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plumeria

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目の前の男性は成瀬柊祐・・・鈴音のお兄さんだと名乗った。

そう言えば似ている。
鈴音もこんな髪の毛と瞳の色だった・・・って思い出した。体つきもこんな感じで色白で細かった。

少し悲しそうな笑顔もよく似てる。
この人を見ていたらだんだん彼女の事を思い出していった。


でもお兄さんなんて見た事はない。
私がここに住んでいた時に、鈴音以外の子供なんて居なかったし、誰も柊祐の事なんて話さなかった。お爺様だってお手伝いさんだって何も言わなかったのに、どうしてそんな事が信じられるだろう。

1人の人間がそこに住むのに総ての気配を消しておくことなんて可能なんだろうか・・・私は次から次へと出てくる摩訶不思議な説明に混乱していた。
いや、それよりも類の事を・・・そう思うのにどんどん違う方向に進んでいる感じがする、それにイライラした。



「考えてる事は判るよ。ここにはお爺様と鈴音しか居なかったって言うんだろ?」
「・・・・・9年間も姿を見せずに暮らせるとは思えない」

「鈴音はそんなに長く居なかったはずだ。中学生の頃にここから出ていっただろ?俺もその時に屋敷を出て行ったんだ。それまでは君の部屋と離れた部屋に居たんだよ・・・1人でね」

「そんなの信じられない!」
「くすっ、都会じゃ自分の隣に誰が住んでるのか知らない人も居るでしょ?だったら有り得るよね?だから、ひっそりと君と鈴音の日常を覗かせてもらってたよ」
「覗く?やだっ・・・どう言う意味?!」

「犯罪者を見るみたいな目で見なくても、そう言う意味じゃない。庭で遊ぶところを見てたってぐらいだから」


柊祐は側にあった椅子に座り、そこのサイドテーブルから何かを出した。
それは・・・もう古びた感じの写真。

それを私の前に差し出した。


「あっ、これ・・・・・・この写真・・・!」
「思い出した?つくしちゃんが書斎で見付けたものだよ」


「・・・・・・うそ・・・」


柊祐が私にくれたのはこの屋敷を出る時に書斎で偶然見付けた写真だった。
その時には何にも思わなかったけど、今見たらそれが誰だか言われなくても判る。私の1番大事な人だから・・・。


この写真に写ってるのは類だ。
裏に書いてあるアルファベットは類のイニシャルの『R』・・・だったの?


「どうして・・・?」
「教えてあげる。それと、気になるだろうからちゃんと話そう。花沢類は生きてるよ。病院で手当てを受けてるはずだ」

「えっ!大丈夫だったの?何処・・・何処の病院?この近く?すぐに行かなきゃ・・・!」
「彼は東京の花沢総合医療センターで治療中。君が行かなくても看護体制は万全で問題無いさ」

「東京の?花沢の系列病院に入ってるの?」
「・・・そう。夜のうちにちゃんと発見されて救急車で運ばれてる。因みに運転手もね・・・2人とも容体の公表はないけど命に別状はなかったらしい。安心した?」


「・・・・・・・・・うっ・・・!」


・・・・・・良かった・・・!

類はちゃんと助けてもらって、あの大きな病院で治療してるんだ・・・!
それならきっと大丈夫だよね?どの程度の怪我か判らないけど、また会えるんだ・・・。

本当に良かった・・・・・・彼の無事を聞いたらそれまでの緊張が少し緩んで、私は溢れる涙を抑えられなかった。身体中が痛かったけど必死に動かした手で顔を覆い、声を押し殺して泣いた。


類がちゃんと生きてた・・・・・・あぁ、良かった・・・!



「そんなに喜んでるところを申し訳ないけど、君はもう妻としては彼には会えないんだけどね」

「・・・・・・え?」

「教えてあげるって言っただろう?どうしてここに花沢類の写真があって、俺がこいつの事を知ってるかって」

「待って!その前に私がもう彼と会えないって・・・どう言う意味?」


「・・・今から話す事、それを知ったら君は彼とは暮らせないってことさ」





************************





・・・夢を見ていた。

遠い日の夢・・・小さな女の子を見つけた時の夢だ。
その他の事なんて全然覚えてないけど、俺が覚えてる唯一の出来事・・・まだ5歳ぐらいの時だった。



「・・・類様、如何されました?そんなに怖い顔をされて」
「加代、もう部屋にもどってもいい?ぼくが居なくても困らないでしょ?ここは面白くない・・・」

「まぁ・・・類様、これは面白いとかで参加するものではございません。花沢家の行事でございます。類様はたった1人のお子様ですからここに居なくてはいけませんよ」
「どうして?父様も母様も知らない人と話してるんだ・・・ぼく、することないし」

「そのように我儘を言うものではありません。それでは加代と一緒に向こうでデザートをいただきましょうか?」

「・・・欲しくない。いいよ、もう・・・」



それは都内のホテルで行われた花沢物産の何周年めかの創立記念パーティーだった。

幼馴染み達も来てなくて、俺みたいな子供なんて殆ど居ない。
ホスト側の子供だからって堅苦しいスーツを着せられて、良く判りもしないのに両親の隣に立たされてフラッシュを浴びた。
そんな事が嫌いだった俺はすぐに親の側を離れては隅に隠れ、それを加代に見付けられては引き戻されていた。

そのうち両親は招待客との話に夢中で俺の事なんて放ったらかし・・・だから加代の手も振りきって、会場外の庭園にあったベンチに座ってぼーっとしていた。


「何してんの?」

そんな声が斜め後ろから聞こえて、振り返ったら悪戯っぽく笑う子が居た。

おかっぱの黒髪で大きな目で、真っ赤なほっぺたが印象的な子。ドレスって言うよりワンピースみたいな感じの服を着て、レースの付いた靴下に黒い靴。髪にも服にも飾りひとつ無い。
椿さんや静だってパーティーの時は凄く派手にしていたから、まるで普通に見えるその女の子がとても新鮮だった。


「・・・べつに。面白くないからここに居るだけ」
「うん!たしかに面白くないよね~!あたしもお父さんにむりやり連れて来られたんだけど、これなら1人でもいいから留守番しとけばよかったぁ!」

「・・・あんた、だれ?」
「あたし?つくしって言うの。お父さんがね、初めてパーティーってのに呼ばれたらしいよ?」

「つくし・・・変な名前」
「あはは!よく言われる。あっ!これおいしかったけど食べる?」


そう言って彼女はすぐ側に置いてた皿のケーキを俺の前に持って来た。
「要らない」って言うのに強引で、フォークに突き刺して何度も「はい!」って言うから・・・仕方なくひと口食べた。

「おいしいでしょ?」
「・・・・・・甘い」

「そりゃそうだよ!ケーキだもん。あんた、変わってるよね~!」
「・・・・・・は?」


あんたなんて言われたことがなかった。
初めて会った子に変わってるなんて言われて心外だった。

でも、俺にこうやって普通に話してくれる子供なんて彼奴ら以外には居なかったから・・・なぜか嬉しかった。


その後も一緒にベンチに座って色んな話を聞かせてくれた。
星の話や虫の話、自分の友達の話や聞いてもいないのに自分の好きなものの話。

今日、ここに来たのは弟が病気で入院し、母親が付き添い入院をしているためらしい。
父親がパーティーに出席するとこの子が1人になってしまう。だから仕方なく持ってる服の中で1番可愛いと思ってるワンピースを選んできたって。

この子の父親の会社なんてどんなものか当然知らない。
この子も花沢物産なんて知るわけがない・・・まだ4歳だって言ったから。


その後、俺は加代に連れ戻されたけど、その子は凄く笑顔で「バイバーイ!」って手を振ってくれた。
俺は恥ずかしくて振れなかったのに、それでも見えなくなるまで振り続けていたっけ。



その子・・・牧野つくしに再会したのは英徳学園だった。
まさかと思った・・・でも凄く懐かしくて嬉しかった。
暫く彼女を見ているうちに恋をしてるって気が付いた・・・初めて本気で人を好きになったんだ。

司の彼女になった時は辛かったけど、それでも彼女の笑顔があの時のままなら応援しようと思っていた。
2度目のまさかは2人が引き離された事・・・俺はその時に彼女を守ると決めた。

彼女も俺の気持ちを受け止めてくれた。


そうして結婚できたんだ。
俺の真横で純白のウエディングドレスを翻しながら嬉しそうに笑うつくしを見たばかりだ・・・それなのにどうして俺はこんなに身体が重くて動かせないんだ?

つくしを抱き締めなきゃいけないのに・・・どうして俺はこんな冷たいベッドで寝てるんだ?


誰かつくしを呼んできて・・・・・・

つくし・・・あんた、何処に居るの?早く戻って来て・・・早く・・・・・・早く・・・



『類?大丈夫か?類!』
『類?!目を覚まして、類・・・お願い、類・・・!』



その声は総二郎・・・と、母さん?

つくしは・・・何処?つくしの声が・・・・・・聞こえない。





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