからってのもある。
類は「放任主義だから」みたいに冷めていたけど、本当は息子を溺愛してる2人・・・本当に冷めてる両親を持つ俺には羨ましいぐらいだった。

泣きじゃくるお袋さんを加代さんが慰めて、親父さんは病室に入ってきたドクターに俺達が聞いた説明をもう1度受けていた。
大怪我に間違いはないが意識が戻れば大丈夫・・・これは奇跡に近い事だと。


「それじゃあ新潟で治療中の運転手は話せないって事か?」

「はい。意識が戻らないのと、そっちの方は頭部外傷があるようなので記憶障害があってもおかしくありません。それにどう言う状況下で起きた事故なのか判りませんが、運転手に持病があった可能性もあります。何か発作を起こしたとか・・・それでしたら正確な原因が判らないかもしれません」

「類に後遺症は?」

「お怪我の方はリハビリをすれば大丈夫でしょう。上腕骨を骨折していますが、そこは約8週間程度で動かせると思います。肋骨を数本折っていますから、目を覚まされても身体を起こすのは激痛を伴うので暫くは難しいでしょう。こちらは2週間程度は動かせず、その後1ヶ月ぐらいで痛みは治まると思いますが」

「目が覚めれば大丈夫なのね?この子は数ヶ月したら昔と同じ生活が送れるのね?」

「精神的な後遺障害は残るかもしれません。あくまでもお身体だけの話です」


それを聞くと親父さんもお袋さんも類の指に目をやった。
この人達も知っているはず・・・牧野が見付かっていないことを。

それが類にとって1番ショックだと言う事も判っている。警察から捜索状況を聞いているからなのか、改めて俺に牧野の事を聞くことはしなかった。


「総二郎君、付き添ってくれてありがとう。助かったわ、他に類の事をよく知ってる人が居なかったから」

「・・・俺は大丈夫。親父達にも事情話して暫く休みもらったから。花沢も後援会の幹部だから俺はその見舞いって事・・・だから気にしないでいいですよ」

「冷静に動ける君が居てくれたから心強かったよ。それにしても一体なぜそんな所に向かったんだか・・・」

「これは俺が立ち入る問題じゃないけど、花沢物産にトラブルは?もしかしてそっち方面の関係者が類を狙って・・・って事はありませんか?失礼な事を言ってるとは思うんだけど、大企業ほど意外な所で恨み買ったりするでしょ?
道明寺だって美作だってそういう事はあります。おじさんの会社が1番平和だって知ってるけど、子会社だって関連企業だって世界中にあるでしょ?その何処かに問題があったらトップが狙われる可能性もありますよね?」


こんな話題を司の母ちゃんに話した時点で西門は総攻撃受けるんだろうけど、類の親父さんはそこまで激昂する人じゃなかった。多少眉間に皺を寄せて苦々しい表情にはなったが、だからって声を荒げたりはしない・・・だから言えるんだけど。


「それはここに来るまでに全社に確認してみたよ。確かにトラブルがゼロって訳じゃない・・・だがそれが経営者を恨むほどの大問題になっているようなものはなかった。そして日本の本社、支社、関連企業内でもそんな事例はなかった。
ただし時間的にも1日しか調査してないからこれからも注意はするがね」

「そうですか。すみません、生意気言いました」

「いや、それだけ心配してくれているからだと受け止めてるよ」



この日の夜はお袋さんが付き添うからと言って、俺は自宅に戻ることにした。
そして司とあきらにグループ通話を利用してもう1度経緯を報告、花沢の内部外部に本当に問題が起きてないかの調査をこっそり頼んだ。


「俺もさりげなく後援会の奴等に花沢の噂を聞いてみる。何か知ってても親父さんが口に出せない事があるかもしれねぇから」

『俺はヨーロッパの花沢を調べてみる。でもこっちに1年ぐらいしか居ないけど、花沢のトラブルなんて聞いた事もないんだよな・・・健全な経営方針で評判だし』
『俺はアメリカでの動きを調べさせるが、それより牧野の情報はねぇのかよ!』

「何も入って来てはない・・・ってか、俺には入らねぇだろ。病院に居る時に警察からは何も連絡がなかったな。田村さんには何か動きがあったら俺にも連絡してくれって頼んでるよ」

『助けを求めに外に出て足を滑らせたとか・・・』
『そんな想像はするな!あきら!』

「俺達が言い争っても事態は変わんねぇよ。まずは類の回復と牧野の発見・・・類が目を覚ます前に牧野が見付かればいいけどな」


『・・・そうじゃないとあいつ、狂うかもしれないな』
『・・・・・・くそっ!』



その日の夜も類は目を覚まさなかった。
ドクターは意識が戻ってもいい頃だというが、俺はその方が良いような気がしていた。


電話で話した通り牧野が先に見付かって、その後で類が目を覚まし、何事もなかったかのように笑えばいい・・・。
「少し怖かったね」ぐらいの会話で終われば俺達も「心配掛けやがって!」で終われる。

傷だらけの2人に文句タラタラ言って、それでも並んで目の前に居てくれたらそれでいい。


事故から3日目・・・まだ何も動き出さなかった。





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